電子棚札とは?仕組みや種類、メリットなどを導入事例を交えて解説

2022.10.25

2021.04.13

デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する中で、電子棚札を導入する店舗が増加している。EC(電子商取引)やPOSシステムと連動して、店頭の価格表示がデジタル化する電子棚札は、手作業を減らすことによる生産性の向上などの多くのメリットが期待されている。

本記事では電子棚札とは何か。仕組み、またどのようなメリットがあるのかを解説し、実際の活用事例を紹介していく。

価格表示を自動化する電子棚札とは

電子棚札は、英名のElectric Shelf Labelの略称を使って「ESL」とも呼ばれるデジタル化した値札のことだ。スーパーマーケット(SM)や家電専門店、コンビニエンスストアなどで利用されている。

そもそも電子棚札とは、どのような種類があるのか、メリットは何かなどを解説する。

電子棚札の仕組み

電子棚札は、価格情報を表示する小型デバイスだ。パソコンのネットワークにより一斉に表示を変更できる。最近では技術が進歩し、表示部分がより見やすくなり、さらに手書き文字のような見やすい表示をすることもできるようになっている。

天井など高所に赤外線発信装置を埋め込み、パソコンからのデータが発信される。電子棚札には受光部が設置され、データを受信する。

従来の棚札は商品の価格を変更する際に、1つ1つを取り替える必要があった。電子棚札なら、パソコンで一斉に表示を変更することが可能だ。価格についてのデータはレジとも連携しているため、電子棚札を変更すればレジでも価格が変更される。

電子棚札の種類

電子棚札は以前は液晶モニターを利用していたが、現在では電子ペーパーを利用した種類が主流だ。電子ペーパーへの文字表示のシステムによって、電子棚札は次の3種類がある。

  • セグメント型:E Ink電子ペーパー技術を利用した最もシンプルなタイプ
  • モノクロアクティブマトリクス型:E Ink Aurora電子インクフィルムを利用してセグメント型よりも高解像度の電子ペーパーを利用したタイプ
  • カラーアクティブマトリクス型:さらに進化したE Ink Spectra 3色インクフィルムを利用したタイプ

セグメント型であれば、低予算で中規模の小売店も電子棚札を取り入れることが可能だ。

電子棚札の活用メリット

電子棚札を事業に取り入れるメリットは豊富だ。

値札付けの手間を省く

値札の貼り換えに時間がかかっていたが、電子棚札を利用すれば短時間で済む。間違いもほとんどないためトラブルが少ない上、従業員の負担も軽減される。従業員にはその他のサービスを充実してもらうことが可能。

電子棚札には値段以外に材質、保証期間などさまざまな情報を盛り込める。またスマホをかざすことで、キャンペーン情報や購入者の評価といったさらなる情報を表示可能な機種もある。お客が従業員を見つけられず、商品について質問できないために購入をやめてしまうといったケースも減らせる。

リアルタイムの価格変更

前述したとおり、ネットワークにより一斉に値段表示の変更が可能。レジとも連携しているため間違いが少なくなることもメリットの1つ。以前は、棚札を変更したあとレジに情報が行かず、お客との間にトラブルが発生したこともあった。

また、現状、まだ実際に運用しているケースは少ないが、「ダイナミックプライシング」の取り入れが可能。ダイナミックプライシングとは、需要の動きによって価格を変更していくシステムだ。例えば需要がない商品を安くすることでお客の購買意欲を刺激するといったように、商品が売れ残らないようにコントロールする方法だ。

お客への訴求力

最近では、文字が読みやすくなっていることも魅力となっている。商品に関する情報も記入できたりもする。多言語に対応した電子棚札もあり、そうしたものを活用することで外国人客も簡単に商品の情報を確認できるといったメリットもある。

電子棚札の導入事例

電子棚札を導入している企業を紹介する。どの企業も電子棚札を導入することで、さまざまな問題も解決しているが分かる。

ビックカメラ

ビックカメラでは、18年に開店した「ビックカメラセレクト京都四条河原町店」で初めて電子棚札のシステムを取り入れた。その後少しずつ電子棚札を利用した店舗数を増やしている。

19年8月28日にオープンしたビックカメラ イトーヨーカドーたまプラーザ店では、「アプリでGO!」という店舗コンセプトで、ビックカメラ公式アプリとの連携を強化した「アプリでタッチ」にて、表示価格を掲載。ECサイトとの価格同期だけではなく、5段階評価やレビュー件数なども表示するなど、作業効率だけではなく訴求力も高めている。

ノジマ

神奈川県横浜市に本社を置く家電専門店のノジマは、19年10月18日に、全184店舗に電子棚札の導入を完了している。ノジマが導入した電子棚札は、電子棚札の世界シェアトップの仏SES-imagotagとアライアンスを組むパナソニック システムソリューションズ製。

19年10月1日の消費税率10%への切り替えも電子棚札で一括更新することで、切り替えにかかる作業はほぼゼロだったという。

POSデータと連携した価格表示だけではなく、メーカー名、型番、商品スペックなども表示でき、更新もシステムから一括で変更が可能になっている。

主婦の店

三重県内でスーパーマーケット7店舗を運営する主婦の店では、06年から電子棚札を導入している。電子棚札を導入した背景には、作業効率の向上や、当時売場で価格を変更してもすぐにレジに反映されないためにトラブルが多かったことなどが挙げられる。

1店目で効果があったため順次導入を拡大し、最終的に全店舗に取り入れた。さまざまな効果があったが、本部のシステムともつなったことで、発注業務の負担も少なくなったという。

電子棚札の開発メーカー

電子棚札の需要の高まりに応じてメーカーの提案も積極化している。電子機器メーカー以外の進出があることも注目される。

イシダ

イシダは1893年に民間初のハカリメーカーとして創業した。現在は100カ国以上での取引がある。食品製造工場や小売業者、医薬品製造工場などあらゆる分野の産業に対応した機器を開発している。

電子ペーパータイプの3色表示とLED表示が可能な「ドットマトリックス電子棚札 H-ESL」など優れた視認性を持つ電子棚札を提供している。

パナソニックシステムソリューションズジャパン

パナソニックは、フランスのSES-imagotag社と提携し電子棚札を製造している。SES-imagotag社は小売業での世界シェア首位の電子棚札開発企業。

同社の製品は、細やかな点に注意が払われていることが特徴だ。温度ワイドモデルなら冷凍庫にも設置可能。赤黒白または黄黒白の2種類で顧客が視認性に優れたデザインも特徴だ。

凸版印刷

凸版印刷株式会社は1900年創業の印刷会社。現在は情報コミュニケーション事業分野など幅広い活動をしている。

凸版印刷株式会社は、15年に、薄く、軽く、かつ曲げることができるフレキシブル電子ペーパーを活用した「レール型電子棚札」を開発している。

レール型電子棚札は、棚の前面全体を表示エリアにできるため、表示面積を広くすることができ、配置や表現の自由度が高いのが特徴だ。

今後も需要増が予測される電子棚札

電子棚札は、リアルタイムに価格を表示したり、一括で表示を変更できるなどメリットも大きいが、「特価感やセール感を演出する」という点では、手書きの表示よりもやや訴求力が劣るなどの課題も残っている。

しかし、今後もさらなるDXの加速が予想される中で、電子棚札がもたらす効率化の恩恵は大きく、電子棚札の導入が増えることはあれど、減少していくことはないと予測される。

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