3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは?4PLとの違いなどと併せて解説

2022.10.26

2021.11.15

昨今の物流業界において、重要な業務形態となっている3PL(サードパーティー・ロジスティクス)。コスト削減や生産性の向上など、3PLには導入するさまざまな利点が存在し、着目する企業も増加している。

しかし、3PLという用語の意味が曖昧なまま、正しく理解できていない人も多いのではないだろうか。本記事では、3PLの意味やメリット、導入する代表的な企業例、4PLとの違いなど網羅的に解説していく。

ロジスティクス業務に課題を抱える企業は、ぜひ参考にしてほしい。

3PLとは?

3PLとは、サードパーティー・ロジスティクスを略した用語で、物流業務を外部委託する業務形態のことを言う。

ポイントとして挙げられるのは、調達物流・生産物流・販売物流・回収物流に至るまで、各物流領域を包括的に委託する点。荷主企業や運送企業に委託し、部分的に業務の最適化を行うのではなく、全面委託して業務全体の最適化を図ることが目的だ。

3PLの歴史

「3」PLと番号が付いているように、ロジスティクスは1PL・2PL・3PLと段階的に発展を遂げている。1PL(ファーストパーティー・ロジスティクス)は自社でロジスティクス業務を行うこと、2PL(セカンドパーティー・ロジスティクス)はロジスティクス業務の一部を外部委託することを意味する。

3PL自体は、1990年頃に欧米で浸透し始めた。日本でも物流業務の一部を外部委託する企業は存在したが、3PLで包括的に業務を委託するようになったのは1990年代後半だ。

3PLの市場規模は拡大傾向にあり、2005年~2014年にかけて、約2倍超の成長を見せている。物流業全体の市場規模は約24兆円だが、そのうち3PLの市場規模は約3兆円と、まだまだ拡大の余地がある。

また、Report Ocean社の調査結果によると、世界の3PL市場規模は2026年までに1兆3,379億1,000万ドルに達する見込み。今後も注目を集める業界と考えられるだろう。

3PLにはアセット型とノンアセット型の2種類がある

3PL事業者を細かく分類すると、アセット型とノンアセット型の2種類が存在する。

アセット型とは、自社で倉庫や輸送車両、物流拠点、情報システムなどの資産(アセット)を所有し、運用する業態を指す。全て自社でサービスの提供・人材確保を実施するため、ドライバーに対して安全教育や業務改善など、品質の向上につながる施策を行いやすい。また、自社の従業員が業務を担当するので、現場の状況を把握でき、荷主企業との意思疎通や信頼関係を築きやすいのもメリットと言えるだろう。

一方、ノンアセット型とは、アセット型で見られる倉庫や輸送手段などの物流資産を、自社で保有しない業態を指す。ノンアセット型は複数の企業を挟み、業務の外注を行うため、アセット型に比べると意思疎通や信頼関係を構築しにくい。しかし、自社の人材・経営資源に捕らわれず、顧客の要望に応じて最適な物流企業を選定できるので、さまざまなニーズにも柔軟に対応可能と言える。

3PLのメリット

物流業務の包括的な外注は、一見ハードルも高そうだが、導入するメリットは複数存在する。ここでは、3PL導入のメリットを解説していく。

固定費を変動費化して物流コストを削減できる

物流業務を自社で行うと、人材・設備・システム・輸送手段といった資産を保有する必要があり、人件費や倉庫費などさまざまな固定費が発生する。倉庫費に着目した場合、繁忙期は効率良く倉庫を活用可能だが、閑散期は空きができ、採算が合わない事態も起きてしまう。人件費に関しても、閑散期は余計なコストが発生するだけでなく、繁忙期には雇用管理の業務も煩雑化する。

そこで、3PLを導入すれば固定費を変動費化でき、閑散期の余剰な物流コストの削減を見込める。キャッシュフローを改善することで、従来発生していたコストを他のサービスや経営資源に充てられ、品質向上にもつなげられるだろう。

物流業専門のサービスを受けられる

物流業務を一貫して行うには、経験豊富な人材や先進的なシステム導入などが不可欠と言える。しかし、自社で運送手段の整備、荷物を保管する倉庫の確保、ソフトウェアの導入など全てを準備する場合、物流に関するノウハウや膨大な時間・資金が必要。

一方、3PL事業者に業務を一括で委託すれば、物流を熟知したプロのサービスを受けられる。品質面・安全面・納期面を安心して任せられ、顧客満足度の向上も期待できる。

なお、物流を委託できる3PL事業者が多いが、在庫管理サービスを請け負う事業者も存在する。3PL事業者を選定する際は、業務の請負範囲を必ずチェックしておこう。

人手不足の解消・労働環境を整備できる

物流業界では、深刻な人手不足が課題に挙げられている。国土交通省が発表した「トラック運送業の現状等について」によると、全職種の有効求人倍率は1.35倍であるのに対し、トラックドライバーは2.68倍となっており、人材が不足していると分かる。その背景には、低賃金・長時間労働などが挙げられるが、新型コロナウイルスによるECサイトの利用者増加も、業務の圧迫に拍車を掛けているだろう。

しかし、3PLの導入で人材の絶対数が増えるだけでなく、生産性も向上することにより、人手不足の解消につなげられる。適切な労務管理を行い、労務リスクを排除できるのも3PLの大きなメリットと考えられる。

3PLの代表的な企業

ここでは、3PLサービスを提供する代表的な企業3社を紹介していく。3PLの導入を検討している企業は、チェックしてみてほしい。

ロジスティクス業務の全てに精通した「日本通運」

「物流のデパート」と言われるほど多彩な事業を手掛け、総合物流事業者としてロジスティクス業務に精通しているのが、日本通運だ。日本通運は3PL事業を展開するにあたり、重要な要素であるソフトウェア・ハードウェア・ヒューマンウェアの全てをハイレベルで揃えているのが特徴。

