年に一度の販売チャンスのうなぎは特別な商品も|「これは押さえたい」惣菜編・2023年7月

2023.05.29

2023.06.19

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

7月の主なイベント、行事は、山開き、海開き(1日)、半夏生(2日)、七夕(7日)、小暑(7月7日~22日)、新盆の迎え火(13日)、中元(15日)、藪入り(16日)、新盆の送り火(16日)、海の日(18日)、土用の丑の日(30日)、大暑(7月23日~8月7日)。

新盆は東京、神奈川、静岡、熊本の一部。多くの地域が8月に行われる。7月の該当地域は盆商材が売り時。7月の旬の食材はナス、オクラ、キュウリ、ピーマン、パプリカ、アジ、スズキ、アユ、タコ。

半夏生は地域によってタコだけでなく、サバ(福井県)やうどん(香川県)を食べる習慣があるため、地域の食文化に合わせた販促を行う。今年の「土用の丑」は30日(日)。

2022年7月の家計消費で需要が伸び、前年を上回ったゴールデンカテゴリーは調理食品(101.3%)、おにぎり(105.1%)、うなぎかば焼き(100.9%)、焼き鳥(105.4%)、主食的調理食品(108.6%)。

7月に需要の変化はあまりないが、前年を上回ったカテゴリーはカツレツ(106.3%)、天ぷら、フライ(104.8%)、7月に需要が下がったが、前年を上回ったカテゴリーはコロッケ(114.2%)、シューマイ(101.2%)、ハンバーグ(100.0%)。

7月に前年を下回ったカテゴリーは弁当(90.8%)、寿司(97.9%)、調理パン(98.9%)、サラダ(97.3%)、ギョーザ(97.7%)、惣菜材料セット(83.3%)。

ゴールデンカテゴリーのおにぎり(105.1%)、うなぎかば焼き(100.9%)、焼き鳥(105.4%)、他の主食的調理食品(108.6%)。今月の最重点商品はうな重、うな丼、はらこ飯、う巻き。土用の丑に備えて早い時季から品揃えと予約販売を強化する。おにぎりや焼き鳥は品切れがないよう注意したい。

苦戦したカテゴリーは弁当(90.8%)、寿司(97.9%)、調理パン(98.9%)、サラダ(97.3%)、ギョーザ(97.7%)など米飯類とサラダが苦戦した。梅雨の時季の食中毒への不安からか。

米飯の売上げアップのために天丼&涼味麺、天丼、ピリ辛のアジアン丼、中華丼、夏野菜を使ったカレーライスなどの販売に力を入れる。気温の上昇と共に米飯から涼味麺に需要が変化するため、涼味麺と米飯を組み合わせたメニューも訴求する。

月初は梅雨の名残があるため、揚げ物、焼き物、中華類などの加熱物が好まれ、弁当、寿司、サラダなどの生食あるいは生食入り商品の需要が落ちる傾向が見られる。梅雨明けからはうな丼、うな重、焼き鳥、涼味麺に注力する。

うなぎかば焼き

うなぎのかば焼き、うな重は土用の丑に向けて需要が高まり、7月30日(日)にピークを迎える。うなぎのかば焼きは100.9%とぎりぎり前年を超えた。年に一度の販売のチャンスであるため、いつものうなぎではなく特別なうなぎも販売したい。

売場づくり

輸入うなぎ、国産うなぎの品揃えの他に、千葉県成田のうなぎ、高知県四万十うなぎ、鹿児島県鹿屋うなぎ、島根県浜田うなぎなど、ブランドうなぎの強化も品揃えしたい。鮮魚部門とタイアップして各地の有名うなぎのカタログ販売を行う。予約の高級うな重はロスがないが、在庫にならないよう低値入販売する。

写真は東京駒形前川のブランドうなぎ「坂東太郎(利根川)のうな重」。年に一度はおいしい「うな重」を提供したい

おにぎり

7月は弁当、寿司、調理パンの動きが悪い月であるが、おにぎりだけは需要も高まり前年もクリア(105.1%)しているゴールデンカテゴリーだ。7月、8月は人が動く月であるため、食べ歩きできる商品として訴求したい。

