ID-POSで分かった消費者の購買行動|「これから注目したい年代、カテゴリー」

2024.02.19

分析:株式会社True Data データマーケティング部 竹村博徳
アナリティクス&テクノロジー部 吉岡治哉
データマーケティング部 中村匡佑
データ出典:True Data、業態:食品スーパーマーケット、以下同

第6回の今回は、「これから注目したい年代、カテゴリー」を取り上げる。背景として、2023年5月から新型コロナウイルスが5類感染症に移行したことによって、本格的な「アフターコロナ」に突入したと言って良い状況がある。

これによって世間はコロナ前に近い状況になったが、「果たして顧客の購買行動も19年の状況に戻った」といえるのか、それとも「コロナ前と比較して変化しているのか」というところを確認しながら、これから注目していきたい年代、カテゴリーに触れていきたい。

今回対象としているデータは、23年5月の新型コロナウイルスの5類移行によるアフターコロナに突入して以降、23年の5月~7月の3カ月間。これによって、コロナ禍やそれ以前と比較して、どのように購買行動に変化があったかということを確認したい。

今回の集計条件は、対象店舗を全国の食品スーパーマーケット(SM)とし、期間としては19年~23年各年の5月~7月を対象として集計している。

まずは業界全体の変化について。図表①がSMの業界全体の19年~23年までの推移を表したグラフとなる。

青色の線が「単価」、灰色の線が「1回当たり金額」を示している。これらはコロナ禍以降常に上昇傾向にあり、23年も上昇が続いている。

一方で、黄色の「1回当たり個数」は、コロナ禍に突入した20年をピークに減少傾向にはなっているものの、19年よりは高い値というものを保っている。橙色の「来店回数」はコロナ禍以降、常に減少傾向で、19年より低い水準が続いている。

図表①をまとめると、来店回数は減少傾向が続き、単価と1回当たり金額はコロナ禍以降上昇しているとなる。22年以降の上昇については「値上げ」の影響によって拍車がかかっている部分も考えられる。値上げの影響という点では、それによって使用頻度を抑えるだけでなく、お得な大容量パックを求める傾向が出てきている可能性も考えられる。結果的に、1回当たり個数が減少している状況にある。

これを見ただけでも、生活者の行動が変化していることが分かる。だからこそ、その行動であったり、特徴であったりというものを見極めるということが非常に重要になってくるのである。

コロナ禍を経て、20代以下がレギュラーコーヒーを多く買うように

次に、SMの市場をより深掘りしていく。図表②のグラフは、横軸が23年の年代別の来店者の割合となっていて、縦軸が23年の年代別の割合と、20年の割合との差を表している。

つまり、右に行けば行くほど23年SMに多く来店している年代であり、さらに上に行けば行くほど20年と比較して来店する人が増えた年代ということになる。

図表②で注目したいのは20代以下の年代である。20代以下の構成比は少ないものの、20年と比較して最も割合が増えた年代となっている。

そこで、今回、この20代以下の若年層がコロナ禍を経て注目するようになったカテゴリーをピックアップして紹介していきたい。

若年層の動きの1つ目は、「レギュラーコーヒー」カテゴリーが若者に注目されているということ。その前に「レギュラーコーヒー」の全年代の動きから確認する。図表③は、「レギュラーコーヒー」カテゴリー全体の19年からの推移だが、値上げの影響を受けているとも考えられるものの、橙色の線の「金額」は常に上昇傾向になっている。

一方で、灰色の線の「個数」、青色の線の「購入者数」は、いま現在は減少傾向にはなっているものの、それでもやはり19年よりは高い水準を保っていることが分かる。

次に、年代別に「レギュラーコーヒー」カテゴリーを見ていく。図表④は年代別の「単価」の推移を示したものだが、コロナ禍以降、全年代で19年より高い水準の上昇傾向を示していて、特に22年は値上げの影響をダイレクトに受けたカテゴリーということで、大幅に上昇している。

この中で、20代以下の単価の上昇率が全年代の中で最も高くなっているという点は注目すべき点といえる。次に図表⑤で「購入率」を年代別に確認していく。こちらも全年代が19年より高い水準を示しているが、こちらも単価同様、20代が最も高い伸びを示している。さらにこちらは23年も上昇傾向にある唯一の年代となっている。

つまり、コロナ禍を経て、20代以下の年代はレギュラーコーヒーを購入する人の割合が最も増えた年代であり、さらにレギュラーコーヒーにお金もかけるようになった年代であるということが読み取れる。

コロナ前に行っていたカフェの商品を自宅で楽しむ?

図表⑥は、20代以下の年代が好んでいる金額上位30商品の商品と単価について、19年と23年のデータを示したものだ。これだけでは分かりづらいと思うが、次にこのデータについて500円以上の高単価の商品に注目したものが、図表⑦になる。青色で目立たせているものが500円以上の高単価の商品になるが、19年の上位30商品の中には6商品だったが、23年になると9商品に商品数が増加していることが分かる。

続いて、同じ23年の全年代と20代以下の年代を比較する。図表⑧は左側が23年の全年代の金額上位30商品とその単価、右側が23年の20代以下の年代の人気30商品とその単価を示している。こちらも同様に500円以上の商品に絞ったものが図表⑨となる。これを見ると、全年代では5商品しかランクインしていないが、20代以下は先ほど同様9商品がランクインしている。

これらのデータからは、20代以下の年代がレギュラーコーヒーについて、コロナ禍を経て「高単価の商品を求める年代に変化した」ということが分かる。また、20代以下の年代の上位30商品にランクインしている高単価の商品について、個別に見てみると、有名なカフェの商品などが名称に入っているものが多く見受けられる。

