新しい生活に向けた商品化、Z世代に向けては「コスパ」と「タイパ」で売り込む|「これは押さえたい」精肉編・2023年4月

2023.02.27

月城流通研究所代表 月城聡之

新学期や新年度、新しい生活が始まり新規一転する春は、精肉売場も、気分一新でレイアウト変更をすると良い。

一般的に春夏、秋冬で焼肉売場や鍋売場などを設置することや、模様替えすることが多いが、期の変わり目にも変化が見られると消費者としても、新たな気分で買物をすることができる。

特に、4月は新たに弁当や朝食、夕食を自分で作るなど、意識の変化が大きく変わるタイミングのため、そこに合わせた商品提供、販促なども行うと良い。

また、春先から花見など少しずつ外出する機会も増え、4月の月末からゴールデンウィークに向けたアウトドア提案も、少しずつ行っていくことが重要である。

アウトドア用の焼肉商材も顔出しして、春夏商戦を強化していく。

牛肉

春先から徐々にアウトドアでも使える「焼肉商材」の展開を強化していく。近年、ソロキャンプなども人気が出てきており、夏以外でもアウトドアを楽しむ人が増えている。

カセットボンベやまきを適宜使用して、本格的なキャンプを行っているが、「本格的なバーベキュー」というよりも「食べたいものを外で調理している」という印象が強い。

インドアでの焼肉、アウトドアでの焼肉について、誰でも楽しめる商品展開を行うことで、競合よりも選ばれる店づくり、商品づくりを行いたい。

米国産牛ハラミ、タン焼肉コンビ 100g当たり680円

焼肉で注文する鉄板メニューである、牛タン、牛ハラミのセット商品。

牛タンの価格が一時期よりは落ち着いてきているものの、数年前から考えると高騰した状態が続いている。「ハラミ(アウトサイドスカート)」も安くはないが、タンよりは安価に提供できる。

そこで、タンとハラミを合わせて販売することで、値ごろ感が感じられるセット販売を行う。ハラミを多めに入れると利益がしっかりと残る。また、ネギ塩だれを20%程度かけるなど原価率を下げるための工夫を。

たれは「味付け商材」という意味合いだけでなく、牛肉については「原価を下げる」ことにもつながるため、うまく活用するとよい。

「アウトサイドスカート」を「ハンギングテンダー(サガリ)」に変更して、「サガリ、タン焼肉コンビ」にすると、さらに利益が出やすくなる。表示については、「ハンギングテンダー」は「サガリ」と表示しなければならないため、注意が必要である。

豚肉

弁当や夕食の一品に使える商材で、購入しやすいのは豚肉である。豚肉は継続して購入しやすく料理のバリエーションが出しやすい畜種でもある。

特に、弁当商材としては、加工品が使われやすいが、精肉商品でも焼くだけなど簡単な調理のものであれば活用される。

国産豚バラ野菜巻き(オクラ)用 598円

「豚肉の野菜巻き」は以前からも精肉で販売されているが、再度注目が集まっている。

冷凍のジャガ芋やインゲン、ニンジン、アスパラガスが以前は多かったが、最近ではヘルシー志向と言うこともあり、店内加工で生野菜を使用して、オクラなど巻いて商品化が行われている。

味付けはシンプルにスパイスで十分なため、小袋のスパイスを添付した商品化としている。

オクラは特に女性に人気の商品で、豚バラを食べる背徳感をオクラが相殺してくれている。オクラの星形の断面が見えることも、なぜか食欲をそそらせる一工夫である。

国産豚バラ野菜巻き(玉ネギ、ナス、トマト、大葉)用 1000円

野菜巻きは、単品での訴求だけでなく複数野菜のセット商品も人気である。

トマト、ナスは豚バラスライスを巻き付ける従来のタイプでの商品化を行うが、玉ネギは輪切りの1つずつに豚バラスライスを巻き付けていく。

大葉はロースステーキタイプの商品化を行うことで、見た目の異なる野菜巻きを作ることができる。

家庭でも作れるような一品であるが、家庭のまな板を豚の脂肪で汚したくないなど、消費者ニーズと相まって、売上げを伸ばしている。

また、冷凍の野菜巻きと異なり手づくり感が出ていることも主婦のニーズをがっちりと捉えることにつながっていると思われる。

ただ、メリットは大きいものの、他の商品に比べて手間がかかってしまい、オペレーションのデメリットは否めない。原材料表示も一括表示に入れる必要があるため、最初の一歩を踏み出すにはハードルが高い。

しかしながら、ローカライズされた昨今の地域密着型の売場づくりを想像すると、手の空いた時間にファン形成を行う姿勢を商品で見せる努力が必要である。

ローストビーフ

ベビーリーフのローストビーフサラダ 498円

ターゲットを女性に絞り、動物性タンパク質を同時に摂取することができる商品。

サラダの野菜は何でもよいということではなく、女性の志向に合わせてベビーリーフを使った商品化がポイント。商品設計時点でターゲットを明確にすることで、新たな切り口のローストビーフサラダとした。

