攻めるべきはゼリー、和菓子は地道に、ケーキはハレ狙いで| 菓子スイーツ編・2022年6月 「これは押さえたい」重点商品と売場展開

2022.04.27

2022.11.10

トルティーノ 中村 徹

2022年の6月は例年通り特別な祝日はなく、通常の曜日周りである。本年の二十四節気の入梅は6月11日の土曜部で、北海道を除く梅雨の季節の幕開けとなる。

昨年の6月と曜日周りを比べると、火曜日減の木曜日増と、火曜日に曜日市を大々的に行っているような店舗ではマイナス要素になる。菓子関係の歳時カレンダーを見てみると、16日の「和菓子の日」や19日の「父の日」、30日の「夏越祓(なごしのはらえ、後述)」はもちろんであるが、毎月の歳時日である6日「手巻きロールの日」、15日「菓子の日」、19日「シュークリームの日」、22日「ショートケーキの日」など菓子関係の日が多く存在する月になる。

6月から7月にかけては梅雨のシーズンとなる。関東甲信越の梅雨入りは昨年6月14日、平年が6月7日ごろなので天気に左右されることが多い月となる。本年は昨年に引き続き新型コロナウイルスの影響もあるので、客数の予測が難しい6月になりそうである。

総務省家計調査の「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格」を見てみると、品目別令和2年年間の月別支出金額が掲載されている。菓子類の6月を見てみると、年間平均金額に対し、ゼリーが151.7%、プリンが106.9%と平均を超えている。

これらの商品群のトレンドを見るために「令和2年年間消費金額/平成12年年間消費金額」を計算してみると、ゼリーは100.3%、プリンも101.0%と僅かであるが伸長している。その他和菓子やケーキ類は指数的に落ち込む月となる。これらを総合的に考えるとゼリー、プリン、特にゼリーを少し攻める企画を行うと良いと思う。

ゼリー

ゼリーは9月ごろまで指数が高いが、カップの非冷タイプも、ケーキに近い要冷カップデザートも旬のフルーツに気を付けたい。6月の旬のフルーツといえば、ブルーベリーなどのベリー系、スイカやメロン、マンゴー、キウイフルーツ、ビワ、梅など数多くあるが、これらを前面に出したゼリーを訴求すると季節感が演出しやすい。

もちろん実際には缶詰材料を使用している場合が多く、ミカンなどが売れ筋ではあるが、やはり旬のイメージを大事にしたい。

売場展開

ゼリーはフルーツたっぷりゼリーやカップデザートをスイカ、メロン、ブルーベリーといった旬のフルーツをメインとしたカットフルーツやプレーンヨーグルトと集合展開し、「フルーツ祭り」などとして訴求したい。毎月8日が果物の日であるのでこの日をターゲットに訴求すると良い。更に売場に余裕があれば一部で良いのでフルーツ缶詰や冷凍フルーツまで集合展開の幅を広げるとより大々的な企画になる。

和菓子

和菓子自体は指数が低いのだが、先述の通り「和菓子の日」や「夏越祓」が存在し、訴求ポイントとなる。

和菓子の日も夏越祓も現在はほとんどイベントとして盛り上がっていないが、節分の恵方巻もハロウィーンも30年前にはほとんどイベントとして認識されていなかったことを考えると、地道に仕掛けていっても良いだけの歴史のあるイベントである。

和菓子の日について少し引用すると「西暦848年(承和15年、嘉祥元年)の夏、仁明天皇が御神託に基づいて、6月16日に16の数にちなんだ菓子、餅などを神前に供えて、疫病を除け健康招福を祈誓し、「嘉祥」と改元したという古例にちなみます」(全国和菓子協会HPより)。

これが時代をへて「16」では数が多いので1と6を足した7種類の和菓子(嘉祥菓子)を食べたり奉納したりする行事に変わっていったようだ。時代的には江戸時代まで長く続き、明治に入って廃れていったものを昭和の時代に復活させたようである。もちろん現代の嘉祥菓子をそのまま提供してもスーパーマーケット(SM)などではほとんど売れないと思うが、まずは「和菓子の日」を訴求し、一般的な串だんごや水まんじゅうなどを訴求していき、可能であれば上生菓子を一部訴求できれば良いと思う。

もう1つ、夏越祓とは1年の半分を6月30日に迎えるに当たって、さまざまなけがれをはらい清め、残りの半年の無病息災を願うというものである。この時期に食べるものに習慣として「水無月」という和菓子がある。本格的な夏の暑さが到来する前の暑気払いとして、京都などで昔から親しまれてきた。

元々は氷を食べて暑気払いをするというものだったようだが、手に入りにくく高価なため、和菓子に模して食したようだ。三角形の下は氷を模した白い外郎(ういろう)で上にアズキを乗せた和菓子になる、和菓子専門店などでは販売しているところもあるので、こういった由来と共に、訴求してもおもしろい商品ではないだろうか。

水無月

売場展開

和菓子はいま一度売場の確保をしっかり行いたい。カップデザートは多くの店舗でコーナー化され、まとまりとして訴求できているが、和菓子はどうしてもパンコーナーの一部に埋もれており、コーナーとして訴求できていない売場が散見される。和菓子はどうしてもロスにつながりやすりので腰が引けがちであるが、まずは売場をしっかり作ってから中身を見直すことを考えるべきであろう。 

ケーキ

ケーキでは父の日に向けたケーキの展開が必要になる。父の日と言えばこれを送るという定番があまりないのだが、ケーキ類もお父さんに喜ばれるプレゼントの1つである。

喜ばれるケーキとしてはチーズケーキ、モンブラン、タルト、ロールケーキなど定番の商品が並ぶが、SMなどで最近ハレ型のケーキとして売れているのはやはりアソートタイプになる。中身は定番の売れ筋になるが4個や6個アソートなど家族で食べるのにちょうどよいサイズ感になっている。

また、父の日の洋菓子専門店でおもしろいのは「メッセージ系ケーキ」である。感謝状などをそのままケーキに書いたようなケーキから別添でお父さんへのメッセージカードを付けるものまでさまざまある。SMでも別添のメッセージなどは工夫して訴求するとおもしろいかもしれない。

売場展開

ケーキ類は父の日や毎月の催事日がある。これらに合わせて展開していく必要があるが、父の日は特にハレ型商品をメインに取り組めばよい。毎月22日の「ショートケーキの日」は5月同様、旬のメロンショートを訴求したい。この他、6日「手巻きロールの日」にロールケーキ、19日は父の日と共にシュークリームをPOPとともに訴求するとよい。

トレンド商品

餡バター

洋菓子ではベーカリーでもともとある素材の「餡バター」を2020年ごろから洋菓子の専門店でも活用しだし、そろそろ洋菓子のフレーバーとしてヒットしそうになってきている。「甘じょっぱい」味が焼き菓子にぴったり合い、洋菓子専門店では売上ナンバーワンになるような商品も出てきている。

コンビニでは一部既に発売されている商品もあるが、SMでも販売できる商品が各社から発売されるようだから、拡販するのにぴったりの商品である。 この他、ズコットケーキ(ドーム型ケーキ)やカッサータ(チーズ×ナッツ×ドライフルーツ)などがトレンド商品として挙がっている。こういった商品の動向も見ておいていち早く導入できるようにしておくことが重要である。

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