売場づくり

涼味麺+おにぎりの提案を行いたい。涼味麺だけでは少し足りない人のため、おにぎりを訴求する。逆におにぎりやおにぎり弁当では足りない人のためにちょっと涼味麺を訴求。また、コンビニでは大きなおにぎりの品揃えが増えているため、大中小の品揃えとミニおにぎり弁当に力を入れて販売する。

カツレツ

カツレツは12カ月連続で前年をクリアしているゴールデンカテゴリー。カツレツは春と秋によく売れる。6月、8月は落ち込むが7月は消費を伸ばしているため、売り逃しがないようにしたい。

売場づくり

豚カツ、ヒレカツ、チキンカツ、メンチカツ、串カツ、串揚げを中心に「夏に勝つカツレツコーナー」を設置したい。ばら販売、大中小パック、盛り合わせパックの品揃えをする。ピリ辛ソースやタルタルソースをかけたカツレツも提供したい。ちなみにコロッケは114.2%、天ぷら、フライは104.8%の伸び。

焼き鳥

焼き鳥は7月からよく売れ、8月にピークを迎える。昨年は105.4%伸びたゴールデンカテゴリーだ。焼き鳥はビールのつまみの印象が強いが、子どもも大好きな商品である。香辛料を使わない甘口たれを使った子ども向け品揃えを意識したい。

売場づくり

焼き鳥はインストアじか火焼き、インストアオーブン焼き、アウトパック焼き上げ、チルド焼き鳥と大きく分ければ4種類ある。7月、8月は売れる月であるだけに3温度帯の品揃えを広げたい。オーブン焼きのモモ炭火焼き、手羽先焼き、手羽中焼き、、手羽元焼き、鶏皮焼き、レバー、砂肝焼きも売りどきだ。

トレンド商品

揚げ物盛り合わせ

天ぷら、フライなどの揚げ物の売上げが好調だ。ばら販売の復活で平均単価が下がっている。ばら、単品パックに加えて、揚げ物盛り合わせを販売したい。揚げ物は日持ちがするため食べ切りサイズの必要はない。商品に合わせたソースやタルタルソースを上からかければ、飽きることもないし乾燥も防げる。夕方や週末には串揚げセット、串カツセットも品揃えしたい。

冷し中華

冷し中華、ざるそば、サラダうどん、そうめんなどの涼味麺が売れる月。商品のほとんどはアウトパックのチルド商品だ。品揃えは大中小の3SKUを品揃えしたい。インストア製造の涼味麺は天丼+涼味麺に集中したい。

うどんやそうめんはシェアできるファミリーパックも品揃えする。売場に写真にあるような料理サンプルを展示して冷し中華+焼きギョーザも訴求したい。

天丼、天重

弁当、寿司の動きが悪い月。米飯コーナーでは天丼、天重、天丼+涼味麺と天ぷらを絡めた商品の販売に注力する。天ぷらは手間がかかる商品であるため、カボチャ、サツマ芋、ナス、オクラなどの野菜天は冷凍油調品を使用することも考えたい。エビ天、イカ天は冷凍油調品を使うか、手間があれば手揚げ品を使用。閉店近くまで「商品があること」が重要。

注力するアイテム

コロナが収まり、惣菜の売上げが上昇しているが、原料などの高騰もあり、お客の目はメーカー提案の商品より、昔ながらの「手作りコロッケ」「ロースとんかつ」など定番の手作り商品に向かっているようだ。

心配なのは異常気象の変化。猛暑は冷麺商品や寿司の売上げを押し上げる効果があるが、猛暑が続くと、高額商品である弁当の売上げの低下で売上げが下がる。

冷麺商品が売れて売上げが片寄る心配がある。冷麺と小カツ丼との組み合わせなど工夫が必要。揚げ物は唐揚げ関連商品が強い。「鶏唐揚げ」は力を入れる。加えて「ばら売り」を強化する。魚や手羽先唐揚げなどのメニューの拡大提案をしてばら売りの人気を広げる。サラダなど冷ケースの商品強化も必要だ。

そうとはいうものの、猛暑ではなく冷夏の場合もあるので、その場合には「弁当」「おでん」など春型商品の売り込み、コロッケやとんかつ、チキンかつなどフライ関係商品を投入。

