無印良品がSM企業との協業店で目指す、「食を通じた地域とのつながり」

2021.05.21

2021.07.08

「無印良品+QUEEN’S ISETAN」と銘打つことで、協業店であることを強調している

無印良品を展開する良品計画が、JR港南台駅前にある多層階の商業施設「港南台バーズ」(横浜市港南区)内に関東最大の売場面積となる無印良品港南台バーズをオープンした。4月22日に衣料品と生活雑貨を扱う1階を先行オープンし、このたび5月14日に生鮮食品を含む食品を取り扱う地下1階をグランドオープンした。

港南台バーズでは2020年8月まで髙島屋港南台店が営業していた。良品計画などに跡地への出店依頼があり、今回の出店となった。

同店は「食」の大型専門売場を備えた店舗で、大阪府堺市北区のイオンモール堺北花田、京都市山科区の京都山科に続く3店目。関東では初めてとなる。

同店の三品正洋店長は、「無印良品として、これまで日本の各地で食や地域と結び付いた大型店を出店してきた経験を生かし、この港南台の地で何ができるかを考えて、店舗で実現したい3つのコンセプトを作った」という。

コンセプトの1つ目は、「食の大型専門売場を設置すること」。今回は店内にスーパーマーケット(SM)企業のクイーンズ伊勢丹と鮮魚専門店の中島水産を誘致し、協業によって地下1階の食品売場にSMを併設。

「食に対する『おいしいってなんだ。』という問いに始まり、当店の『食べるひとにおかげさま。』『育てるひとにおかげさま。』というテーマにつながる」(三品店長)

生産者と消費者は食品を通じてつながっているが、現代では、両者が顔を合わせることはほとんどない。良品計画としては、衣食住の「くらし」の営みの中で、「食」は中心となるものであるにもかかわらず、都市生活者にとって食の生産現場である畑や農場、漁場が遠い存在となっていることに着目。

食べ物が「単に商品として消費されるもの」となっていて、多くの商品において、名前や価格のみが注目され、そこに込められた生産者たちの思いや数々の工夫といった情報は知らされていないのが現状と考えている。

無印良品 港南台バーズがこれまでの食の取り組みをさらに発展させることで、生産者の思いを伝えるだけでなく、お客の声を生産者に届けることで「人と人のつながり」や「交流」を生み出す場となることを目指すのにはそうした背景がある。

「どのような方が、どのように手をかけて工夫をし、野菜や魚、肉をつくっているのか。また、買物する人はどのような思いでそれを買って、料理して、食事をするのか。そんな思いを一つなぎで結び合わせる場所。それが無印良品港南台バーズでありたいと考えている」(三品店長)

店が拠点となって人と人をつなげる

無印良品港南台バーズは、「食と農」をテーマに、地産地消の取り組みを強化しているのが大きな特徴となっている。地下1階の売場入口付近にはロの字型のキッチンカウンターを設置。これは無印良品で初めての取り組みとなる。ここを「人と人とのつながり」や「交流」を生み出す場所としたい意向だ。

ここでメニュー提案をしながらクイーンズ伊勢丹の野菜や魚や肉を調理し、同時にそれを店内モニターやアプリ、インスタグラムでライブ配信することで、「さまざまな無印良品の食の世界観をお知りいただきたい」(三品店長)という。動画は毎日配信する。

流通の過程で見えにくくなる食材の背景と共に、素材を生かした調理方法、フードロス削減につながる保存方法、 最後まで食べ切るこつなど、生産者が持つ知恵を伝えることで地域と共生しながら生産者と食卓をつなげる他、健康をサポートするレシピ提案なども実施。

さらに何を買うか悩んでいる人の話を聞いたり、調理方法についても互いに教え合うなど、さまざまな会話が生まれる場になることを期待する。新型コロナウイルスの状況にもよるが、将来的には実際に調理したものを試食してもらうといったことも視野に入れている。「生産者とつながるということはもちろんあるが、さらにお客さまが商品なりサービスなりを目的にご来店いただくことで集える場所をつくりたい。プラットフォームになるように考えている」(三品店長)

「おいしい知恵の交差点」を目指すキッチンカウンター。「食」をテーマに管理栄養士や食育アドバイザー、生産者と地域の住人が知恵を交換しながら教え合い、学び合う空間としたいという。日常の食事を健康的に楽しめるように、管理栄養士や食育アドバイザーなどの専門家と連携し、無印良品の食品のアレンジレシピや地元の新鮮な食材を使ったオリジナルレシピを開発、提案する。ライブ配信やレシピ提供も行う
5月13日に実施された内覧会では、青果で取り扱う苅部農園の「葉つきにんじん」を使った「にんじんラペ」とにんじんの葉のチヂミ風の提案をデモンストレーション
イベント情報などは、店内の掲示板の他、アプリのMUJI passportからも確認できる。MUJI passportでは同店のフォロワーに対して毎日3~5回の情報を発信。例えば朝に入荷した商品を紹介したりする

