DX認定制度とは?取得条件やDX認定事業者になるメリットなどを解説

2021.12.06

国が事業者に向けて、導入を推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)。昨今では、新型コロナウイルスの影響や多様化する消費者のニーズに対応するため、DXを推進する経営者は増加している。

大手企業を中心に推進されるDXであるが、世界と比較してみると、日本企業のDXは進んでいない。そこで、政府は新たな制度として、DX認定制度を施行した。

本記事では、DX認定制度の基本的な概要から、取得するメリット、取得フロー、DX認定事業者の事例を解説していく。

DX認定制度とは?

DX認定制度とは、日本のDXを促進していくため、政府が開始した認定制度である。2020年5月に施行された「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」では、「企業のデジタル面での経営改革」を目標に掲げているが、その一環としてDX認定制度が創設された。

DX認定制度は、国が策定した「企業経営における戦略的なシステムの利用の在り方」を踏まえ、優れたDX取り組みを行う事業者の申請に基付き、認定を行う。申請対象は、法人と個人事業主の全ての事業者。なお、DX認定事業者数は2021年11月30日時点で、大手企業を中心に209社となっている。

そもそもDXとは、デジタル技術を活用し、生活やビジネスモデルに変革をもたらすことを意味する用語。DXを実現できない場合、2025年以降に1年で最大12兆円の経済損失が生じる可能性を政府は示唆しており、昨今その重要性には一層注目が集まっている。企業成長・競争力強化を図るため、多くの経営者がDXの必要性を認識しているものの、既存システムの複雑化や現場サイドの抵抗も大きく、DXの導入は進んでいないのが実情だ。

しかし、政府からDX認定されれば、事業者はさまざまなメリットを受けられる。日本の経済低迷を防止するだけでなく、目まぐるしく変化するIT技術や消費者ニーズに応えられるよう、事業者のDX導入を後押ししている。

DX認定事業者になるメリットとは?

次に、DX認定事業者になることで得られるメリットを、具体的に解説していく。

企業価値の向上や認知度拡大に繋がる

DX認定を受けると、IPAのホームページで事業者名が公表される。加えて、DX認定ロゴマークを利用できるため、DX認定事業者であることをアピール可能だ。優良事業者であることを国から担保されるDX認定制度なので、認知度拡大だけでなく、信用性の向上も期待できる。

また、DXの推進は単なるデジタル化に留まらず、先にあるビジネスモデルの変革を目標としており、急激なIT社会の変化にも対応可能と言える。DXによる成長性・将来性も認められ、企業価値の向上を見込めるだろう。

DX銘柄への応募が可能となる

経済産業省は東京証券取引所と共同で、DX銘柄を実施している。DX銘柄とは、ビジネスモデルを抜本的に改革し、新たな成長を目指す企業に与えられるもので、年に1回選考が行われている。

DX銘柄に応募できるのは、東京証券取引所の上場企業のうち、DX認定を受けた事業者のみ。2021年のDX銘柄では、28の企業が選定された。

手本となるDXを実施する企業へ与えられるDX銘柄は、DX認定より広くアピール可能。DX認定を受けた際は、DX銘柄にも応募しておきたい。

企業経営やITの方向性を見直せる

DX認定の申請を行うにあたり、認定申請書と申請チェックシートの提出が必要となる。各書類では、情報処理システムの運用・管理指針に関して、下記のような取り組み実施状況を記載しなければならない。

  • 企業経営・情報処理技術活用の方向性
  • 企業経営・情報処理技術活用の具体的な方策
  • 戦略を効果的に進めるための体制の提示
  • 最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策
  • 戦略の達成状況に係る指標
  • 実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信
  • 事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握
  • サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定・実施

企業経営や情報処理技術の方向性、体制の見直しなどは、DXを実現する上で非常に重要となる。

一方で、ボストン コンサルティング グループが実施した「デジタルトランスフォーメーションに関するグローバル調査」によると、DX導入に成功した日本企業は14%止まり。多くの企業が、DX導入に失敗しているようだ。失敗の要因はさまざまだが、下記のような例が挙げられる。

  • DXへの理解が乏しい
  • DX人材の不足
  • DX目標設定の不明確さ

国や競合企業がDXを推進しているため、自社でも導入しようと方針を立てる経営者は少なくない。しかし、DXを成功させるためには、綿密な事前準備が必須。DX認定を目標とすることで、情報処理システムの運用・管理指針を見直し、DXに成功するための組織改革にも繋がると考えられるだろう。

