新ジャンル・沖縄・本格焼酎ソーダ割りで攻める|「これは押さえたい」酒編・2022年7月

2022.06.07

2022.11.10

酒文化研究所 山田聡昭

梅雨明け間近、今夏は夏祭りや花火大会も再開するところが増え、3年ぶりのイベント消費が盛り上がる。一方でガソリン代や電気代の上昇や加食や外食での相次ぐ値上げに加えて、世界的な政情不安から生活防衛意識も高まりも予想される。

7月の消費マインドは普段は倹約、イベントは派手に楽しむものになると予想して、酒類の販促企画を立案してみよう。

新ジャンル(第3のビール)

「サントリー金麦」と「本麒麟」の2ブランドを軸に、「やっぱりうれしい、安くておいしい新ジャンル!!」の企画を組む。

新ジャンルは2020年10月の増税以降、減税されたビールへのシフトが進み、動きに停滞感があった。しかし、家計調査の消費支出を見ると、現在も好調だったコロナ禍前の水準を上回っており、お客の支持は根強く需要は底堅いことが分かる。

物価上昇が続き、今後は円高による値上げが相次ぐと予想されるいま、あえて新ジャンルを前面に出し、「やっぱりうれしい、安くておいしい新ジャンル」をアピールする。

商品は新ジャンルのトップブランド「サントリー金麦」と「本麒麟」の2ブランドを柱に、「アサヒ・ザ・リッチ」、リニューアルされた「サッポロ・ゴールドスター」を脇に配し、新ジャンル全体を意識してもらい、さらに飲み比べに誘導する。

売場展開

ひな壇もしくはエンドで、トップボードに「やっぱりうれしい、安くておいしい新ジャンル」のキャッチコピーを大きく見せる。商品は「サントリー金麦」と「本麒麟」は350㎖と500㎖の6缶パックとばら売りをそろえ、「アサヒ・ザ・リッチ」と「サッポロ・ゴールドスター」は「これも試したいアサヒとサッポロの自信作」といったPOPを配して、350㎖缶のみでトライアルを誘う。

なお、新ジャンルは大手メーカーの基幹商品が市場をリードしている。メーカーを1社に絞って共同でプロモーションする選択肢は残しておく。メーカーのマス広告やキャンペーンと連動することで、効率的にマーケティングを完結させ、売上げの最大化を図るのは組織小売業の強みを生かすことでもある。

沖縄の酒「泡盛&ビール」

今年は沖縄の本土復帰50周年の節目で、NHK朝ドラ「ちむどんどん」をはじめメディア露出が増えている。

これから始まると予想されるGoToトラベルなどの観光振興策で、沖縄旅行を計画する人も多い。そこで7月は沖縄の酒を取り上げ、「ご存じですか? 新しくなった沖縄の酒」の企画を展開。

ポイントは「新しくなった沖縄の酒」というメッセージを加えること。一般のお客のほとんどは、「沖縄の酒といえば泡盛とオリオンビール」を思い浮かべる。けれども泡盛のブランドや種類は知らず、沖縄旅行や沖縄料理店で飲んだことがあるというくらい、オリオンビールも名前しか知らない。

近年、泡盛は各社の製造部門の技術レベルの底上げが図られ、以前よりも格段に奇麗な酒質の商品が誕生している。その代表が「尚(しょう)」だ。独自に開発した泡盛の昔ながらの単式蒸留器で3回蒸留し、エレガントな香味に仕上げた。

この製法を共有した上で、「尚」ブランドを共同でプロモーションすることに賛同した12社から発売されている。商品には「尚-〇〇」とあり、〇〇の部分の各メーカーのブランドが入っている。

また、オリオンビールは本土復帰50周年記念ラベルを発売、クラフトビールの「75BEER」も好調な動きを見せている他、酎ハイの「WATTA(ワッタ)」も沖縄らしいフレーバーがラインアップされているので注目したい。

