売上げは全体的に低調、「人の集まり」商品に加え、揚げ物などに注目|「これは押さえたい」惣菜編・2023年1月
2022.12.23
日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸
1月の行事、イベントは、1日(元旦、初詣)、2日(書き初め)、7日(七草)、11日(鏡開き)、11日(成人の日)、15日(小正月、どんど焼き)、16日(藪入り)と日本の伝統行事が続く。行事食はおせち料理、お雑煮」「七草がゆ」「お汁粉」。家族そろって文化や伝統を再認識するときでもある。
年始は昨年とは違い「人の集まり」が予想される。人が集まれば「おせち料理」「寿司」や「オードブル」を準備するため当日売りや予約販売をしっかりしたい。
また帰省客や観光で「人が動くとき」でもある。人が動けば物が動く。電車、バス、自家用車の中でも片手で食べられる「おにぎり」「ハンバーガー」の販売にも注力したい。
2022年1月の家計調査で、1月に需要が伸び、前年を上回ったカテゴリーはコロッケが105.19%だった。需要の変化はあまりないが前年を上回ったカテゴリーは調理パンが114.18%、1月に需要は減っているが前年を上回ったカテゴリーは調理食品が102.94%、弁当が102.89%、寿司が104.33%、おにぎりが112.08%、他の主食的調理食品が106.39%、サラダが103.73%、天ぷら、フライが100.42%、シューマイが103.75%。
1月に重要が伸びたが前年を下回ったカテゴリーはカツレツが96.74%、ギョーザが96.69%。1月に前年を下回ったカテゴリーはうなぎかば焼きが88.14%、焼き鳥が97.21%、ハンバーグが97.64%、惣菜材料セットが97.83%だった。
揚げ油、小麦粉、パン粉の値上げから、家庭で揚げ物をする機会が減っているため、天ぷら、フライ、唐揚げなどの揚げ物類は売上げが期待できる。
特に1月は「カツレツ」に力を入れて販売したい。一方、弁当や寿司、麺類は外食のデリバリー、テイクアウトと競合するため要注意。1月から需要が伸びる「ゴールデンカテゴリー」、前年を上回ったカテゴリーは積極的に販売し売り逃しがないようにしたい。
目次
カツレツ
カツレツは96.74%と前年を下回ったが、12月に比べて約10%も需要が伸びている。油の高騰から揚げ物をする機会が減っているため、販売のチャンスだ。三が日はおせち料理が中心になるが、三が日明けは普段の食事に戻るためこの時季を狙いたい。
売場づくり
豚ロースカツ、ヒレカツ、チキンカツ、エビカツ、メンチカツなどで、「おせちに飽きたらカツレツ!!」をテーマに「カツレツ祭り」を実施する。
この時季は家族構成も増えるため、2、3枚入りのパックも品揃えする。あまった場合はカツを使った「丼」を提案する。
コロッケ
コロッケの売上げが好調だ。節約時にはコロッケがよく売れる。12月から2月までコロッケの需要は底であるが、1月のコロッケは前年105.19%の伸びであった。月の中頃から節約ムードが高まるため、比較的安価なコロッケの販売に力を入れる。コロッケはジャガ芋が主体であるため肉類に比べて値上げ幅は小さい。
売場づくり
「コロッケ祭り」の実施。コロッケを5、6アイテム集めてばら販売とパック販売を行う。パック販売は4枚~5枚入りの大型パックを品揃え。また別企画で、カニコクリームロッケやエビクリームコロッケ、ほたてクリームコロッケなど「クリームコロッケ特集」もおもしろい。
おにぎり
おにぎりは12カ月連続で前年をクリアしている好調カテゴリー。1、2月は需要が落ちるものの前年に比べて112.08%の2桁成長であった。年始は昨年より「人の動き」が期待であるため積極的に販売したい。
売場づくり
インストア製造、アウトパック製造とバランスの取れた品揃えを行う。アウトパックのおにぎりは120円~150円までのもの。インストア製造のおにぎりは具だくさん、ジャンボおにぎりなどで150円~248円のプライズゾーンを狙う。「おにぎり弁当」も忘れずに品揃えする。
調理パン
調理パンは前年比114.18%と好調であった。今年は単品だけでなく、「調理パン+フライドポテト」などのセット物も品揃えして単価アップを図りたい。細かいことかもしれないがバーガーは直接トレーに盛り付けず、紙袋に入れてトレーに入れれば手を汚すことなく片手でも食べられる。
売場づくり
