10月は意外に惣菜は売れず、秋の味覚を打ち出しつつ、コロナの状況と併せ対応を|「これは押さえたい」惣菜編・2022年10月

2022.10.19

2022.10.20

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

10月は各地で秋祭りが開催される他、行楽シーズンを迎え紅葉狩り、リンゴ狩り、キノコ狩り、柿狩り、芋堀りなどに出かける機会も増える。大きなイベントは31日(月)の「ハロウィーン」になる。台風シーズンを迎えるため天気予報は常にチェックして過剰在庫にならないように注意する。

2021年10月の家計調査では、おにぎりが104.1%、他の主食的食品(スナック)が108.8%、コロッケが106.6%、ギョーザが106.8%、惣菜セットが116.8%、調理食品が105.1%、弁当が105.7%、寿司が106.0%、調理パンが106.5%、うなぎかば焼きが131.7%、サラダが110.4%、カツレツが104.8%、天ぷら、フライが102.9%、ハンバーグが104.7%と前年を上回った。前年を下回ったカテゴリーはシューマイが88.3%、焼き鳥が97.3%だった。

特におにぎり、スナック、コロッケ、ギョーザなどが需要が高まる「ゴールデンカテゴリー」であるため売り逃しがないようにする。

おにぎり

おにぎりは3月、5月、8月、10月、12月と人が動く時によく売れる。10月は需要も高く、21年も前年を上回った。100円~130円の従来のフィルムおにぎりの他に、200円~248円クラスの具だくさんおにぎりも販売したい。

売場づくり

「のり弁おにぎり」「釜飯おにぎり」「唐揚げおにぎり」などの「具だくさんおにぎり」をインストアで製造してはどうか。インストア製造のおにぎりは生産性を考え150円以上のものをつくりたい。

他の主食的食品(スナック)

スナック類は秋冬によく動き12月にピークを迎える。10月は気温が下がるため「ホットメニュー」がテーマになる。熱々出来たての「おでん」「中華まん」「お好み焼き」「たこ焼き」「タイ焼き」「ピザ」「パスタ」「焼き芋」を販売したい。

売場づくり

惣菜売場は常温販売が主流だが、秋からは時間を決めて「ヒートランプ」を設置して保温しながら販売したい。最近はサツマ芋が人気であるため、「焼き芋」「中華ポテト」「大学芋」「スイートポテト」にも注力したい。

ギョーザ

昨年10月はギョーザが異常数値(前年比106.8%)だった。マスコミなどの影響もあったかもしれない。21年のギョーザの購入額(家計調査2人以上)ナンバー3は、1位「宮崎市(4184円)」、2位「浜松市(3728円)」、3位「宇都宮市(3129円)」であった。

売場づくり

惣菜部門は冷凍ギョーザを使用した「焼きギョーザ」が主流。宮崎ギョーザ、浜松ギョーザ、宇都宮ギョーザのご当地ギョーザを品揃えしたい。焼き方も「油少なめ」と「油多め」の違いで食感が違うため使い分けるとよい。10月の反動から11月、12月は急激に需要が下がるため注意する。

惣菜材料セット

惣菜材料セットの売れ方に注目。秋から冬にかけて惣菜材料セット(ミールキット)がよく動いている。21年10月は前年比116.8%と2桁成長であった。「収穫の秋」「食欲の秋」が影響しているかもしれない。

惣菜売場は「材料セット」の品揃えはないが、売上げが取られないよう「惣菜盛り合わせ」に力を入れて販売する。

売場づくり

10月は惣菜がよく売れる月でもあるため、定番商品だけでなく「大型パック」や「揚げ物セット」「天ぷらセット」「ロースト肉セット」「鉄板セット」「煮物、おかずセット」を製造して販売したい。

トレンド商品

イングリッシュブレックファスト

イギリスの朝食は豪華だ。卵焼き、ベーコン、ソーセージ、キッシュ、グリルポテト、グリルトマト、マッシュルームソテー、赤インゲンマメのトマト煮、それにトースト、スコーン、紅茶、コーヒーで朝食を取る。

惣菜売場でも朝食メニューとして「卵焼き」「ソーセージ」「キッシュ」「ポテト」などをセットにした商品を朝だけ限定販売し名物メニューにしたい。カフェを併設している店は数量減限定で「モーニングサービス」として提供してみるのも良いだろう。

ポークソテー(豚テキ)

日本の惣菜売場は揚げ物が多く、グリル(鉄板焼き)、ロースト(オーブン料理)の品揃えが貧弱だ。今月は鉄板や万能調理器がある店は「ポークソテー(豚テキ)」に挑戦してほしい。豚ロース肉の脂身部分に包丁を入れて、ハーブ塩、バーベキュー塩を振って焼くだけ。

