相場高のいまだからこそ、商品の価値を改めて見直す|「これは押さえたい」精肉編・2022年10月

2022.10.04

月城流通研究所 月城聡之

今年の夏は各地で猛暑となり、夏が終わっても暑い日が今しばらく続くと予想されている。そのため、例年よりも秋冬商材の売れ方が鈍い可能性がある。

その部分を十分注意して、天候などの外部環境の変化には例年よりも敏感にウェザープロモーションを気にして売場づくりを行ってほしい。

また、今年はさまざまな相場高から、国内外の各畜種の値上要請があり、納品単価が高い。相場が高い中でのポイントは、輸入肉や内臓であっても丁寧に扱うこと。雑な商品化をすれば、商品に対する価値が価格と合わなくなるだけでなく、薄利になっている現状で、廃棄が出てしまえばさらに粗利益を下げる行為となる。

国産や輸入という縛り方ではなく、商品に対する価値を訴求すると意識が変わる。精肉原料の相場高は国内外問わず、今しばらく続く。そのため、相場高でもその原料を使用して、上手く売上げと利益を確保していく手段を考える必要がある。

特に、輸入の商品に関しては、製造だけでなく物流面でも苦慮していることは、ニュースでも度々取り上げられるほどで、一般消費者でも知っている現状となってきている。

値上要請が秋冬でも発生している中、どのように上手く精肉を切り盛りしていくか手腕が問われることになる。

穀物原料が高いため、家畜の餌が高く、必然的に生産コストが上昇しているため、しばらく相場が下がることはない。牛肉は1頭育つのに2年以上かかることを想像すると、しばらく値段が下がらないと容易に想像できるのではないかと思う。

商品を仕入れて商品化して売るという作業を毎日しているだけであれば、何の発想も生まれないと思う。しかし、新型コロナウイルスによって環境が大きく変化して、外食が食べられなくなった時に、外食メニューが惣菜でも取り入れられ、それが売れ筋になったように、一工夫することが売上げに直結している。

ポイントは、商品の価値を高めて販売することである。輸入牛肉は、いままで安価であったため、切り落としや小間切れといった商品化が多かったが、価格が高いのであれば、きちんとスライス取りして、並べると価格に見合った価値が出る。

購入する動機付けがそこにできる。黒豚やイベリコ豚に関しても、その価格の価値をトレーの上で表現できているかが鍵となっている。

精肉

米国産牛肩ロース薄切りすき焼き用 100g当たり278円

輸入牛肉を国産牛のように奇麗にスライス取りして商品化する。トレーは通常のトレーでもよいが、高ふた付きのトレーを使用することで、立体的に見えボリューム感も出る。

写真のボリューム感で約450g入っているため、1250円前後のパック単価となる。平ケースに週末、大陳すると売場に迫力が出る。

もうワンサイズ小さい880円前後と、ワンサイズ上の1980円前後の3SKUで展開すると、3SKUの中央であるこの商品の売れ方が良くなる。

外気温によっては、すき焼き提案ではなく、薄切り焼肉提案など臨機応変に対応するとよい。外気温が高い、低いといった気温によって、関連販売のたれを、すき焼きから焼肉に変更するなど、売場の全体にも注意して商品を展開する。

国産黒豚ソトモモ切り落とし 100g当たり238円

黒豚モモを小割して外モモ部分をスライス取り、もしくは立体的な切り落としに商品化する。小割することに対して抵抗があるかもしれないが、商品化する時間がないということではなく、黒豚は白豚や銘柄豚とは、異なる「松竹梅」戦略の「松」に位置付けられる商品ということを忘れてはならない。

その価値を商品に付ける必要があるため、商品化にもこだわりを持ってほしい。

黒豚切り落としを縦長トレーに盛り付けるだけで、通常のトレーに盛り付けられている商品よりも格段にアイキャッチとなる。

黒豚は、バークシャー種という、品種自体が異なることは知っての通りである。

白豚よりも比較的融点が低い傾向にあり、ロース芯だけでなく、モモにもサシが入りやすい。食べると白豚とは異なる甘みがあるのも特徴。そのため、味を楽しんでもらうような食べ方提案が必要となる。しゃぶしゃぶであれば、ごまだれよりもポン酢や塩、しゃぶしゃぶ用の白ネギ薄切りと一緒に食べると、豚本来の味も堪能できる。

黒豚の売れ行きが芳しくないという店舗も少なくない。

商品の見せ方や盛り付けは、白豚や銘柄豚と同様ではないだろうか。販売している商品1つ1つにこだわりを持って販売してみると、売上げが変わってくるので挑戦してほしい。

米国産豚とろ(肩)塩だれ味付け焼肉用(解凍) 598円(300g)

