バーボン、小容量ワインと紹興酒、値上前の駆け込み需要にも周到準備を|「これは押さえたい」酒編・2022年月9月

2022.08.16

酒文化研究所 山田聡昭

今年のシルバーウィークは敬老の日(9月19日)の三連休の後、3日空けて秋分の日(9月23日)の三連休が続く。もちろんここが商戦の山場となる。

運動会と秋彼岸はどちらも家族が集まる機会であり、秋の行楽も加わりプチハレ気分が漂う。また、9月29日は日中国交正常化50周年で、中国がクローズアップされる。この機会に近ごろ人気の町中華メニューで晩酌を提案する。

なお、10月にはビール類やレティトゥドリンク(RTD)をはじめ、さまざまな商品が値上げを予定している。値上前のまとめ買い訴求も重要なポイントになる。

バーボンウイスキー

企画名は、「とっておきのバーボンソーダ」。敬老の日や秋彼岸で三世代がそろうのはおおむね子どもが小学生までだ。小学生以下の孫がいる年齢層は主に60代から70代前半で、酒類の販促のターゲットはこの世代である。

彼らは1980年代後半のバーボンブームを若いころに経験しており、「ワイルドターキー」「ジャックダニエル」「メーカーズマーク」などプレミアムブランドになじんでいた。三世代そろっての夕飯に並べる酒としてこれらをリマインドさせ、「とっておきのバーボンソーダを楽しもう」とお勧めする。

売場展開

シンボルゾーンに「プレミアムバーボン・オールスターズ」として前述のブランドをまとめ、「1980年代後半に一大ブームとなったプレミアムバーボンです。洋楽80’Sや映画『トップガン』好きのあなたにお勧めしたい一品です」とメッセージを添える。

その下の段には「ジムビーム」「フォアローゼズ」「ヘブンヒル」などスタンダードバーボンを陳列する。

さらに割り材としてソーダ、トニックウオーター、コーラを加え、ナッツ、ドライフルーツ、ビーフジャーキーなどのつまみを見せる。

小容量ワイン

企画名は、「ペアリングが楽しいピコワイン」。一般にワイン消費は瓶詰めのフルボトルの印象が強く、小容量商品はまだマイナーだ。

ワイン市場の成長に伴い、大容量の紙パックやバッギンボックス容器の商品を愛飲する人が登場しているものの、若年層ではワインへのエントリーがかつてほどではなく、ユーザーの育成が課題になっている。

ワイン離れの理由として、ワインがフォーマルなイメージに加えて気軽にトライしにくいフルボトルが中心である点が指摘されている。そこでイベント型消費が多く発生するシルバーウィークに、試しやすい小容量のワインを特集する。バーベキューやファミリーパーティなどで缶酎ハイや缶ビールを準備する中に、カップや缶入りのワインを加えるように促す。

売場展開

冷蔵ケースでRTDやビールと横並びで陳列するときには、「フルボトル(3缶分)で1500円クラスのおいしいワインです」など、缶酎ハイと比べたときの割高感を薄めるコメントを添えたい。

また、「自宅でペアリングコース。料理に合わせて『赤・白・スパークリング』はいかが?」と小容量であることのベネフィットをアールする。

紹興酒

企画名は、「おうち中華がおいしい酒」。有力加工食品メーカーはメニュー別中華調味料の他、レトルトや冷凍の本格中華料理をラインアップし、スーパーマーケットなどの惣菜売場にもギョーザ、シューマイ、エビチリなど中華料理が並んでいる。そう、自宅で本格中華を楽しむ提案はフード側では整っているのだ。

また、流行面では町中華がしばしばグルメ番組で取り上げられ、「町中華で飲む」という情報が次々に発信されている。加えて日中国交正常化50周年の節目では、これまでの友好関係の振り返りや2000年に及ぶ日中の文化交流にも目が向けられるだろう。

この機会に中華メニューでおいしく飲む提案にトライする。

売場展開

日本では中国の酒のシンボルは紹興酒だ。大手メーカーが輸入する正規流通商品を中心に、目立つ位置にこれを陳列する。品揃えのバラエティは銘柄やグレードよりも容量を優先し、中小容量をそろえた上で、「飲み残しは中華料理用の料理酒にも使えます」とコメントを添える。

他はカジュアルな人気メニューに合わせて酒類をお勧めする。「酢コショウでギョーザならレモンサワー」「しびれる麻婆にジンソーダ」「甘酢味がおいしい日本酒」など。

トレンド商品

大容量&大ロット

企画名は、「まもなく値上げ。いつ買うの? 今でしょう!」。この秋は酒類も値上げラッシュとなる。大手ビール4社はビール類と缶酎ハイ類の値上げを発表、焼酎の甲類トップの宝酒造と乙類トップの霧島酒造も主力商品を値上げする。

まだ、スケジュールと上げ幅は確定していないが、資材や燃料の値上がりは他業界と同様、輸入原料も多いため、円安による原価率のアップも大きい。今後もコストアップが続く可能性も少なくなく、1割程度の値上げは避けられないだろう。

当然、値上がり前にまとめて購入する動きが生じる。動き始める時季は9月下旬からだが、旧値で販売できる間は仮需が発生しやすい商品を積めるだけ積むことになる。販売予測は2020年10月の新ジャンル値上時、その前年の消費税の増税(8%から10%)のときの販売データを見直し、何が、どれくらい動いたのかを確認する。

少なくともビール類のケース売り、焼酎の大容量、店によってはRTDのケース売りの実績を確認し商品の確保に動く。ここで売り負けると、その後の1カ月間は厳しい戦いを余儀なくされる。

売場展開

企画名に挙げた「まもなく値上げ。いつ買うの? 今でしょう!」を売場に掲出し、値上げ前のまとめ買いを促す。商品ごとおおよその値上額が分かる一覧表の掲出は必須、かつ、在庫がなくなり次第、新値になることを伝える。

なお、仮需商戦ではビール類では単価の高い「ビール」を重点的に推す。10月の値上後に価格に敏感な人は新ジャンルにシフトするのは避けられないのだが、コロナ禍での家飲みシフトと一昨年の減税を追い風に、外飲みから家飲みへのリプレイスに成功したビールを、値上後もできる限りとどめおくために必要な施策である。

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