限られた条件の中、黒豚、カモ肉、肉惣菜に注目、ひっ迫の鶏は商品化に一考を|「これは押さえたい」精肉編・2023年2月

2023.01.04

月城流通研究所代表 月城聡之

この冬は販売する商品の手当や相場高に、苦慮している精肉関係者が多いと思う。

新型コロナに加えて鳥インフルエンザの影響が、結果的に畜肉の生産に大きく影響してしまっている。

持続可能な畜産事業、精肉を考えた商品化や売場づくりを推進し、時代に合わせて、生産から販売、地域の生活者まで、誰一人取り残さない精肉を考えていきたいと思う。

豚肉

国産黒豚(バークシャー種)カタロースしゃぶしゃぶ用 100g当たり398円

2月の売上げのベースはホットメニューの王道「しゃぶしゃぶ」で作る。

ただし、「松竹梅戦略」の「松」に当たるアッパーの黒豚は、システムトレーではなく、扇トレーなど見た目にも異なるトレーを使用することで、アイキャッチとインパクトを与える。さらにトレーをあえて縦に置くことで、売場での印象ががらりと変わる。

商品化は、スライス取りして、透明カップなど用いて立体的に盛り付けることで通常豚との差別化を図る。トレー代もやや高めになるため、商品化もその価値が伝わるように工夫することが必要である。

黒豚の品種はバークシャー種で、「4本の足と鼻、尾」の6カ所が白い豚である。

「六白」としてブランド化されている黒豚もある。

日本のでは、最近は「黒豚」よりも「イベリコ豚」などに注目が集まっているが、海外向け輸出では日本の黒豚は人気が出てきている。「イベリコ豚」が注目されるのは、「黒豚」よりも安く、バラやカタロースの部位別に購入できるところが利点であるということもある。

近年、支持される打ち出し方は、単なる銘柄ではなく、品種など明確に差別化があるものである。そのため、三元豚や四元豚のようにバークシャー種という品種を前面に打ち出して提案すると良い。

国産豚ヒレ肉スパイスステーキ用 200g580円

豚ヒレステーキが売れている。

スパイスを回りに付けた商品の商品化は、まな板が汚れることから懸念されがちであったが、近年のリバイバルブームに乗った形で、スパイスステーキに人気が出ている。

商品化は、ヒレ肉一本の状態で、スパイスを回りにやや強めにまぶしてから、包丁で2cm厚にカットする。断面にスパイスが付かないように商品化するのがポイントとなる。

まな板が汚れるため、作業後には一度まな板を洗う必要がある。そのため、作業の最後に商品化するとよい。

スパイスは、業務用のステーキ用のスパイスだけでなく、粒の粗いブラックペッパーや香草焼きの粉でも商品化ができる。関連販売として、ステーキソースや焼肉のたれなど陳列するだけでも、買上点数アップが望める。

たれコーナー、調味料コーナーが充実し始めていることもあり、関連販売でたれを陳列することが少なくなった。しかし、「どのたれと合わせるのがおいしいのか」「どの調味料がお勧めなのか」、実は消費者は迷っている。販売側としては、「お好みのたれでどうぞ」となりがちであるが、品数が多くなればなるほど何を購入すればよいのか分からないものだ。

関連販売が出来ない場合は、「○○たれと一緒に食べるのがチーフのお勧めです!」といったような打ち出しが、消費者ニーズを捉えた売場づくりではないだろうか。

カモ肉

京都府産京ガモムネ鍋用 100g当たり598円

寒い冬の定番ホットメニューの鍋で、アッパーな畜肉の一つが「カモ肉」である。

2月は消費が冷え込むタイミングであるが、ホットメニューのマンネリから、少し他のものを食べてみようかとなるタイミングであるため、少量でも楽しめるカモ肉をこのタイミングで拡販する。

