秋の味覚の時季、米飯に注力しつつ、改めて煮物にも注目を|「これは押さえたい」惣菜編・2022年9月

2022.09.13

2022.11.09

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

9月は「収穫の秋」「五穀豊穣」「食欲の秋」「読書の秋」「秋の味覚」などがキーワードになる。

9月の行事、催事は、1日「防災の日」、9日「菊の節句」、10日「十五夜、中秋の名月」、19日「敬老の日」、23日「秋分の日」。昨年9月の「調理食品(家計調査)」は108.6%であった。今年は米飯を中心に前年を大幅に上回るような売上げをつくりたい。祭日が2日間あるため十分販促計画を立て売り逃しがないようにする。

2021年9月の家計調査では、調理食品が108.6%、弁当が114.3%、寿司が105.0%、調理パンが111.0%、スナック107.0%、うなぎかば焼きが110.5%、サラダが106.9%、コロッケが103.8%、カツレツが105.4%、天ぷら、フライが105.0%、シューマイが102.2%、ギョーザが100.0%、焼き鳥が102.0%、ハンバーグが108.9%、惣菜セットが145.4%と前年を上回った。前年を下回ったカテゴリーは、おにぎりの99.5%だった。

弁当

昨年は前年比114.3%と2桁の伸びで10月を上回った。「箱弁」と言われる幕の内タイプの弁当から、具をご飯の上に載せた「載せ弁」「丼」に需要が移りつつある。箱弁に比べておかずの品目数が少ないため生産性も高く製造もしやすい。売れ筋の「カツ丼」「天丼」は終日品切れがないようなオペレーションを組みたい。

売場展開

今月の育成商品は「カレーライス」。日本式カレーライスにインドカレー、タイカレーを加えて販売する。直接ご飯にかけるよりセパレートタイプのトレーを使用する。「カツカレー」も含めて「カレーフェア」も開催したい。また、「ガパオライス」「ハンナンチキン」「ルーロー飯」「ビビンバ」など「アジアンプレート」も人気であるためコーナー化して販売する。

家計調査の月別消費支出をグラフ化したもの。平均単価×購入数量=支出金額購入数量は1g~1kgと幅があるため小数点を変更して計算する必要もある。前年に比「支出金額」「平均単価」「購入数量」が伸びた場合は「赤字」の「○」。前年に比べて数字が下がったものは「黒字」の「×」で表記

コロッケ

コロッケは10月が需要のピーク。9月は前年比103.8%であった。青果売場では「新ジャガ」も出そろうため、ジャガ芋を使った「コロッケ」「ポテトサラダ」「フライドポテト」「肉ジャガ」に注力して販売したい。

売場展開

今月のコロッケの育成商品は「熟成コロッケ」。熟成させた北海道ジャガ芋と北海道発酵バターを使ったコロッケを販売したい。「北海道」「熟成」「発酵」がキーワード。「バター香る北海道熟成コロッケ」などのタイトルもおもしろい。紙袋に入れてばら販売を行うのもよい。

カツレツ

カツレツの需要は8月から10月までほぼ横ばいであるが売りどきである。9月は前年比105.4%であった。「カツレツ」は、牛、豚、鶏などの切り身に鶏卵、パン粉を付けて油で揚げたもの。「豚カツ」「ひれカツ」「チキンカツ」は定番であるが、今年は油の高騰もあり「オーブン焼き」を加えたい。

売場展開

油で揚げる「カツレツコーナー」の他に「オーブン焼きコーナー」を新設したい。

今月の育成商品は「ミラノ風カツレツ」。薄くたたいて伸ばした豚肉に細めのパン粉、パルメザンチーズをまぶし多めの油で焼いた料理。ポテト、ニンジン、玉ネギ、パプリカなどをオーブンで焼いた「焼き野菜」もトレーに添えたい。

サラダ

7月から10月まで「生サラダ」と「練りサラダ」がよく売れる。昨年のサラダは前年比106.9%とまずまずの伸びであった。「練りサラダ(加熱して潰した食材をマヨネーズで練ったサラダ)」は「生野菜サラダ」に押されている感があるが、ジャガ芋、サツマ芋などの根菜類は新物が出回り「旬」を迎えるため「練りサラダ」を量販したい。

