続く値上げ局面にはそれに見合う価値の商品化が必須|「これは押さえたい」惣菜編・2023年8月

2023.06.30

2023.07.01

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

8月の主なイベント、行事は、夏土用の間日(1日、2日、6日)、土用明け(7日)、青森ねぶた祭(2日~7日)、秋田竿燈祭(3日~6日)、山形花笠祭(5日~7日)、仙台七夕祭(6日~8日)、七夕(7日)、立秋(8日)、よさこい祭(9日~12日)、山の日(11日)、盆の迎え火(13日)、終戦記念日(15日)、送り火(16日)、処暑(23日)、焼肉の日(29日)。

東北地方では夏祭りが開催されインバウンドを含め多くの観光客が押しかけることが予想されるため、おにぎり、スナック類など売り逃しがないようにしたい。夏土用の間日は土用の期間の中で特別設けられた日。6日の「土用の間日」にまたうな重、うな丼を訴求したい。昔は土用の間日は土を動かすことはいけないとされていた。

8月は16日までは行事、イベントが多く人の動きは盛んだが、16日を過ぎると普段の生活に戻る。この時季から朝夕の気温が下がるため、おでんや炊き込みご飯など「秋の味覚」を訴求する。

2022年8月の家計消費で需要が伸び、前年を上回ったゴールデンカテゴリーは弁当(103.56%)、寿司(101.00%)、おにぎり(107.10%)、調理パン(102.69%)、主食的調理食品(106.69%)、天ぷら、フライ(102.05%)、シューマイ(103.23%)、ギョーザ(102.86%)、焼き鳥(107.03%)

8月に需要の変化はあまりないが、前年を上回ったカテゴリーは調理食品(103.86%)、8月に需要が下がったが、前年を上回ったカテゴリーはうなぎかば焼き(105.76%)、コロッケ(106.41%)、カツレツ(103.39%)。

8月に前年を下回ったカテゴリーはサラダ(99.21%)、ハンバーグ(97.10%)、惣菜材料セット(94.04%)。

「ゴールデンカテゴリー」の弁当(103.56%)、寿司(101.00%)、おにぎり(107.10%)、調理パン(102.69%)、主食的調理食品(106.69%)、天ぷら、フライ(102.05%)、シューマイ(103.23%)、ギョーザ(102.86%)、焼き鳥(107.03%)

総体的に米飯、スナックが好調であった。人が動けば物が動く。今年はさらに多くの人の移動が予想されるため積極的に販売する。

子どもが夏休みであるため、寿司盛り合わせ、おにぎり盛り合わせ、揚げ物盛り合わせ、焼き物盛り合わせ、中華盛り合わせも品揃えしたい。ギョーザ、シューマイなどの中華メニューは内食需要、節約志向が高まる盆明けに「中華フェア」を実施するとよい。

「苦戦したカテゴリー」はサラダ(99.21%)、ハンバーグ(97.10%)、惣菜材料セット(94.04%)。サラダは青果売場の「カット野菜」と競合する。カット野菜の価格とあまりかい離しないようドレッシングなしの野菜サラダも品揃えしたい。ハンバーグ、ミートボールは盆明けに訴求する。

いままで通りの品揃えや販売方法では売上アップはそれほど期待できない。前年比105%以上は確保したい。安さのイメージを与えるためのばら販売、少量パックの品揃え。平均単価アップのために、手間をかけ付加価値を高めたり、こだわり食材を使い付加価値を高めたり、増量パック、大型パック、盛り合わせパックの販売に力を入れたい。

寿司

寿司は8月に需要が伸び前年もクリアしたゴールデンカテゴリー。特に盆には予約販売を強化し売り逃しがないようにしたい。気温が高いためにぎり寿司だけでなく、助六寿司、いなり寿司、巻き寿司、サバの押し寿司、大阪寿司など生のたねを使わない寿司の品揃えも増やす。

売場づくり

にぎり寿司の品揃えは1人前が主流だが、特売商品でも2人前の品揃えしたい。2倍の量を盛り合わせることで3人前にも対応できる。価格設定は1人前の2倍で安くする必要はない。

1人前598円の商品が2人前1196円(598円×2)。子どもを含め2人以上で食べることもあると考えると買い得感がある。製造効率も2人前の方が高い

天ぷら、フライ

天ぷら、フライは13カ月連続で前年をクリアしている。油、小麦粉、食材の値上げから揚げ物は惣菜売場で買う習慣が高まっている。盆中は天ぷら盛り合わせ、揚げ物の盛り合わせの品切れに注意する。