まず、ソフトウェア面においては、在庫管理システムや倉庫管理システム、輸配送管理システムなど自社パッケージソフトを展開している。日本通運の長年のノウハウを結集したパッケージソフトを、顧客の実態に即して提案。荷主企業との情報共有やオペレーションの効率化を実現している。

ハードウェア面においては、陸・海・空の輸送モードに加え、国内最大規模の面積を誇る倉庫拠点を配置。それぞれ自社のアセットとして保有しているため、サービス内容が明確であり、他社と比較しやすいのも特徴だ。また、輸送モードは国内だけでなく国外も網羅し、グローバルな3PLを展開できる。

最後に、ヒューマンウェア面においては、日本通運のプロフェッショナル陣営にて、顧客の要望に応じる。食品・日用品・飲料をはじめ、自動車・原子力・金融・農林など計30業種の業界慣習を熟知した専任営業スタッフがおり、コスト分析から最適なロジスティクス環境の提案を行う。

ノウハウを蓄積した高いシステム構築力、多彩なロジスティクスインフラ、経験・知識が豊富な人材の3要素で、高度な3PLサービスを日本通運では受けられるだろう。

6つの部門で高品質なサービスを提供する「富士物流」

1975年の創業以来、メーカー物流として培った技術・ノウハウで3PLを展開しているのが、富士物流だ。富士物流は国内外問わず、最適な物流をワンストップで提供する。顧客それぞれのニーズや課題を抽出し、解決に結びつけるというサイクルを標準化することで、常に安定した高品質の3PLを実現している。

富士物流の3PLサービスは、主に下記6つの部門で構成されているのが特徴。

  • 物流センターサービス
  • ライフサイクルロジスティクスサービス
  • 国際一貫物流サービス
  • 海外物流サービス
  • 重量品・プラント輸送サービス
  • 物流技術サービス

例えば、物流センターサービスでは、物流拠点の提案から始まり、倉庫レイアウトの設計、倉庫管理システムのカスタマイズ設計、保管・輸送の品質とコストを最適化する包装仕様提案、日々の改善活動など、サプライチェーン全体の最適な物流を提案している。専門分野に特出した専任スタッフが、物流センターサービスを担っているため、高品質な物流を実現可能だ。

また、物流技術サービスでは、倉庫管理システム・RFIDといった情報システムや、顧客に合わせたオリジナルの包装技術を考案。サービスの品質、生産性の向上に欠かせないソリューションにより、顧客の物流課題の解決につなげていく。

富士物流は調達・生産・販売・アフターサービスまでのロジスティクスを、顧客の視点や事業環境の変化に合わせて最適化できるよう提案。価値のある物流パートナーを目指し、ロジスティクス業務全般を請け負っている。

ノンアセット型で3PLを展開する「セイノー情報サービス」

アセット型の3PLを展開する企業が多い中、ノンアセット型のサービスを提供しているのが、セイノー情報サービスだ。大きな特徴としては、スピーディーな物流センターの立ち上げが挙げられる。

セイノー情報サービスでは、3PL立ち上げのための独自方法論「MeLOS(メロス)」を体系化し、入荷から出荷に至るまでのセンター業務全般をハイクオリティ、かつローコストで運用。

また、西濃運輸物流センターをはじめ、多様な企業が利用する倉庫管理システム「SLIMS」を活用。90名のスタッフにより、80社の荷物を月に50万件以上管理する高生産性を実現している。さらに、下記運用管理サービスを提供しているのもポイント。

  • 輸配送進捗サービス
  • 在庫分析サービス
  • 物流コスト分析サービス

例えば、在庫分析サービスでは、商品ごとの出荷トレンド情報や、不良在庫・過剰在庫・期限切れ在庫といった異常在庫情報を、月・四半期に分けて提供。物流の運用改善に役立ち、生産性の向上も期待できるだろう。

3PLを進化させた4PLとは?

近年、3PLから進化した新たなビジネスモデルとして、4PLが浸透し始めている。4PLとは、ロジスティクス業務全般の外注を行う3PLに加え、ノウハウを提供して企画立案・コンサルティングも行う業務形態を言う。

3PLと4PLの大きな違いとしては、コスト削減に対する考え方である。3PLは顧客の物流コストが事業者の売上となるため、事業者側から物流コストの削減案は提案し辛くなっていた。しかし、4PLでは顧客の利益確保も含め、ロジスティクス業務に携わるので、物流コスト削減のためのプロデュースも行いやすいのが特徴だ。

4PLは3PL以上に、コスト削減やコアビジネスへの人員確保などを期待できるだけでなく、物流の事業規模を拡大したいときにも役立つ。3PLの導入により、事業や販路の拡大を行うことは可能だが、構造不況・余剰人員・過剰設備などリスクもある。

しかし、4PLでプロのコンサルティングを受けながら3PLを進めれば、事業拡大に伴うリスクを低減可能。物流業務を外部委託するに留まらず、事業規模の拡大やビジネスモデルの変革も見据えている企業は、4PLサービスも検討しておきたい。

3PLのまとめ

物流業界の深刻な人手不足や、新型コロナウイルスによるECサイトの利用率上昇なども影響し、物流サービスの業務効率化・人材不足解消は一層重要度が増していると考えられる。そのような中、物流業務全般を外部委託し、加えて物流業界に精通した専門家による3PLのサービスを受けることは、非常に効果的と言えるだろう。

また、物流業務のプロデュースを受けられる4PLも、忘れてはいけないサービスの1つ。自社の現状を精査し、物流の課題を解決できる3PL・4PLサービスを探してみてほしい。

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