これらのことから、「コロナ禍以前にカフェに通っていた人たちがコロナ禍に突入し、いったん自宅でそのコーヒーを楽しむようになり、それが定着し、アフターコロナである23年もそれが引き続き残り続けて、高単価な商品を買うようになった」のではないかとの仮説が立てられる。

ヨーグルトに「タンパク質を取るもの」という目的が付加

続いて、「ヨーグルト」カテゴリーの事例を挙げる。こちらもまずは図表⑩で全年代について、19年~23年の推移を見てみよう。ここで着目してもらいたいのは橙色の線で示した「金額」。コロナ禍の20年や21年には19年を上回っていたが、その後、22年は減少傾向になり、直近だと値上げの影響を受けて19年並みに戻る傾向になっている。また、他の項目の「個数」「購入者数」に着目すると、これらは19年を大きく下回っている。つまり、ヨーグルト全体としては下降傾向。これがカテゴリーの現状だ。

一方で、「平均単価」に着目し、年代別に示したものが図表⑪となる。これを見ると、全ての年代が19年以降、同じ水準、もしくは上回る傾向にはなっている。特に直近の23年に着目すると、どの年代も、「値上げ」の影響もあって大きく単価の上昇が見られる。その中でも、やはり20代以下の伸び率が一番高い結果になっている。

さらに続いて図表⑫の「購入率」を年代別に見ると、こちらは30代以上が19年と比較して同等、もしくは下回るなど下降傾向であるのに対し、青線の20代以下が大きく伸びている。これを見ても20代以下がやはり、このカテゴリーをけん引していると見ることができる。

次に、具体的にどのような商品が伸びているのかを見ていきたい。まずは実際に20代以下が、どの商品を買っているのかをブランド別に比較する。図表⑬の左側が全年代における売上金額の上位5ブランド、右側が20代以下に絞った際の上位5ブランドとなっている。

上位の方は定番の商品ということで、明治ブルガリアヨーグルトや明治プロビオヨーグルトR1のブランドが共通しているが、ここで着目したいのが、20代以下にしか出てきていない、5位に入っている「オイコス」だ。

図表⑭はそれぞれ売上金額の上位30商品をまとめたもの。こちらも左側が全年代の上位30商品、右側が20代以下の上位30商品となっている。今度は、これらの中で「オイコス」ブランドを青色で目立たせたものが図表⑮となる。

結果、左側の全年代では上位30商品に1商品もオイコスの商品は出てこない一方で、20代以下になると5商品出てくる。ここから考えられることとしては、オイコスがタンパク質をうたっている商品ということで、そもそも「20代以下がタンパク質を、ヨーグルトを通じて摂取している」ということ。そういったニーズの表れではないかということである。

ヨーグルトというと、主に胃腸を整える整腸などに期待して食べるカテゴリーであると思われるが、それだけではなく、20代以下にとっては「ヨーグルトでタンパク質を取る」という新たなニーズが出てきていると考えられるのだ。

コロナ後、ビールの消費が特に増えている20代

最後に挙げるカテゴリーは「ビール」(発泡酒、新ジャンルは含まない)。まずは図表⑯で全年代の19年からの推移を確認する。これを見ると21年以降、「個数」「金額」「購入者数」が急増していることが分かる。

次に図表⑰の年代別の「平均単価」の推移を見ると、こちらは酒税法改正の影響が大きく関係しているとみられ、全年代で20年以降、減少傾向となっているが、中でも平均単価の減少率が最も少ないのが20代(こちらはアルコールのため、「20代より下」は含まず)となっている。単価が下がる中でも、より多く「ビール」カテゴリーにお金をかけている年代が20代であることが読み取れる。

続いて図表⑱の年代別の「購入率」を見てみよう。23年にかけて上昇傾向が全年代で見られるが、その中でも群を抜いて20代の上昇率が大きい。ここから、コロナ禍を経て、若い世代の20代が多数、「ビール」カテゴリーにエントリーしてきたことが分かる。

最後に20代に支持されている具体的な商品を見てみる。こちらは前の2つのカテゴリーと少し見方を変え、売上金額上位80%以上のAランク商品の中で、20代の購入者の構成比が高い商品を確認していきたい。

図表⑲にあるように、20代の構成比が最も高かった商品は、23年6月に発売されたアサヒビールの「ホワイトビール650㎖」。この商品はパッケージも一般的なビールとは異なっていて、若い世代を意識した商品であることを読み取ることができる。

以上のように、ID-POSの属性などを使い、さまざまな視点でデータの見方を変えることで、単純な金額順位、個数順位だけでは見つけられない若者の人気商品を見つけることができる

最後にまとめとして、「変化」にも「いろいろな変化」があるということについて図表⑳をベースに説明したい。まずは、「購買層の変化」。来店する客層の変化や、そのカテゴリーを求める、支持している年代の変化などである。

次に「購買目的の変化」。単価の上昇による選択商品、代替商品の選択、また、顧客の求める質や量の変化などである。例えば、最近では油の値上がりが続いていることで、逆に「これだけ値段が上がったのであれば、健康を意識して少し価格は高いが米油を買おう」という人もいると考えられる。こういった購買目的の変化がこれに該当する。

この2つの変化をまとめると、最終的には購買層、購買目的に最も適した商品が、その時代の人気商品となるということになる。

その意味では、現在の購買層、購買目的を判断し、人気商品を見定めるということが重要になってくる。そして、ID-POSはそれを知るための有効な道具となる。