年末商戦に向けて仕掛ける時季、掃除後に新しくする需要への準備も|日用品/雑貨・11月の商品と売場

2022.11.08

2023.06.12

トータルプラン 横島宏一

12月の年末商戦は小売業にとって1年の中の大きなウエートを占める。それだけに、年末商戦にかける意気込みは高いが、年末だけ頑張れば良いわけではない。10月下旬ごろから気温の変化と共に第1回目のピークを迎えた冬物商品は、11月の第4週から年末商戦へと突入する。

従って、11月第3週までに、年末から新年までの計画と準備を万全にすることが、年末商戦を勝ち抜くための鍵となる。最近では、アメリカ発のセール「ブラックフライデー」が日本でも一般化されている。年末商戦は11月から始まっている。

売場としては、秋から冬物商品への変更、「クリスマス」や「大掃除」「ボーナス」「お歳暮」「お正月準備」とイベントが続く。

次から次に入るチラシ商品やテーマ、企画売場づくりだけで、作業がいっぱいになると、売り逃しや在庫過多になりがちである。それぞれの商品動向を把握し、売場や商品を拡縮しながら、売れる商品を的確にアピールすることが必要となる。

売場、商品、在庫計画、そして人時計画をきちんと立て、どのように運営していくかシミュレーションを行い、随時、修正を行いながら、最大限の効果を発揮するための事前準備を行いたい。

大掃除

なぜ、大掃除を提案すべきなのか。大掃除は、行事的(年末だから大掃除をしよう)、心理的(新しい年は奇麗な家で迎えたい)動機から行われている。

大掃除は、年末の行事である。新年の準備の一環ではあるが、まずは、大掃除をすることで、今年に区切りを付けて、新年の準備が始まる。

つまり、大掃除を早く、楽にできる提案を行えば、年始商品の準備の時間が長くなり、それだけ年始商品の販売にもつながるはずだ。

また、大掃除は、「新しい商品や奇麗な商品を買い替える、補修する」という購買意欲を高める。人は、汚れた状態、雑多な状態では気にならなかったことが、全体を奇麗にしたことで、その中の汚れや故障がとても目立ち、購買意欲が起きるのである。従って、「掃除をするために必要になる商品(掃除用具、洗剤など)」を販売することで、「掃除をした後で、買い替えたいと思う商品」のニーズが起きる。

掃除用品は場所ごとに

掃除用品の考え方は、「どこ(場所、モノ)を、何(洗剤)を使って何(用具)で掃除する」のかである。例えば、部屋の畳を掃除するには、畳用洗剤や漂白剤という消耗品が必要であり、ぞうきんやバケツ、炊事手袋などの用品を使って掃除をする。

つまり、洗剤などの消耗品と用具を使うことで掃除ができるのである。そこで、陳列には場所、用途別の陳列を行い、何と何を使えば掃除ができるかという分かりやすい提案を行う。

キッチン…キッチンのポイントは、シンクとレンジ台である。水と油を使用するこの場所を奇麗にすることが、キッチンを奇麗にする。シンクは、水あかと排水口の汚れだ。排水口の汚れ落としやパイプの洗浄剤を提案したい。

レンジ台では、油を落とす洗浄剤を提案する。IHレンジ台が増え、掃除もしやすくなっているが、大きな換気フードなどの掃除が必要になっている。電子レンジや冷蔵庫などの普段あまり掃除をしない場所も専用洗剤や用品の提案を行う。

…ロボット掃除機、不織布や粘着タイプのシートなど、普段から簡単に掃除している場所だが、本格的に実施するのはこの時季だ。フローリングには、ワックスの提案を行い、畳には専用洗剤の提案を行う。ワックスを塗布する場合の注意は、素材の確認と汚れをきちんと取ってから塗ることである。ワックスの剥離剤や洗剤を提案することも忘れずに。

壁、天井…不織布やマイクロファイバー製の柄の長い掃除用具が多数販売され、たんすと壁のすき間やたんすの上部、エアコンの回りなどの掃除がしやすくなってきている。簡単であることを提案して、売上げに結び付けよう。エアコンの専用洗剤も提案する。

…年間の売上指数の中で最も大掃除の時季に売上げが高くなるのが、窓の清掃用品である。窓用洗剤やグラスワイパーやグラススクイジーなどの用品をきちんと展開すること。会社関係では、まとめ買いがあるので、注意が必要。