深く包丁を入れれば商品化の際に切る必要もない。好みでバーベキューソースをかける。「ポークソティ(豚テキ)弁当」や「丼」で販売するとよい。

強化するアイテム

秋は食材の豊かなときで惣菜の売上げも上がりそうに思えるが、実際は逆の傾向を示していて売上げは低調気味。野菜や魚など豊富な素材で、家庭内で秋のメニューを作る場合が多いので、年間を通して売上げ指数は低い。要注意の月である。

そうは言うものの、1年のうちで一度は食べたくなるメニュー(マツタケご飯、クリご飯、カキフライ、サンマなど)の季節メニューを提案する必要がある。秋の季節商品はお客が年に一度は買う率が高い商品であるため、安く売るのではなく、食欲をそそるように見栄えも良く、おいしい商品を提案し継続して購買を促す必要もある。

季節感のある商品は、土日と祝日に品揃え強化する。季節商品は売り残しのないように早めに見切って売り切ることも大切。売り込み数量を調整する。

コロナの収束具合による品揃えも勘案しておく必要もある。経済が回復することにより、惣菜の売上げも大きく変わるので(仕事が忙しくなれば中食の需要は大きくなる)、世の中の動きを見て計画を立てておく必要もある。物価上昇などの変化にも気を付け、そうしたときは、手ごろな価格のタンパク質(ひき肉、鶏肉、豆腐など)を使った低価格商品(コロッケ、メンチ、揚げ出し豆腐、鶏唐揚げなど)の定番商品を強化する。

今年の秋は長期計画よりも短期計画で、過去のデータによる定番商品を重点的に品揃え計画を立てるよう気を配るようにする。

また、10月の惣菜全体の売上げはそれほど高くはないが、弁当の売上げが伸びているので力を入れると良い。

ただし、気温によって売上げが上下するので天気予報の寒暖には注意して、気温の低い日は弁当、寿司の数量を下げるなど、予報によって加減してロスを少なくすることが必要。

地域の秋の祭りにも注意したい。ちらし寿司など、その土地、土地の料理が大量に売れることがあるので地域一番を目指して商品化を強化すことが大切になる。

コロナによる景気傾向にも気を配る必要がある。景気が悪くなると惣菜の売上げも悪くなり、さらに高級志向もなくなるので売る商品を見直し、人気のいつもの定番を売り込むことが必要となる。いつでも商品計画のスイッチの切り替えができるようにしておくことを忘れずに臨みたい。

そぼろ三食チキン南蛮弁当

ボリュームとおいしさ、満足感を詰め込み、さらに価格を抑えた満足感弁当。ランチだけはなく夕食時のメインにもなる商品。ただし、夕食用には15時くらいに作ってご飯のおいしさを訴求するなどの作り方に気を配る。

作り方

トレーにご飯を盛り付け、のり弁の要領で3分の1に卵そぼろ、中央の3分の1は人気定番のチキン南蛮、残りの3分の1にはチキンのそぼろを盛り付ける。紅ショウガ、または漬物を添える。

おいしくするポイントは、チキン南蛮にかける甘酢マヨネーズソースで、レタスを加えソースは多めにかける。ソースは固めにしておくとよい。さらに刻みネギ、白ゴマを振りかけてメインのおかずに仕立てる。甘めのソースが満足感を演出。

残りの3分の1には、鶏ひき肉のそぼろを盛り付ける。自家製にしてコストの調整をしてもよい。

スイートコーン入りポテトサラダ

サラダの売上げのデータを見ると、地域によってばらつきがあるものの、いろいろなサラダの数字の中でポテトサラダの売上げが初夏の6月と10月に多い。

北海道の新ジャガ芋を使った秋限定の「北海道季節のポテトサラダ」が季節感を演出して人気となる。

さらに商品の付加価値を高めるために、スイートコーンをトッピングする。スイートコーンは甘みのある柔らかいスイートコーンの粒を業務用の缶詰で探して使用すること。冷凍のものは安く調達できるが、甘味が少ない傾向にあることからここでは避ける。甘いコーンが季節感を演出してくれるので材料に気を配る。

ポテトサラダと共に売れるのがマカロニサラダだが、不思議なことにポテトサラダが良く売れると、マカロニサラダが売れず、マカロニサラダが良く売れると、ポテトサラダも良く売れるということが多い。

2つのサラダが同じような数量で売れることはほとんどないので計画をするときは数量に気を付ける。マカロニサラダをおいしくする計画を立てるとよい。

ポテトサラダを量販するには大サイズ、中サイズ、100円サイズなどの大きさを変えて計画を立てる。

サラダのトッピングを変えることで、さまざまなバリエーションの、いろいろなポテトサラダが作れる。季節に合わせて、小エビを、焼き豚を、ゆで卵(輪切りなど)をトッピングすることで新しいポテトサラダのメニューが創出できるため、デパ地下などのサラダ売場を参考に新しいサラダを考えること。

