年末商戦を意識した取り組みを、買い負け時代を生き抜く商品開発に着手|「これは押さえたい」精肉編・2022年11月

2022.10.31

月城流通研究所 月城聡之

今年の11月は年末商戦に向けて真剣に取り組む必要がある。まず、輸入肉の相場が高く、米国産やカナダ産の豚肉で利益や売上げを簡単に確保できなくなっていることが、重大な問題の根幹にある。

引きずられるように、国内の畜肉に関しても相場は高い。また、牛豚鶏3畜種で最も安価な鶏肉に関しても、クリスマス商戦の需要と重なり高騰している。

輸入肉が高騰していることは、相対的に国産畜肉に割安感が出るということである。

売場づくりを仕入先の在庫状況と照らし合わせながら、臨機応変に対応していく必要がある。消費者ニーズをうまく捉えながら、商品化と売場づくりを模索していく。

新型コロナの影響で、工場での人員確保ができていない。そのため、例えば鶏肉では、セセリや砂肝などの副産物が手に入りにくいだけでなく、クリスマスに向けて手羽先チューリップなども手配できないと予想できる。工場や物流に関しても、引き続き人員不足から、このような商材の変わりとなる商品展開を考えておかなくてはならない。

買い手市場と売り手市場の立場が世界中で逆転していることも注視していく必要が出ている。現在の日本は、小売業に主導権がある状態が過去から続いているが、海外ではすでに、売り手である生産やメーカーに主導権が渡っている。

食料生産量に限りがあるため、企業として、国として売上げや利益が出る方へ販路がシフトしているのである。「安い日本」といわれる一方で海外は給料も上昇し物価が上昇しているため、日本は貿易の段階で、すでに商品の購入に対して買い負けしている。

これは深刻な状況で、食糧自給率が4割の日本にとっては死活問題であることはいうまでもない。この状況で値引き交渉を積極的に行うと、当然ながら販売してもらえなくなる状況が刻一刻と近づいているという危機的状況を感じてもらえるだろうか。

いま、真剣に取り組まなくてはならないのは、相場が高くても利益を残すような売り方を考えることである。いままでと同じ売り方ではない商品化、買いたくなる商品を生み続けることが求められる。

精肉

国産黒毛和牛カタロースすき焼き用ハーフカット100g当たり798円

黒毛和牛カタロースすき焼き用のハーフカットを展開する。食事を想像すると、ハーフカットの方が断然消費者ニーズにはかなった商品化と考えられる。

当然ながら、商品化には倍の時間がかかってしまうが、年末商戦を成功させる近道となる。12月の年末商戦を前に、11月には年末販売する和牛の顔出しをしっかりと行っておく必要がある。

最近では、年末一発勝負で「売れた」「売れない」を評価する企業が多いが、年末にこの企業ですき焼き用を購入しようと、消費者が検討をするのは11月からの1カ月といえる。その間に、商品の魅力をしっかりと伝える必要がある。

年末商戦までに行わなければならない企業の行動は、年末商材を消費者に一度食べてもらうことである。特に近年は新型コロナウイルスの影響で、少し高価な物を購入するものの、失敗したくないという消費行動から、一度食べたものを購入する傾向は一層強くなっている。

そのため、年末商戦と同じ売価帯の商品の品揃え(顔見せ)に加えて、同じブランドの少量パックでお試し購買を行ってもらうようにする。

今回の商品化(ハーフサイズ)は、消費者ニーズから生まれたすき焼き用の1つの展開方法となる。

実際、従来の盤面の大きな和牛カタロースすき焼き用を調理する際、サイズが大きすぎてカットしたことがある人も多いのではないだろうか。

特にカタロースは大きすぎるため、ハーフサーズにしても十分料理を楽しめる。むしろ、ハーフサイズの方が食べやすくて、枚数が増えるため、子どものいるファミリーには購入しやすい。

国産銘柄豚ソトモモ切り落とししゃぶしゃぶ用100g当たり228円

銘柄豚を使用した「ソトモモ切り落とししゃぶしゃぶ」を拡販する。

銘柄を使用する理由は、競合とはバッティングしないブランディングができる部分であり、輸入豚肉が例年よりも高く推移しているため、銘柄豚肉に割安感が生まれていることにある。

「ロース」「カタロース」は、比較的高めの価格設定となっているが、「モモ部位」や「カタ部位」は、こま切れなど安く売ってしまっている企業も少なくない。そのため、「モモ部位」でもスライスとして価値が生まれやすいソトモモ部分を、切り出してしゃぶしゃぶ用として価値を高めた価格設定で販売する。

スライスとして奇麗に商品化することができれば、スライス取りでも良いが、オペレーションを簡素化するため、「切り落とし」タイプのしゃぶしゃぶでも十分価値は生まれる。

特に、脂肪を好まない女性には、豚ソトモモの商品化はニーズにもマッチしている。

売場展開は、しゃぶしゃぶコーナーで販売するが、平日は下段、週末は冷蔵多段ケース3段目など中段でめりはりを付けて展開する。最も量産する「ロース」「カタロース」部位を主力に、利益商材としての展開を行う。

また、最上段は黒豚やイベリコ豚などの丸皿などを展開することで、売場全体をコーディネートするとよい。

半製品

クルトンハンバーグ498円(240g)

国産牛豚合いびき肉のハンバーグにクルトンを周りに付けたクルトンハンバーグ。見た目のインパクトは、売場の中でもピカイチとなる。当然、味もいうまでもなくおいしい。焼き上がりは、中の肉汁と脂をクルトンが吸い、カリッと香ばしく焼き上がる。