カモ肉では、ムネ肉をロースと呼ぶこともあるが、部位表示としては、ムネに該当する。

商品化が難しいと思われがちであるが、チルドカモ肉は脂肪面を外側(上側)にしてカットすれば奇麗に切れる。

盛り付けは、日本の和柄の「青海波(せいがいは)」のようにすると奇麗に見える。

カットした端は、比較的脂肪が多く残りがちであるが、カモの脂肪はおいしいだしが出るため、捨てずにパックに盛り付ける。

モモ肉がある場合は、ムネとモモをミックスした商品を作ってもおもしろい。カモ鍋はしょうゆベースのたれを使用することが多いが、濃縮スープの個包装を同梱したり、カモ鍋のたれを関連販売すると良い。

肉惣菜

黒毛和牛ローストビーフ寿司 880円

黒毛和牛バラ肉を使用したローストビーフを寿司飯に巻いたローストビーフ寿司。

大葉を間に挟み、少しだけイクラを散らすことで高級感が出るだけでなく、高く販売することができる。外食では定番となっている肉寿司であるが、認定生食用食肉取扱者や生食ルームでの加工が必要となるため、ハードルはあるものの特に地域的に所得が高いエリアでは購入の可能性の高い商品である。

トレーは黒金の高級感のあるふた付きトレーを使用する。たれはローストビーフソース、レホールを入れる。トレー内にたれや調味料を同梱する場合は、ラベルシールにたれの原材料表示は別途表示、もしくは、たれの原材料表示もラベルシールに記載する必要がある。

トッピングでは、今回イクラを散らしているが、キャビアやトリュフなども外食の肉割烹では定番となり、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で広く一般的になっている。購入した消費者が、SNSにアップすることも想定した、奇麗な商品化が鍵となる。

和牛俵型手ごねハンバーグ2個セット 300g1280円

2023年2月14日のバレンタインデーは火曜日でウィークデーである。

依然としてコロナ感染者は多いものの、行動制限などは比較的緩和されているため、外食ディナーの選択肢は昨年よりは多くなると想定される。

しかしながら、ウィークデーということもあり、比較的家族やパートナーと過ごす時間を大切にする生活者も多い曜日回りのため、バレンタインの訴求はしっかりと打ち出していきたい。

バレンタインといえばチョコレートを渡す習慣が日本ではあるため、ワインと一緒に楽しむ大人の夜、また、ファミリーは愛情を込めた洋食ディナーを想定して、メニュー構成を考える。

ワインに合うディナー、ファミリーで食べる夕食も含めてハンバーグステーキは最適なメニューである。

そこで、手ごねハンバーグを俵型にした、外食店でも人気の俵型ハンバーグを提案する。肉は高級感の出る和牛、安価な輸入牛など多くのグレードで作ることで幅広い層へ拡販できる。

スライスの端材もハンバーグに混ぜ込んで、しっかりと利益商材になるよう取り組みたい。素材によって細引き、粗びきと食感や味を楽しめるように調整できるのも、インストアでの商品化の醍醐味である。

黒毛和牛のトリミングした脂肪を少し混ぜて、歩留まり率を上げることもポイントとなる。和牛100%であれば、細引きでハンバーグに仕上げる。あか牛など赤身率の高い牛であれば10%程度脂肪を混ぜてあか牛100%ハンバーグとして販売できる。

国産牛や輸入牛を使用する場合は牛100%ハンバーグが価格的に高くなると感じれば、豚肉との合いびきにしてハンバーグを作る。牛:豚は7:3がハンバーグの黄金比と言われている。輸入牛であれば、和牛脂入りハンバーグなどもおいしいハンバーグとして仕上がる。

バレンタインのハンバーグはハート型にすれば売場が華やかになるため、アイキャッチ商品として品揃えしておく。

押さえておきたい最新動向

ひっ迫の鶏肉

鶏肉が鳥インフルエンザのためにひっ迫している。ブロイラーと呼ばれる鶏肉は、約7週間(45日~55日程度)で出荷されるため、2カ月あれば回復すると勘違いしている人も多いが、ブロイラーを産むための親鳥(PS)や、さらにその親である原種鶏(GP)も同じ鶏であるため、簡単に回復するわけではない。