支援措置を受けられる

DX推進の課題としては、予算不足も要因に挙げられている。デル・テクノロジーズの調査によると、DX成功の阻害要因が「予算およびリソース不足」と回答した企業は32.5%。

また、パーソルプロセス&テクノロジーの調査結果では、企業は1年間に平均4億8891万円のDX予算を確保しているというデータもある。DX推進はコスト面からも、容易ではないことが分かる。

しかし、DX認定を活用すれば、2種類の支援措置を受けられる。

DX投資促進税制

主務大臣が部門・拠点ごとではない、全社レベルのDX計画であることを認定した上で、DX実現に必要なクラウド技術のデジタル関連投資に対し、支援を行う制度。5%または3%の税額控除、もしくは特別償却30%の措置を受けられる。

クラウド技術に限定されている点には、注意したい。

日本政策金融公庫による融資

中小企業者に対し、設備投資などに必要な資金を、基準利率よりも低い利率で融資を受けられる。DXにかかるランニングコストや、さらなるビジネスモデルの変革などに充てられるだろう。

DX認定制度の取得方法とは?

DX認定の申請を行う事業者は、取得の流れをチェックしておこう。DX認定には申請期間が設けられておらず、通年で申請可能。また、申請手続きやDX認定時、DX認定維持に費用は発生しない。

申請ガイダンスのチェック

最初に、IPAのDX認定制度ページへ遷移し、申請のガイダンスをチェックする。制度の概要から準備、認定後のフローまで細かく記載されているため、確認しておこう。

DX認定に向けた社内プロセス

先述の通り、情報処理システムの運用・管理指針に関して、実施状況の報告が必要だが、必要なプロセスイメージがIPAで公開されている。ここでは、推奨社内プロセスを解説していく。

経営ビジョンの策定

まず、自社のビジネス・経営状況の整理を行い、デジタル技術がもたらす社会や競争環境への影響を分析する。分析結果を基に、経営ビジョンを検討。

そして、経営ビジョンを実現するためのビジネスモデルを策定し、取締役会で協議を行う。承認が得られれば、経営ビジョンを公表する。

DX戦略を策定する

DX戦略を策定する上では、下記点を検討する。

  • 経営ビジョンに基づいたビジネスモデルを実現するための戦略
  • 体制・組織案
  • 上記を実現するための人材育成・教育、外部組織との協業
  • ITシステム・デジタル技術活用環境を整備するための方策
  • 上記の具体的な推進活動計画

DX戦略も取締役会で承認を取り、公表する。

DX戦略推進管理体制の策定

DX戦略の達成度を可視化するため、KPIを設定し、PDCAに役立てる。また、円滑にDX戦略を進めるため、推進状況を管理できる仕組みを検討し、公表する。

策定したDX戦略推進の情報発信・自己分析・報告

経営者は、DX戦略推進状況の情報発信を行う。加えて、DX推進指標による自己分析を行い、セキュリティ監査報告書に結果をまとめる。

経営ビジョンの策定からDX推進体制の整備、対外的な公表まで、DX認定申請前にはさまざまな工程が必要となる。しかし、ITを活用したビジネスモデルの抜本的な改革に、大きく寄与する社内プロセスと言えるだろう。

申請書の作成

社内でDX戦略を策定した後は、IPAのDX認定制度ページで公開されている認定申請書(Wordファイル)と申請チェックシート(Excelファイル)をダウンロード。デジタルガバナンス・コードに準拠しているか、各設問に回答していく。DX推進に関する補足資料があれば、後ほどあわせて提出する。

DX推進ポータルから必要ファイルをアップロードして申請

準備した認定申請書一式は、DX推進ポータルから提出する仕組み。ポータルへのログインには「gBizID」が必要なため、取得していない場合はgBizIDサイトから発行申請する。

gBizIDを準備後、DX推進ポータルへアクセスしてログイン。DX認定制度の項目があるため、申請の作成に進む。必要に応じて連絡事項を入力し、ファイルをアップロードして申請は完了だ。

DX認定の結果通知

申請結果は書類を受理後、IPAもしくは経済産業省の執務が行われない休日を除き、約60日後にメールで届く。DX認定の有効期間としては、2年間となっている。

なお、DX不認定の場合も、不認定理由と不認定決定日を記載したメールが届く。

DX認定事業者の例

ここでは、DX認定事業者の取り組み事例を紹介する。DX認定を目標とする事業者や、DX推進を図る事業者は、参考にしてほしい。

ベネッセホールディングス

ベネッセホールディングスでは、2021年春にDX推進を図るグループ内組織体制「デジタルイノベーションパートナーズ」を構築した。「事業フェイズに合わせたDX推進」と「組織のDX能力向上」の2つを軸に、DXを進めている。

