4月施行の「プラ新法」。実際のところ、何が変わり、小売業は何をすれば良いか?コンパクト解説

2022.04.04

2022.12.02

公益財団法人流通経済研究所主任研究員 池田満寿次

流通や消費に関連する今年の重要法として、使い捨てプラスチック製品の削減を目的とした「プラスチック資源循環促進法(通称・プラ新法)」が2022年4月に施行された。

小売業や飲食サービス業などの販売者側には、使い捨てプラ製品の削減が義務付けられる。削減対象となるのは国が指定した12品目(ストロー、スプーン、テーブルナイフ、フォーク、マドラー、かみそり、くし、シャワーキャップ、歯ブラシ、ヘアブラシ、衣類用カバー、ハンガー)で、これらを無料で年5t以上配っている事業者に対して、有料化や再利用などの対応を要請する。

この12品目を多く使用する、大手の外食チェーンやコンビニ、スーパー、宿泊業、クリーニング店などが削減に向けた対策を迫られる。削減の取り組みが不十分とみなされた場合、国が是正に向けた勧告や命令を出す。命令に従わなければ50万円以下の罰金が科される。

新たに施行される法律のため、小売関係者からは「どのような方法で削減するのが良いのか?」といった声も少なからず聞かれる。

削減に向けては、

①消費者に有償で提供する
②不要とした消費者にポイントなどを還元する
③消費者に必要か不要かの意思を確認する
④消費者に繰り返し使うように促す
⑤製品設計やその部品・原材料の種類について工夫された製品を提供する
⑥適切な寸法の製品を提供する
⑦繰り返し使用が可能な製品を提供する

といった計7種類の対応が要請されている。

ただ、すべての対策が義務付けられる訳ではなく、着手できるものから始めたり、複数を組み合わせたりするなど、事業者側で対応アプローチを選ぶことができる。当初、小売りの現場からは、「レジでいちいち意思確認をしないといけないのか?」「無料で提供はできなくなるのか?」などの懸念の声も上がっていたが、実際はその企業で取り組めることから対策を進めれば良く、一定の裁量が委ねられている格好だ。

新法の施行を受け、大手小売りの対策も出そろいつつある。スーパーマーケットではライフコーポレーションが、店舗で提供しているストローやスプーンをプラスチック製から紙製、木製に4月から順次切り替える。年間で約1700万本のプラスチック製ストロー、スプーンを削減し、約30tのプラスチック量の削減につなげる計画という。またヤオコーも4月より、スプーンやフォークなどのカトラリーについて木製を導入する予定だ。

この他コンビニではセブン-イレブン・ジャパンが、植物由来(バイオマス)の素材を30%配合したスプーンやフォーク等、環境配慮型カトラリーを4月から順次導入する。

このように小売業では7種類の対応のうち、⑤を中心とした対策を講じる企業が目立ち、レジ袋のように有料で提供する動きはあまり見られない。

ちなみに、ちょっとした話題を集めたのがファミリーマートだった。ファミマでは当初、柄に穴を開けて軽量化したプラスチック製フォークへの切り替えを進めていたが、法施行の直前の3月になって、プラ製フォークの提供自体を取りやめる方針に切り替えた。パスタなどの購入客にも割り箸を配るという。

コンビニは大手各社ともスプーンやフォーク類は加盟店負担が基本だが、新しい素材のスプーンやフォークは従来のものに比べてコストが上昇するため、加盟店の負担増も懸念されていた。ファミマによるフォーク提供の廃止は、環境への配慮の他、「加盟店への配慮」もあったという。ほんの一部分ではあるものの、新法が契機となり、コンビニ営業のあり方が見直された形だ。

プラ新法の施行を受け、使い捨てプラスチックの提供にとどまらず、環境に負荷をかけるような販売の仕方に対しては、見直しへの機運が高まる公算が大きい。

大手食品メーカーを中心に、容器や包装でのプラスチック使用を削減する動きが広がっているのも、その表れといえる。何年後かに振り返ってみると、プラ新法の施行が流通・消費のスタイルを変える、大きな分岐点となっている可能性がある。