無人レジとは?導入のメリット・デメリットを最新事例を交えて解説

2021.08.24

小売業界を中心に注目を集めている無人レジは、今やスーパーやコンビニなど多くの店舗で見かけるようになった。人件費の削減や業務の効率化を図れる無人レジだが、コロナ禍により導入を検討している店舗もあるだろう。

無人レジを利用するメリットは一見多いように感じるが、実際に導入を決めるとなると、売上面や運用面などに悪い影響を及ぼさないか、不安な店舗もあるはず。そこで、本記事では無人レジを活用するメリットだけでなく、デメリットを、導入事例と併せて解説していく。

無人レジとは?

無人レジとは、有人レジで従業員が行う商品の読み取り・精算・袋詰めといった一連の作業を、消費者が行えるように仕組み化されたレジである。商品の読み取り工程には種類があり、主にICタグ方式と画像認識方式の2種が存在する。

ICタグ方式

大手ファッションブランドであるユニクロ・GUでも採用されているのが、RFIDという技術を用いたICタグ方式である。各商品にはICタグが付けられており、消費者が専用のカゴに商品を入れるだけで、電波によりICタグを一括読み取りできる。ICタグの読み取り後は合計金額が自動で算出され、消費者は精算を済ませる流れだ。

ICタグ方式では、商品のバーコードを一つひとつスキャンする必要がなく、レジの回転率向上を図れる。箱の中に隠れているタグや表面が汚れたタグも読み取れ、加えてICタグには品番・価格・カラー・サイズなどの情報を記憶できるため、商品の在庫管理にも役立つ。

ユニクロ・GUでは衣類の中にICタグが埋もれている場合でも正常に読み取りでき、アパレル業界でも導入が進んでいる方式だ。

画像認識方式

AIがカメラを通して商品の特徴・形・色などを読み取り、識別するのが画像認識方式である。消費者が商品をレジ台に置くだけで、AIが合計の支払い金額を算出してくれる仕組みだ。

ICタグ方式と同様に、商品バーコードのスキャンは不要となっている。

2021年6月に、京セラが独自の画像認識型の「スマート無人レジシステム」の開発を発表している。独自開発した物体認識AI学習データ生成技術を活用することで、商品が重なり合ったり、商品を手に取っている場合でも認識ができるとしている。

無人レジとセルフレジ・セミセルフレジの違い

レジには無人レジと同類の形態として、セルフレジ・セミセルフレジと呼ばれる形態が存在する。無人レジと混同されがちだが、意味合いは少々異なる。

ここでは、セルフレジ・セミセルフレジの仕組みを解説していく。

セルフレジ

セルフレジは無人レジと同様、消費者が商品バーコードのスキャン・精算・袋詰めをする流れだが、完全に無人ではなく店舗スタッフを配置しているのが特徴。スーパーでセルフレジを利用した際、商品の読み取りができなかったり、商品の重量が正常に計測されないといった経験はないだろうか。

レジ操作時に不明点が発生した場合やトラブル発生時に、店舗スタッフがサポートをしてくれる点が、無人レジとセルフレジの違いである。

セミセルフレジ

セミセルフレジとは、店舗スタッフが商品のスキャンを行うが、レジとは別の場所に配置された自動精算機で、消費者が画面操作して支払う仕組みである。セルフレジと異なり、商品バーコード読み取り時に発生するトラブルのサポートは必要ない。

消費者は全ての商品バーコードを読み取らなければならないセルフレジのシステムに、煩わしさを感じるケースもある。しかし、セミセルフレジは商品バーコードを読み取る手間がないため、消費者の心理的ハードルも下がるのが特徴と言える。

無人レジを利用するメリット

無人レジの導入には、店舗側にとって様々なメリットが存在する。ここで紹介するメリットを参考に、店舗が抱える問題を解決できるか判断してほしい。

人件費削減・人手不足を解消できる

労働集約型の小売業界では、商品陳列から顧客対応まで幅広い業務があるため、必然的に人件費も上がりやすい。実際、業務の効率化を図れず、人件費の高騰に対応できていない店舗も多い。しかし、無人レジを導入すれば、レジに人員配置する必要がなくなり、人件費の削減に繋げられる。

人手不足の解消を期待できるのも大きなポイント。日本商工会議所と東京商工会議所が2019年に調査した「人手不足等への対応に関する調査」によると、卸売・小売業の店舗において人手が不足していると回答したのは60.5%。前年から2.7ポイント上昇し、今後も小売業界の人手不足は続くと予想される。

