惣菜の売上げは低め、鶏などを売り込みつつ、定番商品のブラッシュアップも|「これは押さえたい」惣菜編・2022年11月

2022.11.22

2022.12.02

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣
城取フードサービス研究所 城取博幸

11月はクリスマス商戦、年末、年始商戦に向けて重要な時期。行事に対応しつつ12月商戦の前哨戦でもあるため、クリスマス、年末商品の顔見せも早めに行いたい。

2021年11月の家計調査では、需要が伸び前年を上回ったカテゴリーはシューマイが109.09%、惣菜セットが113.48%。需要の変化はあまりないが前年を上回ったカテゴリーは弁当が103.55%、調理パンが107.42%、他の主食的食品が106.98%、天ぷら、フライが101.29%、需要は減っているが前年を上回ったカテゴリーは寿司が104.45%、おにぎりが103.77%、コロッケが107.74%、カツレツが108.92%、焼き鳥が106.67%、ハンバーグが107.44%、前年を下回ったカテゴリーはうなぎかば焼きが90.35%、サラダが98.38%、ギョーザが95.88%。

弁当

弁当は気温の低い冬は需要が落ちるものの、昨年は103.55%と需要を伸ばした。弁当の需要が落ちる分カツ丼、天丼、中華丼、ステーキ丼、ロコモコ丼などの冷めにくい「丼」に力を入れて販売する。

売場づくり

アウトパックの弁当は朝から品揃えするが、インストア弁当、丼は早くから品揃えせず、昼のピークに合わせて品出ししたい。

冬は時間を決めてホットケースで販売することも必要になってきた。特に丼類はホットケース、ヒートランプの下で3時間以内をめどに販売したい。

家計調査の月別消費支出をグラフ化したもの。平均単価×購入数量=支出金額購入数量は1g~1kgと幅があるため小数点を変更して計算する必要もある。前年に比「支出金額」「平均単価」「購入数量」が伸びた場合は「赤字」の「○」。前年に比べて数字が下がったものは「黒字」の「×」で表記

コロッケ

コロッケは前年比107.74%と好調であった。食用油の値上げが止まらないため「揚げ物」の販売のチャンス。価格据え置きは利益を落とすため売れ筋商品以外は値上げしたい。冷えた揚げ物はオーブントースターやオーブンで再加熱することでおいしく食べられることも提案する。

売場づくり

ばら販売が復活しているのでアイテムを広げて品揃えする。売れ筋商品は3個、5個パック入りも販売したい。肉、野菜コロッケだけでなくカニコロッケ、エビコロッケなどのシーフードコロッケも品揃えする。揚げ物の廃棄ロス削減のため、消費期限2日~3日ほどのチルドの揚げ物、焼き物もそろそろ考えたい。

シューマイ

11月はシューマイの需要が高まる。昨年の11月は年間トップの支出であった。前年比も109.09%と2桁近く需要を伸ばした「ゴールデンカテゴリー」だ。ジャンボサイズと小粒タイプの品揃えをしたい。

売場づくり

中華料理店の中華点心はセイロに4個入りが主流であるため、4個入りトレーパックを作り、肉シューマイ、エビシューマイ、イカシューマイ、フカヒレシューマイなどを品揃えして販売する。入り数を変えてバンドル販売を行ってもおもしろい。シューマイ弁当も販売する。

調理パン

調理パンは前年比107.42%の伸びであった。冬は冷たいサンドイッチから温かいハンバーガー、ホットドッグ、焼きそばパン、メンチカツパン、コロッケパンなどの調理パンがよく動くため積極的に販売する。また、ベニズワイガニドッグ、オマールエビドッグ、パニーニサンドなどの高額品にも挑戦したい。

売場づくり

ハンバーガー、ホットドッグなどの調理パンは平台、多段ケースにコーナー化して「ホットサンドコーナー」を新設する。ハンバーガーは、フライドチキン、唐揚げチキン、照焼チキン、網焼きチキン、ピリ辛チキンなど、鶏メニューの品揃えを増やしたい

トレンド商品

肉串おでん

おでんがおいしい季節を迎える。おでんはマンネリ化しているため、新しいおでんの提案も必要。海鮮串を使った「海鮮おでん」はよくあるが、「肉おでん」はあまり見かけない。

ポルトガル料理に野菜、豆、いろいろな肉類を煮込んだ「コジード」という料理がある。そこで今月は「肉串」を使った「肉串おでん」を提案する。牛すじ串、豚肉串、鶏串、つくね串などを煮込んでおでんにプラスして販売する。ポイントはオーブンで焼くなり、煮るなりして「油抜き」をしっかりすること。