惣菜パンはロングロールを使ったホットドッグ、焼きそばパン、メンチカツパンなどの「惣菜パン」、バンズにフライドチキン、グリルチキン、ハンバーグを挟んだ「バーガー」、豚カツを食パンに挟んだ「カツサンド」などの品揃えを強化する。平台にコーナー化する。
トレンド商品
ハンバーガー
「ハンバーガー」は牛肉のパティをバンズで挟んだもの。レストランのメニューやファストフードで牛肉100%の本格的なハンバーガーが販売されている。ケンタッキーフライドチキンは「サンド」から「バーガー」に名称を変更し「チキンバーガー」に力を入れている。スーパーマーケットではホールセールの「バーガー」、ベーカリーのチキンや白身魚の「バーガー」を販売しているが、牛肉を使った本格的な「ハンバーガー」にも挑戦したい。
具だくさんおにぎり、焼きおにぎり
おにぎりも片手で食べられるスナッキングメニューだ。コロナを機会におにぎりの需要はハンバーガーに越されてしまった。最近は「チキン南蛮おにぎり」「のり弁おにぎり」などの具だくさんで高額なおにぎりも販売されるようになった。また、焼きおにぎりにも注目。地方によってはしょうゆ焼きおにぎりとみそ焼きおにぎりに分かれるが、オーブンで焼いた焼きたてを提案したい。
強化するアイテム
売上げは全体的には低調の月なので無理な計画を立てない方が良いが、温かさを求める客が家の電子レンジなどで温かくして食べられるメニューを求めるので、電子レンジメニュー商品の売り込みを図る。
レンジ商品の開発、販促、売り込みを組み立てる。特に冷蔵ケースで販売する、温めて食べる煮物商品や麺製品などはスープや汁をゼラチンを使って固めて作るなど、最新の調理加工技術を使った新しい商品化を進める必要がある。
加えて冬季は「たてたて作戦」販促を強力的に展開をする。「揚げたて」「作りたて」「できたての3作戦をいう。売上げを構成する主要な商品をメインにこの作戦を展開するとよい。
店での作業人数が少なければメインの定番商品の鶏唐揚げと、人気のある弁当など1、2品だけでも、「たてたて作戦」を行い、POPを付けて売り込むようにする。できれば2、3品でもそうした販促があると売場全体が温かくなり活気が沸く。
無理をしない月。ロス管理強化を心がけることが大切な月である。新年の惣菜売場は、年の初めとして多少売れなくても新しい商品や売場を演出することが大切になる。
「今年はこんな趣向の売場です!」というアピールをする必要がある。そのためには、同じ商品でも容器のデザインを変えるというテクニックも必要だ。
惣菜の新しいカテゴリーとしてデザート商品を考えたい。売上げ全体は年間の中でも低調な時季となり、期待はあまり持てないときだけに、過去のデータを見て、売れる定番をきちんと売り込むことが条件となる。月の後半は、2月の恵方巻の作業システムを組み立てる準備をすることを忘れないようにする。
祝福ちらし寿司
正月3が日と小正月の15日に加え、週末の土、日に売り込みたい商品。価格を抑えたいので、寿司飯に、煮て刻んだカンピョウまたはシイタケをベースに、刻んだショウガ、刻んだ練り製品(かまぼこ、ちくわの薄切りなど)を合わせた寿司飯を作り、トレーに盛り付け、白ごまを振る。寿司飯をおいしくする工夫をする。
その上に多めの錦糸玉子を一面に盛り付け、カットした寿司海老をバランスよくトッピング、さらの彩りにカイワレ大根を散らす。
写真は2、3人前の表示をするが、これを大として1~2人前の少量パックも用意して販売をする。他に手巻き寿司と合わせて併売すると売場が華やかになる。
手巻き寿司
手巻き寿司用のフィルムに寿司飯を入れ、芯に卵とマグロ芯、サケ芯、ネギとろ芯、ツナマヨ、イクラなどを芯にして仕上げる。ちらし寿司と併売する。
スコッチエッグのハンバーグ
ハンバーグの中にゆで卵を入れた、子どもも大人も好むタンパク質たっぷりの人気商品。手作りの場合は、業務用の半熟ゆで卵を仕入れ、味付けしたハンバーグのひき肉で包んで作る。ハンバーグの肉は豚肉と鶏肉のひき肉だけで作る方が良く売れる。牛肉のひき肉は使わない。これが売れる㊙のこつ。牛肉を使うと肉が硬くなってしまい、惣菜商品には向かないので作り方を工夫する。
作ったハンバーグは、スチームコンベクションで焼くか、唐揚げ用の粉を水で溶いたバッターを付けて油で揚げて仕上げる。
いずれの場合も中が半熟卵なので加熱し過ぎると、半熟がゆで卵になることもあるので加熱時間に気を付ける必要がある。もちろん、ゆで卵になっても商品に問題はなく販売ができるので安心してほしい。
