梅酒作りは現代風にアレンジ、沖縄の泡盛のコーヒー割り| 「これは押さえたい」酒編・2022年6月

2022.05.23

2022.11.10

プレミアム本格焼酎

コロナ禍で家飲みへのシフトが進んだことで、家庭での消費が伸びている酒の1つが本格焼酎だ。本格焼酎は糖質とプリン体を含まないため、もともと糖質の摂取や尿酸値をコントロールしている人から支持されていたが、巣ごもりで運動量が減ったからか、その傾向に拍車がかかった。

また、複数で家飲みする時間が増えたことで、相手に合わせて本格焼酎にトライし、そのおいしさを知って常飲するようになるケースも多い。

こうしたフォローの風が吹く本格焼酎の課題は商品単価の引き上げだ。芋焼酎と麦焼酎のトップブランド「黒霧島」「いいちこ」は900㎖で実勢価格900~1000円である。外飲みよりも安上がりな家飲みだから酒のグレードを上げさせるのは容易であり、適切な商品訴求があれば商品単価は2~3割はすぐに上げられる。

プレゼントとホームパーティで酒類が動く「父の日」もからめて、900㎖1200円以上の商品を売り込む。

売場展開

プレミアム本格焼酎はデザイン重視で品揃えする。

このテーマの訴求ポイントは3つ。1つ目は「糖質ゼロ&プリン体ゼロ」であること、2つ目は「父の日にぴったり」であること、3つ目は「ワインランク上の焼酎」であることだ。

お客への語り掛けはトップボードを「父の日にワンランク上のプレミアム焼酎はいかがですか?」とし、サブコメントに「プレゼントやパーティにぴったりです」「糖質もプリン体もゼロです」を加える。

プレミアムであることの証として、商品回りでコンテストでの受賞実績を補足することも有効だ。近年、TWSC(東京ウイスキー&スピリッツコンペティッション)やKura Masterなど国内外の酒類コンテストが相次いで本格焼酎部門を設けた。

品揃えは、芋焼酎、麦焼酎、樽熟成焼酎、その他の焼酎、泡盛から、それぞれ3点×5カテゴリー=15点が目安。酒質や味のタイプも重要だが、ハレを意識したプロモーションなので、ネーミングを含めたパッケージデザインを重視して、お客がジャケ買いしたくなるような商品をそろえる。

ボタニカル梅酒づくり

この時期、定番の梅酒作りを現代風にアレンジし、おいしく楽しくおしゃれな梅酒作りを提案する。ポイントはハーブ&スパイスの活用で、従来からの梅酒作りユーザーに加えて、ナチュラルで健康的なものを好むボタニカル愛好家や、ジンなどボタニカルを使った酒のファンを梅酒作りに招き入れる。

複数のベーススピリッツとジンやアマーロ(「カンパリ」のような苦みのあるリキュール)でよく用いられるハーブ&スパイス(ジュニパーベリー、ローズマリー、シナモン、クローブ、スターアニス、ミントなど)をそろえ、梅と一緒に漬け込んで独自のフレーバーの梅酒作りを勧める。大きな広口瓶で作る梅酒と一線を画し、容量300~500㎖程度の小型のジャーでさまざまを梅酒を作って並べて楽しむイメージ。

ローズマリー、スターアニス、ジュニパーベリーは調理用スパイスにラインアップされている。

売場展開

ボタニカル梅酒作りはクロス展開が必須だ。漬け込み用の小型ジャーポットや保存瓶とボタニカルを並べて、おしゃれに演出するのがポイント。

ゴンドラエンドで展開する場合には上の2段でボタニカル梅酒を訴求し、下の2段は一般的な梅酒作り需要に対応、広口瓶や氷砂糖を並べる。

ボタニカル梅酒のゾーンでは、ベーススピリッツは40°もしくは45°のホワイトスピリッツ(ジン、ウオッカ、ラム)、燻香やバニラ香など香りに特徴のあるウイスキー、さらにアルコール度数96°の「スピリタス」を棚1段に5種類陳列する。もう1段ではハーブ&スパイス(ドライ品)と漬け込み容器を並べてクロス展開、「好みのボタニカルでおしゃれ梅酒作り」のメッセージを添える。

泡盛のブラックコーヒー割り

今年は沖縄返還から50年、NHK朝ドラの舞台が沖縄に設定されるなど、沖縄の話題が豊富になる。沖縄の酒といえば何といっても泡盛が知られているが、泡盛をブラックコーヒーで割る飲み方はポピュラーで、大手コンビニチェーンが県内限定ながら「泡盛コーヒー」を発売するほどだ。

香り豊かなコーヒーを使ったカクテルには、「アイリッシュコーヒー」のように定番になったものもあり、酒との相性はよい。泡盛のブラックコーヒー割りも、コーヒーの香りに泡盛がうまく溶け込んで、新しい味わいにまとまる。そこで、「ブラックコーヒー割り」という飲み方を訴求しながら泡盛を売り込む。

泡盛は米麹(黒麹)と水だけで作る沖縄オリジナルな蒸留酒。長期熟成させる伝統を持ち、リーズナブルな新酒から3年以上熟成させ丸い味わいに仕上げた古酒、さらに長期で熟成した年数やビンテージを表示した上級品まで幅広い。