米国産「豚とろ」を、角切りにしてたれ漬け商品で販売する。

スライスして焼肉タイプにも商品化することが一般的であるが、角切りにして味付けすることで、売場の見た目に変化が出る。

王道の塩だれには白髪ネギに刻みネギをトッピング、またはカイワレ大根をトッピングすると色合いも良くなる。

商品化時のポイントとしては、脂肪が10mm以上付いている部分はトリミングして、5mm以下にすること。丁寧な商品化で購買意欲を上げる。

「豚とろ」は片面が脂肪で覆われているため、特に身の薄い部分に関して注意をして商品化する。

味付けは、塩だれのほかにも、チリソースや山賊焼きのたれも今年の人気の味付けであるため、バリエーションで展開すると良い。

トレーは「豚とろ」の色が白系色のため、色が濃いトレーを使用すると商品が栄える効果がある。ふた付きの場合は、ふたにたれが付かない程度の高ぶたを使用するか、逆にラップでたれをギュッと締め付けた状態にするかで、商品の見え方が変わる。トレーにも配慮が必要である。

トレンドアイテム

精肉冷凍売場

精肉の冷凍コーナーは大きく進化を遂げている。

冷凍技術の進歩と共に、味やバリエーション、包装技術なども消費者に認知され始めており、ただの冷凍商品から、食の選択肢の1つに変わっている。

冷凍商材は、最近ではどのメーカーも品揃えが豊富になっており、形状が似た商品が数多く存在する。そのため、競合との差別化を行う品揃えにも注意して、商品を選別すると良い。

国産豚のロールステーキ(チーズと大葉) 398円

国産豚を使用し、チーズと大葉を巻いたロールステーキは、老若男女、子どもから高齢者まで幅広く味わえる商品となっている。

チーズのうまみとさっぱりした大葉を巻き込んでいる。味付けは自由に楽しめるように、味付けをしていない商品となっている。

食感をよくするため、1.5mmスライスの豚肉を巻いているので、高齢者でも柔らかく食べることができる。

調理方法も簡単で、凍ったままフライパンで焼くだけの簡単オペレーション。弁当の1品としても冷凍庫に在庫しておきたい商品。

いつでも使えるようにチャック付き包装となっているので、消費者の要望にも意識した商品である。

冷凍コーナーのバリエーションとして、日配食品の冷凍コーナーにない冷凍生肉の半加工食品の位置づけの商品である。

加工食品の味ではない自分で味付けして調理できることがポイントとなる。冷凍の食品棚付近にも、関連販売でたれを売り込むチャンスでもある。

商品を販売するということは、調理に必要な調味料、付属品を購入してもらうチャンスが無限にあるということであるので、クロス販売を常に頭に入れて売場づくりをしたい。

スペイン産イベリコ豚ローストレバーブロック 100g当たり198円

イベリコ豚レバーをローストしたフォアレバーを冷凍コーナーで展開。生肉の冷凍やスライスだけではなく、加熱済み調理食品としての販売となる。

豚レバーをブロックのまま調理真空し、ブロックでの販売となる。「フォアグラ」は一度は食べてみたいという食材の1つであるが、イベリコ豚のレバーという、一風変わったレバーも食べてみたくなる、インパクトの強い商材である。

豚レバーは、レバニラ用か焼肉用でしか商品化をせず、オントレー商品に頼ってきていた。しかし、メーカーが以前よりも増え、加工品を中心に展開できる企業が出てきたことによって、商品化のバリエーションに幅を持たせることが容易となってきている。

冷凍コーナーの充実は、精肉売場に一石を投じている。生肉だけでなく、加熱済み商材が出始め、さらにトレー販売ではないパッケージにも変化が出てきている。

調理方法なども記載できる紙パッケージの商品は、精肉の売場を格段に次のステップへ引き上げている。トレー販売ではできなかった、調理方法の記載は、POPやコト販促を行なわなくても良い最新の展開となることは間違いない。

味付け商品

味付けコーナーでは、豚肉を使用した味付け商品が現在のトレンドとなっている。

特に冷凍商材を使ったアイテムは、オペレーションに手間がかからず商品化が早い。冷凍鶏肉よりもドリップが出にくいこともメリットの1つである。

スペイン産豚バラカルビ味付け焼肉用ガーリックペッパー味(冷凍) 100g当たり128円

韓国のメニューが巷でブームになっており、「サムギョプサル用」の商品化が定番になっている。

生肉でサムギョプサル用をスライサーで商品化すると、細長いバラスライスの分厚い商品ができ上がるのが定番である。

しかし、「冷凍豚バラ、輸入豚肉ベリー」を使用し、半解凍のパーシャルフリージング(-5~-2℃の範囲で、半凍結、微凍結状態)でスライスすると、本場韓国と同じ形状の板状の「サムギョプサル」となる。

「サムギョプサル」をプレーンの味なしで商品化するのと同時に、味付け商材を数アイテム商品化することで、味付けコーナーが充実する。

チリソース、ガーリックペッパー、山賊焼きのたれが今年のブームとなっており、濃い味付けのたれが売れ筋である。

パーシャルフリージングは、冷凍庫から冷蔵庫へ移して、箱から出した状態で、丸1日、0℃で解凍すると中心温度が-5~-2℃の範囲に上昇する。

冷蔵庫の大きさや風の当たり方、冷蔵庫の物量や開け閉めによる温度変化など、環境によって前日だと凍った状態であることもあるため、それぞれの冷蔵庫で検証して商品化すると良い。

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