無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」に見る未来の店の形
2020.08.07

3月14日に開業したJR高輪ゲートウェイ駅の2階、改札内のスペースに無人AI(人工知能)決済店舗の第1号店となる「TOUCH TO GO(タッチトゥゴー)」がある。
展開するのは無人AI 決済店舗の開発を進める株式会社TOUCH TO GO。同社は東日本旅客鉄道(JR東日本)100%子会社のJR東日本スタートアップと、金融向けシステムコンサルティングやAIを活用した製品・サービスの開発・販売を手掛けるサインポストが共同出資し、昨年7月1日に設立された。
今回の店舗は、JR東日本が2017年11月から大宮駅(さいたま市)、18年10月から赤羽駅(東京・北)で実証実験を行った決済無人化の取り組みの第3弾ともいえるものだ。

約50台のセンサーカメラと重量センサーなどで人と物の動きを捉える
タッチトゥゴーの買物の流れは次のようなものとなる。まず、入店。今回のタッチトゥゴーは入店時に個人認証をせず、入店後に天井のカメラなどの情報によってお客と、お客が棚から手に取った商品をリアルタイムに認識する。



必要な商品を取り終えたお客が商品を持ったまま決済エリアに立つとタッチパネルに商品と購入金額が表示され、お客はその表示内容を確認して支払いをするという流れとなる。決済は完全キャッシュレスとして、当初は交通系電子マネーのみに対応していたが、順次クレジットカード、その他電子マネーなどにも拡大した。




今回の店は店舗面積約60㎡(約18坪)、展開アイテム数は600の小型店で、入口は1カ所、決済エリアは2レーンある。人や商品の動きは、天井に設置された約50台のセンサーカメラと棚に設置された重量センサー、さらにカメラなどから発する赤外線センサーなど、さまざまに組み合わせたセンサーによって捉える。



なお、技術的にはさらに広く、多数のアイテムを取り扱う店でも展開可能。商品の動きについても、重量センサーだけでなく画像などで多角的に捉えているため、非常に軽い商品でも取り扱いが可能となっている。
また、当初は多数のお客が来店することが予想されるため、当面は同時に7~10人程度の運営としていくが、将来的には技術的にも改善を重ねながら人数制限をなくしていきたいという。
店舗運営は「無人」というわけではなく、必ず従業員を最低1人はバックヤードなどに配置する他、一括でお客への対応を行う遠隔コールセンターも設置している。同店では酒も販売するが、酒を購入する場合、決済の際に年齢認証が表示され、それをバックヤードで待機する従業員が確認する流れとなる。その確認をしないと出口のゲートが開かない仕組みになっている。
また、商品をもともとあった場所と違う場所に置いたり、店内で商品を手渡したりするとエラーとなってしまう。こうしたときに修正作業をするのも従業員の役割となる。

システムをサブスクリプションで外部に提供
今回の一連のシステムは全て株式会社TOUCH TO GOが自前で作り上げた。同社は今後、無人AI 決済システムを小売業や飲食業に対して省人化ソリューションとして提供していく意向で、今回のタッチトゥゴーで用いられている一連の技術も、イニシャルコストなしのサブスクリプションのサービスとして外部に提供。
今回の高輪ゲートウェイの店のパターンの場合、月額80万円程度を想定する。これは今後、株式会社TOUCH TO GOとしてもさらなるコストダウンをしていくという前提の価格設定。特にカメラやゲートなどハード面のコストが大きいため、カメラの台数を減らしていきたいという。
レジや接客などが不要であるため、通常よりも大幅に少ない数人程度の人件費相当で店舗運営が可能という強みを武器に、普及を図る。
「通常、このぐらいの店だとバックヤードで作業する人とレジを打つ人で3人ぐらい必要だが、それを1人にする。その削減した2人分の中から導入費用をお支払いいただくということでやっていく」(阿久津智紀・株式会社TOUCH TO GO社長)。ゴンドラの棚の重量センサーなどのセンサー類も、什器など既存の設備に後付けで設置可能だ。今回の高輪ゲートウェイ駅の店は、そのためのショールームの位置づけも担う。

無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」
所在地/JR高輪ゲートウェイ駅2階改札内
オープン日/2020 年3月23日
営業時間/6時~24時場 所:
店舗面積/約60㎡
取扱商品/600種類
決済方法/交通系IC(クレジットカード、その他電子マネーなどにも順次対応)