AR(拡張現実)とVR(仮想現実)の違いを最新の活用事例を交えて解説

2022.10.28

2022.01.25

近年、様々な業界で「AR (拡張現実)」もしくは「VR (仮想現実)」の技術を活用した取り組みを行う企業が増えている。

今後もAR・VRは、様々なビジネスシーンで活用され、さらに大きく広がっていくだろう。しかしその一方で、「AR」「VR」という言葉こそ聞いたことはあるものの、それぞれの違いについて、正しく理解できている人は少ないのではないだろうか。

本記事ではでは、ARとVRの違いについて、それぞれの意味や概要を踏まえながら詳しく解説する。併せて、AR・VR技術の活用に積極的な姿勢を見せている企業の最新事例も紹介していく。

AR(拡張現実)とVR (仮想現実)の違いとは?

ARとVRは意味が混同されがちだが、両者にはどのような違いがあるのだろうか。ARとVRのそれぞれの意味や概要について、詳しく解説する。

AR(拡張現実)とは?

ARとは「Augmented Reality」の略で、「拡張現実」と訳される。スマートフォンや専用のARグラスを通じて現実世界を見ると、現実世界の映像に実在しないお店やその情報、動画、画像、キャラクターなどといった、デジタルコンテンツが追加表示される仕組みだ。

ARは、スマートフォンの位置情報技術と組み合わせて活用されるケースが多い。

例えば、2016年にリリースされた「Pokémon GO(ポケモン ゴー)」が、その代表例として挙げられる。スマートフォンのカメラをかざすと、本来は存在しないポケモンが目の前に映し出され、あたかも現実世界にポケモンが現れたかのような感覚が得られるのが特徴だ。

VR(仮想現実)とは?

VRとは「Virtual Reality」の略で、「仮想現実」と訳される。ユーザーは、専用のゴーグルを装着することにより、コンピューターが作り出した仮想空間を楽しむことができる。

また、ゴーグルにはセンサーが搭載されており、利用者の動きに合わせて映像が追従されるため、あたかもその世界に入り込んでいるような没入感を味わえるのが特徴だ。

また近年では、ホログラムによってVR空間を映し出したり、360度プロジェクターで仮想世界を再現するなどして、VRゴーグルをつけずとも、没入感のある仮想世界体験ができるようになってきている。

VRは近年、あらゆるビジネスシーンで活用されている。

例えば、不動産業界では、物件の見学時に活用されるケースが目立つ。VR技術が活用されることにより、ユーザーは、物件のある場所に行かなくても、自分の部屋から物件を自由に見渡すことができるのだ。

ARとVRの違いとは?

ARとVRの違いとして、現実世界との関係性が挙げられる。

ARはあくまでも現実世界をベースとし、そこにゲームのキャラクターや動画、画像をはじめとするコンテンツを追加させるのがARだ。

対してVRは、現実世界と同じような体験ができるが、ユーザーが見ている映像の全ては仮想技術によって再現された映像である。

このように、ARとVRとでは、現実世界との関係性に明確な違いがあるのだ。

AR(拡張現実)の活用事例

ここからは、ARの活用事例として、以下3つの事例を紹介する。

  1. 小田急電鉄×NTTドコモ
  2. 横浜ランドマークタワー
  3. Pokémon GO×ファミリーマート

小田急電鉄×NTTドコモ

XRシティSHINJUKU

小田急電鉄株式会社と、株式会社NTTドコモは、2021年6月21日から同年8月8日にかけて、まちづくりプロジェクト「XR シティ SHINJUKU」を実施。

小田急電鉄とドコモの2社は、2020年11月に、XRを用いた新宿の新たなまちづくりに関する協業契約を締結しており、今回はその第2弾として新たなプロジェクトが行われた。

第2弾となった今回のXR シティ SHINJUKUでは、株式会社SCRAP監修の「AR謎解き」が開催。SCRAPは2008年に設立された会社で、リアル脱出ゲームの作成をしたり、謎解き本の出版をしたりするなど、謎イベントの制作会社として世間に知られている。