売場づくり

揚げ物は気温が高くても比較的日持ちがする。揚げ物以外の食材も盛り合わされるオードブルについて衛生管理に注意したい。原料供給が安定しているエビ天、エビフライ、エビチリも売り時であるためSKU、売場を広げて大量陳列する。

うなぎかば焼き

今年の「土用の丑」は7月30日で、「二の丑」はない。しかし、6日が「土用の間日」、7日が「土用明け」であるため、6日にうな重、うな丼をもう一度販売したい。昨年は6月よりも重要が高いため売り逃しがないようにしたい。

売場づくり

予約販売がないため「高額うな重」の売上げはあまり期待できないため、うな丼、ミニうな丼、うな丼&丼などを中心に販売する。盆の寿司盛り合わせ、オードブルにもうなぎかば焼きを盛り合わせたい。

調理パン

調理パンは夏に需要が落ちると思われがちだが昨年8月は大きく需要を伸ばし前年もクリアした。3月に次ぐ2番目の需要高であった。

売場づくり

夏であるため「生もの」を使ったサンドイッチや調理パンは縮小して、加熱食材を使ったハンバーガー、ロングロール、惣菜パン、ピザの販売に力を入れる。ハンバーガーは人気であるため品切れに注意。

トレンド商品

盆の法界膳(法界折)

地方によっては墓や盆棚のお供えに「法界折」を準備する。惣菜売場でも郷土料理に合わせた加工食品や惣菜を品揃えする。参考までに南信州の精進料理食料を買い、お膳に盛り合わせてみた。料理は精進揚げ盛り合わせ、赤飯またはそうめん、煮しめ(高野豆腐入り)、おはぎ、花豆の煮豆、ブドウ、ゆでトウモロコシ、らくがん、水菓子など。

法界折は手間がかかるため、内容を吟味しながらアウトパックで準備するのもよい。予約販売も積極的に行う。

帰省のおもてなし膳(おもてなし折)

帰省客は昔懐かしい「郷土料理」に期待している。「おもてなし膳(折)」も少しずつでもよいから盆に準備したい。盛り合わせ折はアウトパック商品で、単品料理はインストアで製造したい。

帰省客、訪問客への「おもてなし膳」も南信州の郷土料理を買い集めてお膳に盛り合わせてみた。お煮かけそうめん、馬刺し、コイの甘露煮、五平餅、煮しめ、塩イカの酢の物、花豆の煮豆、キュウリの梅あえ、まんじゅうなど。郷土料理は催事場に冷蔵平ケース、平台を準備して生鮮食品を含め1カ所で販売するのもよい。

赤飯、おこわ、おはぎ

米の調理法は2種類ある。水を入れて釜で米を炊く「姫飯(ひめいい)」と、蒸し器で蒸す「強飯(ごうはん、ごういい)」がある。餅も強飯に含まれる。

昔から盆には日持ちのする「赤飯」「おこわ」「餅」などの「強飯」を盆棚にお供えしたり、食べたりする。地元の老舗の餅店の商品を仕入れて販売するのもよい。注文が殺到するので前もって日別の計画数量を提示する。

おでん

暑い夏でもチルドのさつま揚げ、ちくわ、かにかまぼこなどの魚肉練り製品の売上げが好調だ。盆を過ぎれば「秋の味覚」を訴求する。おでんは、野菜やこんにゃくなどを多く使った「野菜おでん」とすれば、比較的安価で提供できる。

惣菜売場でも煮しめとおでんの中間のような野菜おでんの販売に力を入れたい。1人前だけでなく2人前ファミリーパックも品揃えする。アウトパック商品で品揃えするとよい。盆前までは「冷しおでん」、盆明けからは「ホットおでん」を訴求する。

注力するアイテム

惣菜の需要は強いが、度重なる値上げで買い控えが起きているのが気になる。その半面、週末などにはオードブルなどの高額商品がよく動くようになった。普段は安く、特別な日には高額商品も買い求めるという売れ方に変わっている。曜日による変化や売価など、売場の商品は対応できているだろか?

