和菓子全体が盛り上がる月、催事ごと和菓子をリレー展開|「これは押さえたい」菓子・スイーツ編・2022年9月

2022.08.09

2022.11.09

トルティーノ 中村 徹

昨年2021年の9月は月を通して新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言期間中となった。また、祝日は20日(月)の敬老の日(3連休)と23日(木)の秋分の日の2日であった。

本年の9月は19日(月)が敬老の日となり、土曜日からの3連休となる。さらに23日の秋分の日が金曜日になるため3連休が続く。

月全体では昨年と比べ水曜減の金曜増で週末型の店舗では0.5%程度の増収要因となるが、平日の増減なので同程度の曜日周りと考えてよいだろう。本年の彼岸の期間は9月20日~9月26日で彼岸の中日が23日となる。菓子関係の催事カレンダーを見てみると、9日(金)は重陽の節句、10日(土)は中秋の名月そして秋のお彼岸と続く。

また毎月の歳時日である6日手巻きロールの日、15日菓子の日、19日シュークリームの日、22日ショートケーキの日など菓子関係の日が多く存在する。

9月は初秋のシーズンになる。今年はラニーニャ現象が続く予想がされているので、厳しい残暑の初秋になりそうである。昨年と異なり旅行などは増加するであろう。一方でかなりまた新型コロナの第7波の影響も大きく、客数の予測が難しい9月になりそうである。

総務省家計調査の「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格」を見てみると、品目別令和2年年間の月別支出金額が掲載されている。

菓子類の9月を見てみると、年間平均金額に対し、額は小さいがまんじゅうが102.7%、他の和生菓子100.8%と和菓子全体が比較的好調な月となる。一方で8月まで好調だったゼリーが91.8%、プリンも92.2%と悪化する月である。

これらの商品群のトレンドを見るために「令和2年年間消費金額/平成12年年間消費金額」を計算してみると、ゼリー100.3%、プリン101.0%とわずかであるが伸長しているがまんじゅう43.6%、他の和生菓子85.1%と激減している。ケーキ類は指数が落ち込む月となる。これらを総合的に考えると和菓子の催事が多い月なので、その催事のポイントをしっかり押さえて企画を行うと良いと思う。他の生菓子については彼岸を中心に訴求するのが良いだろう。

催事による和菓子の展開

9月9日は重陽の節句である。重陽の節句とは1年間で5回ある節句のうちの1つで他の節句では1月7日七草の節句、3月3日桃の節句、5月5日端午の節句、7月7日七夕の節句がある。重陽の節句は別名菊の節句といい菊酒を飲んだり、栗ご飯を食べたりして無病息災や長寿を願う日とされる。

和菓子の世界でも菊を模した和菓子や栗の和菓子が楽しまれる。9月9日といえば例年ではまだ残暑が残り、秋という感じがしない時季であるが、節句の時季というのは季節の変わり目に当たり、体調を崩しやすいときに端午の節句なら柏餅などを食べ無病息災や長寿を祈願するというようなものである。従って重陽の節句でも菊や栗の和菓子をいわれと共に提案し売場展開すると季節感が演出される。

次に9月10日(金)は中秋の名月に当たる。もともとは旧暦の8月15日が十五夜に当たり、旧暦9月13日の夜に十三夜がある。この十三夜は、十五夜とセットでお祝いすることが良しとされており、どちらか片方しかお祝いしないと「片月見」などとして忌むこととされていた。

今年は9月9日の重陽の節句と10日の中秋の名月と続くので、両方を一緒に展開することになるであろう。中秋の名月は海外でもさまざまな行事が行われているが、中華圏ではムーンフェスティバルと評して月餅を催事的に大々的に販売している。日本では月見だんごが一般的で、十五夜には15個のだんごをピラミッド状に積んで、ススキなど秋の七草と共にお月見できる場所に飾るのが一般的である。

冒頭にも述べたが9月20日(火)から26日(月)までは彼岸の期間となる。お彼岸のお供え物は、春は「ぼたもち」、秋は「おはぎ」が一般的とされている。それぞれ春の花である「牡丹(ぼたん)」、秋の花である「萩(はぎ)」から来た言い方になるが、商品そのものは同じものである。

あくまでおはぎは代表的なお供え物であり、故人の好みや嗜好によってお供えするものはどら焼きでも最中でも構わない。ただ、おはぎは一般的に販売しやすく、実需にマッチしているので売上げに結び付きやすく、管理しやすいであろう。

さらに9月の歳時としては9月19日の敬老の日がある。ひと昔前、ふた昔前であれば「お年寄りといえば和菓子」であったが、今は和洋どちらでも喜ばれるであろう。しかしながら9月のケーキ類の指数は低い。スポンジを使用した商品はまだこの時季売りにくいがロールケーキは贈答用としては手ごろな物となる。

9月の旬のフルーツは柿や梨、巨砲、栗などがあるが、こういった食材とうまく合わせたロールケーキは好まれる商品となる。また和菓子でもこういった旬のフルーツをイメージした生菓子などが提案できると敬老の日も華やかになるであろう。いずれにしても敬老の日は「贈答」をイメージした品揃えをすることで品揃えの幅ができ、売場にも変化を与えるであろう。

売場展開

9月の売場展開のテーマは「初秋」「食の夏ばて対策」「旬の先取り」といった切り口になる。もう「涼味」という切り口には飽きが来て、嗜好として違ったものを求めるが胃腸が付いていかないという時季である。

こういった時季は旬をいかに先取りして食べやすいメニューでの提案をするかにかかってくる。例えば旬でもある栗を使ったさまざまなメニュー、栗まんじゅう、栗おこわ、栗ご飯といった切り口で考えると、催事にも旬にもマッチして食も進むのではないだろうか。

「フルーツ祭り」は毎月行いたい企画である。毎月8日が果物の日であり9月は1日がキウイの日、15日がマスカットの日なのでこの3日をターゲットに訴求すると良い。この時季はカットフルーツもブドウや柿を中心に秋のフルーツに変わってくる。これに合わせてプレーンヨーグルトやフルーツヨーグルト、フルーツゼリーを一緒に訴求すると統一感がある。 

トレンド商品

最近また専門店やコンビニなどで「カヌレ」が流行っている。一説には第二次カヌレブームとも言われている。

また、昨年ブームとなったマリトッツォも伝統菓子で、ヨーロッパの各地の伝統菓子が日本で手を加えて流行するというパターンができ上がってきている。

ネクストトレンドとしては「タルトタタン」の他、「クイニーアマン」「カッサータ」など、イタリアやフランスの伝統菓子が次々にコンビニで発売され、専門店がオープンなどしていて注目されている。

比較的なじみ深い「タルトタタン」はたっぷりのリンゴを焼き型に入れて、その上からタルト生地を載せて焼き上げたフランスの伝統菓子である。

「クイニーアマン」は、バターの風味と塩味、砂糖の甘味の絶妙なバランスを楽しむことができるフランスのブルターニュ地方の伝統的な焼き菓子である。

「カッサータ」はリコッタチーズやホイップクリームに刻んだナッツやドライフルーツを混ぜ合わせ、型に流して冷凍して作られるイタリアのアイスケーキである。

いずれも古くから地元で愛されている菓子であるが、日本でもいずれ人気の菓子となるかもしれない。

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