倹約志向の強まり予想、リーズナブルながら楽しめる提案で攻める|「これは押さえたい」酒編・2023年月1月

2022.12.28

酒文化研究所 山田聡昭

1月のカレンダーは3連休となる第2月曜の「成人の日」は8日だ。祝祭日が上旬に固まっており、これが終わるとふだんの生活リズムに戻り、淡々と過ぎていく。厳しい寒さの中、物価高対策で倹約志向を強めるお客に、安価で楽しめる酒をお勧めする。

飲んでびっくり! おいしすぎパック酒

紙パックの清酒は年配のヘビーユーザー向けの大衆酒のイメージが強く、新規ユーザーの取り込みが不十分だ。しかし、商品のクオリティは高く、ブラインドで試すと720㎖で1000円クラスの酒と遜色のないものが少なくない。

実際、「全国燗酒コンテスト」や「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」などのコンテストでは、最高金賞や金賞を受賞しているものが幾つもある。

倹約志向の強まりが予想される中、1月中旬は紙パック清酒のトライアルを促し、リーズナブルでおいしい商品の新しいユーザー開発を進める。パック清酒の値ごろ感を持っていない人も多いと考えられ、絶対金額でリーズナブルだと判断する傾向にある。ハードな価格訴求は必要なく、アワードの入賞実績や味のタイプ、お勧めのペアリングの提案で関心を引く。

戦略商品は900㎖の中容量のパックだ。商品単価は800円前後でトライアルしやすい。さらに小さい180㎖や300㎖の商品ラインアップがあれば、それらもそろえてトライアルを誘導する。そのための期間限定セールやクーポン割引、ポイント還元などの価格プロモーションは意味がある。

品揃えは1.8~2ℓの商品の扱いがあるものを優先し、1つのブランドで小、中、大の商品を見せてアピールする。

売場展開

ゴンドラエンドでは上段から容量違いにバーチカル陳列で展開し、ブランドのビジュアルを強く訴求する。ひな壇では容量ごとにまとめて陳列し、中小サイズのトライアルのしやすさのアピールに重点を置く。

900㎖飲み比べパック

きちんと作る極上ハイボール

すっかり家飲みに定着したウイスキーハイボール。コロナ禍に伴う巣ごもりで「外飲み」から「家飲み」へのリプレイスが最も成功した酒である。手軽なレディトゥドリンク(RTD)製品が好調だが、ウイスキーをボトルで購入し、自分で作る手作りハイボールも同様に人気であるのは、リーズナブルであること以上に好みのウイスキーを選べるため。

バニラのような甘く華やかな香りが好きならばバーボン、奇麗な香りに適度なスモーキーさが好みならばスコッチの一部など、選択の幅は広い。

ここで思い出して欲しいのはウイスキーハイボールがブレイクし始めた2008年前後には、人気女優を起用して「おいしいウイスキーハイボールのつくり方」が盛んに啓蒙された。氷をたっぷり詰めたグラスにウイスキーを注ぎ入れ、マドラーでよくかき混ぜてウイスキーを冷やしてから、冷えたソーダを注ぐというものだ。

濃さは3:1~4:1(ソーダ:ウイスキー)。このとおりにきちんと作ると、ハイボールはおいしくなる。

無駄な出費は抑えたいが生活レベルは落としたくないと考える人向けに、「少しの手間を加えるだけでグンとおいしさが増すウイスキーハイボール」という提案はうれしい。もう一度基本に戻って、ワンランク上の味わいを家庭で楽しむようお勧めする。

売場展開

ウイスキーは国産、スコッチ、バーボンの3カテゴリーで、エコノミー、スタンダード、プレミアムの3つのグレード、計9つのサブカテゴリーを作り、それぞれに複数アイテムをそろえてアピールする。

本格焼酎お茶割りのすすめ

芋や麦など原料素材の風味を残した本格焼酎は、お湯割りが定番の飲み方の1つとなっている。寒いときには体がすぐに温まる上、温かい料理とも合わせやすく、油脂を溶かすのでがっつり系メニューも上手に洗い流してくれる。

ただし、当たり前すぎで「お湯割りでおいしい」とアピールしても、お客にあまり刺さらないのが悩みどころである。そこで「お湯割りでおいしい焼酎はホットなお茶割りもおいしい」と提案する。

お茶は、焙煎香が芳ばしいほうじ茶、熟成感のある香りの紅茶、爽やかなミントティーなどバリエーションが豊富だ。手軽に試せるペットボトル入りの商品や簡便なティーバッグの茶葉もある。

味わいはいろいろと試してみると、黒糖焼酎と紅茶の香りはよくなじみ、ほうじ茶はさっぱりした麦焼酎の味わいに厚みが出せる。他の組み合わせも総じて良好な味わいで、料理を選ばず幅広く楽しめる。

売場展開

芋、麦、米、黒糖の原料別に売り込みたい商品を複数選抜し、茶葉およびペットボトルのお茶飲料とクロス陳列する。

トレンド商品

薬草酒

西洋には「アブサン」「カンパリ」「シャルトリューズ」「イエーガーマイスター」など薬草酒といわれるリキュールの一群がある。シナモン、クローブ、コリアンダー、リコリス、ニガヨモギなどさまざまなボタニカルを浸漬したり、さらに蒸留したりした上、糖分を加えて味を調えたものが多い。

日本には同種の酒として「養命酒」「保命酒」「陶々酒」などがある。だが、これらが滋養強壮のための薬用酒として飲まれているのに対して、西洋の薬草酒は食前酒や食後酒、あるいはカフェで楽しむ喫茶に近い飲まれ方をしている。見た目もルビー色やグリーンなど美しく、「ネグローニ」のような人気カクテルにも使われている。

数年前から日本でも注目されるようになったクラフトジンもその特徴はボタニカルだ。ナチュラルな素材から生まれる香味に関心が向けられるようになってきた。これを拡張していくと薬草酒に行き当たる。いま、先んじて薬草酒を取りそろえて「ボタニカルの酒」として、ソーダやトニックウオーターで割る飲み方と共に提案する。

売場展開

スピリッツ・リキュールのコーナーに「薬草酒」のサブカテゴリーを作り、コーナーベルトなどでそれを明示する。薬草酒の中の1つを採りあげ飲み方を説明するPOPを設置する。