22年10月末から鳥インフルエンザが猛威を振るい、11月25日現在防疫措置対象が、11都道府県17事例(20農場3施設)で約289万羽となっている。例年よりも、早い段階で鳥インフルエンザウイルスが野鳥の死骸や糞から検出されており、農水省からも農場防疫対策の徹底の通達が出ている。

日本ではこれまで、鶏肉や鶏卵を食べて、鳥インフルエンザウイルスに感染した例は報告されていない。また、鳥インフルエンザウイルスは加熱すれば感染力がなくなるため、万が一食品中にウイルスがあったとしても、食品を十分に加熱して(食品全体で70℃以上)食べれば感染の心配はない。

秋から冬にかけては、養鶏場の視察などを防疫の観点から行っていない農場がほとんどであるのは、このようなウイルスの持ち込みを最大限減らすためである。十分に注意をしていても、野鳥や渡り鳥などを媒介にして、鳥インフルエンザの影響が出てしまう。

サステナブルな畜産業界の将来を考えると、定期定量が調達しやすい鶏肉だからといって、いままでのように安売りするのではなく、付加価値を付けた販売方法を検討する必要がある。

銘柄鶏ムネ肉焼きつくね用 180g358円

居酒屋や焼き鳥店では定番となっているつくねを鶏肉の付加価値商品として提案する。

冬場につみれを店内で商品化している企業は多く、そのつみれをハンバーグ型にして大葉を巻き付ければ簡単につくねとして商品化ができる。いままでの商品の延長線上でできる、簡単オペレーションである。

トッピング用の卵黄は、業務用の殺菌された凍結卵黄が販売されているため、リスクのある生卵を使用しないことがポイントである。トッピングとしては卵黄以外にも照り焼きのたれや明太マヨなども、居酒屋メニューとして認知度が高く人気商品である。

ムネ肉を100g48円で安売りすることも売場活性化につながるが、付加価値を高めた販売方法も併せて考える必要がある。

この冬のように数量がそろえられないときに、生産者にクレームを言うのではなく、限られた商品で別の利益確保の方法で、生産者から販売者までタッグを組んで販売してもらいたい。

最終的に消費者である生活者が求めているものは、安い商品ばかりではなく、「食べる幸せ」であったり、食に対する「価値」であると意識してもらいたい。

情報発信の仕方についても考えていきたい。いままでは、店内写真撮影禁止など、情報の拡散を恐れた「鎖国の時代」であった。

しかし、スマホ社会となり、SNSを通じて消費者が店を紹介して客数が増える時代となっている。SNS映えを狙った売場づくりをし、むしろ店側が「どんどん撮影してください」とアピールしている店が国内外で増えている。従業員がSNSで商品の発信をしているのも、現代ならではの販促と言える。

消費者も、商品化が美しく、接客が良ければ、積極的に拡散してくれるし、対応があまりにも酷ければ炎上もする。まさに、誠実に商売をしなければ生き残れない時代となっている。

それは、消費者にとっての価値が単純に価格だけでなくなっていることも意味していると思う。一方で店側は、いまだに価格だけに価値があると信じているのではないか。

そのため、今回の鳥インフルエンザのように自然の猛威が振るったときにも、商品がなければ対応できないという事態になってしまっている。価格訴求のみの特売は、商品がそろわなければ売上げが作れないからである。

今回は、鳥インフルエンザの影響で国内鶏の調達が著しく低下し、新型コロナの影響で輸入鶏の調達も不安定となり、ダブルパンチを食らった精肉となってしまった。

近い将来、価格訴求だけで環境に配慮していない企業は、社会から淘汰されることも起こるかもしれない。激動の環境変化の中、生き残りをかけた精肉維新がいま始まろうとしている。

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