面倒でも猛暑、冷夏に対応できるようにしておくことが必要である。猛暑、冷夏とも手作り強化とベンダー企業との連携が鍵となる。

夏休みなどで惣菜商品を多用する家庭が増える。揚げ物のばら売りコーナーの復活が課題となる。その際、アイテムの多さが必要となる。選ぶ楽しさがばら売りの魅力。安さが前面になるが、価格は120円コーナー、160円コーナーなど商品によって2段回に分けて売り込むようにするとよい。アメリカンドッグなどスナックメニューなども投入する。

アフターコロナは、各社の惣菜売場の競合を激しくした。各店の惣菜商品の見た目の良さと陳列の美しさの変化が起きている。

対応策は売場陳列の見栄えを良くするためのトレーに詰める作業の見直しだ。これからはおいしそうに詰めることが惣菜商品の条件にもなってきている。

トレーに商品を詰める場合は、デザインを考えてサンプルを作り写真に撮り、同じ商品は写真と同じにコピーのように詰めるように盛り付ける。シールを貼る位置、パセリなどのトッピングなどの位置も同じにする。

同じように詰めることで、陳列が美しくおいしそうにお客に見えるようになる。おいしいだけではない。惣菜はより美しく、かつおいしくするためんいステップアップする時代になったことを全員で自覚する。これは競合に勝つ秘訣でもある。

大盛り冷やし素麺

異常気象が起きると弁当も売れず、かつ丼、天丼商品も売れなくなる。そんなときに、売り込めるのが「素麵(そうめん)」の商品である。統計を見ると30℃を超える日が続くとそうめんが売れる。

売れるこつは、早めにゆで上げることと付けて食べるつゆをたっぷりと多くすることだ。多くすることで固まった麺を楽にほぐせる。メーカーが示すゆで時間が何分かを調べ、その時間より1分間ほど短くゆで上げる。

この商品のポイントは乾麺のそうめんをゆでるところにある。そうめんはうどんとは違い、乾麺でもよく売れることが分かっている。乾麺を使うことで原価を安くできるので、超大盛りでも安く提供できる。猛暑がキーワードとなり、ここぞというときに投入できる。つゆをたっぷりと付けるのが売れるこつ。麺つゆの小袋を2個、3個付けるなどして対応する。

チキンステーキそぼろ弁当

チキンを使ったボリューム三色弁当。玉子そぼろ+チキンそぼろ+ホウレンソウなど青菜を使ったものが普通だが、青菜の代わりにチキンステーキをどんと載せたボリュームを出した弁当。鶏肉でボリューム感を付けることで夕食用の弁当として売り込むころも可能。

バリエーションとして、鶏そぼろをサケそぼろ、味付けサケのそぼろなど、アレンジが可能。どんと鶏肉で買い得感を出すメニュー。

経済的で、さらに1品で夕食のメインになるメニューとして売り込める弁当であり、製造しやすいメニューとして投入する商品。

お握りとパスタのランチ

見た目が良いので売場を華やかにする商品。ご飯に混ぜ込む具材(シソとワカメ、サケとワカメ)など混ぜ具を炊いたご飯に混ぜ込んでおにぎりを作る。

パスタをゆでて小さく丸め、業務用のミートソースをアルミカップに詰めてしゃれたトレーに詰める。おかずに野菜の煮物を用意。野菜煮物や、ミートソースは外部材料にする。

見た目を良くするには店で盛り付けるようにするころが大切。マニュアルを作り店で作れるようにすると良い。

この商品は新しい味を売り込みたいので量販を目指すのではなく、見た目を優先して売場の華としてお客の足を止めさせる商品として売り込むので数は狙わない。ただ、食べたら「おいしい」と話題となるような商品であることが必要。これからもお客の足を止める商品の開発が必要だ。

小カレイの姿から揚げ

ばら売りコーナーの目玉商品。アフターコロナの売場は、揚げ物の「ばら売りコーナー」の充実である。お客が好きな商品をあれこれ選べる売場が、惣菜売場の重点となることは間違いなく、力を入れたいところ。

小カレイはいつでもあるわけではないが、小魚の原料が仕入れられたときに売り込みたい商品だ。高齢者や男性客が好む商品なので、ある程度の数は販売可能だ。魚の商品としてばら売りの目玉になるので、あれば売り込みたい商品。