売場展開

今月は「練りサラダ」に注力して販売したい。ジャガ芋、サツマ芋、カボチャ、豆を使った練りサラダ(食材を加熱したサラダ)と「葉物サラダ」が売りどきだ。

「紫芋サラダ(赤)」「カボチャサラダ(黄)」「アボカドサラダ(緑)」と彩も気にして売場づくりを行う。

トレンドアイテム

パッタイ

パッタイはタイの屋台料理。ライスヌードル(米麺)をモヤシ、ニラなどの野菜や魚介類(エビ、イカ、アサリ)、卵と一緒に油で炒めた料理。「アジアンフェア」の1アイテムとして品揃えしたい。ライムを添えるのがポイント。

十和田バラ焼き

青森県十和田地方の名物料理。牛のバラ肉、玉ネギを甘辛のしょうゆベースで味付けし、鉄板で焼いた料理。韓国のプルコギに似たシンプルな料理。惣菜バックヤードの鉄板の半分か、ギョーザを焼く万能調理器を使用して製造。「十和田バラ焼丼」もおもしろい。

強化するアイテム

9月になって、まだ気温が高い場合でも、惣菜売場には秋の気配を感じるような売れ筋商品の「サンマの唐揚げ」や、ポテトサラダなどの商品とPOPで秋のイメージを演出をする必要がある。

「秋ですよ」のイメージの演出だが、残暑が続いているような場合、残暑が続く間は夏商品同時に売り込むように夏イメージを持続し、天気予報に気を配りながら秋イメージの切り替えを行う残暑対策の準備が必要となる。

9月は年間で売上指数が下がる月なので、無理をしない販売計画を組むようにする。上旬は夏商品の売れ筋を残し、中旬辺りから、POPなどを使って「鶏唐揚げ」の秋の味(ニンニク味からショウガ味へ)で訴求、このときは衣を多くした唐揚げで利益改善も考えるなどの商品改善行う。

変えるときには、「香りの高い四国土佐のショウガ(生姜)を使いました」、などとアピールする販促を付けて増売を図ることを忘れずに。さらに秋のキノコ、サツマ芋(焼き芋)、サンマ、カツオ、牡蠣などが秋のイメージを引き立てる商品化を考える。ただし消費傾向が低いので大きなイベントは控え気味にしてロスを防ぐようにする。

食品の値上がりの影響などで、惣菜の売上げは苦戦すると思われる。このようなときは無理せずに揚げ物の売れ筋と、惣菜の原点に戻って「煮物商品」に注目して、その土地の味の(同じ料理名でもその土地の味)、煮物の「肉じゃが」や「肉の入った煮しめ」などの煮物を作って大パックで、冷蔵ケースではなく、揚げ物と一緒に販売するなどの工夫が必要。自店の煮物を見直し売り方も考えることが必要だ。

国産鶏モモ、ムネ肉使用 お肉たっぷり「肉だけ酢鶏」

消費傾向が下向きのときだけに、値打ち感を出す。ボリュームがあり、価格が安く、食べておいしい中華風、というシンプルな商品コンセプトで売り込む。また、ムネ肉とモモ肉の両方を一緒に使ってコストダウンも考えるレシピ。

鶏肉と中華甘酢だけのシンプルな商品だけに、鶏肉はモモ肉、ムネ肉を混ぜて使用。肉に下味を揉みこむ。下味は(中華だし顆粒、しょうゆ、みりん、砂糖、鶏肉の10%の水、または中華スープ、胡麻油など)で肉を揉み込む。これで肉はおいしくなる。

片栗粉だけでなく、小麦粉、片栗粉半々の水溶き衣を付けて180℃の油で衣が固めの唐揚げにする。

自社製の酢豚のたれ、または、業務用の酢豚のたれを選んで揚げた唐揚げを合わせてでき上がる。

自家製たれを作る場合には、酢に香りのよい黒酢を使って作り、少し薄味の甘酢たれに仕上げて使えば、たれもたっぷりでおいしい商品が作れる。メーカーのたれを使う際にも少し薄味の物を選ぶようにするとよい。

新米寿司飯使用 具たっぷり田舎風ちらし寿司

昔から秋になると全国の家庭で作るちらし寿司を食べる習慣が多かった。新米を使った田舎風のちらし寿司が人気となる。エビを多めに使っているが、コストのバランスでカニかまぼこを使って低価格のちらし寿司を作ることも良いだろう。 