「AR謎解き」は、ユーザー自身のスマートフォンに、無料の専用アプリ「XRシティ」をダウンロードすることで楽しむことができる。

小田急百貨店や新宿中央公園をはじめ、新宿駅周辺に全6箇所の体験スポットが設けられており、各スポットに問題が5問用意されている。最後の5問目は、他の謎をすべて解くことにより、挑戦が可能となる仕組みだ。

また、「XRシティ」アプリでは謎解き以外にも、現実空間にイラストを重ね合わせて描くことができる「アート&空間らくがき」や、アニメなどのキャラクターが3Dで出現する「キャラ」体験も用意されている。

小田急電鉄とドコモは「XRシティ」の提供を通じて、普段の買い物などが、より魅力的になる、XRサービスの受容性を検証する姿勢を表明している。

横浜ランドマークタワー

横浜ランドマークタワー

2021年4月9日から2021年4月18日の10日間にわたり、横浜ランドマークタワーの69階展望フロアにて、AR観光体験イベント「RESHAPE YOUR VIEW ~ 展望台の風景があなただけの『地図』になる ~」が実施された。

当イベントは、株式会社NTTドコモ・三菱地所株式会社・三菱地所プロパティマネジメント株式会社の3社が実施しているイベントである。

また、RESHAPE YOUR VIEWで展示される、ARコンテンツの体験設計およびアプリケーション開発を行う際には、株式会社MESONも携わった。

MESONは、世界最大のAR/VRアワード「Auggie Award」において、日本企業では初となるソフトウェアの受賞を2020年に果たすなど、ARやVR技術の活用に優れた企業である。

RESHAPE YOUR VIEWは、専用のデバイス「Magic Leap 1」を装着することにより、ユーザーの視界に、横浜赤レンガ倉庫や横浜中華街など、みなとみらいを代表する観光スポットが3Dモデルとなって現れる。

横浜ランドマークタワー

さらに、ユーザーが展望台から見つけた観光スポットは、目の前に引き寄せることも可能。これにより、様々な観光スポットの魅力に触れることができたり、家族や友人と一緒に見て楽しむことができたりするなど、今までにない新しい展望台の楽しみ方を実現できる。

また、体験の最後には、ユーザーが選択した観光スポットが1本の観光ルートとなる。これにより、タイトルの名前にも入っている「あなただけの地図」が実現される仕組みだ。

今回「RESHAPE YOUR VIEW」のイベントで、設計および開発に携わったMESONは、当イベントを起点に、AR技術の社会実装を進めていく姿勢を示している。さらに、AR技術の社会実装を進めるとともに、体験者に新しい体験を提供するための検討も行っていくという。

Pokémon GO×ファミリーマート 

Pokémon GO×ファミリーマート

株式会社ファミリーマート・Niantic, Inc.・株式会社ポケモンの3社は、スマートフォン向けアプリ「Pokémon GO(ポケモン ゴー)」におけるパートナーシップの契約を、2021年11月2日に締結した。

Pokémon GOは先程も述べたが、AR技術とスマートフォンの位置情報を活用した人気ゲームアプリである。その人気ぶりは凄まじく、日本を含め世界で10億以上ダウンロードされるほどだ。

今回のパートナーシップ締結に伴い、ゲーム内に「ポケストップ」として、全国のファミリーマート、約16,400店舗がゲーム内に登場するようになった。

ポケストップとは、プレイヤーがポケモンを捕まえるための「モンスターボール」や、ポケモンのHPを回復する「キズぐすり」をはじめ、ゲームに欠かせないアイテムを入手できる場所のことをいう。

