気温も高くアウトドア需要も引き続き必要、焼きメニューの提案などで工夫を|「これは押さえたい」精肉編・2023年9月

2023.07.31

月城流通研究所代表 月城聡之

9月は暑さのピークは超しているものの、外気温はかなり暑く、地域によっては豪雨や洪水、台風の影響があり、日常生活が天候によって左右される。

最近は、台風が来なくても線状降水帯の影響が各地で大雨の影響が出ており、スーパーマーケット(SM)も営業できないという非常事態も起きている。

特に、水害が起きそうな店舗に関しては、従業員の身の安全を第一に考えた対応を優先する必要がある。その上で、天気に合わせた、ウェザープロモーションを考えた売場づくり、商品作りは各店舗でしっかりと考えて対応したい。

台風に備えた「台風コロッケ」というのが、台風が来る直前に大量に売れるという、ネットのパワーワードとして流行し、実際によく売れた実績もある。

悪天候となる前には、買物に行かなくても食べられる商品や、カセットコンロで焼いて食べられるものなど提案していきたい。また、数日分の買物を促したり、大型パックの販売も悪天候時の施策となる。

和牛子牛価格下落と訪日外国人増加

和牛の子牛価格が8年ぶりに1頭60万円を割り込んだ。

コロナ前のインバウンドや輸出が盛り上がっていた2015年以来の下げ相場となっている。子牛価格であるため、店に届くまで2年弱あるため、いまの相場に直結する訳ではないが、今後、和牛の価格が下がっていく要素ではある。

ただし、輸入している穀物や稲わらなどは、円安の影響を受けているため、飼料は直近だけでも10数%上昇している。

配合飼料や粗飼料も高止まりが続いているため、下げ要因は子牛の価格しかないと思ってよい。今年に入り、和牛の相場自体もやや下がってきており、以前に比べると購入しやすくなっている。

しかし、それ以上に消費者の冷え込みは大きく、工夫がなければなかなか購入につながらないのも事実である。

一方で、コロナが5類になったことで、日本も経済が動き始め、海外からも徐々に観光客が増えていることは、電車やニュースを見ていても分かる。海外観光客に関しては、円安の影響で、かなり安く日本旅行ができるとあって、急激に増加している。

訪日外国人はコロナ前の19年5月に277万人だったのが、コロナで落ち込み、ようやく昨年14万人まで回復。今年は約190万人と大幅に来日している。

経済が動き始めたことで、急激にものが売れ始めることはもちろん、海外から見た日本は日本人が物価が安くて旅行しやすい東南アジア諸国へ旅行する感覚に近い。

東南アジアへ旅行するときは、現地の食を楽しむと共に、少しぜいたくもできる感覚が旅行者にはある。同様に日本へ渡航してくる外国人ターゲットにした、和牛販促は極めて有効であると考えられる。

日本の食文化は、海外でも高く評価され、寿司やラーメンとともに焼肉も人気のメニューの1つとなっている。

店では、ジャーキーやおつまみメニュー、ローストビーフなどが、外国人の土産購入と共に、ホテルの部屋飲み需要として購入されるケースも増えている。

日本のSMのクオリティの高さや精肉、惣菜のバリエーションの豊かさは、世界からも注目されるほどである。

特に、観光地が近い店に関しては、和牛を使用したローストビーフや焼き上げグリルなども訴求すると売上げに直結する。その場合は、英語でのPOP表記があると分かりやすい。

23年はコロナからやや解放され、日本人はアウトドアや旅行に出かけ、円安の時期に訪日する外国人多い、環境が大きく変化している年である。また、天候にも大きく左右されがちな環境となっており、外部環境を意識した売場づくりが必要である。

9月はシルバーウィークの3連休もあり、アウトドア需要も引き続き必要であるため、焼きメニューの提案や売場づくりは10月ごろまで残しておくと良い。キャンプ需要は外気温が下がってくる秋がシーズンの山になるため、いましばらく残しておくことがポイントとなる。一方で、秋冬メニューの顔見せも必要となる時季であるので、たれメーカーなどとも協力しながら売場の構成を検討していくと良い。

牛肉

黒毛和牛3点盛り (モモ、バラ、カタロース) 400g 2980円

9月6日の「黒の日」、16日~18日のシルバーウィークにも使える黒毛和牛盛り合わせを展開する。

一時期よりも相場が落ち着いてきている黒毛和牛を使用し、サシの入りやすい場所と赤身の部位をミックスし商品化。

モモ部位は切り落とし用として仕入れをしている企業が多いが、モモ部位でも比較的柔らかい場所を焼肉部位として活用することで、安く販売していた部位について、一部単価を上げることができる。