原料の値上がりもあり、利益をカバーできるインストア製造商品を売り込むことが大事。天ぷら商品、手作りの豚カツ、唐揚げなどの揚げ物、スチームコンベクションを使った手作りのチキン商品が良く売れている。

「天ぷらの盛り合わせ」「チキンステーキ」など、夏に強い手作り商品を手ごろな価格で売り込むことが必勝法。特に手作り商品を使った弁当商品の開発が決め手となるはずだ。  

いままでの手作りヒットレシピをフル稼働させるときが来ている。レシピを開いて商品見直しのときでもある。

いまは、値上げしてもそれに見合う商品価値がある商品をお客は強く求めている。それが良く売れている。だからこそ自店製造、自店販売の惣菜の基本、作り立てと、おいしさ、価格の関係を立ち止まって見直す必要がある。

店の商品の20%はそうした手作りの商品が欲しい。売れる惣菜とは何か? 基本に帰る時でもある。

惣菜の売上げが思うように伸びないのは、値上げに見合った価値が商品に伴わないからだ。それが値上げの買い控えの大きな理由である。

盆商品はアフターコロナで人出も回復するとみられるが、中型商品中心になるだろう。惣菜売場で生寿司を担当している店では、盆の商品の「生寿司」の盛り合わせが爆発すのではないかと思われる。特に地方では対応に注意する。

大型から小型パックの比率など、オペレーションも検討する。たねも値上がりしているのでメニューの研究も必要だ。

また、夏休みで子どもたちが休みなので、昼食需要とスナックメニューに注意して、お好み焼き、たこ焼き、フライドポテトなどのスナック的商品を欠品しないようにチェックする。

今年の夏の惣菜の売上げは、コロナ後だけに跳ね上がる可能性があるので、このチャンスを生かして、新しい売り込み商品の開発に力を入れるなど、自店製造惣菜で利益を出す売場づくりを考える年にしたい。

競合となる飲食店に負けない技術を持つ時代が来たようである。

大盛り冷やしうどんと豚丼セット

暑い盛りのときには、強気に「冷麺商品」を続けて売り込むことだ。ただし、メニューを次々と変えて商品に飽きが来ないようにすることが必要。セットの仕掛けでメニューを変える。

麺は冷凍麺で伸びにくいものを使う。細麺、中太麺、太麺など変化させて、添えるメニューの「米飯商品」を変えることでさまざまにメニューに変化させることができ、飽きさせない。

今回の米飯は「ミニ豚丼」がセットされているので重量もあり、夕食用にもなる。豚こま切れを用意して、肉の重量の20%の麺つゆ(希釈用)を加えて良く揉み込んでから、スチームコンベクション、またはフライパンで短時間で焼き上げ、業務用の豚丼のたれをまぶして仕上げる。

なぜ、業務用を使うのか。「手作りはだめなのか」とよく聞かれるが、業務用を使う理由は、たれが時間経過で落ちしてしまうと売れなくなり、ロスになるからである。たれ以外は手作りで利益を確保すること。

ゴーヤーの健康サラダ

売場に夏の投入。商品は沖縄の夏イメージがあり、おいしい苦みが特徴だ。ゴーヤーは徐々に日本全国に認知され、青果売場でも量販されるようになった。ゴーヤーというと「ゴーヤーチャンプルー」が連想されるが、沖縄や九州では、昔から酢の物やサラダ野菜としてよく食べられている。

ゴーヤーは縦半分に切り、中の種を取り、薄めにスライスをしてから、塩をまぶして揉み、水洗いして使う。

トレーにレタスを敷き、玉ネギのスライスを敷き、その上に揉んだゴーヤーをたっぷりと盛り付け、カツオ節を多めにトッピングする。和風しょうゆドレッシングを添える。

最近のゴーヤーは苦みが少なく食べやすくなっている。ニガウリと言われる細めの物は苦みが濃い場合があるので、太めのゴーヤーを使うようにするとよい。パクチーと同じで、始めは苦手でも、いずれ好むようになる人が多い野菜でもあるので、新しいサラダとして売り込みたい。

冷やして美味「夏煮物9品」

この煮物の大きな特徴は、いま大活躍しているスチームコンベクションで作る(和風煮物)であること。

よく煮物は、煮崩れして見栄えが悪くなるが、スチームコンベクションで煮ると煮崩れがなく、美しい商品ができる。今回は野菜など9品の材料で紹介するが、4~5品で作るとさらに手が掛からない。