ファミリーマートは、今後もPokémon GOとのコラボを進めるとともに、Pokémon GO以外での来店客数を増やすための施策も併せて行う姿勢を表明している。

VR(仮想現実)の活用事例

ここからは、VRの活用事例として、以下3つの事例を紹介する。

  1. 伊藤忠インタラクティブ
  2. 富士急ハイランド
  3. 三越伊勢丹ホールディングス

伊藤忠インタラクティブ

伊藤忠インタラクティブ株式会社と、フェンリル株式会社の2社は、2021年2月、低コストで簡単に、自由なVR空間を構築できる「VR VENUE」をリリースした。

VR VENUEのサービスリリースを受け、伊藤忠商事株式会社は、2022年度新卒内定者向けにワークショップの開催を発表。

ワークショップでは、伊藤忠商事株式会社の2022年度新卒内定者が、VRを活用した「次世代の採用イベント」を手掛ける。伊藤忠商事の新卒採用担当者によると、内定者がこのような「企画」を行うのは初の試みだという。

コロナ禍での就職活動を経験した、2022年度新卒内定者ならではの目線や発想に大きな期待を寄せている。

VRを活用したイベントだけに、プロジェクトを進める際も当然、VRを活用した上で行う。

例えば、メンバー同士でコミュニケーションを図る際には、ディスカッション用に設けられた仮想のVR空間内において、メンバーそれぞれがアバターと扮し、コミュニケーションを図っている。

伊藤忠商事は、今回のVRイベントを通じて、今後の採用活動における選択肢の幅を広げていきたい考えだ。

富士急ハイランド

富士急ハイランド内の「NARUTO×BORUTO 富士 木ノ葉隠れの里」において、「NARUTO-ナルト-」の世界観を楽しめるVRアトラクション「幻影劇場」が2021年4月29日にオープンした。

NARUTO-ナルト-は、忍者をテーマとしたバトルアクションが楽しめる人気のアニメで、日本での原作コミック累計発行部数は、1億5300万超えだ。その人気ぶりは、日本のみならず、国外でもコミック累計発行部数、9700万超えを記録するなど、海外でも高い人気を博している。

幻影劇場では、ナルトのストーリー内で人気のバトルシーンが再現された大迫力のVR映像を楽しむことができる。

また、同アトラクションの体験者は、ナルトの世界に入り込んでしまったかのような「没入感」を味わえるのが特徴。

上下左右360度の広がり臨場感のある映像に加え、映像や音楽に合わせて座席が動く仕組みが、体験者に没入感をもたらすのだ。

なお、幻影劇場で流れるVR映像は中国・上海の「NARUTO WORLD」内の人気アトラクション「バーチャル・イリュージョン」で上映されているものである。国内で、この映像を楽しめるのは、富士急ハイランドのみとなっている。

三越伊勢丹ホールディングス

REV WORLDS (レヴ ワールズ)

三越伊勢丹ホールディングスは、VRを活用したスマートフォン向けアプリ「REV WORLDS (レヴ ワールズ)」の提供を、2021年3月10日より開始した。

ユーザーは自身のスマートフォンから24時間いつでも、仮想都市へのアクセスが可能。アプリ内の「仮想伊勢丹新宿店」で気に入った商品を見つけたら、実際に購入することができる。アプリ上で操作をすることにより、三越伊勢丹オンラインストアへ遷移する仕組みとなっているからだ。

また、買い物のみならず、チャット機能を利用することにより、仮想空間内で出会ったユーザーともコミュニケーションを図れる点も、REV WORLDSアプリの特徴である。

REV WORLDSアプリの提供が始まった3月10日時点では、食品(地下1階)・化粧品(1階)の2カテゴリー・2フロア制となっているが、取り扱うカテゴリー数は、順次増やして行く予定だ。

さらに、三越伊勢丹ホールディングスは、カテゴリー数の増加だけに留まらず、今後は他社コンテンツとのコラボも実現させ、VRプラットフォームの拡大に挑戦する姿勢も表明している。

AR(拡張現実)とVR (仮想現実)の違いまとめ

今回は「AR」「VR」について、それぞれの意味や概要、違い、さらにはAR・VR技術の活用に、積極的な姿勢を見せている企業の事例についても紹介した。

各企業の取り組みから、いかにしてARやVRが我々の生活に活用され、どのような影響を与えているのか、理解していただけたのではないだろうか。

今後も更なるAR・VRの発展が予測されているだけに、新たな体験やサービスの誕生を期待せずにはいられない。

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