GW狙いの焼肉、バーベキュー、新分野では肉惣菜とプラントベース | 精肉編・2022年5月 「これは押さえたい」重点商品と売場展開

2022.02.28

2022.11.11

月城流通研究所 月城聡之

この2年で大きく環境が変化した。その環境変化によって、食生活も変化し提案方法や品揃え、商品化も一変するタイミングとなっている。

いままで、当たり前のように売場で商品が販売できていたものが、コロナ感染対策によって、買い回り時間の減少、ネットの活用が盛んになった。外食が減り、その代わり家庭での食事に変わったことで、内食需要だけでなく中食にも影響を及ぼしている。

ゴールデンウィークの時間の使い方も、遠方の旅行が減り、家庭で楽しむ時間も増えているため、家庭でも楽しめる商品や売場づくりが必要となっている。

いかに消費者が「買いたい!」と思う商品を作れるか、その価値に見合った商品化ができるかが、精肉売場でも鍵となる。

5月は前半のゴールデンウィークと、中旬以降の売れにくい平日について、パック単価や商品化も少しアレンジを加えながら販売する必要もあるため、地域の生活者の行動パターンに見合った商品化と売場づくりを行いたい。

焼肉、バーベキューアイテム

ゴールデンウィークには、焼肉やバーベキューアイテムの強化を図る。

コロナ禍で、安価な商材が売れる半面、高級商材を売った企業は堅調に売上げを伸ばしている。高級商材を売り込むことにも、ひと工夫が必要となってきている。

輸入肉をはじめ、相場が高騰し、かなり利益を圧迫し始めている企業も少なくない。そのため、グレードの高い商品は、その価値に見合った商品化を行うことが必然的に要求される。

国産黒毛和牛「超厚切り」ランボソステーキ用(ランプ)100g当たり598円

「和牛ランイチ(ランプ)」は、「ランボソ(ランプ芯)」や「ラン」などに小割りでき、希少部位としても人気の部位となっている。部位表示としては、「ランプ」とする必要があるが、ランボソの表記があれば、希少部位のイメージが高くなり、食べてみたくなる。

日本のスーパーマーケット(SM)のステーキは、パック単価を上げないために1cm以下に商品化することも一般的となってしまったが、やはりステーキは厚切りで食べたい人もいるだろう。

ランボソを4、5cmの厚さでカットして、厚切りのステーキで提案する。パック単価は、ランボソの判の大きさで1000円以内に収まる。高ぶた付きのトレーで売り込むことで、横からの厚みが視認できる。

販売時期はゴールデンウィークで、焼肉やバーベキュー、家庭での焼肉でもソーシャルネットワーキングサービス(SNS)栄えする一品となる。

5月に入ると焼き商材の展開が主力となるため、切り落し、薄切り商品の売り込みで売上げを底上げする。

特に、ゴールデンウィークや母の日が終わった中旬以降はイベントもなく、売上が作りにくいため、スライス商材の売り込みも重要となる。

国産黒毛和牛の不ぞろいの切り落とし100g当たり498円

希少部位の焼肉やステーキの商品化を行った際に、厚切りで展開しにくい小割部位が残ってしまうことがある。カレー用など安価に販売することも多いが、判がしっかりと取れる場所は、不ぞろい切り落とし展開で単価を落とすことなく販売していく。

丸形トレーでふんわりと盛り付けて、ドーム型の高ぶたでボリューム感が売場でも表現できる。システムトレーに入ったこま切れや切り落としよりも、見栄えが良く売上げにする。

パック単価800円以内に商品化することが、ボリュームと価格の価値が一致するラインである。同様に、不ぞろい焼肉や不ぞろいステーキなど厚切り関係に関しては、ゴールデンウィークに展開すると良い。

国産豚肉やきとん5種盛り合わせ5本598円

しゃぶしゃぶから冷しゃぶ、温しゃぶ、蒸ししゃぶへの切り替えが行われるため、薄切りを拡販する。連休や週末を中心に大型の丸皿商品を展開し、平日は小型丸皿でパック単価を抑えて商品化する。

丸皿での商品化は、ボリューム感が出にくいと思われがちであるが、ラップでの商品化ではなく、ふたにすることで、立体的に商品化することができる。

丸くふわっとした商品化で、ボリューム感が出せるだけでなく、実際に調理するときにも1枚ずつ取りやすい。

単価については、単純にパック単価を下げて販売してしまうと、買上点数が上がらなければ売上げは下がってしまう。これが売上げを下げた企業の実態と考えられる。

輸入肉に関しても、いままでのように単価を低くするために、何でも切り落としで商品化することや、ブロックでどんどん売りさばくという手法も、結果的には工夫を凝らした競合企業に、お客を奪われるということになってしまうため注意が必要である。

