相場高受け、一層の利益確保戦略シフト、冷凍の進化にも注目を|「これは押さえたい」精肉編・2022年9月

2022.08.30

2022.11.09

月城流通研究所 月城聡之

食肉、あるいは国内外問わず食肉加工品も含めて、値上げ要請が止まらない。

新型コロナウイルスに始まり、人員手配、物流混乱、さらにはロシアによるウクライナ侵攻によって、穀物相場が上がり飼料価格が上昇し続けている。

現時点、相場が下がる要因があまり見つからず、安売りでの集客からの脱却のときがやってきたと言わざるを得ない。

特に輸入肉に関しては、「牛」「豚」「鶏」「羊肉」どの畜種に関しても相場が上がっているだけでなく、調達そのものが困難になりつつあることを深刻に受け止める必要がある。

困難な状況を打破するには、持続可能な商売のスタイルを作り上げることが求められる。また、精肉販売の仕事は、いまや世界を巻き込んだ情報戦となっている。

「地方のスーパーマーケットだから関係ない」という他人事では済まなくなっている。相場は世界情勢に左右され、販売する商品すら安定調達できないのが、いまの日本の状況となっている。

裏を返せば、安定調達できる場所から商品を調達することで回避できる。仕入れ先は、いつも同じ場所という、いままでの固定観念からの脱却が、いまを生き抜く精肉の知恵である。調達や販売方法に工夫をするだけで、競合よりも一歩前に出ることができる。

外部環境は、たくさん食べる消費者ではなく、適正量を適量食べる風潮へ変わり始めているため、量ではなく、食べ方を地域に合わせて提案していくことが重要である。

全食肉が高騰する相場に対応することが2022年の大きな課題となっているが、特にロシアのウクライナ侵攻による影響が、家畜の相場に出始めるのが秋。さらなる円安が生じれば、さらに相場の高騰が発生する。

現状よりも、相場が上がることは間違いないため、利益確保を狙った戦略を採り、安売りによる売上確保を行わないことが重要な鍵となる。

安定供給が可能な国への調達網の拡大、国産品へのシフト、安売りから付加価値提案への移行を行うことで、この未曽有の危機を乗り切りたい。

2022「ミートシフト3大ポイント」

①輸入肉は調達先を拡大し、安定供給のリスクヘッジを実施

②国産肉、地産商品の発掘と持続可能な調達網の確保

③安売り販売から商品の価値販売へ提案シフト

精肉

国産黒毛和牛バラ、モモ焼肉三点盛り 1980円270g

9月6日の「黒の日」には黒毛和牛の焼肉を販売する。

全体的に相場が高い中、やや落ち着きを取り戻しているのが黒毛和牛。輸入牛肉が高騰しているため、相対評価として、国産の値上がり幅が、輸入牛肉よりは、小さいので、販売しやすい。

「和牛モモ部位」や「カタ、バラ部位」などは、比較的安く販売でき、取り扱いやすくなる。

部位の重量構成比率が高い「バラ、モモ部位」を小割りして、「三点盛り」などで展開することで、単品の価格の価格というよりは、1パック当たりの購入価格が全面に出るので、販売しやすくなる。

最近は「4分の1セット」や、部分肉の小割り、分割での納品も増えていることから、少量ずつを焼肉用やスライス材としても使うことが容易になった。

セット納品している場合は、価格メリットが出やすいため、「モモ、カタ、バラ部位」の活用がポイントとなる。

国産銘柄豚ロース、バラしゃぶしゃぶ盛り合わせ 1380円340g

9月に入ると、外気温は高いながらもしゃぶしゃぶの売場を少しずつ作り始める必要がある。

単品のしゃぶしゃぶ用の他に、盛り合わせを販売する。最近は、単品よりも盛り合わせを主力に販売する企業が増えている。単品の値上げをカバーする1つの工夫である。

トレーも価格帯が上がっているが、黒金のトレーなどを使用することで価値を訴求した商品化となる。また、切り落としタイプやスライス取りでの商品化よりも、「花盛り」など奇麗に盛り付けることがポイントとなる。オペレーションとしては時間がかかってしまうが、価値を付加した商品化とする。

関連販売のしゃぶしゃぶのたれは、盆明けから「冷しゃぶ」から切り替わっているため、売場は作りやすいだろう。

カナダ産豚カタロースふぞろい焼肉レモンペッパー味 580円400g

新学期が始まる9月は弁当商材や新たな気持ちで夕食を作り始める人も多い。

また、単身世帯向けの「焼くだけ簡単メニュー」として、味付け商材を充実させるとよい。精肉で流行中の「ふぞろい焼肉」シリーズで、オペレーションも簡単に展開を増やす。使用する豚肉は、輸入豚であれば、仕入れている国のカタロースやバラ、ピクニックなど使用する。

通常使用している部位を横展開することで、仕入れリスクを減らし、在庫を確保することもできる。国産豚肉を使用する場合は、安価な豚カタや豚モモを使用するのもおもしろい。

