肉惣菜、冷凍の強化とローストビーフ進化論|「これは押さえたい」精肉編・2022年7月

2022.06.14

2022.11.10

月城流通研究所 月城聡之

精肉売場は、過去数十年同じスタイルで販売を続けてきているが、その時々の相場や環境によって価格帯や販売する商品に変化が起こっている。

2022年は世界環境が著しく変化し、輸入品に大きく影響したことによって国内畜肉の相場が動いている。相場が動くタイミングで、過去に引きずられて同じ商品展開をしていては、利益のみを圧迫することになる。新しい商品化、今までと異なる切り口での展開が成功への鍵となる。

輸入牛豚鶏を利益頭にしていた企業は、利益が圧迫されて厳しくなっている。少し前のタイミングで、国産の構成比を上げてきている企業は、利益を圧迫することなく展開できている。つまり、「情報戦」に勝利しているといえるわけだ。

今回は特に冷凍商品や肉惣菜など、過去からの動きが大きく変化しているカテゴリーも取り上げる。精肉の担当者の減少や、パックセンター化など各社さまざまな課題を抱えながら、進化を遂げている中で自社でできるニーズへの対応を考えていかなくてはならない。

夏休みを迎える7月は「焼き肉」「バーベキュー商材」の売り込みが本格化する。新型コロナウイルスによる移動制限や外出自粛などの規制のかからなかった2022年ゴールデンウィークは、バーベキュー場やキャンプ施設が混雑し、「安近短」と呼ばれる近場の旅行を始め、プチ旅行も高速道路の大渋滞からうかがえた。

夏休みも、ゴールデンウィーク同様、近場の旅行やステイホームで家族と過ごす時間を楽しむと想定される。

精肉

国産黒毛和牛カタ焼肉用1980円250g

黒毛和牛カタ肉を使用した「焼肉セット」は、「カタサンカク」と「コサンカク」の組み合わせで、「カタ部位」だけを使用している。

1部位を使用することで、いろいろな部位のパックを開けずに商品化を行うことができる。部位プレートや部位シールを使用して左側と右側が異なる小割り部位「カタサンカク」や「クリ」、「コサンカク」や「ヤリ」など表示し、一方でJANコードシールでは「カタ焼肉用」の部位表示をする。

同様に比較的安価なモモ系などでも、「シンタマ」を使用して「シンタマ」部位から、「カメノコ」「マルカワ」など、部分肉から、希少部位を数種類取り出すことで、商品化できるアイテムが広がる。

国産銘柄豚肉焼肉三種盛り980円400g

国産銘柄豚肉3部位を使用した焼肉三種盛りは安価でボリューム感も出やすい。「カタロース」「ロース」「バラ」の部分肉を合計400g980円で販売すると100g当たり245円となる。

一般的な白豚で商品化すると、さらに重量を増やすことも可能であるが、盛り合わせの商品はしっかりと利益を確保したいので、「銘柄」を打ち出せる豚肉を使用する。商品化はスライサーでそれぞれバットに3mm~5mmでスライスし、焼肉用に包丁でカットして3部位をトレーに盛り付けるとオペレーション的にも簡単に商品化できる。

「豚ロース」は生ショウガを商品化する際に「盛り合わせ」のセット用にパック数分を別途除けておくと商品化の二度手間にならない。

輸入豚肉が物流コストの影響で高騰しているため、国産豚肉や銘柄豚肉を売り込むチャンスである。丁寧な商品化と銘柄の名前を知ってもらう絶好のタイミングであるため、銘柄シールも忘れずに添付すると良い。

国産黒毛和牛カタロース焼きしゃぶネギ塩付き1980円260g

黒毛和牛カタロースを使用した「焼きしゃぶ」提案を強化する。近年、精肉で黒毛和牛の高級部位が売りにくく、余剰となりやすいという店舗も多いが、「焼きしゃぶ」提案で売場が華やかになるだけでなく、売上げにも貢献している。

外食の高級焼肉店では、「ロース薄切り」を使用した「薄切り焼肉」「ロース炙り寿司」「ネギ塩和牛巻き」なども展開されていることから、スーパーマーケット(SM)での商品化において、その商品をより値頃ある価格で提供すると良いだろう。

部位は、「カタロース」のロース側の「リブロース」側で商品化する。「ザブトン」が出てくる部分からは、きっちりと「ザブトン」「カタロース芯」を分割して希少部位を取り出し、商品化することで、利益確保にもつながる。

「焼きしゃぶ」提案は、「冷しゃぶコーナー」での牛肉展開ではなく、「焼肉コーナー」に展開することで、よりリアルな高級焼肉商品として位置づけて展開する。

肉のスライスだけでは、料理用途別の売場を間違えているように見えてしまうため、中心にネギ塩カップを配置して、焼肉用の位置づけで展開する。

肉惣菜

豪州産ブラックアンガス牛カタロースステーキのグリル100g当たり298円

精肉の惣菜コーナーは、単身者向けの商品を展開強化する。精肉1パックを買うほどでもないが、肉を食べたい人は1人前の商品が欲しい。特に夏場で、調理する時間も短縮できるなら惣菜でも構わない消費者は肉惣菜を購入する。