ポテトサラダが古いメニューと考えるのは間違いである。これを機会に新メニューを開発してほしい。

サーモン尽くし盛り合わせ寿司

いまやマグロの人気を上回ると言われるサーモンの寿司。秋の寿司メニューから外せない定番商品になっている。

巻き寿司は裏巻き(のりの方を内側に巻く巻き寿司)にして、具にはサーモンの切り身と卵、マヨネーズで巻き、トッピングにイクラを盛り付ける。握り寿司はサーモンのスライス、ワサビマヨネーズ(ワサビとマヨネーズを合わせたもの)をワサビ代わりして握ってもよい。レモンのスライスを挟んで見た目も良く作る。

寿司はたねが大事と言われているが、実際には寿司飯の方が大事だということを知らない人が多いのは残念である。寿司の売上げを上げたいのならたねも大事だが寿司飯の管理をしっかりと覚えて欲しい。

寿司飯の管理

寿司飯は作りたてが一番おいしいが、惣菜の場合には、作ってから陳列をするのでそれができない。寿司飯の時間管理をすることが必須条件となる。

巻き寿司、いなり、ちらし寿司は午前中からランチ需要で売り込み、握り寿司など生たね使用の寿司は、午前中は1、2アイテムに限定して売場づくりをする。

データを見ると生たね使用の寿司は15時以降に良く売れることが分かっている。寿司商品は冷蔵ケースに入れると冷えて寿司飯が硬くなってしまうため、15時以降に作って夕方ピーク時に備えると良い。

握り寿司は、売れたら作って補充、売れたら作る時間管理が売れるこつと知るべし。夕方の人員確保が重要になる。スーパーマーケットの寿司は夕食需要が多いことが分かっているのでおいしいものをおいしく食べられるように提供する必要がある。寿司飯がおいしければ夕食需要が増えるのである。

秋刀魚の南蛮漬け

秋の季節感を表す商品でかつ売れる商品となるとサンマ(秋刀魚)を使った惣菜となる。冷凍のサンマの3枚におろしたものを使って、甘酢を使い商品化をする。この商品をおいしく、しかも売れるようにするには、幾つかのポイントがあるのでこれを覚える必要がある。

①唐揚げにしたサンマを甘味のある三杯酢に漬け込むのだが、酸味が強いと売上げが上がらない。特に子どもや男性が食べないからである。酸味が低くで子どもも食べられる三杯酢で、少し甘みがあり、少しとろみのあるたれを探して使用する。

②サンマを揚げ過ぎないこと。揚げ過ぎて硬くなるとおいしくないので注意。南蛮漬け商品は酢を使うことで日持ちが良く消費期限を当日限りではなく、D+1、2にすることができるので、2、3日色が変わらない野菜を選ぶようにすることも重要。ピーマンやパプリカなどを使うと長持ちをする。

人気のある甘酢がある。それはご飯を炊いて寿司飯を作るときに使う、業務用メーカーの「合わせ酢」である。これをベースにしてしょうゆを少し入れたり、おろしショウガを加えたりして味の変化を付けると手軽で人気も高く使いやすい。寿司飯を作るときに合わせる酢だけにだしも効いていて使いやすい。知っておくと便利である。

根菜と玉コンニャクの含め煮

秋から冬に気温が下がってくると煮物商品が売れるようになる。本来惣菜は、煮物を基本として進化してきた。煮物商品は地味だが、柱としての存在を忘れてはならない。ただ、煮物は手間がかかり人手もかかり、一品当たりの売上げも小さいなど理由でないがしろにしていないだろうか。

作り方

5種類の根菜を分けてスチームコンベクション(スチコン)で煮る。これがおいしくする基本になる。スチコン用の煮物鍋があるのでこれを購入して使う。

①玉コンニャク、ゴボウの2種類の材料を薄口しょうゆ(麺つゆなどを使用してよい)を使っただしを使用していっしょに煮る。

②レンコンとニンジンの2種類をいっしょにしてしょうゆ色の付かないだしで白っぽく煮上げる。

③サツマ芋は煮崩れしやすいので短時間で煮上げる。みりんと砂糖、塩少々で甘く煮上げる

スチコン用の鍋に材料を入れ、材料がかぶるくらいにそれぞれの煮物のだしを入れて、上にクッキングペーパーで、貼り付けるように紙ぶた(紙の落としぶた)をし、さらに鍋のふたをしてスチコンに入れてオーブンモードの最高温度(300℃前後)で普通の煮物のように煮る。

沸騰してから(これが大事。いつ沸騰したか分からないので中心温度計を入れておき、確かめると良い)20~40分で煮上がる(煮える時間は材料によって変わる)。

煮上がったらスチコンの外に鍋を出して自然に冷ますと味が染みておいしくなる。ただし、コンニャクは味が染みにくいので煮上がったら一晩置いてさらに次の日にもう一度煮ると味が染みる。

手間のかかる煮物を、スチコンを使って調理する方法を導入したい。店の自慢料理商品として人気が上がることから一考の余地がある。意外に簡単なので慣れると作りやすい。

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