消費金額急伸の秋果実の押さえがポイント|「これは押さえたい」青果編・2023年8月

2023.07.10

創風土パートナー 代田 実

8月の青果商売を実践する上で、押さえておくべき最大の重点商品は消費金額が急伸するナシ、ブドウなどの秋果実になる。

この2品目は8月の1世帯当たり支出金額が、青果全品目中ブドウが1位、ナシが3位(8月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率の表参照)と消費ボリューム自体が大きいため、うまく販売することにより売上げに直結する。

この他、野菜ではトマト、キュウリ、ナスなどの果菜類に加え、厳しい暑さの中消費が伸びるネギ(小ネギ)、ミョウガ、大葉など薬味野菜をしっかり売り込むことが青果全体の売上げに貢献するだろう。

また8月最大のマーケットチャンスである「旧盆」については、帰省する都市部立地の店舗での帰省ギフト、帰省してくる地方部立地の店舗ではおもてなしごちそうメニューを展開ポイントにし、事前準備をしっかり行った上で売場展開を行いたい。

8月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2022年8月全国二人以上の世帯の支出金額

ブドウは生産量の多い上位4品種を軸にバラエティある品揃え

高単価人気品種でブドウの消費拡大をけん引しているのがシャインマスカットだが、栽培面積では全体の約4分の1を占める巨峰が最も多く、以下、シャインマスカット、ピオーネ、デラウエアの順となっている(2020年特産果樹生産動態等調査)。

この上位4品種でブドウ栽培面積の7割以上を占めることから、ブドウの売場展開を行う際は、この4品種を軸にその他、特徴のある品種を旬に合わせバラエティある品揃えを行うとよい。

具体的には上位4品種に次ぐ生産量があるキャンベル、ナイヤガラの他、優れた食味で根強い人気のある藤稔、ナガノパープルも品揃えしたい品種だ。

また、8月はブドウの生産量が日本一の山梨県の場合、多くの品種がハウス栽培→露地栽培に切り替わる時季に当たる。天候によってはこの切り替えで食味、品質が一時的に不安定になることや価格が変動する場合もあるので、産地、品種ごとに品質と価格のバランスを見ながら販売品種、産地を決めていくとよいだろう。

スピード感ある商売がポイントとなるナシの販売

8月の家計支出が前月7月の10倍以上に跳ね上がるナシの商売は、売場展開のスタートダッシュが最大のポイントとなる。

旧盆を控えた7月下旬~8月上旬になると、九州~関東にかけての各産地が一斉に早生種の幸水を出荷し始める。このタイミングを逃さず、一気に売場拡大が出るように産地、出荷情報を小まめに取っておくことが必要だ。

また、この時季、出回る幸水は果肉がやわらかく、ジューシーな食感を楽しめる半面、日持ちしにくいという課題を持っていることを前提に商品管理していく必要がある。

特に出始めの商品は産地によっては追熟を促す薬剤処理を行っているところも多く、特に日持ち面での不安が大きいので注意が必要だ。売場在庫を定期的に売り切り、商品回転を良くすることで品質低下品が売場に並ぶことがないよう品質管理を行うことが重要だ。

このように8月のナシ販売に関してはスタートダッシュと商品回転というスピード感のある商売の実践が商売の結果を出すポイントとなる。

「旧盆」売場は助走期間も含め早めに展開

今年の旧盆期間は8月13日(日)~16日(水)だが、その前の11日(金曜日祝日、海の日)と12日(土)も含めた6日間を盆休みとする企業が今年は多くなることが予想される。

従って、この期間を中心に売場展開計画を組むことが現実的だ。具体的にはその前週(前々週)の週末からお供えセットや盆用品の売場展開を助走期間として品揃えし、この盆期間に最大パターンで展開を行い自店で購入していただけるよう見せておくことがポイントとなる。

また、一般的には青果部門扱いとなることが多い切り花は、コンセッショナリー扱いの店も含めて、盆期間は年間最大のマーケットチャンスとなるので、花ばけつの水の管理や売場整理をしっかり行い切り花の鮮度低下を防ぎたい。

併せて売れ残るとロスになってしまうお供えセットは腹八分の発注を行い、品薄になってきたら写真のように売場販売商品を盛り合わせて、インストアでの商品化を行うとよい。その際使用する、黒色のトレーなどの資材は事前に準備しておくことが大切だ。

また、都市部立地の店舗では帰省していたお客が盆明けに戻るのに合わせ、家庭の常備野菜を買いやすい単価規格で量販するとよいだろう。写真の例のように果菜類のばら、盛り売りや、8月の家計支出金額が思いの外多い玉ネギ、ニンジンなどのばら売りを行うのもよいだろう。

また、盆明けにしばしば起こる果菜類の単価ダウンが起こったときにはボリュームアップ規格を作って買い得感を打ち出すことで単価ダウンによる売上減を最小限に食い止められる。

果菜類のばら、盛り売り例
玉ネギ、ニンジンのばら売り例
単価がダウンしたときに有効なボリュームアップ規格

プラスアルファの売上げを作る「薬味野菜」のコーナー展開

年間で最も暑さの厳しい8月は食欲も衰え、夏ばての原因ともなる時期だ。それをマーケットチャンスとして捉え、プラスアルファの売上げを作る施策としてぜひ実施したいのが食欲を誘う「薬味野菜」のコーナー展開だ。

薬味野菜の定番「ネギ(小ネギ)」を中心にミョウガ、大葉、ショウガなどをコーナー展開する。これら「薬味野菜」の多くは軟弱野菜で暑さに弱いため、写真のように冷蔵ケースでの展開が良いだろう。

また、旧盆期間のように来客のおもてなしマーケットが存在する期間には生ワサビなど、ちょっとぜいたくな薬味野菜をスペース拡大展開するのもよいだろう。