いままで惣菜も販売してきている唐揚げや豚カツなど販売をしてきているが、焼き上げ商品は惣菜ではなく、精肉ならではの商品となる。

「豪州産ブラックアンガス」という、グレードにもこだわった「牛カタロースステーキ」は、お肉が好きな単身世帯には食べたくなる一品といえる。彩りの野菜を加えると良い。

焼き上げ商品のデメリットでもある、冷めたら硬くなるという部分はステーキソースを添付して、濃い目の味付けで食べてもらうなど、あまり気にならないようにする一工夫も忘れずに行う。

また、そのままレンジ調理可能なトレーに盛り付けるなど、消費者行動を先読みした商品化を行う。今後は「焼いたステーキ」は肉惣菜の中心的なアイテムになると考える。

一方で肉惣菜に関してはバックヤードの設備の課題が大きい。そのため、アウトパックの検討、ボランタリーチェーンをうまく活用した仕入機能の拡張を検討する必要もある。

これは店舗ではどうにもならないため、バイヤーの仕事となる。店舗でできる仕事、バイヤーが全体感をもって行う仕事を明確に切り分けて、精肉の売上拡大を目指してもらいたいと思う。

精肉冷凍コーナー

精肉の「冷凍コーナー」は、生鮮重視で進んできた時代には大きく支持されないこともあったが、いまでは冷蔵庫でのストックアイテムとして重要視される時代に変化してきている。

特に「冷凍コーナー」での展開が売上高構成を大きく変化させたと考える。

「レンジ調理商品」や「ミールキット」以外にも、「冷凍焼鳥」「冷凍内臓」「冷凍バラ凍結」などの精肉アイテムなど需要が多く存在するのが冷凍コーナーである。

いま勢いのあるディスカウントストアの冷凍コーナーを見ても冷凍比率がかなり高いことが分かる。同様にSMでも冷凍コーナーで大容量パックを販売するケースが増えている。

冷凍商品には、幾つかのカテゴリーがある。スライスやバラ凍結の「大容量パック」「通常の量目の冷凍商品」「冷凍ミールキット」、また、最近人気が出てきているのが、「レンジアップの味付き、加熱済み商品」などがある。

それ以外に「未加熱焼き鳥の真空パック」や「冷凍骨付きステーキ」など、「購入頻度は高くはないが、たまに食べたくなる商品」がある。

カナダ産仔牛Tボーンステーキ用(冷凍)100g当たり398円

チルド商品としては取り扱いが困難な商品として、「骨付きステーキ」がある。「Tボーンステーキ」はチルド商品があったとしても取り扱いは難しい。そのため、冷凍コーナーでの展開が望ましい。

さらに、売場に「Tボーンステーキ」があると、アイキャッチとなり目に留まる。「仔牛のTボーンステーキ」は量目も300g以下に収まるため、パック売価も高くなりすぎず、手頃な価格というのもメリットの1つである。

冷凍コーナーのメリットの1つが、当然ながら賞味期限が長くなることである。そのため、今すぐに食べなくてもよいけれども、近々食べたいから買っておこうという商品の品揃えがポイントとなる。

さらに新型コロナウイルスの環境で海外からの商品調達が困難な商品が、冷凍焼き鳥串である。冷凍コーナーで売れ筋となり始めている、

冷凍焼き鳥串は海外からの輸入焼き鳥串の調達困難から、国産焼き鳥串も逼迫し始めると考えられるため、今のうちに在庫を押さえて売り逃しのないように対策したい。

冷凍商品は、調達と販売場所の問題が解決できれば、いますぐに取り組みが可能である。「冷凍コーナー」で売上げが取れていない店舗は、すぐに改善に向け取り組んでもらいたい。

トレンド商品

ローストビーフ進化論

精肉のつまみコーナーや生食コーナーなどで定番となった「ローストビーフ」は、「ローストビーフスライス」や「ローストビーフのっけ盛り」という商品から進化を続けている。

第二世代としては、グレードによる進化がある。安い価格設定しやすい「豪州産モモ肉」を使用したローストビーフが主流であったが、豪州産の中でも「アンガス種のローストビーフ」が登場。「黒毛和牛や国産牛のローストビーフ」も登場し始め、「ローストビーフ」の中でも松竹梅がつけられるほど商品展開が増えた。

第三世代として「部位による進化」がある。「モモ部位系」での展開から、ホテルのローストビーフでも使用される「リブロース」「サーロイン」部位、希少部位で認知度が上がった「イチボ」「トモサンカク」にまで展開が広まり、選択肢の幅が格段に上昇している。さらにホテルを意識したローストビーフステーキなどの展開がスタートし始めた。

そして、第四世代のローストビーフが展開されてきている。ローストビーフの惣菜化である。

ローストビーフサラダは、のっけ盛りと同様に展開が定着したが、ローストビーフ握り寿司、ローストビーフ太巻き、ローストビーフ巻き寿司(海苔の代わりにローストビーフで巻いたタイプもある)など、惣菜の寿司カテゴリーへの展開まで広まっている。

ローストビーフ太巻き1280円

ローストビーフ太巻きはローストビーフスライスを惜しげなくたねとして入れた商品となっている。しょうゆではなく、添付のローストビーフソースで食べる。ボリューム感が出るだけでなく、食べた後の満足度の高い商品となっている。

ローストビーフのブロックやスライスだけだった時代からすると、かなりの展開を見せている。精肉の枠を超えた商品展開は、惣菜との競合やすみ分けをきっちりとバイヤー同士で話し合う必要があるが、消費者が求めるもの(ニーズ)をいち早く取り入れて展開することで、マーケットイノベーターとしての立ち位置を確立することができるといえる。

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