肉惣菜

ウィズコロナ時代だからこそ、売上げを伸ばしてきている商品が多数存在する。展開のポイントは「家飲み」。

家飲み需要は、新型コロナ発生以前からあったが、会社帰りに飲み歩いていた会社員が飲みに行くことができなくなったため、外食で食べていたメニューが売れる。特に、「焼き鳥串」や「やきとん」「ホルモン焼き」などは、家で焼くと煙が出てしまうので、肉惣菜での展開がポイントとなる。

国産豚肉やきとん5種盛り合わせ5本598円

国産豚肉タン、ハラミ、カシラ、ハツ、レバーの5種類のやきとんの盛り合わせパック。小袋のやきとんのたれ(みそ)を添付して商品化する。トレーは銀系のトレーで買いやすい商品を演出。会社帰りのちょい飲みをイメージさせたコトPOPなどでお勧めしても良い。

おつまみメニューでは焼き鳥やひざ軟骨唐揚げなどの販売と、可能であれば関連販売で缶ビールを陳列したい。

プラントベースミート売場

多くの企業がすでに「代替肉」「プラントベースミート」「ソイミート」といった切り口の売場づくりを進めている。

グロサリーで販売している企業は増えているものの、精肉コーナーではまだ浸透していない企業も多い。最近になり、ネクストミーツが販売する「NEXT焼肉」シリーズなどが精肉売場で販売される動きも出てきている。

日本では、昔から大豆タンパクを一般的に豆腐など摂取しているため、欧米のように、あえて肉とひも付けてまで代替肉を販売する必要はないかもしれないが、「ミートフリーマンデー」の浸透や商品の多様化から、固定概念を変えていく必要も出てきている。

代替肉には、さまざまな植物から肉に似せて作られる「プラントベースミート」や、大豆を主原料として作られる「ソイミート」、エンドウ豆を主原料とした「エンドウ豆ミート」など、原料によってさまざまな商品がある。

いままでは、ビーガンやベジタリアンなどの動物愛護や健康意識から肉を食べないという選択肢を選ぶ人々がいたが、最近は家畜の排せつ物の処理問題や牛のげっぷによる温室効果ガス問題など、環境問題への意識の高まりから、このような商品を選択する人も増えている。

また、イスラム教徒やユダヤ教など、海外から来る外国人(旅行者ではなく留学や在住外国人)の宗教による食の禁忌の面でも求められてきている。

いまのところ植物性の代替肉は、味の面で肉と異なる部分も少なくなく、また価格もそれなりにするため、精肉の次の柱となる畜種とはいえない状況だが、徐々に売場づくりを初めていく必要もある。

現在、「代替肉コーナー」「オーガニック(ビオ)コーナー」「ナチュラルコーナー」などが、新たなカテゴリーとして精肉でも徐々に浸透し始めている。

食の選択肢として新たに取り組む良い機会となるため、売場づくりを進めてもらいたい。

トレンド商品は?

冷凍商材

新型コロナウイルスによってSMの売れ筋が大きく変化していることに気が付いている企業と、気が付かず昨年同様の売場づくり、商品づくりをしている企業で2022年に入ってきてから少しずつ差が出始めている。

精肉の冷凍コーナーを見れば一目瞭然である。22年に入ってからも売上げを堅調に伸ばしてきている企業では、数年前から売場を拡大してきているミールキットや簡便商材について、いまや冷凍の構成比を高めた売場づくりとなっている。自社開発の商品の品揃えだけでなく、地方メーカーの作るキット商品が売場に多数登場している。

フライパンや電子レンジで作れる簡便商品や冷凍食品は、徐々に消費者にも浸透し始めている。取り組んだけれども1カ月で結果が出ないからと、売場から撤去してしまった企業も少なくないと思われるが、「浸透する前にやめてしまう」ことになると考えることもできる。

簡便商品は、若い層やファミリーが暮らす住宅街で売れる。冷凍商品に対する抵抗は薄れているだけでなく、新型コロナウイルスに対する冷凍備蓄アイテムとしての役割も果たしている。

1種類や2種類品揃えしても、消費者の認知度が上がらず売れないことも多いようだが、平台や冷凍ケースにきちんとコーナー化して、シリーズ商品として品数多く品揃えすることがポイントなる。

新型コロナウイルスによって生活環境が著しく変わり、冷蔵庫も冷凍室が大きめのものが売れたり、冷凍庫だけを購入する家庭もあるという。「精肉の冷凍コーナーが売れない」と数年前までは嘆いていたが、今は冷凍コーナーでの展開が売上げを大きく変わらせる場所となっている。

ミールキット以外にも、冷凍焼き鳥や冷凍内臓、冷凍バラ凍結の精肉アイテム(豚バラ切り落しやひき肉など)も、定着してきていることは言うまでもない。

たとえば、「シュクメルリ」は外食で紹介された、新しいアイテムである。

テーブル, 食品 が含まれている画像
自動的に生成された説明
鶏モモ肉のシュクメルリ398円

リテールトレンドでは、精肉に関してご紹介しています。
詳しくはこちらより、ご確認ください。