外飲みは厳選、年末の自宅パーティラッシュを全面サポートする|「これは押さえたい」酒編・2022年月12月
2022.12.24
2022.12.27
酒文化研究所 山田聡昭
12月の酒類販売のテーマはホームパーティ。値上げや物価高で財布のひもを締めるお客も、決して節約一辺倒ではない。さらにコロナ禍でレジャー費が減り、実は預貯金が増えている人も少なくない。ここぞという「機会」を想起させて、酒類のグッドチョイスを誘導する。
スパークリングワイン
乾杯はパーティのスタートのシンボルだ。どんな酒を選ぶかでその集まりの性格が出る。特に酒にこだわりがない人たちならビールを選ぶだろう。
こだわりの地酒好きは日本酒だが、スパークリング清酒やアルコール度数が低めの酒をチョイスするかもしれない。ちょっと華やかに、さらにおしゃれにしたかったらお勧めはスパークリングワインだ。
乾杯のスパークリングワインの基本は辛口の「シャンパン」だが、酒を飲み慣れていない人が多ければやや甘口の「アスティ・スプマンテ」辺りを1本入れておく。カジュアルな雰囲気で始めたければあえてシャンパンではなく「プロセッコ」。炭酸ガスを得る二次発酵をタンクで行うためシャンパンよりもリーズナブルで軽快な味わい。世界で一番飲まれているスパークリングワインだ。
「フランチャコルタ」を選んでおしゃれを強調するのもいい。シャンパンと同じクラシカルに瓶内二次発酵させる北イタリアのスパークリングワインで、日本ではまだあまり知られていないので、流行を先取りした感じが出る。同じクラシックな製法の「カヴァ」はスペイン産。リーズナブルなものから高価なものまで選択肢が豊富だ。
売場展開
複数の種類のスパークリングワインをそろえて、それぞれにおすすめのポイントを添えて推奨する。オーセンティックにするなら「シャンパン」、カジュアルにするなら「プロセッコ」、おしゃれにするなら「フランチャコルタ」、コスパ重視なら「カヴァ」とガイドする。
ノンアルコール酎ハイ
ノンアルコール酒類の市場は着々と拡大している。これまではビールばかりだったが、ワインや酎ハイが登場してバリエーションが増えた。味もかなりレベルが上がり、ノンアルコールでも十分な飲み応えを感じるものも増えている。
コロナ禍もユーザー像の追い風になった。コロナ禍で酒を提供できなかった飲食店の一部はノンアルコールの酒類を提供し、そこで飲んだのがきっかけで家でも飲むようなった人が出ている。
また、巣ごもり暮らしで運動不足を感じたり、通勤がなくなった分、自由時間が増えて飲み過ぎたりした人が、ノンアルコール酒類で飲酒をコントロールし始めたとも聞く。
パーティが多い12月はふだん酒を飲まない人が酒宴に参加する。あるいは酒を飲みたくない人や控えている人も座を共にする。そこにノンアルコール酒類は必需品となる。飲む人も飲まない人も同じ場を共有できるツールだ。また、長時間のパーティで酔いをコントロールするために時々ノンアルコールにするスタイルも出てきている。
さまざまなノンアルコール酒類が登場しているが、いま注目は急成長中のノンアルコール酎ハイである。酎ハイ、サワーは酒場ではビールの次に飲まれている酒だろう。炭酸の刺激とレモンの酸味でノンアルでも飲んだ感がしっかりある製品も多い。
売場展開
パーティ向けの売場の一画にノンアルコール酎ハイのコーナーを設ける。あるいは冷蔵ケースの元売場に「ノンアルはパーティの必需品」「飲めない人も楽しめる」などのメッセージを添える。
クラフトビールのグラス付きセット
クラフトビールはマニア向けの市場は沸騰しており、人気商品は350㎖で1000円以上するものがあっという間に売れてしまう。一方で裾野の拡大を目指す350㎖で260円~350円の商品群は、なかなかブレイクスルーできずマスになってこない。
この価格帯にはナショナルブランド(NB)の限定品もあり、香味も上々、話題性もあって競合するため、クラフトビールとNBビールの線引きがあいまいでカテゴリーとして見えてこないのかもしれない。
だが、飲むシーンを明確に変えると、クラフトビールはマニアでない層にも届く。たとえば特徴的なグラスで飲み比べをさせる。ベルギービールはビールごとにグラスがあり、バリエーションが豊富だ。そのビールの良さが生きるグラスがあるということでもある。グラスと複数のビールがセットになった商品は、パーティでの飲み比べができ、手土産にもちょうど良い。年末商戦でトライしたい商品だ。
売場展開
スパークリングワインの売場にクリスマス用のビールとしてプラスする。アルコール度数がスパークリングワインよりも低く酒に弱い人でも飲みやすい。
トレンド商品
ジャパニーズ・クラフトジン
世界的なクラフトジンのトレンドは根強く高価で取引されるため、日本からは洋酒メーカーだけでなく焼酎メーカーが続々に参入、最近は清酒メーカーの参入も見られる。ジャパニーズ・クラフトジンのパイオニアは6年ほど前に発売された京都蒸留所の「季の美」とサントリーの「ROKU六」だ。
どちらも海外での評価が特に高く、出荷先はおそらく海外向けの方が多いだろう。この2つの商品は従来のジンと製法が異なり、使用するボタニカルと素材ごとに好機を抽出して後でブレンドして仕上げる。一般的な商品の多くはボタニカルを一度にスピリッツに漬け込んで、そのまま再蒸留して香気成分を取り出す。この違いを料理に例えて「炊き合わせ」と「煮物」と表現することがある。
次々に登場するジャパニーズ・クラフトジンは、ボタニカルを漬け込むベーススピリッツに芋焼酎を使ったり泡盛を使ったりと個性的だ。ボタニカルもユズ、緑茶、サンショウ、ワサビなどメーカーの地元の日本特有の素材が使われている。ウイスキーと同じようにクラフトジンで「ジャパニーズ」がブランド化していく可能も少なからずあり、フォローしておきたい商品群だ。
売場展開
高額なものは高額なウイスキーを入れている鍵付きショーケースで取り扱いをアピールする。3000円以下の商品は定番棚にサブカテゴリーが見えるようまとめ、ショーケースにも商品があることをスタンドPOPで告知する。