あえて酒を飲まないライフスタイル“ソバーキュリアス”が拡がりつつある

2023.01.25

ひめこカンパニー 山下智子

ノンアル、微アル、清涼飲料といった垣根を超え、ソバーキュリアスを実践する“ソバキュリアン”へのアピールが活発化。拡がるヘルシー志向の高まりを背景に、世界中でノンアルコール飲料に対するニーズが高まっている。

健康にいい、生産性がアップする、節約にもなると、ポジティブにお酒を飲まないという選択をするソバーキュリアスが、欧米のミレニアル世代の間でブームとなり、日本でも酒を飲まないことを“かっこいい”と捉える若者が増加。酒類メーカーはノンアルや微アルを謳う製品を続々と市場に投入しており、外食でもノンアルをウリにしたバーがオープンしている。

画像はイメージ

酔わずに心を満たす、香り高き微アルIPAビール

クラフトビール大手のヤッホーブルーイングは、クラフトビールと同じ製法・原材料で造ったアルコール度数0.7%の“正気のサタン”を2022年7月から販売している。

忙しくてビールを楽しむゆとりがない、子どもを持つ30代~40代男女をターゲットに設定。“平日夕食時に、酔わずに心を満たせる、低アルなのにフレーバーフルな醸造系クラフトドリンク”をコンセプトに掲げ、忙しい毎日の中で、お酒を飲んだときのような幸福感と少し先の未来(食後・翌日)の充実感を提供する。

実際にターゲットに個別のインタビューを実施したところ、「子どもを持つ30代〜40代」は、子どもを持たない各年代のいずれの層よりも平日の「ゆとり時間」が比較的短いことが判明。「毎日が忙しく、食事を適当に済ませていると枯渇していく感じがする」「品質の良いものを食べると幸せの感情が沸き上がって感性が喜ぶ」という隠れた本音も見えてきたという。

そこで、“正気のサタン”は0.7%と低アルコールでありながら、人気のIPA(インディアペールエール)の味わいを追求。ベルジャンアードネス酵母を採用することで、アルコールを抑えるための短期間の発酵でもビールらしい香りを出すことに成功した。シトラやモザイクなど計7種類のホップをブレンド。香り付けの工程でもホップを贅沢に添加し、IPAの華やかな香りを再現している。さらに、小麦やオーツ麦を活用し、温度管理を徹底するなどして、低アルならではの水っぽさや麦汁感を払拭した。

選びたいのはノンアル。クラフト白ビールがシーンに寄り添う

ノンアルコールを選ぶことが、自分のためにも社会のためにもなる選択であることを広めていきたいと考えているのが、自社醸造所を持たないノンアルコール専門ファントムブリュワリー「kuusooBREWING」だ。食事とのペアリングだけではなく、地方の暮らしから気づきを得た、「シーンや暮らしに寄り添うペアリング」を意識し、「心酔えるノンアル」を商品開発している。

ノンアルクラフト白ビール“Chillax White”は、お風呂上がりやサウナ、アウトドアなどの後に、落ち着きつつも華やかな刺激が欲しいシーンを意識して開発。長野県産リンゴ果汁やエルダーフラワー、カルダモンやコショウといった4種のスパイスを使い、華やかで爽やかなベルジャンホワイトスタイルのノンアルクラフトビールに完成させた。

乾杯気分にマッチする、ノンアルスパークリングティー

Gunosyは、気分やシーンに合わせて選べるムードペアリングティーを提案するブランド「YOU IN」で、初めてのスパークリングティー「CHEERS-MOOD」2種を開発した。

同品は、“乾杯!”の気分にペアリングするノンアルコール飲料として、炭酸強度にこだわって仕上げた新感覚のスパークリングティー。ベースとなるお茶は、裏千家の茶道家、岩本宗涼氏監修の下、約300種以上の原料から吟味し、独自にブレンドした。炭酸との相性を考慮し、ムードにぴったりの2つのブレンドティーをセレクトしたという。

レモングラス×ジュニパーベリーがベースの「YELLOW」は、かんきつ系のすっきり爽快感のある飲み口で、野菜ソテーや魚料理との相性がよい。

ルイボス×ローズヒップのブレンドティーがベースの「PINK」は、桃のようなジューシーな香りとルイボスのやさしい甘みに、ほんのり甘酸っぱいローズヒップがアクセントとなった華やかな味わいで、肉料理とのペアリングがお勧め。

