アウトドア向けが復活予想、羊肉や副産物の活用も|「これは押さえたい」精肉編・2023年5月
2023.04.03
月城流通研究所代表 月城聡之
新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、ゴールデンウィーク明けの5月8日から2類相当から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられる。
おそらくゴールデンウィークには、今までの外出控えから、かなり多くの人がアウトドアや行楽に出かけることが想定される。
そのため、特にキャンプ場や行楽地では、この2~3年とは商品の動きが異なることに注意して、売場づくりを行なわなければならない。
バーベキュー需要は、8月の盆商戦にも大きく影響する。バーベキュー商材のインパクトのある商品を売場で展開して、消費者の買い控えていた消費欲求を爆発させ、売上げに貢献出来るよう準備を行いたい。
特にこの2、3年で入社した社会人は、コロナ前の状況を知らないことも考えられるため、上司や先輩なども協力して知識を補てんし、精肉のニューノーマル時代を迎えてもらいたい。
一方で、5類に引き下げられたとしても、完全に過去に戻るわけではないため、精肉も進化を遂げた新しい時代を作っていく必要がある。新たな行動様式で注意が必要なこととしては、購入する量目である。
コロナのときは、個食やファミリーに限定した食生活を送っていたため、比較的少量目のものが重宝されたが、地域によっては、学生がグループで購入するケースが増えたり、外食が増えて、内食が減る地域も出てきたりといったことがある。しっかりとお客を見て売場づくりや商品作りを行ってもらいたい。
牛肉
国産牛トマホーク(骨付きロース)冷凍 100g当たり398円
バーベキュー需要が高まるゴールデンウィークから、アウトドアでも迫力が出る「牛骨付きロース」の「トマホーク」を品揃えする。売場のインパクトは他のどの商品よりも強い。多くの店で品揃えがないため、競合との差別化には最も良い商品である。
この「トマホークリブステーキ用」は、メキシコ産牛肉を中心に、各社が国産ばかりでなく、輸入牛肉でも商品開発が進んでいるので、取り扱いが年々増えているアイテムである。
家庭のフライパンでは、調理する事が難しく、またオーブンレンジにも入らない大きさであるため、やはり食シーンとしてはアウトドアの炭火焼が良い。
強火で焼くと中まで火が通らないので、じっくりと遠赤外線で加熱していくバーベキューが適している。バーベキュー用精肉アイテムでは、「豚骨付きロース」や「若鶏中抜き」などの、家庭では調理が難しいアイテムが、売場を華やかにする。
しかしながら、実際にバーベキューを行う場合は、焼肉商材や定番の精肉アイテムも使用されるため、焼肉商材もしっかりと品揃えして対応したい。インパクトは強烈である。
豚肉
国産豚骨付きロースソテー用 100g当たり168円
「国産牛トマホーク」と共に品揃えしたいのが「豚骨付きロース」である。「豚骨付きロース」は、家庭のフライパンやグリル、オーブンレンジでも加熱できるサイズであるので、バーベキュー商材でも提案できるが、インドア派のグリル好きや、休みの日のディナーメニューとしても活用できる。
「牛トマホーク」と違い、通常のシステムトレーにも入るサイズであるため、週末や祝祭日での定番販売で、ハレの日の売上げアップにもつながるアイテムである。
骨1本につき1枚のロースとなるため、肉厚が3cm程度の厚切りカットとなる。調理時に中心までしっかりと加熱してもらうようにPOPで注意喚起もしておくとよい。
加熱方法は低温からじっくり焼く方法。例えばスチームオーブンなどで水蒸気調理ができると、しっとりとおいしく焼き上げることができる。
近年、注目の低温調理器具での調理の場合も、中心までしっかりと加熱をしてもらうようしなければならない。
たれ漬け商品
豪州産モモ肉カットステーキ用ガーリックソース 598円/200g
豪州産トップサイドを使用したサイコロステーキをたれ漬け商品で提案する。輸入牛肉の相場が高くなっているため、たれ漬け商品に苦慮している企業も多い。
価格を下げようと思うと、輸入牛モモ肉を使用するのが良いが、「硬い」という意識から精肉ではステーキへの商品化は懸念されがちである。しかし、たれが進化しており、酵素が入ったもの、ぱさつきを抑えるためにたれの粘度を上げて、しっとりとさせる工夫がされたものが多く出回るようになった。
また、コロナ禍でマスクをするようになったこともあって、人気となった味が「ニンニク」である。外食でもニンニクをたくさん使ったメニューを女性が好んで食べるという現象があり、あえてニンニクを多め、また1粒丸ごと焼肉と食べる提案をしている外食店もある。マスクをしているため、以前に比べるとニンニク臭いのも気にしなくなったということである。
サイコロステーキは、味のバリエーションを変化させることで、集合陳列した場合に、選ぶ楽しさが生まれる。プレーンやスパイス、山賊焼き、オイルソースなど店舗で仕入れのある業務用たれをうまく活用して提案すると良い。