魚のワタを取り、唐揚げ粉を良くまぶして油で2度揚げをする。2度揚げすることでヒレなど小骨が食べやすくなる。魚の唐揚げにはアジの唐揚げ、イカ唐揚げ、イカゲソ唐揚げ、小エビ唐揚げなどの魚唐揚げの商品化で提案する。

柔らかレバニラ炒め

肉類の値上げが相次ぐ中で、中華風ニラレバが人気になっている。味付けされた新鮮なレバー肉に小麦粉などの衣を付けて油で揚げ、たれと絡める中華風の商品だが、揚げ過ぎると火が通り過ぎてレバーが硬くなることで売れなくなることが多い。

原因は揚げ時間。生のレバーの揚げ時間は1分前後と短いマニュアルが普通だが、作業する人が「これでは短すぎる、生ではないか」という心配から勝手に揚げ時間を延ばすことで肉が硬くなり売れなくなることが多い。気を付けてチェックすると、売上げが戻ることが多い。必ず常にチェックすること。

最近では柔らかい食感のプリフライの冷凍レバー原料もあるが、あくまでおいしさを基準に原料の改善も必要となる。たれは手作りでなくとろみのある業務用の中華だれを使う。とろみがあると時間が経過してもたれ落ちがなく、見た目が良いからである。見た目が売上げを左右する商品でもある。

海老チラシ寿司

暑さが厳しくなると弁当の売上げが鈍くなる。代わりに酸味の効いた寿司が好まれるように変わる。寿司は夏商品でもある。

トレーに寿司飯を敷き、業務用「味付け山菜」を散らし、錦糸卵、シイタケの甘煮、寿司エビ3匹を並べた上にイクラをトッピング。週末を中心に売り込む。

平日には売価を下げて売りたいのでエビを2匹にしてイクラを外すなど、原価を下げて売価を安くするなど工夫をすると売り込みしやすい。寿司飯は甘めに仕上げる。砂糖を多めに使うことで寿司飯が固くなるのを遅くすることができる。

酢飯ベースの寿司飯を使った商品は夏場に強く、さまざまなチラシ寿司を秋の10月まで売り込みながら提案するとよい。

小海老のかき揚げ

夏場の家庭の食事では冷やしうどん、そうめんなどの麺料理が多くなる。かき揚げはそのような麺メニューに人気の「おかず」として使われることが多く、夕方のピーク時に揚げ立てを売り込むと人気を呼ぶ。

玉ネギと水菜など青菜を加えた材料に天ぷら粉を加えてよく混ぜながら、水を少しずつ加えて手でよくかき混ぜると、硬めのかき揚げに使えるかき揚げベースができる。

丸型にするためには、小型の親子丼用の鍋を使い、鍋にフライヤーの油を少し入れて、その上に玉ネギのかき揚げベースを手で入れて丸型にして、鍋ごと油に入れて揚げると玉ネギベースが固まって来るので、鍋から剥がして油に浮かせる。その上に小エビと天ぷら粉を水で硬く溶いたものをたっぷりと載せて合体させて揚げるとでき上がる。

小エビは高価な桜エビではなく、安くて小さな干しアミエビなどを使う。

揚げダシ茄子と揚げダシ豆腐

夕方ピーク時に作りたてを単品大量で売り込みをかける商品。ボリュームを付けての揚げもの「おかず」で人気を取る。だしには麺つゆを使い、できれば片栗粉などで薄くとろみを付けて作る。

豆腐の衣については、天ぷら粉に卵半分水半分の溶き水を入れ、濃い固めの天ぷら衣を作り、カットした豆腐にたっぷりと付けて油で揚げる。この作り方だと豆腐の水気を切る(水切り豆腐)ことが必要とならないため、木綿豆腐をそのまま使って作れるなど、便利な作り方となる。

水切りの手間は必要ないので、幾らでも店で作ることが可能で、しかも柔らかくておいしい。衣を硬めに濃く作ることがこつ。揚げた豆腐をトレーに盛り付け上に4等分に切って素揚げしたナスを載せ、だしをかけて青ネギをトッピングする。汁がこぼれない密閉トレーを使う。