気温の変化に留意しつつ、鍋商材とミカンを攻める|「これは押さえたい」青果編・2022年10月

2022.09.28

2022.11.09

創風土パートナー 代田 実

秋の深まりとともに売れる商品が変化する10月。秋彼岸が過ぎ、10月に入ると日に日に秋が深まり気温の変化も激しくなる。これに従って売れる商品も変化してくるので、急な温度変化で思わぬチャンスロスが発生するのが10月の青果商売だ。

東京の場合、10月上旬の1日の平均気温は20℃を超え、日中は汗ばむ気候だが、10月下旬になると平均気温は15℃まで下がり、朝の最低気温は10℃近くまで下がるようになる。

このため、上旬はまだサラダ材料や水分の多い梨が売れるが、下旬になると鍋、煮物商材が売れ筋の中心となり、ミカンの動きも良くなってくる。この気温変化に合わせた売場展開、売り込み商品の切り替えが10月の青果商売のポイントといえるだろう。

ボーダーラインは「1日の平均気温が20℃」。一般に1日の平均気温が20℃を下回ると、鍋商材が動くようになるといわれている。この気温を1つの目安として売場展開を切り替えるとよいだろう。

参考までに気象庁の過去30年の観測データをもとに、平均気温が20℃を下回る時期を都市別に記すと次のとおりとなる。

・9月10日ごろ 札幌
・9月20日ごろ 仙台
・10月5日ごろ 東京
・10月15日前後 名古屋、大阪、広島、松山、福岡

また、近年は気候変動が大きくなり日ごとの予測が難しくなっているので、10月になると日本気象協会のホームページで公開される「鍋もの指数」を参考に売場計画を立てるのもよいだろう。

鍋商材(キノコ)

家計調査のデータを見ると、生シイタケ、エノキダケの家計支出は秋口から増えだし、概ね12月にピークとなるのに対し、ブナシメジ、マイタケなどその他キノコ類の支出はここ数年10月がピークになっている。

これは10月が秋~冬への中間期に当たり、前半はバーベキュー、鉄板焼き、炒め物、後半は鍋と食卓メニューが変わる中でどのメニューにも使えるブナシメジ、マイタケなどの消費が伸びるためと考えられる。

売場展開のポイント

それに対応すべく、売場ではどんな料理にも使える汎用性のアピールやレシピ提案、目先を変える意味で2、3種類のキノコを盛り合わせたセット物の商品化を行ってみるのもよい。

ただ、この時期はまだ気温も高いので、思いの他、呼吸蒸散作用の強いキノコ類は品質低下しやすい。パックの内側に水滴が目立つようになったら早めに売り切り、ロスを出さないよう商品管理を行いたい。

鍋商材(白菜、ネギ)

鍋料理には地域性もあれば、各家庭の特徴もあって入れる具材はさまざまだ。そんな中でも白菜、ネギ、大根は多くの鍋に入る鍋商材の中核ともいえる品目だ。

売場展開のポイント

これら品目を展開するに当たり注意すべき点は以下の3つだ。

①絶対に品切れさせない

入れる具材の種類が多い鍋料理は、青果以外の精肉、鮮魚、加工日配食品など店全体の買上点数アップに貢献する貴重なメニューだ。

仮に鍋材料を買い求めに来たお客が白菜が品切れしていたため、鍋にするのをやめてしまったらどうだろう。

店全体の売上げを落とす原因になってしまう。だから、鍋に不可欠な白菜、ネギは絶対に品切れさせないよう、多めの安全在庫を持っておくようにする必要がある。

②値頃を意識する

鍋商材のうち、1品目でも値頃を外れる価格のものがあれば、そのために鍋を控えてしまうお客もいるだろう。比較的価格が安定している白菜はともかく、ネギや大根は高値時にはネギ1本や大根2分の1をメインにするなどして買いやすい値頃での販売を意識するようにしたい。

③「もう1品」に誘導する

白菜など確実に鍋に入れる商品の隣りに、水菜やスダチなど「もう1品」、鍋に入れるとおいしい食材を並べて提案することにより、買上点数を増やすことができる。普段の商売で、売上アップを図るひと工夫としてぜひ実践してほしい。

10月~11月が販売ピークとなる柿だが、例年9月下旬以降に露地物の刀根早生柿がどっと出回るタイミングで本格的なシーズンに入る。このタイミングを逸すると、競合店に対して売り負けする原因にもなりかねないので、産地状況を随時把握して売込みタイミングを逃さないようにしたい。

売場展開のポイント

出始め期の注意点を指摘しておく。近年は気候温暖化の影響で、夜間の温度が下がらずオレンジ色に着色せず緑色が残ったまま出荷される柿が多くなっている。特に出荷時期が早い渋抜き柿の「刀根早生」に多い傾向があり、お客から「渋いのではないか?」と質問されることも多いはずだ。

この場合、「気温が高く着色が遅れていますが、果肉の熟度は食べごろになっていて、渋もしっかり抜けているので安心してお召し上がりください」と説明しよう。また、売場でその旨をPOP表示するのも忘れないようにしたい。

また、商品管理を徹底したい。10月に多く出回る「刀根早生」「平核無柿」など渋抜き柿は、富有柿など甘柿に比べて果肉が柔らかく、軟化しやすいので売場での品質チェックをしっかり行いたい。

また、リンゴやバナナなどエチレンガスを生成する商品と一緒に保管陳列すると、エチレンガスの追熟効果で軟化が進み、商品ロスの原因になるので離して管理するなどの対策が必要だ。

品種の違いを分かりやすく表示することも重要だ。柿には富有柿などの甘柿と平核無柿などの渋抜き柿があり、多くの場合、甘柿にはゴマと種があり果肉は硬めだ。

このため、お客の好みも別れることが多く、売場では輪切りにした商品見本を陳列し、甘柿か渋抜き柿かを分かりやすく表示することが望ましい。それによって、なお一層買いやすい売場になり、柿の売上アップにもつながるだろう。

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