消費年間トップのトマト、バナナ、急伸のスイートコーン、ニガウリ、メロン、スイカ| 青果編・2022年5月 「これは押さえたい」重点商品と売場展開

2022.02.28

2022.11.11

創風土 代田実

5月の青果売場はその主役が目まぐるしく変化する。春野菜、果実から夏野菜、果実への切り替わり時期であると同時に、気温の変化でも売れ筋が変わるので、それに合わせた商品売り込みと売場展開が必要だ。

5月の青果商売で押さえたい重点商品を選ぶ基準として重要なのが「消費金額の大きさ」と「消費金額の伸び率」だ。

周年販売しているトマトやバナナは、どちらも年間を通して最も消費金額の大きな野菜、果実の品目だが、月別で見ると5月が年間で最大の消費金額になる。その点でこの2品目は確実におさえておきたい品目だ。

一方で5月になると急激に消費が伸びる品目もある。家計調査の項目名ではその他野菜に含まれるスイートコーン、ニガウリ(ゴーヤー)とメロン、スイカだ。これら品目は前月の4月に比べ160~350%と極めて高い消費の伸びがあり、売場展開の仕方やタイミングを押さえ、確実に売上げを取っていきたい品目となる。

トマト

C:\Users\shiro\Desktop\新しいフォルダー\CIMG7798.jpg

夏野菜のイメージが強いトマトだが、その原産地は冷涼な気候のアンデス山脈西側の高原地帯だ。そのため高温多湿となる日本の真夏はトマト栽培に最適というわけではない。

その点、晴天が多い上、日中は暖かく夜は適度に冷え込む5月の気候はトマト栽培に向いており、この時期に出回るトマトは品質、食味とも年間で最も優れているといえる。

家計調査の結果を見ても5月はトマトの消費金額が年間で最も高くなっており、青果部門の商売にとって「これは押さえたい」重点商品の代表的存在だ。

売場展開のポイント

トマトはその品種、用途、栽培方法が多種多様で、売場展開されるSKUも10~20SKUと多くなる。多SKU展開時に注意しなくてはいけないことは、お客が購入する商品を選びやすいよう個々の商品の違いをはっきり分かるようにすることだ。

品種別の陳列

一般的にトマトは「桃太郎」「ファースト」に代表される大玉トマト、「フルティカ」「ルネサンス」などの中玉、近年人気の高い「アイコ」や一般的にミニトマトと呼ばれる小玉トマトに分かれるので、この品種ごとに分けて陳列するのが基本となる。

用途別の訴求

日本ではサラダなど生食が一般的なトマトだが、世界的には加熱調理して食することが多く、イタリアントマトやカゴメのこくみトマトなど加熱調理するとうま味が引き立つ品種も多く出回るようになっている。

これらの品種は「加熱調理することでうま味が引き立つ」ことをPOPで訴求し、おいしく食べてもらえるように情報提案していきたい。

栽培方法、糖度の訴求

中小玉トマトの中で栽培中の水分コントロールを行い、収穫量を減らしても高糖度の商品に仕上げたトマトが「高糖度トマト」「フルーツトマト」などの名称で出回っている。「アメーラ」などのブランドも定着してきているので、トマト売場全体の中でコーナー化するとよいだろう。

彩りのある売場展開

一般的には赤いイメージのトマトだが、近年はミニトマトを中心にオレンジ、イエロー、グリーン、ブラックなどさまざまな色合いのものが出回っている。それらを組み合わせた商品化や売場展開はトマト売場に彩りを添え、売場への立寄率向上に効果的だ。

バナナ

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: R6b29aiH7rv3TFY6VwENkseV_64MOKYmb40-RUmRuKtBort5-0kkgj44T2-ZBvjynWZY5CU-9MAFOO-OUhlXl86QOoDyg27HhYHHzSky0Gk57rTx4ptU3XySpe2IoQf4WOIsp1ns

トマト同様、年間出回っているバナナだが、国産果実が冬場の主役であるイチゴ、リンゴ、かんきつからウリ類、ブドウ、モモなどの夏果実に切り替わる端境期となるこの時期は、年間で最も消費金額が多くなる。

また、さわやかな気候のこの時期には「ねっとり」「もっちり」した食感のバナナが一番おいしく感じられることもあり、名実ともに5月の果物売場の主役となる品目だ。

売場展開のポイント

日本で消費されるバナナの約8割はフィリピン産で、その他はエクアドル、メキシコなどの中南米産で占められている。主力のフィリピン産は、栽培されている畑の標高によって高地栽培(ハイランド)バナナ、中高地栽培(ミッドランド)バナナ、低地栽培(ローランドまたはレギュラー)バナナに分けられ、一般に高地栽培ほど高糖度で食味が良いといわれている。

売場展開に当たっては、この区分と販売形態によって分けることが基本となるが、次第に気温が高くなるこの時期は売場での熟度管理と売切りも重要となってくる。

販売形態を変えてみる

小売現場での人手不足対策、効率化対応のため、現状出回っているバナナのほとんどはコンシューマーパック(CP)と呼ばれる袋入りのものだ。これは産地で決められた重量ごと袋詰めされ、バーコードの入ったラベルが貼りつけられているため売りやすく、販売も楽だ。

一方でこのCPのバナナ販売には落とし穴があることも知っておかなくてはならない。画一的な規格のため、必ずしも販売店舗の顧客層に合った販売規格ではないということだ。

そこでお勧めしたいのが、裸のバナナ(ハンド)を仕入れ、店内でさまざまな規格に加工、計量して販売し、自店に合った売れ筋規格を見つける展開方法だ。やってみたら、CPバナナにはない2本や10本が売れるかもしれない。

