ID-POSで分かった消費者の購買行動|昭和レトロブームもあってじわじわ売上げ伸ばす「パインアメ」が若年層の集客に効果的な理由をひも解く

2022.09.13

2022.12.02

分析:株式会社True Dataデータマーケティング部 竹村博徳
データ出典:True Data、業態:食品スーパーマーケット、以下同

昨今、さまざまなところで「昭和レトロ」が話題になっている。昭和が終わってから30年以上が経過していることから、特に若年層には新鮮に映ることもあるようだ。

今回は、まさにそうした昭和レトロの代表的な菓子ともいえる「パインアメ」に注目してみたい。誕生は70年以上前の1951年(昭和26年)。

実は、昭和レトロの盛り上がりと軌を一するように、このパインアメの売上げも徐々に伸びている。ちなみに、「8月8日」はパインアメの日となっている。

実際に直近2年間でどれだけ売上げが伸びているかを1店舗当たりの金額の推移で見ると、ものすごくおもしろい。

図表①はパインアメの今年6月までの1店舗当たりの売上金額の月次推移である。これを見ると、21年6月以降、今年6月にかけて右肩上がりに伸びていることが分かる。21年6月と22年6月を比較すると約1.5倍になっている。つまり、非常によく伸びていることが分かった。

次に図表②では、パインアメの21年7月~22年6月の数字について、その構造が1年前と比較してどう変わっているのかを見てみよう。

まず、「購入金額」は112.28%と非常によく伸びている。一方で、「購入者数」は伸びているものの、「1人当たりの購入金額」は前年を下回っている。これを見ると、残念ながら1人当たりの財布の大きさは縮小しているが、その縮小した分を補完するような形で購入者数が伸びているということが分かる。

その「購入者数」をもう1段階、「購入率」と「取扱店来店者数」に分解すると、どちらも増えていることが分かる。

「取扱店来店者数」は、パインアメを置いている店でパインアメ以外も含む何らかの商品を購入した人を示すが、これが増えたということは、おそらく「パインアメの配荷が増えた」ことによるものだと思われる。

要はいままでパインアメを置いていなかった店にパインアメが置かれたことによって、その店に来店している人がカウントされるようになったということになる。

つまり、取扱店が増えた上、実際の「購入率」も増えているということが、売上げの伸びの要因になっていることが見えてきた。これは、非常にユニークなことであると思う。

30代、40代は大きく伸長、10代、20代は伸び盛りで「攻めるべき世代」

「購入者数」が伸びていることが分かったわけだが、それでは実際にどの年代の人が購入におけるボリュームゾーンであるのか、また、伸長の面ではどの層が狙い目になるのかを見てみたい。

図表③は、横軸に今年6月までの直近1年の「購入率」を取り、縦軸に1年前と比較した「購入率の伸び」を取ったものだ。右上の第一象限にある年代は購入率が大きく、かつ伸びも大きいということで「伸び盛りの年代」となる。つまり、直近1年間では30代、40代は非常によく伸長したといえる。

注目点は、左上の第二象限。購入率はまだ低いが、いま伸び盛りということは、年代別に優先順位を付けたときに、おそらく「攻めていくべき年代」ということにとなる。

10代、20代の若年層が当てはまるが、実際、パインアメは若者に受けている映画や玩具、化粧品とのコラボレーションをしていることから、こうした仕掛けを実施していることももしかしたら影響しているのかもしれない。

総じて言うと、「若年層が伸びている」ということになるため、流通企業としても取り扱わない理由はないと思われる。

最後に、図表④を見てみよう。横軸は図表③と同様に直近1年の「購入率」を取っているが、こちらは縦軸にTrue Dataの全体の母数のうち、何店舗で取り扱いがあるかを表した「取扱店率」、つまり、配荷率を取ったものだ。

図表④は「あめ」のうち売上金額が高いものをプロットしたもので、当然、100%の配荷率の商品も幾つか存在している。一方で、パインアメはこの売上げの高い商品の中にあっても、取り扱いはまだ8割程度であることが分かる。

つまり、せっかく伸び率が高い商品であるのだから、配荷率を伸ばすことで若年層への訴求をより強めることができるのではないかと考えられるわけだ。若年層の集客に対して課題を持っている企業や店舗はぜひ、このパインアメを取り上げてみたらいかがだろうか。

もちろん、スーパーマーケットもそうだが、例えばドラッグストアなどでも検討の余地がある。

ドラッグストアではいま、客数を伸ばす上でスーパーマーケットやホームセンターで売れている商品など、商品ベースでお客を呼ぶ施策に舵を切り替えている流れがある。ドラッグストアでも若年層の集客に課題を抱えている企業については、パインアメを取り扱うことで良いインパクトを起こせる可能性は十分にあると思う。

著者プロフィル/2010年大学卒業後大手食品会社に入社。ID-POSデータを活用した提案に携わる中で「購買データ分析の重要性」を痛感し、15年にTrue Data入社。主に小売り・メーカー企業のデータ活用を支援している。現在は、データを掛け合わせた新時代のマーケティングを提案するとともに、「クライアントに求められる次世代ID-POS分析サービス」の開発を推進。