酒類が値上げラッシュの10月、買いだめ済みの酒ヘビーユーザーにはサプライズの提案で購買心を喚起|「これは押さえたい」酒編・2022年月10月

2022.09.27

2022.11.09

酒文化研究所 山田聡昭

ビール類、缶酎ハイ、清酒、焼酎、ワインと10月は続々と値上げとなる。すでに9月から旧値商品の買いだめが進む中、満腹のお客にプラス1本させる鍵はサプライズ提案だ。

極上〈宝焼酎〉「タンチュー」

企画名は、「究極にドライ。おいしい焼酎の炭酸割り」。10年以上好調を続けてきたレディトゥドリンク(RTD、缶酎ハイ、缶ハイボール)だが、業務用市場が動き出した影響を受けてか、今夏は前年を下回った模様。

レモンサワー人気も一服し、各地の特産フルーツを使った缶酎ハイのプレミアム路線も一巡しつつある。そこに登場したのが甲類焼酎を炭酸で割っただけという超シンプルな酎ハイの極上〈宝焼酎〉「タンチュー」である。

ほとんどの酒ヘビーユーザーは缶酎ハイの甘さを嫌う。多くのブランドでドライタイプのフレーバーへのシフトが進んでいるが、この商品はその究極ともいえる。

酎ハイで果汁や香料を使用しないと、ベースとなる焼酎原酒の味わいがストレートに出る。多彩な原酒を豊富に抱える焼酎メーカーが本領を発揮する場であり、甲類焼酎のトップメーカーとして君臨してきた宝酒造の渾身のチャレンジは注目だ。

売場展開

全体として甲類焼酎を炭酸で割っただけの「究極の甘くない酎ハイ」を訴求する。商品は甲類焼酎にフォーカスして、缶入りの極上〈宝焼酎〉「タンチュー」を350㎖、500㎖を中心に、宝焼酎「純」35度、宝焼酎「ゴールデン」、極上〈宝焼酎〉、キンミヤ焼酎など。お客の目線を惹く位置に極上〈宝焼酎〉「タンチュー」を配置し、上下をボトル焼酎で固める。

Kura Master 2022入賞酒

企画名は、「フランスのトップソムリエ達が絶賛の酒フェア」。2017年にスタートしたKura Masterは名門ホテルクリヨンでシェフソムリエを務めるグザビエ・チュイザ氏が審査員長を務める日本酒と本格焼酎・泡盛のコンテストである。

今年はフランスで活躍する91人のソムリエやワイン専門家が審査員を務め、表彰式はパリの日本大使館で開催された。

フランス料理は世界の社交界で磨かれてきた料理文化であり、フランスだけでなく世界中の一級の宴席のスタンダードとなっている。そんな世界に身を投じているソムリエたちが選んだ日本酒、本格焼酎、泡盛を日本の家庭の食卓に提案する。

近年、日本産酒類の輸出は増加を続けており、海外で普通の人が日本酒を楽しむようになりつつある。世界化する日本の酒を伝えながら入賞商品をアピールする。

売場展開

Kura Master2022の日本酒の出品数は過去最多の1110点。その中からプラチナ賞121点、金賞245点が選出された。受賞商品は一般流通している商品も多く、部門を問わず入手しやすい商品をピックアップして受賞実績を前面に押し出してお薦めする。

また、本格焼酎・泡盛は193銘柄が出品され、プラチナ賞 23点、金賞 41点が選出された。これも部門を問わずそろえる。

どぶろく

企画名は、「試してみませんか? 本物のどぶろく」。どぶろくは、聞いたことはあるけれど飲んだことのない酒。日本の酒の原点と言われつつ、1899年に政府が自家醸造を禁じてから密造酒とされて、ほとんど日の目を見ることがなかった。

それが変わったのは2003年のどぶろく特区の誕生である。全国に100を超える特区ができ、どぶろく製造免許を取得する農家が相次いだ。物産展に出店すると次々に来場客が足を止め、地酒以上によく売れた。

近年は清酒メーカーにどぶろくを製造するメーカーが増えており、飲みやすく洗練されたどぶろくが商品化されている。これらは加熱殺菌せず、発泡性を持った要冷蔵商品が多いが、5点程度集めて「試してみませんか? 本物のどぶろく」と投げかける。なお、地元にどぶろく特区があり生産者から商品供給を受けられるならば、積極的に取り扱うとよい。

ちなみに、商品化されているどぶろくは、米と米麹と水を原料とし、発酵させた後で濾さず、粥のようなドロドロの状態の酒だ。にごり酒は、見た目はよく似ているが、粗く濾してあり米の粒粒感はない。

売場展開

冷蔵ケースの一画にどぶろくコーナーを設けて、にごり酒とどぶろくの違いを説明するパネルや、どぶろく生産者を紹介するPOPを用意するとよい。

トレンド商品

ビアボール

企画名は、「割り方いろいろビアボール」。最初に紹介したいのはサントリービールから発売された、炭酸水で割って飲む「ビアボール」だ。アルコール度数は16%で、グラスに氷をたっぷり詰めてビールを注いだ後に炭酸水を加えるというもの。

かつて「とりあえずビール」と言われたほど広く愛されながら、ビール消費は20年以上減少し続けている。これを再び活性化するために若年層(20代~40代前半)が「楽しみを共有するためのツール」と評価するビールが必要という考えから生まれたのが、「自分好みにつくる自由なビール」というこの商品のコンセプトだという。

お勧めの割り方は1:3(アルコール度数4%)。レモンを搾って1:7(2%)のライト、しっかり濃いめの1:1(8%)、さらに濃厚なオン・ザ・ロックス(16%)を提案する。

実際に推奨された4つの割り方を試してみると、どこかでバランスが崩れるのではないかと想像していたのだったが、説明のとおりどれもおいしい。

中でもオン・ザ・ロックスはカラメルや蜂蜜のような甘い香りが立ち、口中に濃厚な味わいが広がり、他にない味わい。家飲みでは案外受けるのではないか。

すでに一部の料飲店で試験的に提供されており、10月4日に業務用の500㎖中瓶(862円、本体価格、以下同)を発売予定。一般向けには11月15日に334㎖瓶(698円)をリリースするというから、業務用の動向をウオッチして導入を準備しておくとよい。

売場展開

メーカープロモーションに連動して売場をつくる。広く若年層にアピールする展開が想定されるが、サブターゲットとしてクラフトビールやウイスキーのファンを設定し、「クラフトビール好きの方にお勧め」などのコメントを添える。

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