AIカメラの活用で店舗運営を効率化|最新事例を交えて徹底解説

2022.10.28

2021.01.15

AI(人工知能)カメラに多くの人が抱くイメージは、防犯や監視対策のシーンなどであろうか? だがいま、AIカメラはさまざまな業種で利用され、さらに進化を遂げている。広視野角・高精細と高い画像処理技術で、さまざまな環境に対応できるまでになっている。

そして、進化したAIカメラを活用すれば、商業施設やリアル店舗にはさまざまなメリットが生じてくるのだ。それでは、なぜリアル店舗にAIカメラは有益なのか、ここではその大きな利点を実例も交えて分かりやすく解説していく。

AIカメラって何

防犯対策をはじめ、さまざまなシーンで活用されているAIカメラの一番身近な例はスマートフォンである。いまでは、スマホのカメラを知らない、使ったことがないという方は少ないだろう。それでは、AIカメラとは何であろうか?

AIカメラとは、AIアルゴリズムを搭載した高性能なカメラのことを指す。アルゴリズムとは数学的な計算方法や手順のことを差す。分かりやすくいえばコンピューターが使う計算手順のことである。コンピューターが、人間には不可能な膨大な計算やデータ処理を瞬時に行えるのは、アルゴリズムを使っているからといえる。

AIとは、人間が脳内で行っていることをコンピューターが再現したプログラム・システムのこと。自ら学び学習しながら賢くなるコンピューターのことであり、そのことを「機械学習」と呼ぶ。コンピューターは、データ処理や分析を行う過程で機械学習をしているのだ。その結果、パターンや特徴を発見できる。

AIアルゴリズムを搭載したAIカメラが、顔認証や車番認識、ヒト・モノ行動認識などができる理由がここにある。一般的なカメラの場合、監視を目的として使われているケースが多い。だが、AIカメラは、防犯対策だけではなく安全管理やマーケティング、混雑状況の把握など、さまざまな目的での活用が可能である。

AIカメラができること

現在、AIカメラは街のさまざまな場所に導入され、われわれの安全な暮らしに寄与しているが、それ以外にもまだまだ可能性を秘めている。

犯罪の未然防止

人の目が届かない時間帯や場所で行われる違法投棄や万引き、窃盗などの犯罪は、AIカメラの画像解析で犯人の特定や人物認証による検知が可能である。

また、不審者の動きや侵入方法などをAIカメラに機械学習させれば、犯罪の予兆も検知できる。万引きなどの犯罪行為は、小売業界にとっても大きな脅威であり、これらが未然に防げるのは大きなメリットだ。

行方不明者や迷子の捜索・犯人捜索と逮捕

大規模な商業施設やレジャー施設では迷子のアナウンスがよく聞かれる。また近年では、認知症による行方不明者も増加傾向にあるが、これらの問題もAIカメラが撮影した映像で捜索や発見がしやすくなる。

同様の理由で、AIカメラを導入すれば指名手配犯を検知し、警察に通報する仕組みをつくることも可能だ。結果、問題解決や犯人逮捕の大幅なスピードアップが望める

鉄道事故防止

鉄道のホームの安全を見守る際、人の目だけでラッシュ時などの混乱をすべて監視するのは不可能に近く、コストもかさむ。そのため近年は、鉄道事故を未然に防止する取り組みにもAIカメラが導入されている。

ヒト・モノ行動認識のAIアルゴリズムを搭載したAIカメラを活用することで、ホームへの転落事故や接触事故などを未然に防ぐのだ。

小売の現場でAIカメラができること

AIにできることは数多いが、特に「データをもとにした分析」「パターン化した行動」を得意としている。音や声を聴き分ける音声解析や人間との会話、与えられた情報を基に記事を書くなどの自然言語処理が得意分野だ。

AIにできるのは、大きく分けて「認知」「通知」「提案」「環境認知」「予測」「事前対処と予防」「自動化」の7つである。例えば、百貨店やスーパーマーケットなどの小売業でAIを導入した場合、過去の売上げデータから今後の売れ筋となる商品を推測するのは「予測」の分野である。