購入者は若いビジネスパーソンを想定。サラダとのバランスを考え、パサつき感が出ないように極力薄くスライスして商品化。ベビーリーフを巻いて食べることができるようにスライスは広げて乗せている。

ドレッシングは店舗でさまざまな小袋展開していれば、同梱の必要はない。

商品化での重要なポイントは、商品設計時にどのような消費者、生活者が購入し食べるかを想定することである。ターゲットを設定することで、具体的にどのような食材やスライス厚、量目が良いかなど、考えながら商品設計することができるようになる。

進化形簡便味付け商品

たれ漬け商品は、焼いて一品完成の時代から、調理して混ぜる系へと進化を遂げている。しかも、先々で水平展開して、カテゴリー化できる予感のする混ぜる系味付け商品である。

米国産牛豚バラ味付け肉 400g798円

米国産牛ショートプレートと豚シートベリーを一緒にスライスし、ガーリックソース、コーンをトッピングして商品化する。

牛肉単品での商品化は今までも販売していたが、牛豚ミックススライスでの商品化も行う。牛肉のみスライスした場合よりも、価格面で安く提供することが可能となる。

輸入牛の相場が高く、牛肉単品で商品化していると、値入れを下げるか、パック単価を上げる必要がある。その部分を、豚肉を混ぜることで回避していく。

いままでのたれ漬け商材は、焼いて一品を完成させるタイプのものが多いが、この商品も焼いてそのまま食べることができるもの。商品を焼いたフライパンに、ご飯を入れるとガーリックビーフライスに仕上がる。

味付け焼肉から主食の炭水化物を作る素材、調理素材の一部を販売するという、「簡便メニューの一部の販売」という考え方の商品になる。「進化形簡便商品」である。

進化しているのは簡便部分だけではない。牛豚ミックスでの商品化は、味付け商材だけでなく、切り落とし商材やこま切れでも商品化可能である。

牛肉を使用した商品で、単価を下げる1つの手段として今後活用できる。牛豚を切り落としで一緒に商品化することに抵抗がある人もいるかもしれないが、すでに牛豚焼肉セットや牛豚合いびき肉でミックスした商品は精肉に存在している。

表示に関しては、比率の多い順に記載する必要があるが、今後の精肉の商品に風穴を開ける手段となりそうである。

「タイパを攻める」

「タイムパフォーマンス」略して「タイパ」という消費行動に注目が集まっている。

コストパフォーマンスをコスパという費用対効果に対して、タイパは時間対効果ということである。分かりやすく言うと、動画の視聴速度を1.5倍速で見ることが最適と感じ、より多くの情報を短時間で得る、まさに時間対効果、時間効率である。

実は以前から、この消費行動は存在しており、それを解消する商品として、野菜入りキット商品などの時短商品や味付け商材の簡便メニューと言った商材がある。ターゲットは、共働きで、料理にかける時間が多く取れないパーソンを想定している。

特にZ世代にとってのタイパは「時間に追われる時短型」ではなく、「いますぐに楽しみたい」「待ちたくない」といった効率性を追求した効率型と考えられている。

Z世代はデジタルネイティブな部分があり、日常的に効率的にスマホやタブレットで情報を即座に入手できる環境から、そのような消費行動を行っていると思われる。

そこで、Z世代向けの商品として肉惣菜やレンジ対応冷凍一品料理などを提案したい。すぐに食べたい消費行動は、テイクアウトや宅配でも需要があることは周知の事実であるが、それを一気に浸透させることとなったのが、奇しくも新型コロナウイルスであった。

タイパ商品の代表格としては肉惣菜でローストビーフやローストポークといった即食商品である。調理時間を短縮してそのまま食べることができる上に、「おいしいのは当たり前」という一石二鳥。さらに、ボリューム感とコスパも兼ね備えた商品であることが売れる鍵となる。

ローストビーフとローストポークの満足セット 598円

ローストビーフとローストポークが入っている満足感は、単品商品よりも高くなり、購入につながる。注意が必要な部分としては、購入層がZ世代よりも高い場合は「囲い込み」を行い、リピートにつなげていくことで、売上げを定着化させていくというこれまでの販売戦略で、顧客満足を高めていくこと。一方で購入層がZ世代の場合は商品をリピートしてもらうのではなく、似たような、別の商品を定期的に改廃し、いろいろ楽しめるような仕掛けをすると良い。

Z世代が社会進出をはじめているため、新たな消費行動を理解しなければならない。新しいタイパ志向の消費者への対応は、今後の精肉売場にも大きく影響すると予想される。

人口が顕著に減少している地方では、特に商品のターゲティングが明確に示されていないとロス率が上がる。パック重量やパック価格などは、全店同じ設定、売場も同じ時代ではなく、世帯構成なども考えた売場作り、商品化を行っていかなくてはならない。働き方改革が求められると同時に人が集まりにくい環境下、企業もコスパとタイパを生かした売場づくりを実践したい。

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