「事業フェイズに合わせたDX推進」では、コンサル部門から各事業へ、高スキルデジタル人材を派遣。現場社員と一体となり、各事業ごとの重点実行施策の達成を目指す。

「組織のDX能力向上」では、システム基盤・組織改革・人材育成を実施。サービスの提供価値を高め、ベネッセの企業理念である「よく生きる」を実現していく。また、ベネッセグループは直近3ヶ年で約200名のデジタル人材を採用したが、今後3年で500名の採用を新たに計画しており、DX推進に余年が無い。

DXの最新取り組み事例としては、AIによる個人別学習が挙げられる。約200万会員に及ぶ、進研ゼミの膨大な学習履歴データと、50年以上の指導ノウハウを融合。生徒別に最適な学びを提供可能とし、学習効率の向上に努めた。

さらに、オンライン学習プラットフォームの「Udemy」上に公開されている世界の約13万講座から、日本利用者向けの約5,000講座をサブスクで提供。コロナ特需も影響し、200社以上、6万人以上がサービスを利用している。

ベネッセホールディングスは、今後直面する教育・介護の課題を解決すべく、デジタル技術で社会・顧客の期待に応えられるサービスを提供していく構えだ。

ディップ

「バイトル」や「はたらこねっと」などの求人広告サイトを提供するディップでは、2019年よりDX事業本部を立ち上げ、取り組みを促進している。ディップのDXサービスの1つとして挙げられるのが、コボットだ。

コボットはRPAプラットフォームとして、面接・人材派遣・不動産関連業務などを自動化。本来の業務を効率的に進められるよう、顧客の支援を行っている。実績も非常に豊富であり、エムズホーム株式会社では「不動産コボットfor賃貸物件入力」を導入することで、約1/5の作業時間削減に成功した。本業に注力でき、CXの向上も見込めるだろう。

また、社内でDXコンテストを開催しているのも特徴。応募内容から執行役員が「お客様を巻き込んだり、全社や事業本部を越えた影響を与えていること」「普段の業務範囲を越えた取り組みであること」などを基準に選考。現場社員も主体性を持ってDXに取り組み、経営層だけに留まらないDX推進を実現している。

アスクル

アスクルは長期的に取り組む重要課題として、DXによるサービス変革を掲げている。ビッグデータとAIを活用し、CXを向上させるマーケティング戦略や商品戦略の促進、最新テクノロジーによるEコマースサイトの刷新など、中長期的な成長の足懸かりとなるDX実現を目指す。

DX事例としては、配送管理システム「とらっくる」を紹介する。昨今のEC市場の拡大により、煩雑化した配送サービスを柔軟的に対応、かつ可視化するため、自社で活用していた配送管理システムをオープン化した。

「とらっくる」では、専用のスマホ端末を利用することで、配送ルート計画作成、日時変更、不在再配達依頼の情報確認など、配送に関する多様な業務を柔軟に行える。配送業者の業務負担軽減に繋げるだけでなく、配送の最適化で顧客満足度の向上も見込めるDXと言えるだろう。

兼松エレクトロニクス

兼松エレクトロニクスでは、2020年3月期を初年度とする中期経営計画にて、ICT環境の高度化・複雑化へ対応すべく、DX推進を設定した。コロナ禍においては、顧客のリモート環境整備を目的に、仮想デスクトップ環境の構築やサーバー攻撃対策などのソリューションも展開。

具体的なDX推進ソリューションとしては、システムマイグレーションのサービスが挙げられる。長年利用されるシステムには、保守切れやブラックボックス化、技術要員不足など、さまざまな課題が存在する。

しかし、兼松エレクトロニクスのサービスでは、ツールに依存しない開発手法により、柔軟に移行可能。また、オープンシステムやレガシーシステムなど、顧客の環境に応じた提案も可能としている。

過剰なカスタマイズを施したシステムの利用も、DX推進が滞る要因であるが、高い移行性で既存システムからのリプレイスも実施しやすいと言える。

DX認定制度のまとめ

DX認定には、企業価値の向上や税制・融資の支援措置など、事業者にとって利点は多い。認定を受けるフローとしては、申請書作成のプロセスがポイントとなるが、仮に認定されなかった場合でも、経営ビジョンや組織体制の見直しなどに繋がるのは大きなメリットだ。

現在認定されている約200のDX認定事業者は、IPAのホームページから確認可能。同業態の企業が、どのようなDX取り組みを行っているか、参考にしてみてはいかがだろうか。

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