里芋、糸こんにゃく、シイタケ、ゴボウ、大根、高野豆腐、ニンジン、サツマ揚げ、トッピングのインゲンマメの9品目。

作り方は、濃い目のだし汁とだししょうゆ、または麺つゆを少し濃い目の味に仕上げる。冷やすと味が薄く感じるからだ。

材料の野菜は固めに下ゆでする。全ての材料をスチームコンベクション用の鍋に入れ、少し多めのだし(作っただし汁)と合わせてふたをする。煮物はスチームコンベクションで200℃~250℃の温度で煮込む。

中の温度が100℃になるのに時間が必要なので、ガスの火よりは時間がかかる。ただ煮崩れを心配しなくても良いので、手がかからない。時々チェックして煮込み、野菜が柔らかく煮えたら取り出して、そのまま室温で冷まし、冷蔵庫で一晩冷やしながら味を浸み込ませる。トレーに形よく盛り付ける。

盛夏の「冷製オードブル」

惣菜で原料として使える材料を、冷製オードブルとして詰め合わせた商品。手がかかりそうな感じだが、手作りしているのは写真右の「豚冷しゃぶ」だけである。

材料は寿司エビ、タコのスライス、スモークサーモン、サラダチキンのスライス、そして手作りの豚しゃぶと後はサラダ用野菜を使って作る。

トレーにサラダ用のグリンリーフを敷き、その上にボリューム感を出すために、スライス野菜(玉ネギ、紫キャベツなど)を載せて土台を作る。

トレー上方に寿司エビ、タコのスライス、スモークサーモンを盛り、下半分にサラダチキンをスライスしてたれをかける、またはドレッシングの小袋を添付する。

右側に豚バラ肉を湯がいて甘辛たれをまぶした冷しゃぶを盛り付けている。仕上げに、ネギの小口切りなど香味野菜を刻んで散らす。手がかかる豚しゃぶの代わりに人気のローストビーフを使ってもよい。豪華になり、手もかからないのでお勧めだ。作業工程もぐっと簡単になる。新しい盆のオードブルの提案商品とする。

ソースたっぷり手作りハンバーグ

よく「手作りのハンバーグを売り込みたいので、売れるハンバーグを教えてほしい」と頼まれるのだが、惣菜のハンバーグをおいしく、レストランのハンバーグのようにしたいとがんばっても、ほとんど売れないことを自覚する必要がある。

惣菜のハンバーグには、特別な条件がありこの条件を満たさない限り、お客に買ってもらえないことを胸に刻み込むことだ。

それは「冷めて、冷たくても食べて柔らかいこと」「肉の歯応え感があること」「デミグラスソースがたっぷりとあること」の3条件である。もちろん、値段は安い方が良い。

シェフが腕によりをかけて牛肉を使い玉ネギを炒めて作れば作るほど、売れない結果が待っているのは残念だが、牛肉は冷めると硬くなってしまう。これが売れない原因となる。

惣菜のハンバーグは、鶏肉と豚肉、そして風味付けとして、牛脂、玉ネギ、パン粉で作ると良い。後は一般的なレシピで作る。冷めても固くならないハンバーグであることが重要だ。

これをスチームコンベクションで焼き、たっぷりのデミグラスソースと合わせる。目玉焼きを添えるとさらに良くなる。ソースはたっぷりと多めの方が人気である。

鰻(うなぎ)まぶし

うなぎの原料が少なくなって原価が高騰しているが、それでも暑い盛夏にはうなぎご飯が食べたい。そこで高価なうなぎご飯は長焼きの「うなぎご飯膳」として売り込み、低価格商品として「うなぎまぶしご飯」を提供する。高額商品と低額商品の「高と低」で売り込むのが効果的だ。

低額で販売する商品で使用するうなぎは、惣菜の寿司商品で使用するスライスうなぎとする。業務用のうなぎのたれを使って、熱いご飯と混ぜて、うなぎたれの味がする味付けご飯を作る。作るときは必ず温かいご飯を使うこと。

スライスうなぎは、スチームコンベクションで軽く温め(焼いてはいけない。縮んで小さくなり味も落ちる)、トレーにうなぎたれと合わせたご飯を盛り付けて錦糸卵を振り、その上に温めた上でたれを塗ったうなぎスライスを形よく並べる。刻んだ小ネギをトッピングする。

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