売場展開

売場では「ご存じですか? 沖縄の酒のニューフェース」と「新しさ」と「変化」を前面に出す。個々の商品にどのように新しいのか説明するPOPを準備する。

「尚」は複数の蔵の商品を並べ、売れ行きに応じて「一番人気」などランキングしてキャッチ―な売場にする。オリオンビールはクラフトビールの「75」が、スタンダード商品とどう違うのかを説明する。

さらに酒売場での沖縄フェアと位置づけ、前述の商品の他、割り材としてシークワァーサー果汁やジャスミン茶(さんぴん茶)、スッパイマン(干し梅)やミミガージャーキーなどの乾きもの、車麩や沖縄そば(乾麺)なども同時に提供すると効果的。

本格焼酎ソーダ割り

かつて本格焼酎の飲み方の定番は、お湯割りや水割り、あるいはオンザロックであった。もともと南九州ではお湯割りでよく飲まれており、00年ごろの芋焼酎ブームで東日本に広がる中でオンザロックが好まれるようになった。

あれから20年が経過したいま、本格焼酎もソーダで割って飲むスタイルが主流になりつつある。08年ごろから急速に広がったウイスキーハイボールでソーダが家庭に常備されるようになり、本格焼酎もソーダで割ることもある。こうした変化を捉えて主要メーカーはソーダ割に向く焼酎を次々に投入してきている。そこで企画名は「そうだ、焼酎はソーダで割ろう」とする。

また、家飲みでの焼酎の消費は堅調で、消費支出はコロナ禍で酒類消費が家飲みにシフトして2年目となった21年も前年を上回った。消費が堅調で、新しい商品が投入され、ソーダ割りの人気が高まっている今、ソーダ割り向きの本格焼酎を積極的に売り込む。

売場展開

「そうだ、焼酎はソーダで割ろう」をトップボードに入れ、ソーダ割り向きとして発売されている本格焼酎を5点以上品揃えして、ソーダ、トニックウオーター、ジンジャーエール、コーラなどの割り材とクロス展開する。

商品は麦焼酎から「iichikoNEO」「香る大隅 麦とジャスミン」の2点、米焼酎の「白岳 KAORU」、芋焼酎の「ISAINA」は必須。この他、香りに特徴のあるタイプを複数加えてボリューム感たっぷりに展開する。

トレンド商品

ノンアルvs.微アル

この夏、注目のトレンドが「ノンアル&微アル」カテゴリーである。健康志向や多様性な社会への志向は強まるばかりで、酒類消費にも大きな影響を与えている。

妊娠・授乳期間中の女性、ドライバーなど酒を飲んではいけない人に加えて、健康を気遣い、酒を控える人や酔うことを嫌いあえて酒を飲まない人が増加しており、ノンアルコールや微アルコールの酒類のニーズは大きくなっている。

一方、酒類メーカーは将来の人口減少や高齢化に伴う酒類消費の減少は避けられないと見ており、酒類を飲まない人々をサービスの受容者に設定、飲む人も飲まない人も楽しく宴を共有できるようにすることで、新たな市場を開拓しようと意気込む。

消費環境としては、コロナ禍で制限されていた旅行や帰省が動き始めている。国は感染予防の手当てをした上で経済を回していくウイズコロナに舵を切り、人々は肌感覚でそろそろ動いてよいと考えているように思われる。

この夏は各地で祭りや花火大会が再開され、帰省はコロナ禍までの水準まで戻ると予想される。飲めない人&飲まない人も一緒に酒の場を楽しむ提案は胸に響くはずだ。

サントリーはアルコール0%で「ビール」「酎ハイ」「ワイン」など幅広く展開。アサヒビールは微アル(0.9%未満)で「ビール」「ウイスキーハイボール」「スパークリングワイン」などを発売している。

リテールトレンドでは、飲料・酒類について各種紹介しています。

詳しくはこちらより、ご確認ください。