いずれもノンアルコール、ノンカフェインで、着色料や甘味料も不使用のため、風呂上がりや晩酌タイムだけでなく、寝る前に飲んでも安心。また、身体に気を遣っている人へのプレゼントや、車で集まることもあるホームパーティの手土産にもぴったりだ。

ノンアル気分でそのまま飲める、英国発の“ミキサー”

アサヒビールは、Fever-Tree(英国・ロンドン)が手掛けるプレミアムミキサーブランド「フィーバーツリー」の日本国内における販売権を取得し、今年1月1日から販売を開始している。ミキサーとは、カクテルの割り材として使用される炭酸飲料のこと。同ブランドは世界中から厳選した天然素材を使用しているのが特徴で、80カ国以上で愛飲されている。

キナ由来のやさしい苦味と、ビターオレンジによる繊細で爽やかな香りを持つ同ブランドの看板商品「プレミアムトニックウォーター」をはじめ、爽快な辛さとコク、フレッシュな後味が広がる「同ジンジャーエール」、口当たりのよい「同ソーダウォーター」など、ソフトドリンクとしてそのまま飲んでもおいしい6品をラインアップ。いずれも瓶入りで、容量は200㎖となる。

多様性を尊重する “スマートドリンキング”バー

アサヒビールグループのスマドリは、“お酒を『飲まない/飲めない』人も楽しめる”とうたうバー「SUMADORI-BAR SHIBUYA」を東京の渋谷センター街にオープン。酒を“飲める”人だけでなく“飲まない/飲めない”人も互いが尊重し合える社会の実現を目指す“スマートドリンキング”を推進する。

ドリンクメニューはアルコール分0.00%、0.5%、3.0%のものを用意。“多様性を尊重し、すべての人が交じり合うこと”を表現した看板ドリンクを含む100種類以上をそろえ、多種多様な中から、酒を“飲まない/飲めない”人が親しみやすい、自身の体質や好みに合ったものを見つけられるようにした。

京町家を改装したノンアル専門蒸留所&バーで、非日常を楽しむ

ノンアルコールスピリッツ専門蒸留所およびノンアルコール&カクテルバー「幾星 京都蒸溜室 IXEY Non-Alcoholic Spirits Kyoto Distillery & Salon」では、ノンアルを志向する時代性に合わせて蒸留所を併設したノンアルコールスピリッツをメインに提供している。京都で薬草酒バー「喫酒幾星(きつしゅいくせい)」を営むオーナー兼バーテンダーが、新型コロナウイルス禍で営業が制限される中、ノンアルコールスピリッツを提供して想像以上に喜んでもらえたことから着想し、昨年12月に開店した。

「お酒は飲めないけど」「お酒はあえて飲まないけど」「お酒が飲めない人を誘って」など、お酒を飲む人も飲まない人も、バーに行きたい人がバーの非日常感を気軽に楽しむことができる。14時開店なのでティータイムにも利用可能。築約140年の京町家を改装した店内で季節に応じたノンアルコールカクテルがいただける。

“飲む香水”をコンセプトに植物の香りを溶かし込んだ、同蒸留所オリジナルのボトル入りノンアルスピリッツ“miatina(ミアチナ)”の発売も予定している。

Z世代が集う街のサステナブルなノンアルスタンディングバー

飲食店を展開する和音人は、ソバーキュリアスの増加や低アルコールニーズ、エシカル消費の高まりに応える、“ノンアルでも楽しめるスタンディングバー”「SANCHA MARIA」を東京・三軒茶屋にオープンした。

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さまざまな調味料を一から作る同社のこだわりをバーの業態に落とし込み、“クラフトコーラ”や“クラフトジンジャエール”、“クラフトトニックウォーター”などのクラフトドリンクメニューを多数ラインアップ。さらにフードロスを低減すべく、さがえ西村山農業協同組合(JAさがえ西村山)とパートナーシップを結び、ロスになる前の果物を使った“クラフトサワー”を提供する。

同社代表は、「ダイバーシティや社会正義など新しい価値観を持ったZ世代の多い三軒茶屋に、『サステナビリティ×Z世代』という新たなカルチャー、そしてノンアルコールでも楽しめる斬新なコミュニティを生み出していきたい」としている。

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