値上げの中、クリスマスケーキは単価アップを狙う|「これは押さえたい」菓子・スイーツ編・2022年12月

2022.11.29

2022.12.02

トルティーノ代表 中村 徹

昨年2021年の12月は新たな新型コロナウイルス感染者が確認できない地域があるなど、新規感染者は低水準で進ちょくしていた。

一方で変異型であるオミクロン株の流行が海外で確認され国内でも新たな流行が懸念される時季であった。祝日はなく土曜日4回、日曜日4回の通常の月であった。

クリスマスは土曜日でそれほど悪い曜日回りではなかった。本年は土曜日5回、日曜日4回で例年通り特別な祝日はない。クリスマスはイブが土曜日、当日が日曜日と最高の曜日回りとなる。

月全体では昨年と比べ水曜減の土曜増で曜日回りによる増加影響として1.5%~2%程度効果があると考えられる。12月は菓子としてクリスマスがピークになることは間違いないが、年末も30日が金曜日と、和菓子も大きなピークになるであろう。菓子関係の催事カレンダーを見てみると、毎月の催事日である6日(日)手巻きロールの日、15日(火)菓子の日、19日(土)シュークリームの日、22日(火)ショートケーキの日など菓子関係の日が多く存在する。

12月は本格的な冬のシーズンに入ってくる。今年の3カ月予報では東日本、西日本の太平洋側では晴れが多めで気温が平年並みの予想がされている。ただし、ラニーニャ現象が続き、気温が低めの日が続くと予想されている。今年の10月7日には東京で88年ぶりの低気温となったが、こういった寒さが12月にも出てくるかもしれない。

人の動きは全国旅行支援の予算がどこまで続くかにもよるが、昨年に比べかなり帰省は増加するであろう。また、海外からの旅行客も増加するであろう。久しぶりに年末の流入店舗と流出店舗がはっきり分かれる年末になりそうである。

総務省家計調査の「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格」を見てみると、品目別令和3年の年間の月別支出金額が掲載されている。菓子類の12月を見てみると、年間平均金額に対し、ようかんが133.5%、まんじゅうが139.5%、他の洋生菓子が127.6%、カステラが154.1%、ケーキが212.9%、他の洋生菓子が128.4%と、和生菓子、洋生菓子とも年間最大ピークを迎える月となる。

これらの商品群のトレンドを見るために「令和3年年間消費金額/平成12年年間消費金額」を計算してみると、他の洋生菓子188.3%と大幅に伸びているが一方でまんじゅう39.5%、他の和生菓子88.8%と減少している。

ケーキは98.8%とほぼ横ばいを続けている。洋生菓子系はクリスマスに向けて週ごとに徐々に上昇してくる月となる。これらを総合的に考えると和菓子の歳時のポイントをしっかり押さえてクリスマス、年末、正月などの企画にのって洋菓子系を伸ばしていくと良いと思う。

ユズ、カボチャ商品

12月22日(木)は冬至に当たる。冬至は二十四節気の1つで、1年の中で昼間の時間が1番短い日。この日を境に昼間の時間が日ごとに長くなる。これまで日が短くなり太陽のパワーが減ってきていたが、冬至を境に昼の時間が長くなっていくためこのパワーを取り入れる験(げん)の良いものとして「なんきん(カボチャ)」のように「ん」が2回付くものが縁起の良いものとして好まれた。

また冬至は「湯治」に通じ、「融通(ゆうずう)」が効くユズを入れて入浴するというような習慣ができたともいわれている。こういった催事の日にはかカボチャを使った和菓子やユズを使ったようかんなどを提案すると縁起かつぎにもなる。野菜の売場でもこの日はユズやカボチャが前面に出ているので和菓子の売場でも前面に出していきたい。

クリスマスケーキ

12月は年間最大ピークとなるクリスマスの月である。当然のことながらケーキの需要は年間最大ピークとなる。今年のクリスマスケーキの傾向としてナショナルブランド商品は昨年から数%~10%程度の値上げになりそうだ。小麦粉や油脂など原材料価格の高騰や電気、ガスなどのインフラ価格の上昇から末端価格が上昇すると考えられる。

一方で価格は据え置くか値下げしてサイズを小さくするような動きもある。外食や旅行を控える動きもある中で、「クリスマスケーキぐらい良いものを」という需要もあるため、昨年比10%程度伸ばそうという強気の予想をするところもある。

商品的に見ていると、定番のイチゴのショートケーキ、ブッシュドノエル、アソートケーキなどの他、各パティシエ監修といった括りになるかと思う。ここから先はお客の好みとなるが、買上点数は若干落ちると予想される中で、値上げやグレードアップなどによっていかに一点単価を上げるか、ということを考える必要があると思う。

クリスマスケーキイメージ

また他の洋生菓子は近年個食化が進みクリスマスでも伸びている。新型コロナウイルス禍前は12月に入ると子ども会やママ友会などの単位でクリスマス会を行うような事例が数多く見られたが、こういう集まりは新型コロナウイルス禍ではほぼ消滅していた。

今年は行動制限の大幅な緩和から、多少は「小さなクリスマス会」が復活してくると思う。こういった需要に対して食卓を飾るスイーツを提供したい。現実的な品揃えとしてはコンビニスイーツ的なカップデザートやロールケーキ各種が主力になるであろう。もう一方で、手作りケーキをイメージしたスポンジケーキやクレープ皮、生クリームといった素材の提供もしていきたい。いずれにしても昨年少なかった需要なのでしっかり売上げに結び付ける必要がある。

カップケーキイメージ

売場展開

12月の売場展開のテーマは「今夜は鍋」「師走」「冬真っ盛り」といった切り口になる。東京の12月初旬は最高気温15℃を超える日もあるが、朝晩は10℃以下、5℃以下という日もありかなり冷え込む。

クリスマスのころから年末になると最高気温が10℃を下回り、最低気温も5℃に届かず、冬の寒さを感じる気候になる。今年の秋冬の野菜の生育状況を見ているとキャベツやピーマンは生育順調で買い得、大根などの根菜類は高値、その他は平年並みという傾向が出ている。

何でも値上げの状況下にあるが、フルーツでも今年は秋に柿が値ごろであり、12月が旬のミカン、イチゴ、リンゴなどの相場は平年並みかやや高めであろう。こういった食材と一緒にフルーツ系のカップデザートやゼリーを統一的に展開すると季節感が出る。 

トレンド商品

執筆時にはファミリーマートで「地域対抗シュークリーム王決定戦」と題してシュークリームを前面に出して販促を行っている。ローソンはカヌレとチーズケーキを打ち出すなど各コンビニとも特徴を出してスイーツのトレンドを作ろうとしている。

今年のクリスマス時季であるが、クリスマスカラーの赤、白、緑というイメージでいくとピスタチオを使った商品が多くみられる。ピスタチオをクリームに混ぜ、デコレーションとして絞ったり、モンブランのように絞ったりとさまざまである。ピスタチオクリームとして素材を提案するのも面白いかもしれない。

一方で、「オペラ」のような伝統的なケーキも改めて見直されているようだ。オペラはフランスの伝統的なケーキであるが、例年、それほどクリスマスの時季に前に出てこなかったが、伝統的な菓子のブームのためか、今年は予約ケーキなどでもちらほら目にする。違った切り口では「ビーガン」ということでアーモンドミルクを使ったティラミスなども出てきている。