寒い日が続く中、「おでんに熱燗フェア」を仕掛ける|「これは押さえたい」酒編・2023年2月
2022.12.28
酒文化研究所 山田聡昭
立春を迎えて暦の上では春の2月。だが、まだ気温は低く寒い日が続く。寒さをこらえて春を待つ日々に身も心も温まる酒を提案する。
全国燗酒コンテスト入賞酒
このコンテストは2009年から続くもので「燗」で審査する唯一かつ最大のコンテストだ。出品数は800点を超えており、専門家が吟味した燗でおいしい酒がリストアップされている。
市販酒の審査であるため入賞酒にはリーズナブルな商品が多数あり、スーパーマーケット(SM)が扱いやすい商品が並ぶ。寒さ厳しい時季に「温めておいしい日本酒」をお勧めする。
また、このコンテストは入賞酒のお披露目の機会として「おでんで熱燗ステーション」を実施している。
JR両国駅のホームで熱々のおでんと燗酒を楽しむもので、毎年、チケットは完売。多数のメディアで報じられる。今年は2月2日~5日の4日間の開催。これに合わせて「おでんに熱燗フェア」を展開するのもよいだろう。
常温販売が可能なレトルトおでんと燗でおいしい日本酒のクロス展開は、多くのお客に刺さる。情報として、おでんのだしで日本酒を割る「だし割り」を紹介したい、東京の下町でおでんを出す大衆酒場から広まった飲み方で、日本酒をおでんのだしで割って飲む。椀物と酒の中間のような味わいで人気だ。
売場展開
全国燗酒コンテスト2022の入賞酒から10点程度をピックアップし、「ぬる燗向け」「熱燗向け」「プレミアム燗酒」の3つのカテゴリーでアピールする。特殊燗酒部門のにごり酒や樽酒は「ぬる燗向け」に加えてよい。
レトルトおでんはご当地おでんなどバラエティ展開しているものがベスト。味わいの異なる複数のおでんと燗でおいしい酒のコラボレーション企画としてお勧めする。
樽熟成焼酎
米焼酎や麦焼酎など穀物原料の焼酎には樽で長期間保存した商品がある。ウイスキーと同じように熟成によってまろやかな味わいになり、樽由来の甘いバニラ様の香りをたたえる。
日本では焼酎と表示できる琥珀色の程度が決められているため、色が付きすぎた原酒は活性炭を透したり、透明な原酒をブレンドしたりして色度を調整して製品化されているのだが、そうした規制のない北米では、褐色のまま製品化したものがジャパニーズライスウイスキーとして人気だ。
樽熟成焼酎は当然のことながらお湯割りでもおいしい。焼酎らしいうま味のあるボディに加えて甘い香りがたち、ものによってはシナモンや丁子(クローブ)、八角(アニス)、黒胡椒(ホールでも粗挽きでもよい)をトッピングすると、複雑さが増してとてもおいしい。
また、樽貯蔵焼酎は洋酒ラバーからも評価されている。TWSC(Tokyo Sprits & Whisky Competition)の焼酎部門では、樽貯蔵焼酎がたびたび上位に入賞しており、また、海外の蒸留酒コンテストでも良い成績を挙げている。本格焼酎は国内でもバーに並んでいないが、これは輸出が伸びないのと同じ構図だ。洋酒の世界で蒸留酒として認められていないということなのだ。樽貯蔵焼酎はその壁をブレイクスルーする先鋒になりえる。
この時季の樽貯蔵焼酎のアピールにはウイスキーとお湯割りの対比でアピールするのがよい。ウイスキーのお湯割りはフルーツやバニラのような華やかな香りが一段とたち、樽貯蔵焼酎の重厚で穏やかな香りとのコントラストがおもしろい。
売場展開
「お湯割り対決 樽貯蔵焼酎VSウイスキー」というタイトルで両者を2項対立で見せる。棚段ごとに大分VSスコッチ、球磨(熊本)VSアイリッシュ、宮崎VSアメリカンなど産地対決にするのもおもしろい。
にごり酒
にごり酒は米を発酵させたもろみを粗く濾したもので、粕による厚みのある味わいと、どっしりとした触感、甘みや酸味の広がりなど、粕をすべて取り除いたクリアな清酒とは別の魅力がある。
にごり酒のボディのある味わいは、清酒が苦手なガッツリ系の料理、例えばカルビの焼肉、霜降り肉のステーキ、スペアリブなども苦にしない。もつ煮やキムチ鍋やカレーなど濃い味でスパイシーな料理にも対応できる。
こうしたにごり酒の魅力を広くアピールしようと設けられたのが、毎月25日の「にごり酒の日」で特に2月25日が「記念日」となっている。この時季は市場ににごり酒が最も出回る時季でもある。気温の低いこの時季に向けて出荷される季節商品が多く、発泡性の活性にごり酒も流通する。
売場展開
常温で保存できないにごり酒は冷蔵ケースでコーナーPOPを設置してアピールする。もろみをまったく濾していない「どぶろく」を扱っている店では、冷蔵ケースで「にごり酒VSどぶろく」の構図で見せるとよい。
常温陳列可能なものは定番売場、もしくは常温エンドで「にごり酒の日」を訴求して売り込む。
トレンド商品
日本ワイン
近年、日本はワイナリーの開業ラッシュで北海道や長野をはじめ全国各地にワイナリーが誕生している。個人で起業する例では、ブドウ栽培から手掛けるドメーヌ型のワイナリーを目指す者も、自社栽培だけでなくブドウ栽培農家と提携して醸造をスタートする者もいる。
既存のワインメーカーが有望なブドウ産地にワイナリーを新たに設ける例や、資本力のある異業種が大規模に展開する例もあり、形態もバラエティに富む。
日本ワインの品質の向上は著しく、海外のコンテストでの受賞も相次ぎ、甲州種のワインの繊細な味わいは注目されている。昨年は国内最大規模の日本ワインコンテストが3年ぶりに再開され、過去最高の出品があった。
欧州品種ではメルロ種が高いレベルで安定感を見せ、白ワインではアルバリーニョ種などこれまで日本ではあまり栽培されてこなかった品種も評価された。
日本ワインコンテストの入賞酒を見ると、マスカットベーリーA種やデラウェア種のほのか山ブドウ系のブドウ品種のワインも一定に評価があり、製造本数が多いものも少なくない。SMで扱える価格帯のものもあり、入賞実績のあるものを積極的に進めておきたい。
売場展開
まずは日本ワインコーナーを設けてコーナーPOPで「日本ワイン」を明示する。良好な品質で商品供給力のあるサントリー、メルシャン、サッポロビール、高畑ワインなど大手から中堅のワイナリーの商品を軸に売場を構成し、赤白だけでなくスパークリングワインまでそろえる。ユーザーは不特定多数ではないので、ワイナリーの特長を説明するショーカードを添える。
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