中心のたねは、国産牛豚合いびき肉で、ハンバーグの黄金比7:3の合いびき肉を使用する。

おいしさと肉汁「じゅわっ」をさらに増強したい場合は、中心に粗挽き豚ひき肉、外側に中挽き程度の牛ひき肉で包み込むのがお勧めである。

量産するには、手間がかかるため、まずは7:3の合いびき肉を使用するとよい。クルトンはたっぷりと周りに付けることがポイントとなる。

販売場所は、ひき肉売場付近であるとインパクトが強くなる。半製品売場で展開する場合は、たれ漬け商品との選択となってしまうが、ひき肉売場付近で販売すると、夕食のメインとなる可能性が高く、ついで買いの位置づけからメインメニューへと変えることができる。

ひき肉の購入頻度はやや落ちるものの、購入する100g当たり単価はひき肉よりも上昇する。

消費者のファーストインパクトは良いが、次に「どうやって焼くの?」「焼き方難しそう」という思考が生まれることは想像できる。そこで、「コト販促」を実施。コトPOPやレシピカード、簡単な作り方動画などを掲示するとよい。

A5等級和牛展開論

黒毛和牛の等級比率をご存じであろうか。A5等級が最近増えていることは耳にしたことがあるとは思う。具体的には、2002年の格付けがAのうち5等級は13.8%だったものの、昨年22年にはA5等級は56.0%まで増加し、地域によっては6割から7割近くまで構成比が高くなっている。

和牛の血統や生産効率、飼料や肥育の研究が進み、5等級が出やすくなった結果が表れている。生産者の立場に立つと、A5等級を目指せば、相場が高く、売上げにつながるため当然の結果であるといえる。

半面、売りやすいと言われる3等級や4等級の割合がかなり少なくなっており、オーダーをしても仕入れることができない状況が続いている。むしろ、年々増加しているA5等級を使う術を考えていくことが重要ということは、図表を見ると一目瞭然である。

A5等級の和牛は、価格的にも3等級や4等級よりも必然的に高くなるため、例えばリブロースが100g当たり1280円だった場合、パック重量が200gになっただけで、2560円になってしまう。

1つの方法としては、ギフト用や折り箱などを使用した、百貨店や高級焼肉店の「肉おせち」のような、高級側に完全に振り切ってしまうことである。ハレの日には、この方法でパック単価1万円などでも販売可能となるため、年末商戦に向けて展開を進めるのもよいと思われる。

年間通してハレの日ではないので、ウィークデーでも定番で販売していく必要がある。パック単価を上げないように、普段使いできる価格帯で展開するには、パック重量を減らす必要がある。単純にスライスを1枚などでは、魅力的な商品とはならないため、見栄えにもこだわった商品化を行う必要がある。

黒毛和牛3点組み合わせ自由な盛り合わせ980円

小さな1トレーを380円設定し、よりどり3パック980円の、バンドルを1トレーで行う。ロース、バラに加えて、カタやモモ系を上手く組み合わせて、値入ミックスで利益を落とさない仕組みで展開する。

リブロースであれば、1部位からカブリ、芯、マキ、中落ちカルビなどさまざまな見た目の部位を取ることが可能となる。

ロースだけで展開すると、当然利益が圧迫されるので、バラやモモなどを混ぜて展開することがポイントとなる。

トレンド商品

ふぞろいカテゴリー

カナダ産豚肩ふぞろい焼肉ガーリックペーパー味580円(400g)

「ふぞろい焼肉」が店頭に並んでいなければ、すでにトレンドに乗り遅れている。

肉をスライサーでスライスし、高ぶたトレーに盛り付けて展開するだけの、精肉の製造オペレーションで最も簡単な商品化である。

味なし商品以外に、ガーリックペッパーや塩だれ、塩レモン味など、たれ漬け焼肉としても展開できる。豚肉であれば、3mmから5mm程度の厚みで焼肉用として、弁当のおかずにも使える簡便商品である。

「ふぞろいアイテム」は、今年に入り全国に広まり、カテゴリーとして確立する勢いである。

輸入肉の高騰によって、展開できる部位がいままでと異なり、「バラやカタロース、ロース」部位から始まり、いまでは安価な商材にまで広がり始めている。最近では「ボンレスバット」なども、ふぞろいアイテムで展開し始めている。

実は、この展開は、「新たなカテゴリー」が誕生する動きをしていると考えられる。おそらく豚肉の「冷しゃぶ」が全国に定着したのが、25年くらい前であったと思う。冬は「しゃぶしゃぶ」、夏は「冷しゃぶ」提案で、年間とおして豚の薄切り肉が販売されている。

それまでは冬に食べる牛しゃぶしゃぶ用が一般的で、しゃぶしゃぶコーナー自体、夏場にはほとんど品揃え程度しか展開せず、そもそも豚肉はしゃぶしゃぶ展開していなかった。

しかし、豚肉を使用した「しゃぶしゃぶ」展開で、ぽん酢やゴマだれで食べるとおいしいことが巷で広まり、夏場にも豚冷しゃぶ用が展開されるようになった。

そのとき、ロースやカタロースしか展開していなかったが、現在では、「バラ」「モモ」部位だけでなく豚とろなども「しゃぶしゃぶ用」として展開している企業もある。

カテゴリーとして定着する要素として、特定部位での展開ということではなく、さまざまな部位があることが必要である。

「しゃぶしゃぶコーナー」や「焼肉コーナー」「ステーキコーナー」など、コーナー化が成立しているカテゴリーは単品の展開ではない。

切り落としやこま切れのように、定番で使用できる5mm程度の安価な味付け商材、ショウガ焼き商材、焼肉商材として確実に売場づくりが可能となる。

豚肉だけでなく、牛肉のふぞろいステーキなども畜種を超えた展開がすでにされており、今後の展開が注目となる。

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