年末に次ぐ売上げの月、「盆」後の秋メニューへの切り替えにも注意|「これは押さえたい」惣菜編・2022年8月

2022.08.02

2022.11.09

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

8月の主なイベントは、4日の二の丑の「うなぎ」「夏祭り」「盆商戦」がメインとなる。土用うなぎの「うな重」は平日であるため高額品は予約販売、昼需要に合わせた価格で「うな丼」「うなぎ&麺セット」「うなぎちらし寿司」を主力に販売する。

夏祭りや家族の集まりは「オードブル」、「寿司盛り合わせ(握り、助六)」を予約販売。

新盆には「法界折」「寿司(巻き寿司、いなり、細巻き)」「精進揚げ」「煮魚」「おこわ」「あんころ餅」を訴求する。最近は予約販売が主流であるためオペレーションの組み立てが重要だ。

2021年8月の家計調査では、食費(外食、給食除く)は前年比96.8%(3.2%減)と前年を下回った。

昨年は多くのスーパーマーケット(SM)で惣菜部門のみが売上げを伸ばしていたが、今年は外食の復活が予想されるため内食、中食は注意が必要。8月は12月に次ぐ2番目の売上げだが、外食の弁当もSMの弁当も「テイクアウト」には変わりがない。SMの惣菜も外食に負けないレベルの料理の提供が今後、必要になる。

8月に需要が伸び、前年を上回った「ゴールデンカテゴリー」は積極的に販売したい。盆明けから需要が減るカテゴリーは、商品はフェースを縮小し、売れる商品に売場スペースを譲りたい。

寿司

寿司は2月、12月に次ぐ需要高。家計消費で昨年3月から今年の3月まで前年をクリアしているゴールデンカテゴリー。8月は夏祭りや盆で帰省客が増えるため寿司需要の高まりが期待できる。盆用の寿司、オードブル予約も早くからしたい。

売場展開

盆期間中は「握り寿司」と「巻き寿司」「手巻き寿司」、いなり、助六などの「精進寿司」を訴求。握り寿司は衛生面も考慮して一人前の品揃えを強化。マグロが差別化になるため品質の良い、変色が少ないトロ、中トロ、大トロを準備したい。

家計調査の月別消費支出をグラフ化したもの。平均単価×購入数量=支出金額購入数量は1g~1kgと幅があるため小数点を変更して計算する必要もある。前年に比「支出金額」「平均単価」「購入数量」が伸びた場合は「赤字」の「○」。前年に比べて数字が下がったものは「黒字」の「×」で表記

うなぎのかば焼き

8月のうなぎは7月、6月に次ぐ3番目の需要。家計消費では、昨年は残念ながらうなぎのかば焼きは前年を割ってしまった。今年は「土用の丑」が2回(7月23日と8月4日)あるため、うな重、ひつまぶし、うなぎちらしの売上げアップが期待できる。7月の一の丑に二の丑の予告も必要だ。

売場展開

7月の土用に丑でうな重を食べたリピーターも期待できるが、平日であるため「うな丼」「うな丼&麺セット」「うなぎちらし」「うなぎ巻」など昼需要に注力したい。2980円クラスのうな重は予約販売する。

サラダ

7月、8月、9月とサラダの需要が高まる。21年の家計消費でも前年も超えている「ゴールデンカテゴリー」であるため今年も積極的に販売する。青果売場のカットサラダと競合するため価格は常にチェックしておきたい。野菜サラダの傾向は千切りキャベツが減り、リーフ類が主力となりつつある。

売場展開

今年は青果売場と差別化するため、カップに入れた「シーザードレッシング」「キャロットドレッシング」などオリジナルドレッシングを添付したサラダを販売したい。また、「ナッツ」「ドライフルーツ」「シード類」などをトッピングしたサラダも品揃えしたい。

カツレツ

カツ類は冬に売れるものと思いがちだが夏、にもよく売れる。昨年の家計消費でも7月~11月まで前年を超えているだけに今年も力を入れて販売したい。「豚ロースカツ」「ヒレカツ」「チキンカツ」は「カツカレー」の提案もしたい。

売場展開

夏のカツレツはさっぱり食べられるようなソースを選ぶ。「たれカツソース」「おろしポン酢ソース」「エスニックソース」「中華ソース」をカップに入れてトレーに添付して販売する。

