祝賀ムードをちょいハレ消費につなげる|「これは押さえたい」酒編・2023年6月

2023.04.21

酒文化研究所 山田聡昭

6月の最大の話題は天皇皇后両陛下のご成婚30周年だ。コロナ禍が落ち着き、日常が戻ってきた感がある中で、この祝賀の話題は気持ちを上向きにし、消費を盛り上げてくれるだろう。30周年となるのは6月9日、前半は祝杯を提案し、そのままで父の日のギフト&ご馳走をおすすめする。

おめでとう! 日本酒で乾杯

天皇皇后両陛下のご成婚30周年を祝うには、國酒である日本酒がふさわしい。日本酒に絞って祝いの乾杯を提案していく。

年初からのご成婚30周年に伴う小売やメディアの動きを見ると、三越伊勢丹と高島屋は皇室写真展を1月からスタートし主要店舗を巡回している。また、主婦の友社や宝島社は記念写真集や記念号を出版した。雅子さまはご結婚される前は外務省に勤務するキャリアウーマンで、ちょうど1986年の男女雇用機会均等法による女性の社会進出が活発化した時期であった。現在の60歳前後の世代は雅子さまに親近感を抱いた人が少なくないと言われ、今後、多くの女性誌がご成婚30周年を取り上げると予想される。一般メディアも5月の広島サミットが終わると、一気にこの話題に移るだろう。

お二人は皇太子同妃だったご成婚25周年の際には、一問一答形式で文書をご発表され、宮内庁が公式サイトなどで公開した。天皇皇后としてお迎えになる30周年は、それ以上のメッセージを発信されるのであろう。祝賀ムードに合わせて売り場を華やかに演出し、日本酒を売り込む。

売場展開

取り上げる商品は皇室縁の酒だ。天皇陛下が即位されたときの饗宴の儀で提供された「日本盛 惣花」、例年、春秋の園遊会で使われる「櫻正宗」、「菊正宗」などである。これらを中心に、地元の酒やめでたい名前の酒を取り揃える。

ターゲットは日本酒ユーザーの少し贅沢な家飲みをメインとして、年に1度、12月にお神酒もしくは正月用の金箔入りを購入する超ライトユーザーをサブターゲットに据える。広く日本酒に関心を向けさせられる機会を活用し、天皇皇后両陛下と同じ酒での祝い酒をお勧めする。

お父さんおしゃれ化作戦クラフトジン

今年の父の日は6/18で天皇皇后ご成婚30年の祝いの翌週末だ。日本酒を大々的に売り込んだ後、そのまま父の日のプレゼント用に転じるが、父の日らしさを出しオリジナル企画に仕立て直すために、クラフトジンを加える。

クラフトジンはロンドンドライジンのプレミアム商品のほか、国内の洋酒メーカーや焼酎メーカーが日本特産のボタニカルを使った商品を多数開発している。すっきり爽やかな初夏にぴったりの風味とシンプルなソーダ割でおいしい簡便性を併せ持ち、さらに流行にのったおしゃれな雰囲気がある。また、糖質とプリン体がゼロで健康面でもすすめやすい。

商品は輸入品では「シップスミス」「モンキー47」「タンカレー」、ジャパニーズジンでは「サントリー六ROKU」「季の美」「和GIN」「Japanese GIN 和美人」など、4000~6000円クラスを揃える。

売場展開

日本酒とクラフトジンをそれぞれまとめ2項対立させてアピール。陳列自体が「あなたは日本酒?それともジン?」と問いかけているように並べる。もし、酒齢の長いジャパニーズウイスキーが入荷すればこれも加えたい。

キャンティワイン

6月2日はイタリアワインの日であることにちなんでイタリアワイン、なかでも知名度の高いキャンティワインを特集する。キャンティはフィレンツェやピサなど人気の観光地が集中するトスカーナ州のワインで、産地としては大きくキャンティとキャンティ・クラシコの2つがある。

イタリアワインを代表する産地であり、カジュアルなワインから高級品まで産するが、「キャンティ」としてリーズナブルなワインが大量に出回る中、高品質なワインづくりと目指した一部の地域が「キャンティ・クラシコ」として独立し、鶏のシンボルマークでその存在を示した。ブドウ品種はサンジョベーゼ種(赤)が主体(70~80%)で、キリッとした酸味と程よい渋みが特徴。あまりヘビー過ぎずさまざまな料理と合わせやすく、コース料理も1本で済む。

価格帯は600円~1000円未満の商品でボリュームを稼ぎ、2000円前後の中級品で売り上げを稼ぐ。

売場展開

イタリアンフェアとしてスパゲッティやショートパスタ、パスタソース、バーニャカウダソースなどとクロス展開する。ワインはフレッシュ軽快なものと、しっかりした濃厚な味わいのものとを分け、味のタイプを明示して推奨する。

キャンティと呼称するエリアは広く、地域によって味わいはバラエティに富むが、ソフトな口当たりで飲みやすいワインが多い。

トレンド商品

日本酒&フルーツトッピング

日本酒はそのまま温めるか冷やして飲むのが王道で、何かで割ったり足したりするのはよくないイメージを持っている人が少なくない。しかしアルコール度数は15%前後とビールの3倍あり、12%前後のワインよりも2、3割も高い。アルコール度数がさらに高い蒸留酒の焼酎やウイスキーは飲用時にはソーダ割や水割りで6~8%で楽しまれており、そのまま飲む日本酒は体への負担は際立って大きい。

そのため酒と同量の水を飲む「和らぎ水」が推奨されるのだが、日本酒にたっぷりの氷を入れたオンザロックや、少量の水を加えた水割りにして体への負担を軽減するのもおすすめだ。実際、50代以上の日本酒のヘビーユーザーには、普段こうした飲み方で楽しんでいる人は少なくなく、高齢化とともに今後ますます拡大が見込まれる。

日本酒を飲み慣れていない若年層にとっても、オンザロックや水割りから試し、日本酒のアルコール度数に徐々に慣れていくのは“有り”だろう。さらにイチゴやリンゴなどのフルーツをトッピングして、4:1(酒:ソーダ)のソーダ割にすると見た目も華やかで、香りもよい。料飲店やホームパーティでこれから流行らせたい飲み方だ。

フルーティな吟醸酒の香りはリンゴやメロンに例えられることが多く、フレッシュフルーツをトッピングするととてもおいしい