熟度管理と売り切り

5月以降、夏場にかけては、売場の温度も高くなるためバナナも販売中に熟度が進んでいく速度が早まる。熟度が進めは当然なことだが、柔らかくなり売場でのロスが出やすくなる。

そこでお勧めしたいのが、「重ねない陳列」だ。人手が不足しがちな売場では、どうしても一度に入荷したバナナ全部を陳列することで、陳列作業の効率化を追求しがちだが、これはロスを増やす原因ともなる。陳列回数は増えても、重ねない陳列を行い、商品を見やすくすることで熟度管理もしやすくなる他、ロス削減にも結び付く。

その他野菜(コーン、ニガウリ)

家計調査の項目では「その他野菜」に含まれ、その動きが見えにくいが5月を機に急に消費が伸びるのがコーン(トウモロコシ)とニガウリ(ゴーヤー)だ。

共に市場入荷量が最大となるのは7月だが、売場展開の面で見ると4月から5月にかけての消費金額伸長率が最も大きく、ここできちんと展開をしておかないと最大需要期の7月に売り負けをすることになる。その意味で両品目とも5月の重点商品といえる。

売場展開のポイント

コーン(トウモロコシ)は鮮度管理と売り切りがポイントとなる。コーンの商品価値はその甘さ、おいしさだ。コーンをはじめとした豆類は収穫後の鮮度低下が早く、時間が経ては経つほどコーン特有の甘さが減少していく。

それを防いでお客においしく食べてもらい、「あの店で買ったコーンは何時もおいしい」と評価してもらい、リピート購入に結び付けるポイントは2つ。「鮮度管理」と「売り切り」だ。

コーンの鮮度管理は時間と温度が鍵となる。収穫からできるだけ早めに売場に並べるため「朝採りコーン」を売る店が多いのはこのためだ。それができなくても、要冷管理したコールドチェーンで流通した商品を販売し、売場に陳列した当日に売り切ればお客に十分、コーンのおいしさを味わってもらうことができる。

C:\Users\shiro\Desktop\新しいフォルダー\0906甲子園\P1020986.jpg

一方、ニガウリ(ゴーヤー)は商品化によって買いやすさを演出することが重要。5月になると沖縄産に加え、宮崎、鹿児島産の出荷が始まり、ニガウリの出回り量は急激に増える。とはいえ、産地の沖縄や南九州以外の地方ではニガウリを多く食べる習慣はなく、売り方は「1本単位」に集中しがちだ。

そこでお勧めしたいのが、店内加工した上での商品化による買いやすさの演出だ。5月8日を語呂合わせで「ゴーヤーの日」としてニガウリを売り込む店舗も多いと思うが、その際はハーフカットやスライスカットで商品化して買いやすさを演出するとよいだろう。

C:\Users\shiro\Desktop\新しいフォルダー\0906甲子園\P1020987.jpg

メロン、スイカ

夏果実の代表的な存在であるメロンとスイカ。その市場入荷量が最も多くなるのはメロンが6月、スイカは7月だが家計支出が急伸し販売シーズンが実質的にスタートするのは共に5月だ。

5月に出回るメロン、スイカはハウス栽培だが、今年の冬は例年になく寒かったことに加え、原油高の影響もあり、昨年より小玉傾向で単価も高めになることが懸念される。

そこで、こうした状況を前提に売場展開を行い、滞りなく販売シーズンをスタートさせるための売場展開の工夫が重要となってくる。

売場展開のポイント

メロン、スイカ共にカット売りで買いやすさを演出する。トップシーズンになれば玉売りでも売れる両品目だが、5月については玉売りは単価が高いため売れ数も伸びない。そこで玉売りは、売場の「らしさ」感を出すための見せ筋として割り切り、メインはカット売りとして商売を組み立てる。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: phc-mnKrrfXGyPcxbC4EHRKfdXqFfqL1gTRC1aX7redDMrX6OIE8PCPP6IFHx5V3wNrM_r6gB9_TV_jbD3SpKHNQSpfiWHo4uxOhKKpd3O3hE4S_t4jKtaDzJNK1UdEit4k7adyp

追熟するメロンは売場陳列品の熟度チェックを行い、適熟品をカットして販売。追熟しないスイカは、売場陳列3日程度を目安にカットしていき、売場での商品回転を行う。

メロンは2分の1カット、8分の3カットとブロックカットを打ち出す。メロンは売場陳列の適熟品を2分の1カットと、種を取り除き8分の1(または6分の1)にカットしたものを2、3ピース盛り付け買いやすい価格で販売する。その際、赤肉、青肉メロンを組み合わせるのもよいだろう。

また、貴味メロンや肥後グリーンメロンのように果肉の厚い品種はブロックカットにしてもよいだろう。

C:\Users\shiro\Desktop\新しいフォルダー\0906甲子園\P1020996.jpg

また、まだ単価が高く、小玉傾向のスイカは「とんがりカット」で販売。

5月のスイカは、まだ玉も小さく、単価も高い傾向にある。そんなとき効果的なのが「とんがりカット」だろう。三角すい状にカットしたスイカをランダムにパック詰めすることで、パック内にすき間が適度にでき、ボリューム感のある商品化が可能となる。これなら売りやすい価格での商品化が簡単にできる。

C:\Users\shiro\Desktop\春夏写真\CIMG4700.jpg

リテールトレンドでは、生鮮に関する商品を紹介しています。

詳しくはこちらより、ご確認ください。