希少部位を焼肉用にするというのも、部位の構造と知識があれば可能となる。

バラやカタロースは脂肪が多い部分や肉質が硬い部分がある。硬い部分は切り落としにして、柔らかくおいしい部分や脂肪が奇麗に入っている部分は焼肉に商品化する。

牛肉は1つの部位の中でも、異なる肉質や食感を味わうことができるため、肉の特性を知ることが、おいしく食べてもらう、また商品をうまく作れるようになる基本である。

セット商品は、見た目や色味が異なる部位を使用すると、見た目にもおいしい商品化ができるため、商品化する場所にもこだわってセット販売してもらいたい。

豚肉

米国産豚バラ使用サムギョプサルセット 780円

豚バラを同梱したサムギョプサルミールキットを手軽に販売する。

豚バラ、キムチ、コチュジャン、豚バラの下味のたれ、サンチュを同梱するだけの簡単ミールキットは、店内加工でも可能。

原材料表示を添付シールで貼る必要があるが、販促シールを企業で1つ作れば簡単にミールキットを作ることができる。

ミールキットを使う客層は、料理に詳しい主婦層ではなく、簡単に必要分調理ができれば良いという需要を持つ、単身世帯や2人世帯である。そのため、店内をたくさん回遊して調味料を集める手間を省いた商品がポイントであるため、タレから野菜まで同梱してあることがターゲットにとっての商品を購入するメリットとなる。

また、全ての商品を単品で購入するよりも、1人分であれば、ミールキットを購入した方が安くなるのも、メリットであるため、価格設定は重要な要素となる。

肉惣菜

黒毛和牛ハンバーグとポテトセット 498円

肉惣菜で人気が出てきているのが、夕食の1品となるハンバーグが入った商品。

グリドルで香ばしく焼き上げたり、スチームコンベクションでふっくら加熱したり、商品によって加熱工程を変えると、精肉ならではのこだわりの肉惣菜となる。

今回は黒毛和牛ハンバーグとポテトセットを提案する。黒毛和牛ハンバーグは業務用でも良いが、店内加工で和牛ひき肉から製造すると、おいしく仕上がる上、コストも抑えることができる。副菜はコストがかさむ要因でもあるため、安価なポテトにチーズをトッピングして付加価値をつけると良い。彩りのパセリを振ることで、安価な商品から少し見た目のおいしさが増す。

店によってはオペレーションで商品化を判断している場合も少なくないが、そもそも商品がおいしくなければリピートにはつながらない。たれやトッピングなどにもこだわって商品化を行うと、息の長い商品に成長するので、惣菜部門とは異なる精肉部門ならではのこだわりをしっかりと商品に出していくと良い。

冷凍精肉

ベーコンと彩り野菜のバジルパスタのもと 498円

冷凍精肉コーナーが充実してきているため、目新しい商品も取り入れて展開する。

普段の食生活の中で、パスタを食べる機会は、女性を中心に比較的多く、バリエーションも付けやすいメニューの1つである。

ベーコンと野菜が1つにセットされたキットは、家庭に常備されているパスタをゆで、このキットとソースを絡めて完成する。冷凍食品でもなく、完全に一から作る商品でもないが、下準備がいらない新しいタイプの簡便食品である。

ここしばらく、冷凍精肉コーナーのシリーズ商品が増えてきており、バリエーション豊かで野菜の彩りなども精肉コーナーで表現できるようになってきている。奇麗な冷凍コーナーが作れるよう心がけたい。

冷凍コーナーのポイントの1つに、POPでのこだわりの表現がある。冷凍コーナーは比較的プライスPOP以外の販促POPなどが付けにくく、商品のこだわりを表現しにくい部分が課題である。

そのため、B7などの小さめのPOPに、要点だけを記載したPOPをつけると良い。

秋冬メニューを意識した残暑売場づくり

8月の盆過ぎから9月にかけて、たれメーカーのアイテムは春夏商品から秋冬商品へ、在庫の入れ替えを始める。特に、冷しゃぶをしゃぶしゃぶに変更することで、売場の印象ががらっと変わる。

外気温は夏日が続くものの、徐々に秋の先取りを行っていく。

お肉屋さん手作り大葉鶏つくね 100g当たり158円

秋冬メニューの定番の鍋は、まだ気温が高く時期尚早であるが、鍋に使用するつくねを焼きメニューとして提案することで焼きメニューの提案を行うことがる。

「焼き用のつくね」は、業務用のつくねのもとを使用したり、麺つゆとパン粉を混ぜてオリジナルのつくねを手作りしたりするのも良い。

原材料表示が義務であるため、業務用を使用しない場合は適切な表示をするように注意が必要である。業務用の場合でも、裏貼りシールや販促シールをきちんと添付しておく。

商品化は、大型のスプーンで1つ40~50g程度の大きさに小分けし、大葉にのせて商品化する。

居酒屋でも焼き鳥メニューなどの1つに、月見つくねがあるように、卵黄に合わせて食べる提案ができる。焼鳥のたれの個袋があれば、照り焼きつくねの提案も可能となる。

同様に鍋用だんごもアレンジメニューとして、焼きだんごやミートボールなどの提案ができる。各社の鍋メニューのテスト販売も兼ねて焼きメニューでの訴求を行い、アイテムの認知度を上げていく。

9月は2学期が始まり、弁当を再開するタイミングでもあるため、弁当にも使えるミートボール提案は、リピートにつながる訴求となる。アイデアを膨らませて1つの商材から2つ、3つのメニューが消費者に提案出来るよう、普段から研究をしておくと良い。