アフターデジタル時代に求められる「OMO」とは?先進事例を交えて解説

2021.04.16

更新:2021.04.19

デジタルツールが普及した現代、オンラインショッピングの利用が増加している。実店舗とオンラインで同じ商品を購入できることも多く、店頭で気になった商品はその場で購入しなくても、オンラインから注文が可能だったりする。店舗で実物を確認してから自宅でゆっくり検討することもできる。

お客はオフラインの実店舗とオンラインショップを往来し、自分に合った利用方法を選ぶ。お客の消費行動が変化したことで、企業側も改めてマーケティング施策を立てなければならなくなっている。そのためには、オフラインとオンラインを区別せずに、お客のデータを一元化することが重要になる。

購買行動の変化と同時に、デジタル技術の革新が進み、「データ化できない」オフライン行動がなくなりつつあるといえる。こういった、身の回りのリアルな行動がすべて、完全にデジタル(オンライン)に包含される世界をアフターデジタルなどと呼ぶ。

オンラインとオフラインの境目がなくなるアフターデジタルの時代に向けて、注目が集まっているマーケティング戦略が、OMOである。オンラインとオフラインを融合させたマーケティング施策で、顧客目線を徹底した考え方が特徴といえる。

本記事では、そんなOMOを、従来のマーケティング用語であるO2Oやオムニチャネルとの違いや、また国内外の先進的な取り組み事例と併せて解説していく。

オンラインとオフラインを融合させるOMOとは?

OMOは2017年にシノベーションベンチャーズの李開復(リ・カイフ)氏によって提唱された言葉だ。「Online Merges (with) Offline」の略称で、オンラインとオフラインの融合を意味している。顧客体験を高めるために展開するマーケティング施策だ。

スマホの普及により、顧客はオンラインショップとオフラインの実店舗を自由に使い分けながら利用している。これまで、企業はオフラインをベースにビジネスを組み立てるのが一般的であった。しかし、顧客目線で考えると、オンラインとオフライン双方のデータがつながっていない状況は不便である。

そこで、OMOによってオンラインとオフラインそれぞれの顧客データを1つにまとめてひも付けすることで、2つのチャネルをリンクする考え方が生まれた。顧客体験を重視し、お客が利用しやすいビジネスを構築する方法だ。

企業にとってもデータを活用できるのは大きなメリットといえるだろう。オフラインの消費行動をデータ化して個人IDとのひも付けが可能になる。データを活用すれば、適切なタイミングでお客に適したチャネルを提供できるため、よりよい顧客体験の実現が可能だ。

ユーザーデータの統合

OMOはモバイル決済が浸透している中国で特に進んでいるといわれている。中国でモバイル決済が浸透している背景には、偽札など現金の安全性に対する問題などが挙げられる。モバイル決済が一般化がすることで、買物以外にも、公共料金やタクシー料金の支払い、屋台で飲食もモバイルで決済が行われる。

オフラインの決済がモバイル上では行われることで、よりシームレスにオフラインとオンラインの購買情報を統合し、多様なデータを活用してマーケテイング活動を行えるようになる。

個別のIDにひも付いた顧客情報をベースにすることで、お客ごとの好みを把握したマーケティング施策の展開が可能であり、お客がオンラインとオフライン、どちらの消費行動をしても、データ統合によって一貫性が高い顧客体験を生み出せるようになる。

OMOと「O2O」「オムニチャネル」との違い

OMOは、「O2O」や「オムニチャネル」と混同されやすい。それぞれどんな概念があるのだろうか?

●O2Oはオンラインからオフラインへ誘導

O2Oとは、「Online to Offline(オンライン・ツー・オフライン)」の略称である。お客に対し、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やウェブサイトなどのオンラインからアプローチし、オフラインの実店舗へ誘導するマーケティング施策といえる。

OMOの考え方ではオンラインとオフライン双方が一体化している。O2Oの概念では、オンラインとオフラインのそれぞれを切り分け、2つの世界の往来を促していくという点に違いが見いだせる。

例えば、EC(電子商取引)サイトを訪問したお客に実店舗で利用できるクーポンを発行することで、デジタルの世界からリアルの世界へと消費行動を誘導する。スマホの普及が広まる前から取り組まれてきたマーケティング施策だ。

●オムニチャネルは販売チャネルを統合

オムニチャネルは、オンラインとオフラインを問わず、自社が持つ販売チャネルすべてを統合して販売促進につなげていく。主に小売業で取り入れられている販売戦略で、販売や流通チャネルを統合・連携させるのが特徴だ。