トレンド商品

ざるそば&天丼セット

そば店の人気メニューは「ざるそば&天丼」だ。SMでも人気のあるセット商品。売価では398円が主流であるが、さらなる単価アップを考えたい。単価を上げるため、エビ天の本数を増やしたり、イカ、キス、アナゴを増やした海鮮天丼として580円くらいで販売したい。398円の商品は冷凍天ぷらセットを使用するなどオペレーション面も考えると良い。

塩ゆで豚(ペッパーソース、ハニーマスタードソース)

キャベツ、ニンジン、玉ネギなどの蒸し野菜の上に、塩ゆでした柔らかい豚バラ肉の厚切りを盛り付けて、ペッパーソースとハニーマスタードのダブルソースをかけた冷製料理。冷しゃぶサラダも人気だが、今年は厚切り豚に挑戦したい。2人前程の分量でソースはカップに入れても良い。

強化するアイテム

夏休みと「盆」を迎える8月は、惣菜にとっては年末に次いで売上げの多い月だけに、注意して計画を立てる必要がある。8月を「盆前」と「盆」と「盆後」の3分割に分けて計画を立てるとよい。

「盆前」は子どもや企業の夏休みで手がかかり、さらに暑さなどでの家庭の昼食、夕食の調理代行の需要などで売上げが伸びることが多い。

ただし、今年は全般的な物価値上げなどで惣菜の商品の中で、トレンドといわれる高額商品よりも、低価格でおいしい「普段の定番商品」に人気が集まると思われるので、十分な注意が必要だ。

「盆」はコロナが終息していれば、家族が集まるので大型パックが必要だが、規制がかかるようであれば「中」「少」量パックの傾向が続くのでこれも注意が必要となる。

「盆後」は「ぱたっ」と夏型商品が売れなくなり秋型商品(煮物、ポテトサラダ、フライ類など)に変わってくるので、これにも気を付けたい。

毎年のことだが、夏季はおにぎり、弁当、丼物、寿司商品の米飯商品の売上げが年間のピークとなるので、品揃えの落ちがないようにチェックを強化する。

「盆」を含む夏休みの8月は、惣菜部門の新任のバイヤー、新任の店の主任にとって売上げの高い年末の売上げを上げるためのテストとなる。この「盆」商戦で肩慣らしをして、上手にこなせれば年末の商品戦略が楽にこなすことも可能になるはずだ。その意味では新任には「盆」が大切な機会となる。

惣菜にとって材料の値上がりがどのようになるのか、予測が付かないが商品にとって「大きくて、安くて、おいしい」が重要なキーワードになることは間違いない。

また「盆」過ぎは売り上げが落ちてくるので、秋メニューの準備も合わせて準備しておくことが必要である。

「盆」の洋風プチオードブル

トレイの上の肉と野菜の食事
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「盆」を意識して売り込む商品。大事なことは見た目を重視して商品を作り上げること。6分割のトレーに美しく盛り付ける。

左上から、①玉子サラダ、②鴨ロースあぶり焼き、③ナポリタンサラダ。下段左から、④チキンサラダ、➄スモークサーモン、⑥ポテトサラダを盛り付け。

玉子サラダのトッピングはカニかまぼこ。鴨ロースは業務用に焼き上げたもの。ナポリタンサラダは細めのスパゲッティを使用。スモークサーモンは業務用のスライス済みのものを使用する。

見た目良く、盛り付けること。玉子サラダ、チキンサラダには、生クリームかマスカルポーネ(チーズ)を加えて作ると味がランクアップするので試すとよい。ひと手間かけて、見た目も良く味もいつもより良くするように工夫する。グリーンリーフや刻みパセリを飾ってレベルアップした商品に仕上げる。

柔らか鶏ささみ鶏天フリッター

皿の上の揚げ物
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普段の価格ながら、少し高級感を演出したおつまみ商品。フリッターは、普通の天ぷら粉ではなく、卵を多めに使ってふんわりとした衣を付けて揚げる。メーカーに業務用があるのでこれを使うと良い。