クイーンズ伊勢丹は最大店舗で地元に根付いた売場づくり

クイーンズ伊勢丹を運営する三越伊勢丹のグループ会社のエムアイフードスタイルは、SMの他百貨店内の売場などを運営しているが、今回の出店でSMとしては18店体制となった。神奈川県では3店目で、鮮魚とインストアベーカリーが自営ではないが、約460坪の最大店舗となる。

クイーンズ伊勢丹としても、無印良品との協業によって、都市生活から遠い存在である生産者とお客とをつなぐ場を目指し、地域のメーカーや農家の商品を積極的に取り扱うなど地元に根付いた売場づくりを行う。

「今回、協業する上で『地元』という切り口がキーワードになっていたので、神奈川のものは各部門にこだわって入れている」(小松慎吾・エムアイフードスタイル営業統括本部営業政策・マーケティング室長)。随所に象徴的な商品を置いている。

例えば、青果では、「苅部農園」の朝採れ野菜や「永島農園」のシイタケ、「湘南きゅうり園」の多品種の珍しいキュウリなど地元神奈川県で育った野菜を販売。畜産でも地産地消をテーマに、 「かながわの名産100選」にも選ばれた「足柄牛」などを販売している。

キッチンカウンターで紹介された商品は実際に売場で買うことができる。内覧会当日にデモンストレーションされた苅部農園の「葉つきにんじん」などをコーナー展開
鮮魚は高島屋時代と同様、中島水産が担当している。専門店らしく、対面販売の要素を生かした売場づくり
中島水産では鮮魚の寿司も取り扱う。神奈川県を強調し、無印良品と歩調を合わせる
足柄牛はまだ供給量も少ないが、地域商材として前面に打ち出して訴求。惣菜の原料としての活用することで、地元を打ち出しながら差別化を図る
惣菜では畜産で取り扱う足柄牛を使用したハンバーグや弁当を展開するなど、地元の商品による横展開も打ち出す
インストアベーカリーでは、クイーンズ伊勢丹のテナントとして栃木県宇都宮市発でTHE STANDARD BAKERSを展開するCULTURE BANK STUDIOの新フォーマットとなる「NEIGHBORS BREAD by STANDARD BAKERS」を誘致

ドライグロサリーでは、「葉山珈琲パッパニーニョ」のコーヒー、「茶未来」のお茶、「岩井の胡麻油」のごま油、「豊国屋」の津久井在来大豆といった神奈川県に根付いた商品を取り揃えている。

酒でも神奈川県からサンクトガーレン、湘南ビール、鎌倉ビール、横浜ビールなどの「クラフトビール」、日本酒では泉橋酒造の「いづみ橋」、大矢孝酒造の「昇竜蓬莱」「残草蓬菜」などを販売。

日配では逗子の「栃木屋」の豆腐、揚げ、 伊勢原市の3酪農家のみの原乳を使用した「いせはら地ミルク」、菓子では神奈川銘菓の「ありあけ」などを品揃え。

チーズでは神奈川県愛甲郡愛川町のライネルチーズ工房の商品をコーナー化して販売
「ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD(ミツコシイセタンザ・フード)」をはじめPB商品の開発も進む
PBの売上高構成比は昨年度段階で17.5%まで高まっている。今期からは冷凍食品もラインアップに加わっているため、さらに伸びるとみる

クイーンズ伊勢丹のSKU数は、青果450、畜産300、惣菜190、インストアベーカリー40、グロサリーと菓子6500、水産は鮮魚の中島水産が入っているため、プライベートブランド(PB)を中心に一部素材をわずか取り扱っている程度。売上高構成比では、青果と畜産、水産で約50%を想定し、惣菜が10~15%、残りがグロサリー類といった形となっている。

今回の無印良品との協業に際し、小松室長は、「無印良品さんでお買物されて流れてくる方には、われわれが単独で出店したときにはあまりリーチできなかった(若年層の)お客さまもいらっしゃると思うので、非常に期待している」と期待を寄せる。

