酒の涼味立ち上げ期、ホームパーティ、母の日のごちそうディナー、夏向けビールへ|「これは押さえたい」酒編・2023年5月

2023.03.24

2023.03.27

酒文化研究所 山田聡昭

関東以西ではここ数年ゴールデンウィークの気温が25℃を超える日もあり、季節は進み初夏が近づいていると感じさせる。この頃から6月上旬の梅雨入りまで、天候は安定し、虫も出ない爽やかで過ごしやすい晩が続く。

まさに酒版の涼味立ち上げプロモーションの好機で、連休のホームパーティ、母の日のごちそうディナー、さらに夏向けビールの紹介とつなげていく。

ゴールデンウィークは家族や友人が揃うホームパーティ需要を狙う

パーティに爽やかなホワイトビール

近場に住む家族にとってゴールデンウィークは、盆暮れにプラスのプチ帰省のタイミングで、この時季は大人数の食卓となる世帯が少なくない。普段からよく酒を飲むヘビーユーザーに加えて、あまり飲まないユーザーも一緒に食卓を囲むから、どの酒類にもとっても書き入れ時となる。

そして、こうしたイベント型の食卓には、普段は並ばないぜいたくな酒や変わった酒が登場する。「おもしろそう」と好奇心から売場で商品に手を伸ばしたり、普段酒を飲まない人が調達係になってびっくりするような選び方をしたりするからだ。

そこでお勧めしたいのがホワイトビールである。これは原料に小麦を使ったビールで、オレンジピールなどの副原料を使うものもあって、総じて苦みがほとんどなく、爽やかでジューシーは味わいとなる。ベルギーの「ヒューガルデン・ホワイト」はその代表的な商品だが、似たタイプがドイツではヴァイツェンと呼ばれている。

ホワイトビールはクラフトビール好きにはよく知られているが、一般にはまだまだなじみが薄くカテゴリーとして認知されていない。「苦くないジューシーなビール」「ビールが苦手な人がリピートしちゃうビールです」とホワイトビールをアピールし、普段ビールを敬遠する人のトライアルを促す。

売場展開

ホワイトビールは5点ほど品揃えし、サブカテゴリーとして認知を図る。定番が固まり冷蔵ケースでの展開が難しい場合は、平台やひな壇などのイベントスペースを活用し、常温で商品をアピールする。

商品は「ヒューガルデン・ホワイト」や「ヴェデット」などのベルギースタイル、新ジャンルながらホワイトビールを狙った「ホワイトベルグ」(サッポロビール)、ヴァイツェンは国内のクラフトビールメーカーから多数発売されている。クラフトビールに注力しているチェーンは、常温で販売できるヘイジーIPAを加えたい。

プラスチック容器に入った飲み物
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かんきつ系の香りが立ち苦みがほとんどないベルジャンホワイトは、初めてビールを飲む人でも「おいしい」と思うことも多い

母の日にピンク&ピンクのロゼワイン

今年の母の日は5月14日でゴールデンウィークから丸1週間時間が空く。連休とは別のプロモーションとして独立して展開しやすい。プレゼントとごちそうディナーがターゲットシーンだが、この日の主役はスイーツであり、酒類は脇役に過ぎない。

だが、普段から酒が食卓に並ぶ家庭では、母の日らしく演出する提案を歓迎するはずだ。「夕飯は何にする?」と同じように「今日は何を飲む?」となるのだから。そんな彼らにおすすめしたいのがロゼワインで、母の日の花であるカーネーションのピンクに合わせて「ピンク&ピンク」を提案する。

ロゼワインは甘口から辛口まであり、色も赤ワインだと思うほどの明るい赤から、オレンジがかったもの、鮮やかなピンクのもの、白ワインがほんのりピンクがかったものなどバラエティは豊富だ。フランスでは見た目の華やかさからロゼワインの人気が高まり、消費量は白ワインを上回っているとも聞く。

商品はやや甘口でリーズナブルな「ロゼ・タンジュ」(フランス産)や微炭酸で飲みやすい「マティウス・ロゼ」(ポルトガル)はどちらもアルコール度数11%程度と低めで、あまり酒に強くない人でも楽しめる。

こうしたアイテムは必須で、加えて辛口のロゼワインを選んでいく。アルファベットが苦手な人もいるので国産のロゼワインや、お祝い感が増すスパークリングワインを加えるものお勧め。

ちなみにロゼワインは赤ワインと白ワインの中間的な味わいとされるが、渋味は強くなく白ワインに近く、幅広い料理に合わせやすい。

売場展開

母の日向けのエンドをロゼワインでピンクに染め上げて盛り上げる

テーブルの上にあるワイングラス
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フランス産のロゼワイン。近年の傾向としてうっすらとピンクがかったワインが増えているという。左から「ロゼ・タンジュ」「シュッドウエスト産」「ロワール産」「ローヌ産」「シャラント(コニャックの傍)産」

涼味立ち上げ、清酒の夏酒

10年ほど前から銘酒酒場や地酒専門店では「夏酒」という言葉が使われるようになり、現在は多くのメーカーが夏向けの酒を5月ごろに発売するようになった。

「夏酒」に明確な定義はなく、メーカーが夏に飲んでおいしいと思うスタイルを自由に模索して製品化している。基本は冷やしておいしい香味設計で、軽快な吟醸タイプや微炭酸を感じるものも多い。

あるいは甘めの口当たりにして強めの酸でバランスをとったり、白麹由来のクエン酸で白ワインのような爽やかなニュアンスを出したりしたものもある。中には濃厚な原酒をオンザロック向けの夏酒とするところもある。

売場展開

大小さまざまなメーカーが夏酒を発売しており、5月下旬くらいに商品がそろったらスタートする。清酒に注力している店は冷蔵ケース3~4尺1段を夏酒に充て、上半期の清酒の売りの山となる父の日に向けて、「清酒が豊富な売場」というイメージをつくっていく。

屋外, 座る, 水, 背景 が含まれている画像
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夏酒はバラエティの豊富さも魅力。押しの商品の推奨ワードが勝負

トレンド商品

ジン・ソーダ

これまでに何度か取り上げているがジンは家飲みでの成長が期待できる有望商品だ。高価なクラフトジンもよいが、裾野を広げるにはデイリーユースに耐える価格帯の商品の普及が必要で、ここは大手メーカーが力を発揮する部分だ。

テレビCMも入っているサントリーの「ジャパニーズジン翠SUI」をけん引役に、「ビーフィーター」「ゴードン」などの輸入スタンダードジンをラインナップし、「比べてみると確かに違う大人のジン」としてアピールする。

ジンはアルコール度数40度700㎖で1200円程度とリーズナブル。かんきつやジュニパーベリーの特有の香りは夏向け

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