実店舗、ECサイト、カタログ、コールセンターなど、さまざま販売チャネルを統合・連携することで、会員情報を1つのIDにまとめられる。お客にとっても、どの販売チャネルを利用しても同じように商品を購入したり受け取ったりできるのがメリットだ。シームレスな顧客体験を提供することで、顧客満足度の向上が期待できる。

OMO施策を導入した小売企業の事例

●アリババ

世界的にもOMOが進んでいるといえるのが、中国のアリババが出資するスーパーマーケットの「盒馬鮮生(ファーマーションシェン)」だ。オンラインとオフラインの実店舗を融合したサービスを提供し、高い顧客体験を生み出している。

オフラインの実店舗では、店内に豊富な商品が実際に並んでいる。鮮魚が販売される生け簀や、食材をその場で調理してもらって食べられるイートインスペースなど、顧客を楽しませる工夫もあり、お客にとっても魅力的だ。

盒馬鮮生では、無人レジで商品のバーコードスキャンからキャッシュレス決済までスムーズにできる。購入履歴からお薦め商品の情報を入手できるのもメリットだ。他にも、動画レシピから必要な食材や調味料が購入できるなど、お客の消費行動を促進している。

また、注文した商品は店舗から3km以内まで、30分で配達するサービスを提供しているのも特徴だ。近隣のお客は実店舗で注文すれば、荷物を持たずに帰宅して自宅で商品を受け取れたりする。OMOにより、お客の選択肢を増やしている事例といえる。

●平安保険

中国の「平安保険(ピンアン)」からも紹介したいOMOの事例がある。およそ100種類もの生活に関するアプリの提供で成功した、保険商品のマーケティング施策がある。

例えば、「グッドドクター」は、地域の医療機関を探している人をサポートするアプリである。中国では医療情報の整備がされておらず、医療機関を探すことが難しい。医師のレベルにも差があるため、大学病院などの信頼が高い医療機関に患者が集中しやすくなっている。そのため、診察を受けるまで何日も待たなくてはならない。

「グッドドクター」は、アプリから医師にチャットで質問できる他、医療機関の予約にも対応している。さらに、平安のお客以外でもアプリを利用できるのも大きな特徴で、「治療をすぐに受けたい」というニーズを満たしている。アプリで医師と患者が行ったやり取りはデータベース化されるため、お客に適した営業活動に利用できるのもメリットだ。

●サントリー(TOUCH-AND-GO COFFEE)

日本では、サントリーが手がける東京都日本橋のコーヒーショップ「TOUCH-AND-GO COFFEE(タッチアンドゴー・コーヒー)」にOMOを導入した成功事例がある。多くのユーザーを持つLINEを取り入れた仕組みだ。

お客はLINEで注文した商品を、指定した時間にピックアップロッカーで受け取れる。5分単位で時間を選べるため、店頭で待つことなく自分の予定に合わせて行動できるのがメリットだ。注文するときは、ベースのドリンクや甘さ、フレーバーなど、好みに合わせてカスタマイズできる。

後ろの人のことを気にせず考えられるオンラインスタイルは、ゆっくり選びたいユーザーに対しても有効な施策といえるだろう。自分の名前やカスタム内容が印字されたファッショナブルなボトルで出てくるオリジナル感も支持が高い。キャッシュレスオーダー以上の良質な顧客体験を生み出している。

●ビームス

セレクトショップの「BEAMS(ビームス)」では、オフィシャルサイトとECサイトを別の部署で運営し、顧客データもそれぞれが管理していた。

お客の利便性や運営の効率を上げるため行ったのが、ECサイトのリニューアルとオフィシャルサイトの統合だ。顧客情報が一元管理され、購入履歴やファッションジャンルの好みを把握できるようになり、それぞれのお客に適したコミュニケーションを実現した。

OMOによって、お客は実店舗で気に入った商品をその場で即決せずに、後からオンラインで購入することも可能だ。オンラインでチェックしておいた商品を店舗で試着することもできるので、顧客体験が高まる。

また、従業員もスタイリングやフォトログをオンライン発信することで、オフライン以外でのお客とのコミュニケーションを増やしている。

OMOはアフターデジタル時代に適した施策

スマホの普及が高まり、デジタルツールの利用が中心となる時代になった。現在の10代~20代は、物心が付いたころから当たり前にスマホやパソコンがある環境で育ったネイティブ世代だ。

ショッピングにおいても、実店舗とオンラインショップを当たり前のように活用している。また、実店舗で確認した商品を、ネットで価格比較して最安値のショップで購入するという人も多いだろう。

オンラインとオフラインの境目を感じないアフターデジタル時代には、シームレスな顧客体験を提供するOMOが有効だ。小売業にこそ、消費者行動に適したマーケティング施策が求められている。

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