両者の売場は基本的に分かれているが、今後、催事ではそれぞれの商品を展開したり、関連販売なども行っている他、今後は無印良品の雑貨と食品を併せた売場もつくっていく予定。また、大きな特徴となっているのがギフト売場で、両社の商品を一括で展開している。無印良品の食品や非食品とクイーンズ伊勢丹の商品を詰め合わせたセットも可能。例えば無印良品の子ども服とクイーンズ伊勢丹の菓子の詰め合わせといった商品を企画している。

両者の商品が並ぶギフト売場

その他、店舗運営面ではレジについては、免許の関係で酒のみエムアイフードスタイルが担当するが、それ以外は全て良品計画が一括で担当することでワンストップショッピングとなっている。

アイテム数はクイーンズ伊勢丹が約7500で、無印良品も加工食品のみだが、フルラインアップを取り扱い、約7000アイテムをそろえる。他、中島水産やインストアベーカリーと合わせて、売場全体では合計1万7000強のアイテムを取り扱う。

SMとの協業をした売場ではあるが、無印良品としても食品のフルラインアップの品揃え
無印良品としても一大売場を形成している冷凍食品。「キンパ(韓国風のりまき)」(右手前2扉分)などヒット商品が生まれている。冷凍食品は無印良品とクイーンズ伊勢丹でそれぞれ売場を設けている

地域のお客の役に立ち、来店頻度を高めていく

無印良品港南台バーズのコンセプトの2つ目は、「地域のお客様の役に立つこと」。これは無印良品らいしい取り組みで、例えば環境に関する取り組みでは、「量り売り」を導入することでフードロス削減を目指したり、売場内で給水サービスを実施することでプラスチックごみの削減を目指すなどしている。

売場に2カ所、給水機を設置し、「飲料水をきっかけに、お客さまと一緒に環境や健康について考えて行く」(同社)。お客は店頭で水のボトルを購入するか、マイボトルを持参することで無料で利用できる。水道水を利用した給水サービス

また、同店は地域の改題解決を目指す店としていきたいとしている。無印良品が目指す「感じ良いくらしと社会」は、自分たちだけで実現できるものではなく、「食と農」「資源循環」「くらしのサポート」「まちの再生」の4分野で連携しながら、日々の活動で集めたくらしの困りごとを元に地域課題を発見し、一緒に解決する仕組みを育てることだという。まちづくりに貢献するだけでなく、店舗を拠点に地域に巻き込まれながら「生き生きと、安心して、住み続けられる街」を実現することを目指す。

行政との連携も必要と考え、5月12日に神奈川県横浜市と包括連携協定を締結。今後は、団地への移動販売や出張販売、住宅のリノベーションの相談なども視野に入れる。

東京有明(東京・江東)に続く2店目の取り組みとしてコーヒーやナッツやドライフルーツ、米などの「量り売り」を展開。約30種類の食品を20g以上から1g単位で買える。部屋を設け、気温22℃以下、湿度50%以下に設定。東京有明ではコーヒーが良く売れているといい、港南台でもコーヒーに期待がかかる。コーヒーは7種類提供。販売期限はコーヒーとドライフルーツが1週間、米は2週間
量り売りということでは、1g4円(総額)の菓子も展開
茶葉の量り売りは対面販売で商品を説明しながら販売

無印良品港南台バーズのコンセプトの3つ目は、「毎日お客様にご利用いただけること」。

食品を始めとした生活の基本となる日用品を、分かりやすく、買物しやすい売場と環境で用意することで、来店頻度を上げることを目指す。

通常の無印良品の店は月に2回程度の来店というが、SMと協業していることもあってより来店頻度を高めていきたいという。「無印良品だけの食品に、やはり生鮮が加わることによって、いままでいらっしゃっていなかったご来店いただけるという利便が一番ある。『毎日の無印』とうたっているので日用品を買っていただきたいと思っている。それをお使いいただき、無印良品の良さを知っていただく」(三品店長)

1階の衣料品、雑貨、小物、収納用品などの日用品についても、「通常の店舗よりも大きなPOPで商品のワケをご紹介し、広い売場で展開している」(三品店長)。

無印良品の場合、特に今回のような大型店は広域をターゲットとするが、今回はある程度広域も視野に入れつつ、メインの商圏としては半径3km圏内と捉えているという。

「堺北花田では一番多くて毎日いらっしゃる方もいらっしゃったので、この店でもじわじわと広げていきたい。週3、4回程度は来ていただきたい」(三品店長)

無印良品港南台バーズ概要

所在地/神奈川県横浜市港南区港南台3-1-3港南台バーズB1F-1F

オープン日/2021年5月14日(1階は4月22日に先行オープン)

営業時間/10時~20時

売場面積/約1548坪(約5117.87㎡)←増床前169坪(558.68㎡)

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