中華点心

気温が下がり「湯気」が恋しい季節になる。料理用途も「焼く」から「煮る」「蒸す」に変わる。シューマイ、ギョーザの蒸し料理を中心にした「中華点心」を訴求する。昼はチャーハン、中華天津、中華丼、あんかけ焼きそばなどと組み合わせた「中華弁当」を訴求し、夕方からは小籠包、中華まん、大根餅をプラスして、2~4個入りのトレーパックを販売する。バンドル販売や盛り合わせパックもおもしろい。冷凍食材をスチームコンベクションオーブンで加熱するだけなので作業性もよい。

強化するアイテム

毎年11月は2月と並んで惣菜商品の動きが鈍い月。高額の商品を売り込むのではなく、定番商品と季節感のある商品を柱にして売場をつくり、季節感と定番の「おかず」を売り込むようにする。日によって寒暖の差が激しく、米飯のおにぎり商品や高額商品のサラダなどの夏型商品はロスを考えて数量加減をする。そのために天気予報を織り込んで日々の発注管理を必ずチェックする。少し早いが、さらに年末の「おせち」の計画を立てるようにする。

秋から冬への移行期は、季節商品を挟みながら売れ筋定番商品を売り込むことがベースとなる。トレンドは弁当と米飯商品。中でも「赤飯」に代表される「おこわ」商品が旬の味となる。

「栗おこわ」「山菜おこわ」「キノコおこわ」など和風の「おこわ」も人気だが、「中華おこわ」もよく売れる。

週末には鶏惣菜を売り込む。鶏唐揚げを中心に鶏手羽先唐揚げ、砂肝唐揚げ、鶏皮唐揚げ、焼き鳥など単品、盛り合わせなどで構成する。ただし、気温が下がる時期なので、全体的な惣菜の売上げ指数は低く、無理をしない計画を立てること。

天ぷらは揚げたて、温かい煮物は人気が出る時季なので、煮物はスチームコンベクションで最終加熱で仕上げ温めて、揚げ物と一緒に常温販売をすると人気が出るので検討するとよい。惣菜の客単価は低めになるので高額商品のロスには要注意。

秋のサーモンづくし(寿司)

上段にサーモンと玉子焼きを芯にした中巻き寿司(のりを横にして巻いた裏巻きを8カン切りにして4カンを使用)、下段にサーモン握りを4カンの詰め合わせ。上段ののりを内側にしてサーモン芯と玉子芯を巻いたサーモン巻きには、イクラのトッピングで旬の味の季節感を演出する。

高価なイクラを上手に使うテクニックの方法。この寿司はお祝い商品(サーモンは子どもに大人気のたね)としての売り込みと週末の売り込みに最適である。週末の大型店ではこれをベースに手まり寿司や手巻き寿司を組み込んで大きめのパックも作って華やかさを商品で演出をしてもよい。

寿司はたねも大切だが、寿司飯の柔らかさも大切なので、午前と午後に分けて握る、作る、ということで対応し、作ってから6時間経過で見切り販売をするなど、寿司飯の柔らかさを気遣う管理で売上げをアップさせる。

売場づくり

秋は寿司具材の豊かなとき。マツタケやキノコ、栗などを使ったちらし寿司も見逃せない。カニ身、カニかまぼこを使ったちらし寿司や、トッピングにキノコなどを使うなどの寿司、弁当で秋の季節感をイメージするコーナー作りをするなどの工夫をする。

気温が下がる秋から米飯商品(おにぎり、寿司)の売上げが下降することが知られている。その理由は気温が下がると、時間の経過した商品のご飯が硬くなり、味が悪くなるので売上げも下がる。

大変ではあるが、気温の下がる晩秋、冬季では、おにぎり、弁当、寿司商品を店内加工に切り替え、作り立てを売り込む方法に変えるなどの販売計画を立てる必要があるので検討をする。外部からの仕入れの場合は計画数量の変更などを忘れずに行う。

チキン南蛮三色弁当

惣菜商品の「チキン南蛮」をメインにしたボリュームたっぷりの売り込み弁当。

作り方

惣菜で人気所品の単品チキン南蛮を3等分くらいに分けて、弁当用としてその1つ分を弁当のご飯の中央に盛り付ける。

両脇に、卵そぼろと鶏そぼろ(おいしいメーカー品でもよい)を盛り付ける。チキン南蛮の下にはグリンリーフを挟み、上に甘酢ドレッシングをたっぷりかけて、トッピングには刻んだ青ネギを散らす。