駐車場管理

お客の来場時の入庫・出庫だけではなく、納品業者などの車ナンバーを検知し、記録をする。また、必要であれば顔認証による納品者の判定や納品時刻の管理も可能だ。

来場者人数カウントや不審者の来店検知

商業施設や店舗の出入口にAIカメラを設置し、来店人数のカウントや顔認証を行い、万引きなどの前科がある不審者の検知が可能である。事前に、不審者の顔データを登録してカメラ情報を共有しておくことで、別店舗でも不審者を検知できる。

混雑状況検知

AIカメラを設置することで、来店者の人数や属性を検知する。検知したデータから来店時刻や天候も考慮し、効果的な広告配布日程やイベントの開催日程などが割り出せる。

従業員の出退勤管理

入退時に顔を撮影すれば、従業員の退勤管理が可能である。他には、出入り業者の顔データを事前に入館登録することで、セキュリティエリアなどへの不正侵入を検知できる。

デジタルサイネージ表示

AIカメラの映像を解析したデータを活用して、リアルタイムで店舗内外にあるサイネージへ店舗状況やタイムセールなどの案内表示ができる。

危険物・忘れ物検知

ヒト・モノ行動認識で忘れ物や危険物の自動検知ができ、置き去りを検知したら、画面にポップアップして注意喚起する、または警備員に通知することで、早急な対応が可能である。メインエリアだけでなく、バックヤードや人通りが少ないエリアを検知対象とすれば巡回の省力化が図れる。

商品棚欠品検知

AIアルゴリズムでパターンマッチングが解析できるため、商品などの残量確認が可能になる。陳列された商品などに欠品が出た場合、責任者や担当従業員のスマホと連動させメール通知ができる。その際、担当者はメッセージをクリックして現場の様子を映像で確認できるため、チャンスロスを未然に防げる。

AIカメラの活用事例

AIカメラを使った店舗分析では、商品の購入者・未購入者の属性情報や人材リソースを集中すべき時間帯などの情報が得られる。また、施策効果の高いキャンペーンや最適な導線設計に関するヒントなども取得可能だ。その結果、さまざまなデータを組み合わせることであらゆる情報が入手できる。

JR九州ハウステンボスホテル

JR九州ハウステンボスホテルは、テーマパーク・ハウステンボスに隣接するホテルも経営している。同ホテルの朝食会場「カメリア」は、宿泊客が集中する時間帯には客席が満席となり、案内できない宿泊客を店外で待たせる状況にあった。

AIカメラ導入のきっかけは、宿泊客に快適な時間を提供するためにもホテルの朝食会場の混雑緩和が必要かつ急務だったためである。導入の結果、宿泊客はホテルの部屋にいても、分析した朝食会場の混雑状況を朝食券のバーコードを読み取るだけで確認できる。宿泊客が自分の携帯端末から朝食会場の状況を確認できる手軽さが採用のポイントとなった。

東急スポーツオアシス

フィットネス関連事業の企画や運営を手掛ける東急スポーツオアシスは各店舗にデジタルサイネージシステムを導入している。

導入の背景には、店舗における紙媒体の広告配信に関して調整などさまざまな時間がかかり、広告を十分に掲載できる時間がないという課題があった。掲載には期間があり、広告効果を出すにはタイムリーな配信が求められていたことが導入のきっかけである。

デジタルサイネージの導入により、一元配信が可能になり、掲載期間の各店舗伝達や広告の発送業務なども必要ないため、本部と店舗双方の業務負担が削減された。また、広告貼り替え業務がなくなったことで、店舗従業員の業務の削減にもつながった。

AIカメラ導入で生まれるメリット

AIカメラ導入で生まれるメリットは多い。モニタリングによっていままで見えなかった来店客の行動履歴を可視化でき、売場などへの立ち寄り頻度なども分かるため、例えばイベントなど効果も計測できるようになる。

また、十字路の観測では来店客の流れや通路内で棚のどちら側に寄って歩いているかといったことが分かり、商品棚などのレイアウトに生かすことも可能だ。

AIカメラを導入することで、AIカメラがアシスト役となり働く人の負担が軽減できることは前述のとおりである。小売業の実店舗のオペレーションコストが抑えられ、「売れる棚マネジメント」ができるのは大きなメリットであるといえる。

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