しかし、無人レジを活用することで、レジ業務に充てていた従業員を別の業務に回すことも可能。人員不足で満足にできていなかった販促や店内清掃などの時間も確保でき、売上・顧客満足度の向上も見込める。

人件費の高騰・人材不足に悩む店舗は、無人レジの導入を積極的に検討してほしい。

感染拡大を防止できる

コロナ禍でソーシャルディスタンスが推奨される中、無人レジを利用すれば、店舗スタッフと消費者の対面を避けることができる。加えて、無人レジは商品を専用のカゴもしくはレジ台に乗せるだけでスキャンできるため、一人あたりの精算時間を大幅に削減可能。レジの待ち行列が発生しにくくなることで密を避けられ、感染拡大防止に繋げられる。

ヒューマンエラーを防止できる

店舗スタッフがレジ操作を行う際に気を付けたいのが、バーコード読み取りのし忘れや釣り銭の数え間違いなど、人為的に発生するヒューマンエラーだ。一日の売上とレジの釣り銭が一致せず、利益を損ねてしまった経験も少なくないだろう。

しかし、機械で商品を読み込み、精算も自動で行う無人レジの場合、ヒューマンエラーは基本的に発生しない。閉店後に責任者が行うレジ締め作業もスムーズに進められ、利益面・運用面の両方でメリットがあると言える。

店舗スタッフの定着率向上を期待できる

レジ操作は覚えることが多く、また繁忙期や時間帯によってはコンスタントに顧客が並ぶため、レジ業務がスタッフの負担となっているケースもある。加えて、レジスタッフに威圧的な態度を取ったり、クレームを押しつける消費者もおり、体力的な負担に限らず精神的な負担を感じる人も少なくないと考えられる。

一方、無人レジを導入すればレジ打ち・接客の機会が減り、スタッフの負担を軽減することも可能。結果的に、スタッフのモチベーションを維持でき、定着率アップを見込める。採用活動に時間や費用をかけている店舗は、従業員満足度を高めて定着率を向上させるのも一つの方法だ。

無人レジを利用するデメリット

無人レジを導入するメリットを解説したが、当然デメリットも存在する。デメリットも押さえた上で、導入を検討してほしい。

導入コストがかかる

無人レジを利用するにあたり、新たなレジやシステムを導入する必要があるため、もちろんコストは発生する。加えて、ICタグ方式では各商品にRFIDタグを取り付けなければならない。

RFIDタグは金属製品に貼り付けると機能が低下するため、金属対応のタグは少々高価な傾向に。しかし、近年では高性能かつ安価なタグの開発が進んでおり、RFIDタグの相場は毎年低下。かつて金属対応タグの価格は100~200円程度だったが、現在は金属対応のタグで約100円、通常のタグで10円以下となっている。

また、経済産業省は2025年までにコンビニの全商品にRFIDタグを付けて運用することを目標とした「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を掲げた。よって、今後もRFIDの注目度は一層高まり、技術の進歩や価格の低下も期待できるだろう。

セキュリティ対策が必要

無人レジは店舗スタッフの配置が不要である反面、万引きのリスクを伴う。また、機械に疎い消費者であれば、意図せず商品スキャンや精算のし忘れが発生する可能性も。

消費者の不正・誤操作を防ぐためには、セキュリティ対策を講じる必要がある。例えば、監視カメラを設置して犯罪の抑止効果を高める、指紋認証機能を追加して個人の特定に繋げるなどのセキュリティ対策が挙げられる。しかし、無人レジ・RFIDタグの導入と同様に、セキュリティ対策もコストを上げる要因の一つであるため、注意しておきたい。

無人レジの導入事例

無人レジは大手企業を中心に、多様な業界で導入されている。ここでは、実際の導入事例を5つ紹介していく。

ファミリーマート

ファミリーマートは2021年3月31日に、TOUCH TO GO(TTG)が開発した無人決済システムを採用する「ファミマ!!サピアタワー/S店」をオープンした。大きな特徴としては、セキュリティレベルの高さだ。

入店する際、商品陳列棚の手前に専用ゲートが用意されており、ゲートをくぐった瞬間から消費者の捕捉を開始。消費者は通常通り買い物を行えるが、商品を手に取ることで、消費者と商品が紐付けられる。

商品との紐付けは、人の動きや手にした商品を捕捉する48個のカメラ付きセンサーと、陳列棚に搭載された重量センサーにより、リアルタイムで実施されている。コンビニに置かれている買い物カゴを使用せずとも、手に取った商品はそのまま自分のエコバッグに入れても良いため、衛生面においても安心だ。一度手に取った商品を陳列棚に戻した場合、消費者と商品の紐付けは解除される。