鶏ささ身肉は、麺つゆや液体中華だし(少し薄める)を使って、ひと手間かけ、下味を付けてから揚げると本格的な味に仕上がる。

また原料の鶏ささ身肉はサイズの小さいものが比較的安く入手できるので、選んで使うと良い。また、鶏ささ身肉の代わりに、鶏ムネ肉を使っても作ることができる。

この商品は、揚げ方で触感と味が変わるので、くれぐれも揚げ過ぎに注意する。2分くらいで火が通る。肉の大きさによって10秒単位で時間が決まるので、肉の大きさに合わせてテストをし、揚げる時間を決める。見栄えを考慮し、レモンを必ず添える。

バリエーションメニュー

「烏賊(イカ)のスペイン風フリッター」。イカ(胴輪切り)に塩コショウを振り、同じようにフリッターの衣を付けて揚げる。イカは揚げ過ぎると硬くなるので1分程度で揚げるようにする。柔らかさが人気。

アジアン味タイ風パクチー春雨サラダ 

サラダとサンドイッチ
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最近人気の高まっている野菜であるパクチーを使ったアジアンテイストの春雨サラダ。たっぷりと春雨を使うことでボリュームも出せて、値頃感も出せる商品。

春雨はキクラゲと一緒に柔らかくゆでて、熱いうちに甘酢に漬け味を吸わせるとおいしくなる。甘酢は加減が難しいので、寿司用の合わせ酢を使うとよい。これにナンプラー(東南アジアの魚醤)を加えて風味を付けると手軽に作れる。合わせ酢は、酢の物を作るときの㊙テクニックである。

エビはむきエビをゆでて冷やし、トッピング。パクチーをこんもりと盛り付ければでき上がりだが、地域や場所によってはパクチーが不人気だったりするので、そのときにはパクチーを外して商品化する。パクチーあり、なしの商品があってもよい。

バリエーションメニュー

「かに風味たっぷり春雨サラダ」。ゆでた春雨とカニ風味かまぼこを、業務用のポン酢であえて作る。春雨は柔らかくゆでて熱いうちにポン酢に漬け込む。味を見てポン酢の量は決めること。ポン酢が酸っぱいときは砂糖を加えて調整する。トッピングはキュウリの千切りが良い。

具だくさんの惣菜ピザ

鍋の中のピザ
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冷凍ピザのクラスト(台)を仕入れて惣菜バックヤードのスチームコンベクションを使って作る夏休みにふさわしい、具だくさんのピザを売り込む。宅配ピザに負けないようなピザは、惣菜の商品を使った具だくさんのピザ。しかも値段は格段に安く売り込むことができる。

①鶏唐揚げとトマトとポテトサラダのピザ

刻んだ鶏唐揚げとポテトサラダとトマトをたっぷり載せて、ピザ用チーズを載せて焼く

②ひれカツとトマトのピザ

揚げたヒレカツをスライスしてトマトソース、輪切りゆで卵、ピザ用チーズで焼き上げる

③揚げナスとトマトとハムのピザ

揚げたナスとトマト、ハム、トマトソースを合わせて、チーズを載せて焼き上げたピザ

メニューはさまざまな惣菜を(揚げ物、焼き物、エビなど)使って、さまざまなメニューが作れるので試作を行い、オリジナルメニューを開発して、惣菜ピザとして安く売り込む。新しい惣菜商品として開発が可能。

牛肉ステーキ弁当

容器に入った料理
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ステーキというと「熱く肉を焼くもの」と考えるが、これは手軽な価格の薄焼き肉の商品。焼肉用の肉を使って、焼き方の一工夫でおいしく作れる。

焼肉用の厚さにスライスした牛肉を焼肉のたれで漬け込んだ後、鉄板かフライパンを使い、弱火で焼いたステーキ弁当。たれで漬け込んであるので弱火で焼いても牛肉の色や、肉が縮んだりしない。これが薄切り肉ステーキのこつである。

ご飯を盛り付けた後、焼肉のたれをご飯にかけ回し、焼いた肉をカットしてご飯の上に載せ、焼肉のたれをかけ、ゴマをふる。ゆで卵半分と漬物を添える。

ここでは薄めの焼肉用の牛肉を使っているが、すき焼き用の薄切り肉を使っても良い。そのときの商品名は、「牛焼き肉重」になる。

バリエーションメニュー

ニンニクのスライスを油で揚げて、焼いた牛肉の上に散らして、「スタミナステーキ重」とすることもできる。ニンニクの芽を同じように油で揚げて散らすのも見た目が良く、商品価値を上げることができる。

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