売場づくり

いままでのチキン南蛮弁当、鶏三色そぼろ弁当なども一緒にして陳列をする。チキンの弁当は買いやすい価格帯のものが多いので、それに合わせてランチタイムの時間に売り込むように企画、さらに夕方にも売り込むように企画を広げる。

作りたてが売れるので、チキン南蛮は店内で作り、卵そぼろ、鶏そぼろなどは、外部で作りキットで導入するなどで店での合理化を図り、作りたてを売り込むようにするなど工夫をすることが売上げを作る。

烏賊(イカ)大根煮

気温が下がってくると煮物商品が売れるようになる。惣菜商品の煮物のカテゴリーを充実させる。煮物には温かいイメージがあるからだ。晩秋の定番煮物といえば大根やイカの他に、根菜をベースにした筑前煮、秋野菜の吹き寄せ煮、キノコ煮、ナスの煮びたしなどあるので、日替わりなどで売り込みたい。秋から冬は味の染みた大根の煮物が人気となるので、大根をテーマにした商品に注目。家庭の電子レンジで温められるようにレンジ対応のトレーを使用する。

売場づくり

いままで、煮物といえば「冷蔵ケース」で売る物と決めてかかったが、外部工場で作った煮物をスチームコンベクションでリヒートして温め、トレーに見栄え良く詰めて、揚げ物商品と同じように常温販売をする。これから寒くなるので煮物商品を温かくして販売すれば良く売れる。

カニかまぼこのマカロニサラダ

マヨネーズ系のサラダではポテトサラダと並んで売れ筋のサラダ。定番のサラダだが、「定番だから」と安心せずに、どんなに売れていても、さらにおいしい人気のサラダとして改善、改良をするなどで昨対の売上げを落とさないように商品を強化する。さらにエビマカロニ、卵マカロニ、チーズマカロニなどのバリエーションも人気なので品揃えを検討して充実させる。

売場づくり

ポテトサラダとマカロニサラダの2品がサラダの定番として売上げを支えているので、おろそかにはできない。面倒なようでも季節ごとに定番商品をマイナーチェンジの商品マッサージをしてボリュームを減らさないように商品に気を配る。

マカロニサラダが売れるときには、マカロニグラタンも売れるようになるので、手作りグラタンなどの商品の品揃えを考える。レンジ対応のトレーを使用するレシピを作ること。

秋刀魚の竜田揚げ甘酢あんかけ

秋を感じさせる売場づくりにも欲しい商品の1品。薄い衣を付けて油で揚げて甘酢あんをかけ、野菜のトッピングをかけたサラダ感覚の商品。

少しとろみのある甘酢を使うと、揚げ物に味が絡みやすい。食べたときの甘酢とサンマの相性を見ながら、甘酢を選ぶとよい(業務用の甘酢を選ぶ)。

時として原料のサンマに味が付いている場合があるが、そのときは味が薄めのものを使うなど工夫をする。

売場づくり

この商品を店で作った場合は、揚げ物と同じように非冷常温売場で販売することを勧める。アウトパックの場合には冷蔵ケースの販売だが、手作り商品は常温販売の方が多く売れるので、外部納品を手作りに変更するなどで、揚げ物と同じ売場で売りたい。

煮込みハンバーグ

惣菜で手作りのハンバーグを売り込むのはなかなか難しい。手作りの商品を売り込みたい気持ちは良く分かるが、牛、豚ひき肉を原料にして自店で手作りのハンバーグを作り、スチームコンベクションで焼き上げればおいしいハンバーグができると思うのは大きな間違いのようである。

牛豚ひき肉を使ったハンバーグは、冷めると肉が硬くなる性質があり、作ってすぐ食べるレストランであればジューシーの状態で提供できるだろうが、冷めた手作りの惣菜のハンバーグは牛肉、豚肉を多く使うほど硬くなってしまい売れないことが多い。

そこで業務用の既製のハンバーグのおいしい物を選んで作ることを勧める。ソースのデミグラスソースもおいしい業務用を使う方が売れる率が高い。業務用の既製品で、冷めても柔らかく食べられるハンバーグを使えば人気商品になる。ソース(多めに入れると人気となる)とニンジン、ブロッコリー、揚げジャガ芋を添える。