ID-POSで分かった消費者の購買行動|伸び盛りの「乳酸菌飲料」、年代別の支持の違いが品揃えすることの意義につながる

2022.06.21

2022.11.09

分析:株式会社True Dataデータマーケティング部 竹村博徳

データ出典:True Data、業態:食品スーパーマーケット、以下同

「True Data」は、ビッグデータプラットフォームを運営する株式会社True Dataによる、全国のドラッグストア、スーパーマーケットなどの消費者購買情報を統計化した標準データベースです。全国の延べ6000万人規模の購買情報から構成され、性別、年代情報をカバーしています。

この連載では、True Dataから食品スーパーマーケットのデータを抽出したデータを用いながら、そこから導き出されるさまざまな商品の特徴を紹介します。

今回は、2022年4月の特徴的なカテゴリーを抽出した結果のうち、「乳酸菌飲料」を取り上げます。抽出に当たっては、21年5月から22年4月の1年間について月次で数字を追い、22年4月の売上高が一番高いカテゴリーを抽出し、さらにそのうち構成比ベースで売上金額が高いものを選びました。

その結果、図表①のようにTrue Dataのカテゴリー定義で見ると、生鮮・惣菜で7カテゴリー、加工食品で3カテゴリーが抽出されました。

この10カテゴリーのうち、より特徴的なカテゴリーを調べる上で、図表②のような形にプロットしました。横軸は金額の構成比で、金額の大きさを示します。一方、縦軸は前年同月比で、どれだけ売上が伸長しているかを示すものとしました。

結果を見ると、「たまねぎ」「調理パン」「乳酸菌飲料」は構成比も大きく、前年同月比も高いということが分かります。

今回は、その中でも今話題となっている「乳酸菌飲料」に注目します。

ID-POSはデータの深掘りを可能にする

図表③は「乳酸菌飲料」の1店舗当たりの売上金額を、月次で時系列に示したものです。これはカテゴリーの現状の推移を示すものとなります。点線の折れ線が前年、実線の折れ線が当年の推移です。

これを見ると、22年4月は直近2年間で1店舗当たりの売上げが過去最大になっています。非常に伸び盛りのカテゴリーであるといえます。

さらにID-POSデータを使ってこれを深掘りしてみます。図表④は22年4月の「乳酸菌飲料」の「売上金額」について、ポイントカードのID-POSのデータをベースに分解したものとなります(数値は前年同月比)。

この図の意味を説明しましょう。まずは「購入金額」を「購入者数」と「1人当たり購入金額」に分解します。ここでポイントとなるのは「購入者数」です。ポイントカードを提示した場合、例えば1人のお客であるAさんが、1カ月の中で3回買っていたとしても同じ1人とカウントします。

つまり、「何回買っているのか」ということではなく、「何人が買っているのか」という考え方による「購入者数」になります。これによって、1人当たりの「財布の大きさ」が分かります。

さらにもう1段階深掘りして、「購入者数」を実際に来店している人である「取扱店来店者数」とそのお店に来ている人の中でどれくらいの人が買っているのかを示す「購入率」に分けます。

同様に「1人当たり購入金額」も、「1回当たり購入金額」と1人が平均で何回買っているかを示す「1人当たり購入回数」に分けることができます。

ID-POSは、このように「購入金額」の要因となっているものをより細かく導き出すことができることが特徴です。

「乳酸菌飲料」では「1人当たり購入金額」、購入個数が増えている

話を「乳酸菌飲料」に戻します。前年同月比でどれだけ伸びているのかをデータで見た結果、22年4月の売上高が一番高いということでした。前年の21年4月と比較して売上げは112.76%に伸びています。

それでは何が要因で伸びているかを図表④から見てみましょう。「購入者数」は100.8%となっていることから、買っている人数は前年とそれほど変わっていないことが分かります。一方で、「1人当たり購入金額」、つまり、「財布の大きさ」が111.85%と大きくなったことが要因で金額が伸びていることが分かります。

さらに深掘りすると、財布が大きくなったのは、「1人当たり購入回数」が増えたのではなく、「1回当たり購入金額」、つまり、購入する個数が増えたことに起因することが分かります。