肉惣菜
豪州産ローストビーフポテトサラダ 358円
肉惣菜で売上げの核となっているローストビーフを、おつまみの1品からサラダの1品へ進化させる商品。
ベビーリーフやカット野菜のトッピングだけではなく、ポテトサラダにローストビーフを載せたローストビーフサラダは、おつまみカテゴリーではなく、ファミリーや女性にも購入してもらえるサラダカテゴリー、冷惣菜の位置付けである。
商品化は、業務用のポテトサラダを中心に高く立体的に盛り付け、その回りに被せるようにローストビーフを載せる。高ぶたトレーや青果のトマト用トレーなど高さの出るトレーを使用することがポイントとなる。立体的に盛り付けることで、トレーの面積は小さくても、割高感が出にくくなる。
視覚的な演出も商品化には必要であるため、オペレーション重視で、トレーを検討せずシステムトレーで商品化ばかりしていては、売上げも伸びないので注意が必要である。
第4の畜種、羊肉の攻略
豪州産ラムランプ(モモ)グリル用 スパイス付き 100g当たり358円
スーパーマーケットでもラム肉売場は定着してきており、「ラムショルダー(カタ肉)」や「ラムラック(骨付きロース)」だけではなく、「ランプ」や「スペアリブ」の品揃えも羊肉コーナーでなくてはならない存在になってきている。
ランプは、焼肉やグリル用だけでなく、ステーキ用や煮込み用など多様なメニューに使用することができ、価格も比較的安めに手に入るため、品揃えしておきたい部位である。
ランプの商品化はトリミングする部分もほとんどなく、ドリップや汚れなどをトリミングして商品化に取りかかることができる。形が三角形をしているため、無理に全てをステーキや焼肉用に取ろうとせず、盤面が大きくない部分はサイコロステーキ用などに商品化すると良い。
最近の焼肉トレンドで、焼肉用を丸皿に盛り付け、中央にたれやスパイスをカップに入れて販売する方法がある。羊肉の場合は、クミンパウダーが入ったスパイスを入れることで、グリル用として提案することができる。
羊肉は、年間通して定番で販売することが多くなっているが、需要が高まるのは、4月29日羊肉の日から夏場にかけてで、焼肉商材やバーベキュー商材が動きやすい。焼肉用でも8mm程度のやや厚めにカットして商品化するとボリューム感も出る。
羊肉は、30年前まではマトンが主流であったが、2005年を境にラムとマトンが逆転し、現在はラム肉が主流となっている。ラム肉は1歳未満の仔羊のため、マトンよりもラム臭さが少なく、比較的多くの人が食べることに抵抗がなくなってきている。
豪州からの輸入量は95年に異常値があるものの、安定して1万5000t前後輸入されている。22年は相場が高かったが、やや落ち着きを取り戻している。しかしながら、牛肉同様に今後価格が大きく下がる見込みはないため、商品化にも一工夫した展開が必要である。
副産物を活用する
コロナによる影響は徐々に薄れてきているが、鶏肉処理工場などの人手不足などによる影響は少なからずいまも残っている。
特に、鶏肉の処理工場では、セセリや砂肝を含めた副産物の処理に時間がかかってしまうため、一時的に商品が欠品してしまう状況がある。
そのため、海外から輸入の副産物を仕入れることもメーカーや商社も増やしており、状況は良くなっている。砂肝は、別名「スナズリ」とも呼ばれ、英語名は「ギザード」となる。
歯のない鳥類独特の臓器で、食べたものをこの砂肝の中ですりつぶす、胃の一部である。小売店に届けられる前に、汚れや銀膜など手作業で細かく取り除かれるため、人手不足になると、先に欠品しやすい部位の1つとなる。同様にセセリも、首の骨から肉を手作業で剥がしていく作業がある。
副産物は正肉に比べると安価であるが、手間がかかっているアイテムであることを知っておく必要がある。
その副産物を活用して販売する術として、一次加工や加熱加工がある。一次加工は、焼鳥串や砂肝スライスなど、納品したままの砂肝から一手間を加えた商品化である。
焼鳥串にするだけでも大幅な単価アップが可能となり、さらに家庭では生の焼鳥串から焼き上げることでよりおいしく食べられる。
国産若鶏砂肝ガーリックペッパー焼 100g当たり188円
加熱加工では、外部工場にガーリックペッパーで焼き上げてもらうことや肉惣菜コーナーがある場合は、スライスした砂肝を鉄板やフライパンで焼き上げることでつまみ商材として販売するといった方法がある。
砂肝はこりこりした食感が特徴であるが、比較的子どもには人気がないため、ターゲットは酒のさかなとしてつまめる大人となる。居酒屋メニューとしても人気の砂肝であるが、居酒屋の価格帯を考えても値頃が出しやすい。
注意が必要なポイントとしては、副産物は正肉と比べて消費期限が短い部分である。処理工場では、もちろんビニール手袋をして処理しているものの、正肉に比べると人が触れている時間が長いことや、内臓は雑菌数も多いため短くなる。店内で加熱する場合でもしっかり中心まで火を通してトラブルのないように注意が必要である。
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