アフターコロナの夏のホームパーティ対策|「これは押さえたい」酒編・2023年8月

2023.06.23

2023.06.26

酒文化研究所 山田聡昭

4年ぶりに行動規制のない夏を迎える。新型コロナウイルスが5類に移行された5月以降、外食は急回復し、個人利用はほぼコロナ前に戻りつつある。

大規模な宴会は復活していないものの、人々はリアルに会う楽しさを実感し動き始めた。この夏は帰省もレジャーも盛り上がるに違いない。よって酒の販促企画はホームパーティをターゲットに据えた提案となる。大小さまざまな集まりをイメージして、使いやすく場が盛り上がる商品を勧める。

大勢のパーティに飲み比べを提案

家族や友人が大勢集まるホームパーティは、普段飲まない酒を試す機会であり、いろいろな酒を飲み比べる場でもある。購入客数が最も多いビール類の場合、こうした大ハレの機会では「ビール」が選ばれることから、重点的にビールを売り込む。

その次にユーザーが多いレディトゥドリンク(RTD)はアルコール度数の低い商品を、甘いものから甘くないものまでしっかりそろえる。低アルコールRTDユーザーの多くは普段酒を飲まない人だが、長時間の会食では酒ヘビーユーザーに緩衝材として使われる。酔い加減をこれらやノンアルコールタイプで調整するのである。

日本酒と焼酎には黙っているとなかなか手が伸びない。大勢のパーティでは日本酒や焼酎が好きな人がいるから、「あった方が良いですね」と売場にリマインドさせるメッセージが必要だ。

また、ノンアルコールや微アルコールの酒類は、こうした場では必須商品になりつつあり、次々に新しい商品が出ることから、試し買い&飲み比べニーズは大きい。しっかり準備しておきたい。

売場展開

ビール類は商品単価の上昇が狙えるこのタイミングで、クラフトビールを前に出し、「あるといいんじゃないクラフトビール?」「このビールなに? 全然違う」とトライアルを促す。商品はホップの効いたIPAやジューシーなヘイジーIPA、苦みのないベルジャンホワイトの3つは必須アイテム、もちろん裾野の広いプレミアムビールやレギュラービールも忘れない。

売場には7、8割は知った商品があって、新しい顔がちらほらあるというくらいの見せ方がよい。クラフトビールばかりにすると、「自分の酒がある」と思ってもらえないので要注意。

RTDとノンアル、微アルは、アルコール度数別の棚割りを徹底し、低アルコールアイテムとノンアル、微アルが、線を引きつつも隣り合うようにゾーニングする。

日本酒は大吟醸をメインにするが、普段から日本酒に注力しているなら、押しの一品を思い切って出す。いわゆる地酒では、スペック以上にこういったお勧めのパッションが重要で、購買のきっかけは売り手(料飲店や小売店)の熱意であることがままある。

少人数の家飲みに極上のウイスキーハイボール

親子や兄弟、親しい友人などと少人数で飲むシーンを狙うなら、700㎖2000円以上のワンランク上のウイスキーをお勧めする。飲み方はハイボールを押し、マストアイテムとしてロックアイスと強炭酸水を示す。

商品は国産では比較的供給が安定しているサントリーのリザーブ、ローヤル、碧Ao。ニッカはセッション、スーパーニッカなど。スコッチはジョニーウォーカー黒ラベル、バランタイン12年、シーバスリーガル12年ミズナラなどのブレンデッドの他、グレンフィディック12年やラフロイグ10年、グレングラント・アルボラリスなどのシングルモルト。バーボンはノブ・クリーク、ジェントルマンジャック、ワイルドターキー8年などと同等クラスを揃えたい。

売場展開

売場には商品のテイスティングコメントやコンテストでの受賞歴など、それぞれの商品の説明ツールを設置する。そしてコーナー全体に「いい酒はハイボールでも絶対うまい」とメッセージを出すトップボードを掲げる。

手土産ニーズに応える地元の酒

自身の実家や配偶者の実家への帰省する際、「手土産に地元の酒を」と考える人は少なくない。この時季には地元の酒蔵の720㎖1500~2500円くらいの手土産にしやすい商品をそろえ、前に出す。酒は日本酒に限る必要はなく、焼酎、梅酒、ユズ酒など幅広くチェックする。

また、最近はクラフトビールやワインの醸造所が次々にオープンしている。農業法人が地元の農産物で焼酎造りを始めたり、リキュール特区では特産のフルーツを使った商品を開発したりしており、これらの取り扱いも探っておきたい。

売場展開

8月上旬から20日ごろまで、ひな壇もしくは平台で地元の酒を特集する。「地元の酒で乾杯、手土産にもどうぞ」とメッセージを添え、家飲み需要とギフト需要を両にらみで展開する。

複数のビール瓶
自動的に生成された説明
地元の酒は日本酒だけでなくビールやワイン、特産の農産物まで視野を広げる

トレンド商品

薬草酒

クラフトジンの人気の高まりは酒飲みにボタニカルという言葉を覚えさせた。そしてスピリッツにいろいろなハーブやスパイスを浸漬したり、蒸留したりすることで、その香気成分を抽出し、魅力的な味わいを作り出すのだと知った。

そこからボタニカルを活用した酒にはどんなものがあるのかと探ってみれば、「カンパリ」や「シャルトリューズ」などのリキュールやワインベースのベルモットがすぐに見つかる。国内に目をやれば「養命酒」や「保命酒」「陶々酒」があり、梅酒やユズ酒もボタニカルな酒の仲間だと気づく。これらはどれも滋養強壮のために毎日飲む薬酒としての性格もある。

8月は暑さで疲れが溜まって抜けない夏ばてや、冷房による身体の冷えで調子がいま1つという人、コロナ対策で免疫を高めたいという人が大勢いる。

はっきり意識していなくとも、漠然と体調に不安を感じている人まで含めたら、相当な数に上るのではないか。ナチュラル素材から造られた薬草酒はそんな気持ちに寄り添う。

薬草酒はこれからじわじわと盛り上がってくる。心身を整えたい気持ちに寄り添う酒のコーナーを設け、薬草酒を特集する。

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