結果として、いま乳酸菌飲料は、「1人当たり購入金額」が拡大し、さらに「1回当たり購入金額」が伸びることで、市場が伸びているといえるわけです。

カテゴリーの特徴だったり、時季によって数字の変動はあったりしますが、基本的に「1人当たり購入金額」が増えるということは、イメージとしては「リピートして買い続ける人が増えている」、つまり、「盤石になっていく傾向にある」と、大きな枠組みとして捉えることができます。

次に、カテゴリーとしての傾向を踏まえた上で、実際にどのような商品が特徴的であるのかを深掘りしていきます。

図表⑤は、乳酸菌飲料の購入個数ランキングTOP10です。ここで2つの商品をピックアップしたいと思います。1つ目の特徴的な商品は「ヤクルト Y1000 110㎖」です。スーパーマーケット(SM)で21年10月に発売されたもので、これは「前年になかった売上げ」を作っていることを示しています。

もう1つの特徴的な商品が、前年に対してもっとも売上を伸ばしている「ヤクルトファイブ 80㎖×3」です。

高齢者層に支持されている「ヤクルトファイブ 80㎖×3」

さらに、これら2つの商品がいまどのような状況にあるのかを示します。図表⑥は「ヤクルト Y1000 110㎖」のデータです。

図表⑥は「1店舗当たり購入金額」の推移の状況です。ポイントカードで取得できるデータの特徴として性別、年代別のデータが取れることがあります。

まずは図表⑥を見てみましょう。前述のとおり、こちらは前年の実績がない、つまり販売していなかった商品で、データ上に登場するのは発売開始の21年の10月からになります。それがいまでは1店舗当たり2万円を突破している状況で、非常に伸長していることが分かります。

次に図表⑦です。青色の折れ線は「乳酸菌飲料」のカテゴリー全体での性別年齢層構成比です。一方で赤色の折れ線は「ヤクルト Y1000 110㎖」を買っている人の同数値です。

これを比較することによって、カテゴリー全体と比較してどの年代に支持を得ているかが分かります。

その観点で見ると、「ヤクルト Y1000 110㎖」は、カテゴリー全体と比較して50代、60代の年代が非常に構成比ベースで高くなっていて、支持されていることが分かります。

図表⑧⑨は「ヤクルトファイブ 80㎖×3」を同様に示したものです。

まず、図表⑧を見てみます。こちらは非常に特徴的といえ、カテゴリー全体を押し上げる上で、肝になってくる商品であるといえるものです。

実績が過去2年間しっかりある中で、21年11月を底にして右肩上がりで伸びているからです。しかも22年4月が過去2年間のうち一番売上げが高くなっています。非常に伸び盛りの商品といえるでしょう。

次に図表⑨でこの「ヤクルトファイブ 80㎖×3」を買っている人の年代属性を見ます。カテゴリー全体と比較すると60代、70代の構成比が大きく、支持されていることが分かります。

これはつまり、「ヤクルト Y1000 110㎖」と比べて「10歳分、年代が高いこと」を示しています。

ここから導き出せることは、「ヤクルト Y1000 110㎖」のような、ネットでもいま話題となっている商品を取り上げ、売場で積極的に展開することはもちろん重要である一方、「ヤクルトファイブ 80㎖×3」のような、あまりトレンドには出てこないものの、実際に右肩上がりになっている商品にもスポットライトを当てると、より売上げに寄与する可能性があるということです

しかも、「ヤクルトファイブ 80㎖×3」は、「ヤクルト Y1000 110㎖」とは買っている年代が違うという点もポイントになるでしょう。まさにこれこそ、両方の商品を売場に置く意義にもつながるものといえます。

著者プロフィル/2010年大学卒業後大手食品会社に入社。ID-POSデータを活用した提案に携わる中で「購買データ分析の重要性」を痛感し、15年にTrue Data入社。主に小売り・メーカー企業のデータ活用を支援している。現在は、データを掛け合わせた新時代のマーケティングを提案するとともに、「クライアントに求められる次世代ID-POS分析サービス」の開発を推進。

リテールトレンドでは、情報・サービスの関連サービスをご紹介しています。

詳しくはこちらより、ご確認ください。