スコッチエッグはでき上がったら半分に切ってトレーに盛り付ける。ソースの小袋を添付するならデミグラスソースかケチャップの小袋を添付する。
だしの効いたチャーハンと焼きそば
チャーハンと焼きそばという、人気商品を組み合わせた中華メニューのボリュームワンプレート商品。ランチメニューとして売り込める商品だ。
チャーハンには㊙があり、ご飯を中華スープで炊き込みご飯にしておき、普通のチャーハンを作るように油で卵を炒めてから、炊き込んだご飯を入れ、刻んだチャーシューやみじん切りのネギなどを加えて炒めて仕上げて作る。この方法なら大量調理でも簡単においしいチャーハンが作れる。
炊き込みご飯にするには理由がある。炊き込みご飯は寒さで気温が下がってもご飯が硬くなりにくいという特徴がある。この特性を生かして冬場の弁当などのご飯類は、炊き込みご飯にすることが多い。
焼きそばは、いつもの定番焼きそばを活用するなど工夫をするとよい。
カニ風味サラダとポテトサラダの盛り合わせ
根強い人気のカニ風味サラダとサラダ人気ナンバーワンのポテトサラダのペアサラダ。
カニの季節になったので、カニの味が楽しめるカニ風味をたっぷりと加えた季節感のあるサラダがこのメニューの特徴だ。
利益とおいしさを考えて、カニ風味サラダは店の手作りにして、ポテトサラダはメーカー品を使って作るとよい。カニ風味サラダはカニ風味とレタス、キャベツの千切り、玉ネギ薄切り(少な目)に調合マヨネーズ(マヨネーズメーカーに相談するとよい)を合わせて混ぜ合わせる。
混ぜ過ぎないようにサクッと混ぜるのがこつ。混ぜ過ぎると水分が出て商品にならなくなるので気を付ける。ポテトサラダと共に盛り付ける。トッピングにあればリーフレタスの青みを添える。少量パックも必ず作って併売をする。
海老とブロッコリーの塩炒め
このメニューは中華メニューの人気メニューの1つだけに、冬場の中華メニューとして力を入れて売り込みたい。冷凍のむきエビ、冷凍ブロッコリーと薄切りタケノコ、薄切りニンジンを揚げ油でさっと揚げて(フラッシュ作業)、良く油を切って、業務用中華ソース(塩味)であえれば本格中華に仕上げられる。
このような業務用ソースで仕上げる中華メニューは、家の電子レンジで温めておいしく食べられる商品として酢豚、八宝菜などを加えて中華メニューを充実させるとよい。
また、この商品と酢豚、春巻き、中華風唐揚げなどでオードブルを作ることもできるので便利なメニューとしても使える。エビは商品のポイントになるので揚げ過ぎないようにおいしく仕上げることが大切になる。
鯖の煮付け醤油味
冬は寒サバ(鯖)の季節。脂の乗ったサバをスチームコンベクションで加工することで、魚メニューを強化する。見た目の奇麗なおいしい煮魚商品を作るためには多少の下ごしらえが必要になる。
煮上がったときに魚の皮が奇麗でないと商品価値が下がるので気を付ける。そのための下ごしらえが必要。サバの切り身に下味を付けること。
①サバに麺つゆを2倍ほどに薄めて一晩漬け込み(味を見て薄める具合を調節すること)、②翌日サバの漬け汁をよく切って、バットに入れて味付け調味の調味料を入れる。
③調味料は調理用のだし入りしょうゆを水で薄め、砂糖、みりんを加えてサバのバットにひたひたに入れてスチームコンベクションに入れる。130℃前後の温度で加熱調理をして煮上げる。おいしく、柔らかく煮上げるためにサバの身に中心温度計を刺しておき、サバの身が75℃~80℃になったらでき上がり。
④サバの皮を奇麗に仕上げるためサバを重ねないこと。盛り付けたサバに照りを出すためには業務用の照り出したれを塗ると見栄えがよくなる。
フルーツサラダ
最近フルーツサラダのメニューが惣菜のサラダ売場で人気になっている。ほとんどが外部メーカーの仕入れ商品だが、惣菜売場のデザート商品と位置付けられているようだ。寒天をベースに冷凍フルーツ(マンゴーなど)を加えて、チーズクリームやヨーグルトソースなどであえて仕上げる。これからのデザート商品としても要注目商品。
桜餅(和デザート)
ここ数年惣菜売場で冬から春にかけて和菓子がデザートとして良く売れている。外部仕入れの和風デザートだが、冬場だけコンスタントにデザートとして売れている。将来的には惣菜売場は前菜からデザートまでの品揃えになるものと思われる。写真の桜餅は右側の2つは関西風、左側の2つは関東風で作り方が違う。
桜餅、草餅、大福、椿餅、柏餅など春先まで売れるので、売れる具合を見ながら品揃えするとよい。ただし5月になると和菓子の売上げは減る傾向にあるので要注意。季節に合わせて早め早めのチェックが必要だ。