いままで切り落としや小間切れにしかなっていなかった部位を、やや厚めにスライスして味付けすることで、味付け商材として展開可能になる。

味付けは、レモンペッパーや山賊は定番であるが、豚みそなどのみそ漬けで使用している味も、焼肉用で使用することができる。

肉惣菜

若鶏半身グリル 680円半身

「若鶏半身揚げ」が肉惣菜で人気となり、精肉の肉惣菜や惣菜売場で定番化してきている。この若鶏半身をグリルにすると別メニューとして展開可能となる。

グリラーがある店舗はほとんどないが、スチームコンベクションのコンビモードで加熱すれば、パサつくことなくグリルすることができる。

数十秒フライヤーで素揚げすると皮目がカリッと揚がることから、揚げ工程を入れる店舗もある。試してみる価値はある。

見た目の焼き目が購買力に大きく影響するため、焼き色が足らない場合は、バーナーで付けることも必要となる。

「若鶏半身シリーズ」は、クリスマス需要でも大きく貢献できる商材である。店オリジナルのおいしい調理方法で、固定客が育成できれば、確実な囲い込みにつながる。

ローストチキンのホールでの販売は、コストコなどがロースターでおいしい商品を販売したことで定着させ、固定客が確実にいる状況だ。

いまやおいしいは当たり前で、このおいしいを進化させているのが若鶏半身といえる。揚げからグリル、ローストなど展開を一気に攻めているため、時代に乗り遅れないためにも、仕入れを強化して販売するとよい。

トレンドアイテム

ついに登場!「冷凍焼き上げステーキ」

冷凍コーナー強化がここ数年、喫緊の課題として取り上げられ、売場が劇的に進化を遂げている。

かつて冷凍コーナーは、「冷凍牛すじ串」や「ロールキャベツ」「結着サイコロステーキ」などがトレー販売されていたが、いまは売場が大きく変化している。

第一世代は、「冷凍半製品」の襲来。

メーカー製の衣付き半製品のコンシューマー商品が、弁当商材として注目を集め、ハッシュドポテトやアメリカンドッグなど多様な商品が販売されはじめ、売上げを作り始めた。

第二世代は、「冷凍真空たれ付け肉」の台頭。

焼肉ブーム、ジンギスカンブームが到来し、真空たれ付け焼肉やジンギスカンなど販売されるようになり、さらなる進化を遂げる。

第三世代は、「冷凍ジャンボパック」の売場占拠。

ジャンボパックやメガパックにより、パック単価が劇的に上昇した冷凍コーナー。ブラジル産鶏モモなど脱気パックが冷凍コーナーで展開されるようになる。

第四世代は、「バラ凍結肉」による冷凍時代の革新。

精肉商品も家庭で冷凍されることを先回りして、冷凍庫保存用にチャック付きの「バラ凍結肉」が販売される。包装形態がスタンドパックや三包シール包装など、新しい取り組みが売場で目立つようになる。「パラパラミンチ」「バラスライス」「ロースしょうが焼きポーションカット」などが展開され始めた。このころ、オーガニックビーフステーキのポーションカットなども販売されはじめ、冷凍コーナーが飛躍的に活性化し始めた。

第五世代は、「冷凍ミールキット」「冷凍焼き鳥」来襲。

袋を開けて炒めるだけ、焼くだけ、湯せんだけで1食完成するような、簡便食の冷凍化が進む。冷凍技術が一気に進歩、冷凍の革新が起こる。

そして、第六世代は、「冷凍焼き上げ肉」の登場。

冷凍技術が進化したことで、焼き上げ商品も冷凍することが可能になった。

焼き上げ状態の香ばしさを残しつつ、食事前に簡単に加熱して食べることができる。現状の完成度からすると、まだまだ進化することが予想される。

現時点のレシピでは、フライパンで軽く焼くという行程を挟んでいたりするため、完全な焼き上げではない。しかし、低温調理した商品などバリエーションが急拡大し、売場を広げている。

国産豚カタロースグリルドステーキ 880円150g×2枚

次なる進化として1食(1食分のカロリーやたんぱく質など摂取できる)分の電子レンジ加熱商品として、管理栄養士監修弁当タイプの冷凍商品が近未来の主流になる。

これは、現在の冷凍食品コーナーにすでに登場し始めており、このシリーズがごく一般的に浸透してした場合、生鮮食料品の売上げにも影響を及ぼしそうだ。

肉塊

米国産牛タンブロック 100g当たり598円

輸入牛タンの価格が高騰し、容易に値上げをすると消費者から信頼感がなくなってしまう。そのため、商品化を変化することでできるだけ、同じ商品群の価値を下げないようにすることがポイントとなる。

牛タンは焼肉用の商品化が通常商品であると思う。そこで、牛タンを半分にカットして肉塊販売を行う。商品化のポイントは、牛タンを真横水平切りして、下半分(タン下側)を肉塊として販売すること。価格は安価に抑え安さを演出する。

残った上半分は、タン下よりも柔らかいため、価値を訴求しながら販売する。タン元は上タン用で厚切りカット、タン中側は5mmカットとして魅力ある商品化とする。

同じブロック販売でも、ブロックを取る場所と残った部分と合わせて販売し、マージンミックスして粗利益が残る合理的な販売方法に切り替えると良い。

単純に牛タンを効率的にブロックはブロック用、焼肉は焼肉用と切るだけでは、同じ量を製造しても、利益が出ないので注意が必要である。

リテールトレンドでは、精肉に関してご紹介しています。
詳しくはこちらより、ご確認ください。