最後に精算を行うが、レジ前に立つと手にした商品の一覧がディスプレイに表示され、支払いを進める。商品一覧の内容に誤りがあれば、自身で商品バーコードのスキャンなど修正が必要となるが、約95%の認識率で精度は高いようだ。また、酒類を購入する際の年齢確認も、レジのディスプレイ上部に設置されたカメラから確認し、遠隔操作できる。現金・電子マネー・クレジットカードの決済方法から支払いを済ませ、退店ボタンを押せば買い物は終了。

コンビニは通常、レジと商品陳列を行うスタッフが2名必要となるが、無人レジでは陳列も兼ねて1名だけ配置していれば問題ない。接客の必要もなく、人件費の削減・感染拡大のリスクを最小限に抑えられるシステムだ。

リクルート・富士通

リクルートは社員向けコンビニである「BeeThere Go」に、富士通がAIレジレスソリューション「Zippin」を使って開発した無人レジを導入。消費者は専用のスマホアプリに、クレジットカード情報を事前に登録しておく。

コンビニ利用時は、アプリに表示されるQRコードをゲートセンサーにかざし、入店する流れだ。店内では、カメラ・棚センサーで消費者を追跡し、手に取った商品を認識。クラウド上のAI技術で購入商品を判別するため、消費者はレジで決済する必要がなく、商品を持って退店すれば自動精算される。電子レシートもアプリに届く仕組みだ。

消費者の利便性もさることながら、店舗運営者は月・週・日単位の売上確認や価格変更を、Web上の管理画面から行える。売上分析・価格改定をWeb上で容易に実施可能である点から、運営コストの省力化に繋げられる。

Amazon

Amazonが2016年にオープンしたコンビニ「Amazon Go」でも、無人レジが導入されている。事前にAmazonアカウントとAmazon Goアプリをインストールし、店舗のゲートにかざせば入店できる。

店内には、天井に数百台のカメラと、商品棚に圧力センサー・重力センサーを設置。消費者が商品を取れば、AIがAmazonアカウントのバーチャルカートに商品を追加し、商品を戻せば削除する。レジでの決済は一切不要で、退店時にゲートを通過すると、電子レシートが送られて支払い完了となる。

さらに、Amazonは2020年2月に食品スーパー「Amazon Go グローサリー」の運営を開始。基本的な仕組みは「Amazon Go」と同様だが、生鮮食品を取り扱い商品に追加している。

冷凍ケースが曇っている時や、複数人が野菜を手に取った時など認識が難しい場合でも、精度を向上させた技術で商品の判別を行う。また、生鮮食品は重さによって価格も変動するのが一般的だが、多少異なる重量であれば、価格を均一化しているのが特徴。スタッフが食品の計測や価格を決める際の手間を省き、コスト削減にも一役買っている。

紀ノ国屋

紀ノ国屋は2020年10月に、目白駅構内に無人決済小型スーパーマーケットを出店した。「TOUCH TO GO」の無人決済システムを導入しており、来店と同時にカメラなどで消費者の動きと、手に取った商品をリアルタイムで認識。商品はそのまま自分のマイバッグに入れても問題ない。

決済エリアに立つと、レジのディスプレイに商品一覧と合計金額が表示され、交通系ICもしくはクレジットカードで支払いを行う。認識成功率は90%超えを達成しており、忙しい朝や電車移動の合間であっても、短時間で買い物を済ませられるため、利便性は非常に高いと言える。

たべりば

株式会社はじまりビジネスパートナーズは2021年8月26日に、埼玉県のショッピングモール「トナリエふじみ野」に「スマートストアたべりば」をオープンする。

たべりばでは、NTT東日本が提供するスマホアプリ「スマートストア」をインストールしておき、アプリ内のQRコードをかざして入退店ゲートをくぐる。その後、アプリで商品バーコードをスキャンし、事前登録しておいたカード情報でアプリ内決済を行い、再びQRコードをかざして退店する流れだ。

また、店内にはAIカメラが設置されており、AIの学習データを活用して店内のデジタルサイネージに広告を表示できる。消費者に合わせた広告が表示されるため、効果的な訴求も可能だ。

無人レジのまとめ

IT技術の進歩により注目を集めている無人レジだが、コロナ禍の現代においては一層導入が進んでいる。無人レジ・RFIDタグ・カメラなど導入コストは高いものの、人件費の削減や販促にも繋げられるため、高い費用対効果を望めるだろう。

今後の情報化社会やコロナ禍による新しい生活様式を見据え、無人レジの導入も検討してみよう。

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