アルコール度数は30°が多いものの、40°を超えるハイアルコールの商品もあり商品のバリエーションは豊富だ。本州では泡盛は普段飲む酒にはなっていないから、沖縄気分を楽しむ演出品の1つとしてハイグレードの商品を中心にアピールするとよい。

グラスにたっぷりの氷と泡盛を入れて、アイスコーヒーを加えてかき混ぜるだけ

売場展開

売場は沖縄の海の写真やかりゆしウエアなどをディスプレーして南国沖縄を演出する。取り扱う泡盛のメーカーの所在地を示した沖縄のマップを作るとなおよい。

商品は、720㎖で1500~2000円の3年古酒を中心にリーズナブルな新酒から4000円クラスまで10点程度品揃えし、「沖縄・本土復帰50年」を大きくアピールする。

取扱商品の味わいの特長は、香りが「華やか⇔重厚」と味わいが「すっきり⇔重厚」の2軸で考え、取扱商品のそれぞれがどんな味わいかを示せるとベターだ。ちなみに沖縄国税事務所では泡盛メーカーの一般商品(熟成期間が3年未満)の主力商品を、この味わいマップに落とし込み、見える化に取り組んでいる。

解説動画も用意され泡盛の味のタイプがよく分かるので、視聴することを強く勧める。

お勧めの割り材として「ブラックコーヒー」「ジャスミン茶(さんぴん茶)」「シークァーサー果汁」をクロス陳列し、ブラックコーヒーのそばに「泡盛の新しいおいしさ発見! ブラックコーヒー割り」とメッセージを添える。

WGO(ワイングラスでおいしい日本酒)アワード入賞酒

WGOは日本酒をワイングラスで飲むスタイルを提案することを目的に2011年にスタートしたコンテストだ。出品数は1000点を超え、民間の日本酒コンテストとしては最大規模となっている。

ワイングラスは大きなボウルを持つ形状のため酒の香りが分かりやすく、酒の色艶もよく見える。こうした器の特性から、入賞する日本酒にはフレッシュでフルーティなタイプが多い傾向がある。

ちなみに最近は試飲にワイングラスを使う酒蔵が増えており、ワイングラスメーカーから大吟醸酒用のグラスや純米酒用のグラスも開発されている。

ワイングラスで日本酒を飲むスタイルは、ユーザーが中高年層に偏り、食卓での登場シーンは和食に限られる日本酒の需要拡大を阻む障壁を取り払うと期待されている。ワイングラスは若年層にもなじみやすく、和食以外のメニューや立食パーティでは和酒器よりも似合うからだ。

また、コンテストは部門が価格帯で区分されており、リーズナブルなもの(720㎖1300円以下)の中での金賞酒を選ぶことができる。「父の日」は上半期で日本酒が最も売れる日の1つであり、このアワードの入賞実績を活用して積極的に売り込みたい。

WGOアワード2022の審査会。出品された商品はマスキングされ、40人の専門家が審査した

売場展開

WGOアワード入賞酒は部門に沿ってゾーニングする。WGOアワードは①メイン部門(720㎖1300円以下、スペック問わず)、②プレミアム大吟醸部門、③プレミアム純米部門、④スパークリングSAKE部門、⑤プレミアムスパークリングSAKE部門の5部門に分かれている。

売場での展開はこの部門に沿って棚割りをゾーニングする。

今回は父の日をターゲットにするから、プレゼント需要に応える3つのプレミアム部門(②③⑤)から商品を選択する。最高金賞は審査員の平均スコアで上位5%に授与されるもので、万人に受ける安心の味わいが保証されていると考えてよい。

香味タイプは、②プレミアム大吟醸部門の酒は、果実のようなほどよい香りと肌理の細かいエレガントな味わい。③プレミアム純米部門は香り控えめで米のうまみを引き出したしっかりした味わい。⑤プレミアムスパークリングSAKE部門は透明でドライな大人の味わいが特徴だ。

ひな壇で展開するならば部門ごとに1段を使用し、POPで上記の味わいの傾向をガイドする。

トレンド商品

本格焼酎のソーダ割り

本格焼酎の飲まれ方は、長い間お湯割り、水割り、オンザロックがスタンダードだった。ところが近年のウイスキーハイボール人気で、ソーダ割りが本格焼酎にも広がり、30代以下の若年層では本格焼酎をソーダ割りで楽しむ人が最も多いというデータもある。

こうした消費の変化を受けてメーカーはソーダ割り向きの商品を次々にリリースしている。ソーダで割ると炭酸と共に香りが立ち上がるので香りに特徴を持たせたものが多く、果実のような香り、甘い香り、スパイシーな香りのものなど、バラエティが豊かになっている。レディトゥドリンクも登場しており、ソーダ割りでおいしい本格焼酎の動向に注目しておきたい。

クラフトフルーツビール

クラフトビールはホップを大量に使い、スパイシーな香りを前面に出したIPA(インディアペールエール)の人気が根強いが、かんきつ系の香りが立つジューシーなヘイジースタイルや、果実を加えたフルーツビールの人気が高まっている。

現在は330㎖缶で500円以上するものが多いが、350円まで下がってきたらスーパーマーケットでも扱いを検討したい。なお、扱いをスタートする場合には、ビールを説明しトライアルさせるプロモーションを強力に仕掛けること。認知率はまだまだ低い。

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