正月早々の和菓子の売り込み、後半はケの商売にアクセントを|「これは押さえたい」菓子・スイーツ編・2023年1月

2022.12.14

2022.12.28

トルティーノ代表 中村 徹

昨年2022年の1月は新型コロナウイルスの変異型であるオミクロン株への移行が進み再び感染者が増加した。

9日には沖縄、山口、広島の3県でまん延防止等重点措置が適用され、21日には東京、群馬、埼玉、千葉など13都県に重点措置が適用された。祝日は1日元旦、10日成人の日と2回、土曜日5回、日曜日5回と週末の多い月であった。

本年は土曜日4回、日曜日5回で祝日は元旦と9日の成人の日となる。月全体では昨年と比べ土曜減の火曜増で曜日回りによる増加影響として1%~1.5%程度マイナス要素があると考えられる。

1月は正月期間が菓子類の第1ピークになるが、成人の日もお祝いメニューとして軽い山ができるであろう。菓子関係の催事カレンダーを見てみると、毎月の催事日である6日(金)手巻きロールの日、15日(日)菓子の日、19日(木)シュークリームの日、22日(日)ショートケーキの日など菓子関係の日が多く存在する。

1月は冬真っ盛りである。3カ月予報では東日本、西日本の太平洋側では晴れが多めで気温は平年並みか低い予想がされている。降水量は平年並みか少ない予想となっている。

人の動きは11月時点で新型コロナウイルス第8波に入りかけているので、年末年始を含め非常に読みにくい情勢になっている。ただ大々的な人流の抑制政策は採られないと思うので昨年に比べれば人流は増加するであろう。また、海外からの旅行客も中国を除き増加するであろう。

総務省家計調査の「<品目分類>1世帯当たり年間の品目別支出金額,購入数量及び平均価格」を見てみると、品目別令和3年年間の月別支出金額が掲載されている。

菓子類の1月を見てみると、年間平均金額に対し、ようかんが65.0%、まんじゅうが85.2%、他の洋生菓子が84.9%、ケーキが93.5%、他の洋生菓子が91.9%と和生菓子、洋生菓子とも年間平均を割り込む月となる。

これらの商品群のトレンドを見るために「令和3年年間消費金額/平成12年年間消費金額」を計算してみると、他の洋生菓子188.3%と大幅に伸びているが、一方でまんじゅう39.5%、他の和生菓子88.8%と減少している。

和洋生菓子系は正月にピークを迎え、他は大きな催事がなく、平月並みの消費となる。これらを総合的に考えると和洋生菓子は正月早々にいかに売上げを確保し、以降の小さな催事のポイントをしっかり押さえていくかということになると思う。

目次

花びら餅

日本にはさまざまな年中行事や習わしがあるが、その中でも正月はいろいろな伝統が詰まっている。催事としては年間最大の行事となる。初詣に行き、おせち料理を食べ、しめ縄や門松を飾るなどさまざまな行動を行うが、どれもみな年神様をお迎えする行事につながっている。

菓子類もおせちの流れで正月に上生菓子を食べる機会が多いが、「花びら餅」を味合う風習もある。中身はゴボウ、白みそあめ、ピンク色の餅となっており、それを白い餅かぎゅうひで包んでいる。起源は諸説あるが平安時代ごろに、宮中で歯固めの儀式のときに食べていたものが原型だといわれている。

あまりスーパーマーケット(SM)などで販売しているのは見ないが、和菓子専門店では正月に販売するところも多いという。単価の面からいっても上生菓子を売り込むことがメインになると思うが、こういった花びら餅を由来とともに販売することが和菓子の底上げにもつながると思う。

ケーキ

また、お正月はショートケーキなどの洋菓子の需要も上がる。昔のように「100円ケーキバイキング」などというのは難しくなっているが、ショートケーキやアソートケーキの訴求は必要になる。

人員の問題も出てくる。対面方式で自社販売するのも良いが、催事販売業者に早くから依頼するもの一手であろう。まだ税込み108円での販売が可能な業者は残っているようである。いずれにしても正月の売場はハレを演出する必要があるので、菓子であれば先の上生菓子やショートケーキなどで売場を華やかにする必要がある。

1月9日の成人の日もしっかりと売り込みたい時季になる。新型コロナウイルスが始まって以来成人の日も「密を避けて」という行動様式が定着し、大規模な私的集まりやパーティはほとんど行われなくなっている。

また、23年の成人の日を考えてみると、18歳、19歳、20歳の同時開催が考えられるが、自治体によっては「20歳の集いの会」として開催し、従来通りとするところも多いようだ。

理由としては単純に人数が3倍になったら場所や費用の面で開催できなくなるということらしいが、それ以外にも18歳、19歳は受験や就職の時期に当たり、適当ではないという考えもあるようだ。こういった背景で実需は小さな集まりや家庭でのホームパーティ程度が中心となる。店舗ではカップデザートやロールケーキなどを中心に訴求していく必要がある。

売場展開

1月の売場展開のテーマは「今夜は鍋」「冬本番」といった切り口になる。東京の1月の気温は最高気温が10℃を超えれば暖かい方で、最低気温は氷点下の日も多く、冷え込む。

今シーズンの秋冬の野菜の生育状況を見ていると大根がようやく安くなり平年を下回る予想で、ニンジンが北海道で不作なため千葉県産が出回るまで高め、その他は平年並みという傾向が出ている。

何でも値上げの状況下にあるがフルーツでも今年はリンゴが値頃であり、冬が旬のミカン、イチゴなどの相場は平年並みかやや高めであろう。こういった食材と一緒にフルーツ系のカップデザートやゼリーを統一的に展開すると季節感が出る。

1月は12月のクリスマス辺りから続く「ハレ」の売場から一気に「ケ」の売場に変わる月である。この時季に粛々と売場を作っていると毎日同じ売場になってお客に飽きられる傾向にある。従って15日(日)菓子の日と苺の日や次週の22日(日)ショートケーキの日といった小さなイベントを活用して売場にアクセントを付ける必要がある。

トレンド商品

日経POSデータで、売上高を大きく伸ばした商品を決定する「日経POS セレクション2022」にプリンアラモードが選出されたようだ。

PI値は昨対125%と大きく伸びている。ベーシックではずれがなく、いろいろ楽しめる点が一般受けしているようだ。

一方で「カヌレ」は長い間ブームになっているようである。セブン-イレブンやローソン、成城石井などで販売され好評のようである。山崎製パンや敷島製パンも商品を出し、一般に買いやすい状態で販売されている。一般路面店でもカヌレの専門店が好評を得ているようである。

また、チーズケーキもさまざまな店で「進化系」と言われるような形で出てきている。乳製品価格が高騰する中で安価に抑えるのは難しいが、瓶入りや冷凍して温めて食べるなどさまざまな提案がなされている。

この他にも夏頃から昔ながらのスイーツを変えた「進化系」と呼ばれる商品が数多く出されているが、いずれも専門店のものであった。こういった中からSM向け商品が出てくる可能性も高いので注意が必要である。