甘めの寿司飯を使うのがこつ。甘めの寿司飯は、稲荷寿司や巻き寿司に、甘さ控えめの寿司飯は握り寿司に使うと寿司はおいしく作れる。

寿司飯をトレーに分量の半分だけを入れ、その上に「味付け山菜」を散らし、残りの分量の寿司飯を入れて、さらにその上に同じ味付け山菜を散らして作る。

さらにニンジン千切りの甘煮(ニンジンをだし、しょうゆと砂糖で煮たもの)などを散らし、(寿司全体の下味のため)、他に刻み穴子、トビッコなどを散らしてから、見せ場となる赤の寿司エビをトッピング。

ちらし寿司の寿司飯には中具として、味付け山菜を混ぜて使うが、混ぜる工程を省くために、寿司飯と寿司飯の間と寿司飯の上に味付け山菜を散らすようにした。味付け山菜は確りと水気を絞って使う。寿司飯がふやけないようにするためにも作業の合理化を考えて手順変更を考えるようにする。。

秋おでん

9月は残暑も多いが、急に気温が下がって夏型商品が売れなくなることもある。そんな急に気温が下がった時には、おでんが良く売れることが知られている。

おでんの具として、ちくわ、卵、大根の3品はおでんの核商品として注意をする必要があるといわれている。

ちくわは、煮物に使うちくわを選び、煮ても歯応えがあるような煮物用ちくわを使う。卵は、ゆで卵をだしで煮込んだもの。大根は、おでんの中で最も気を使う商品。できるだけ大きい方が人気。味が染みていて箸で切れるくらいに柔らかいことが大切。

この3品を核にして、揚げ天、コンニャク、昆布、スジなどを具として組み合わせる。

惣菜のおでんはだしつゆがない場合が多いので、具にだしの味が染みるように作ることが大切になる。

おでんの味はおでんが煮上がってから自然に冷めるときに味が浸み込んでいくことで決まる。急速冷却機などではなく、煮上がったらだしと共にバットなどに開けて自然に冷却するとおいしさが向上する。煮物、特におでんは焦らずゆっくりと冷ますのがこつ。

シューマイとかに玉セット

惣菜の売上げがなかなか伸びないときは無理をして売ろうとしないことだ。食品の価格が急騰している時は、惣菜は売りにくい。なぜなら節約をしようと家庭で調理をするからである。そんなときには、ボリューム、価格、おいしさを打ち出すと良い。この商品はそのコンセプトで作っている。

秋は中華メニューが売れる。涼しくなると、蒸す料理や煮るなどの温かさの料理、とろみの付いた「あん」がおいしさの決め手になることが多い。そうしたメニューの中華の小品セット、の数々を企画する。

バリエーション商品としては、①シューマイ+酢豚、②春巻き+青椒肉絲、③ギョーザ+八宝菜などなどが挙げられる。

1つのメニューは揚げ物または蒸し物か焼き豚などの焼き物メニューにして、もう1つはたれやとろみのあるメニューにすると、夕食のおかずになる商品になる。

手作り煮込みハンバーグ

ハンバーグは惣菜の人気商品だが、生のひき肉があるからと、生肉から自店で作ることもあるが難易度が高い。理由は冷めると石のように硬くなることと、デミグラスソースが作れないことが挙げられる。

肉が固くなるのは焼き物の肉料理総て同じ現象だが、鶏肉だけは何とか柔らかく食べられるので、惣菜での肉料理は鶏肉の商品が多い。そうした理由で自作は勧められない。

ハンバーグそのものは、メーカー品の冷めても柔らかいハンバーグを使用した方が人気商品になることが多い。

デミグラスソースも同じことがいえるので、味のテストをしてメーカーのおいしいソースを選ぶ方が良い。そのソースに白ワインを10%ほど加えてハンバーグを15分ほど煮込んで冷ますとでき上がり。

注意することある。メーカーのハンバーグは肉そのものの味が濃い場合があり、ハンバーグとソースがしっくりこないことがよくあるので、ハンバーグは味の薄い物を選ぶとおいしい商品ができる。

合わせるおかずは、下に炒めたスパゲティと甘く煮たニンジン、ゆでたブロッコリー、皮つきフライドポテトだが、ボリュームを出したいときは、スパゲティを多くして盛り上げ、デミグラスソースを多くして仕上げるとボリューム感が出て良く売れる。

自信があればソースを自家製にして、タップリ加えて、ソースたっぷり“ハンバーグ”も人気商品。

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