バス…カビ取りと排水口の洗浄剤に注意する。風呂ふた用のブラシなど細かな点をアピールすることが必要。

トイレ…黄ばみ取りなどの専用洗剤を提案する。新商品などの効果を提案する。

仏壇…仏壇用クリームや真ちゅう用の金属磨きを提案する。仏壇用の傷補修材なども一緒に展開する。

家具…家具用ワックスやクリームを展開する。ソファのある家も多いので、レザー用の汚れ落とし、ワックスを展開する。

玄関…石材用のワックス・洗浄剤を展開し、玄関の掃除提案をする。

補修…昔ながらの襖、障子の貼り替えは少なくなっているが、和室がある家では必需品。

…庭の掃除として、竹ぼうき、熊手、ブロワーなどの展開を行う。大掃除というと家の中ばかりに目が行くが、庭、外壁などの家の外回りも重要だ。

…洗車シートや窓拭き用シートなど手軽な洗車用品だけでなく、カーシャンプー、スポンジ、拭き上げ用クロスなど、年末帰省や旅行に出かける人に。

掃除の後に新しくする

掃除をした後に買い替えるもの、必要となるものが、この時季の売れる商品である。部屋や場所別に考えると、必要な商品が見えてくる。「エコ」と「節約」をキーワードに商品を提案したい。

キッチン…キッチンの掃除の後に必要になるのは、レンジパネルなどのアルミ製品や換気扇フィルターなどである。IHタイプが増えているので、傷を防ぐIH用のガードプレートやカバーを提案する。シンク回りでは、洗いおけや三角コーナーなどの用品、ごみ箱などの提案、食器棚用のシートなどの提案を行う。シンク下収納やキッチン収納棚も収納には必需品。新年に向けて、スポンジや布巾、飯椀や汁椀などのテーブルウエアも。。

…玄関用、キッチン用、洗面所用、湯上り用などマットを提案する。

壁、天井…天井を掃除するときに気なるのは、照明器具である。この時季の照明器具や蛍光管の売上高構成比は高い。エコと節約の面から、LED電球を前面に展開し、グロー球やナツメ球、スポット照明用などの細かな商品にも注意したい。また、壁では、モノを掛けるヒートンやフックなどのニーズが高まるので注意したい。

…窓の掃除の後は、結露防止シートや防災用の飛散防止フィルムなどの提案を行う。結露防止シートやすき間テープなどは、エコ、節約の提案も忘れずに。

バス…湯おけや風呂椅子、風呂ふたなどの浴室器物は、新年を迎える前に取り替えるというニーズもあるが、掃除後の取り替えを提案する。風呂ふたやシャンプーボトル、断熱シート、節水シャワーヘッドなどは、エコ、節約を提案する。

トイレ…トイレカバー、トイレマット、便座シートなどファブリック一式を取り替える提案と芳香剤・消臭剤の提案をする。

仏壇…仏壇の掃除の後は、線香やろうそく、切り花、仏多当などの用品を提案する。

家具…家具の掃除の後は、マルチカバーやテーブルクロス、クッションカバーなどのカバー類を提案していく。

玄関…玄関の掃除の後は、靴の整理になる。シューズケア用品やシューズキーパー、シューズホルダーなどの靴の収納用品を提案する。玄関としては、シューズボックス、傘立て、玄関台、花瓶などの玄関の小物家具も。

…車の大掃除後は、芳香消臭剤やシートカバー、クッションなどの車内小物を提案する。車のメンテナンスにも気を使うので、特に、霜取り用品やバッテリー用品などの冬に要注意用品を提案したい。

冬に備える

寒くなれば、暖かいモノが売れる。体温を保持するために、衣類は、長袖からコートなどの厚手のものを着るようになり、部屋では、室内の温度を快適な温度に保持しようとする。気温の変化に対応して商品動向も変化する。

パーソナル暖房

節電やエコの影響もあって、部屋全体を暖める暖房よりも個人を暖めるパーソナル暖房が主流となりつつある。リビングでは、サーキュレーターで空気を循環し、パーソナル暖房や着る毛布を着用し、ふかふかのルームソックスやルームシューズでくつろぐようになっている。

また、多くの人が働くオフィスでは、体感温度に個人差がある。エアコンの温度設定も自分の快適温度に合わせることはできない。特に女性は、オフィスでブランケットを使用する。

着る毛布としての定着したカウチケットや膝かけであるブランケットも、サイズや素材、柄などが多様化され、商品は豊富になっている。カウチケット、ブランケット、ルームスリッパなどを同じ柄でコーディネートした商品を提案する。軽衣料を扱える店舗では、帽子、手袋、マフラー、ソックス、温感素材の下着類なども携帯カイロと一緒に展開したい。

乾燥、風邪対策

気温と湿度が下がると単に寒いと感じるだけではなく、肌や髪に乾燥を感じたり、冷えによって不調が出たりと体のさまざまな部分に変化が起こる。寒さのピークは年明け以降だが、「早めの冬支度」を提案し、早期販売を行いたい。

乾燥対策としては、リップクリームやハンドクリームなどを展開する。化粧品としては、頬や目の回りから肌の乾燥を感じる時季なので、冬用基礎化粧品として、化粧水や乳液、保湿クリーム等を提案し、ローションパック用のコットンやシートなどの関連販売をする。

コロナ以降、常にマスクや手洗いやうがいなどが日常化しているが、冬はインフルエンザの感染対策もあり、よりマスクやアルコールジェル、うがい薬などの予防ケアの品揃えを充実させた売場展開を行いたい。