秋の味覚を打ち出す弁当対策を|「これは押さえたい」惣菜編・2023年9月

2023.08.03

日本フードサービス専門学院学院長 林 廣美
城取フードサービス研究所 城取博幸

9月の主なイベント、行事は、新学期スタート、防災の日(1日)、重陽の節句(9日)、十五夜(9中旬)、シルバーウィーク(中旬)、敬老の日(第3月曜日)、秋の彼岸(下旬)、秋分の日(23日)、社日(下旬)。

9月1日は「関東大震災」、あるいは台風シーズンにちなみ「防災の日」となった。「重陽の節句」は、「菊の節句」とも呼ばれ菊酒を飲んだり、栗ご飯を食べたりして無病息災や長寿を願う。「社日」は、五穀豊穣を祈願する農耕儀礼で、神社や神棚におはぎ、ぼた餅や米、酒を供える。

「重陽の節句」には菊花入り漬物、栗ご飯のもとを訴求。「十五夜」には月見団子、彼岸はおはぎ、赤飯、おこわ、「社日」はおはぎ、ぼた餅を訴求する。一般的に餅を小豆餡で包んだものがおはぎ、ぼた餅、きなこやごまなどをまぶしたものをおはぎと呼ぶ。9月は和菓子がよく売れる月であるため売り逃しがないようにする。

2022年の家計調査で9月に需要が伸び、前年を上回ったゴールデンカテゴリーはサラダ(101.38%)、ハンバーグ(107.41%)、9月に需要の変化はあまりないが、前年を上回ったカテゴリーは他の主食的調理食品(106.48%)、カツレツ(102.84%)、天ぷら、フライ(100.50%)。

9月に需要が下がったが、前年を上回ったカテゴリーは調理食品(100.69%)、弁当(100.14%)、おにぎり(105.46%)、焼き鳥(101.97%)。

9月に前年を下回ったカテゴリーは寿司(92.26%)、調理パン(96.70%)、うなぎかば焼き(88.61%)、コロッケ(99.39%)、シューマイ(95.65%)、ギョーザ(93.64%)、惣菜材料セット(73.27%)。

物価が上がる中、いままでどおりの品揃えや販売方法では売上げアップはそれほど期待できない。前年比105%以上は確保したい。安さのイメージを与えるためのばら販売、少量パックの品揃え。平均単価アップのために、手間をかけ付加価値を高めたり、地域食材を使い付加価値を高めたり、週末には増量パック、大型パック、盛合せパックの販売に力を入れたい。

需要が伸び、前年をクリアしたゴールデンカテゴリーは、サラダ(101.38%)、ハンバーグ(107.41%)だけであった。秋のサラダは葉物野菜の「ドレッシング系サラダ」から、根菜類の「マヨネーズ系サラダ」に変わる。ポテトサラダ、サツマ芋サラダ、ゴボウサラダの販売を強化する。ハンバーグ、つくね、ミートボールなどのミンチ料理は好調であっため小型サイズを中心にコーナー化して販売する。

前年を上回ったカテゴリーは弁当(100.14%)、おにぎり(105.46%)、焼き鳥(101.97%)、他の主食的調理食品(106.48%)、カツレツ(102.84%)、天ぷら、フライ(100.50%)。寿司を除く米飯類、コロッケを除く揚げ物が前年をクリア。おにぎりは好調であるため「新米」のおにぎりを販売したい。スナック類はピザ、グラタン、中華まん、スープ、おでん、鍋類の販売を強化したい。

苦戦したカテゴリーは寿司(92.26%)、調理パン(96.70%)、うなぎかば焼き(88.61%)、コロッケ(99.39%)、シューマイ(95.65%)、ギョーザ(93.64%)、惣菜材料セット(73.27%)。寿司は生寿司の他に、いなり寿司、巻き寿司、助六寿司、押し寿司など日持ちのする寿司を訴求する。点心類はシューマイ、蒸しギョーザ、水ギョーザなど蒸したり、煮たりする「ホットメニュー」を訴求したい。

弁当

弁当は9月に需要が若干落ちるが、昨年は8月から3月まで前年を連続クリアしている。弁当売場は丼や上載せ弁当が好調だが、栄養バランスを考えた幕の内タイプの弁当、健康弁当も積極的に販売したい。

売場づくり

新米を使ったマツタケ、キノコご飯、栗ご飯、サケご飯など「炊き込みご飯弁当」や「おにぎり」を訴求。「秋の味覚コーナー」を新設して該当商品を集めて販売する。

他の主食的調理食品(スナック類)

スナック類は13カ月連続前年を上回っている優良カテゴリーだ。9月は若干需要が落ちるが10月から12月までは需要が伸びる。好調なカテゴリーだけにさらなる売上げアップを図る。

売場づくり

中華まんじゅう、おでん、焼きそば、チルド麺、鍋、パスタ、ピザ、グラタンなどのホットメニューの訴求。天気予報を見ながら気温の低い日には大量陳列して販売する。

「月見だんご」。十五夜が米の収穫時期であることから、米の収穫ができたことを感謝し月に見たてただんごを供えた。米粉のだんごの中に小豆餡が入ったものもある。十五夜には惣菜売場でも月見団子を大中小パックで販売したい

ハンバーグ

昨年9月はハンバーグが異常値。年間最大の消費支出であった。10月から冬にかけて下降するため、9月が最大の販売チャンスである。売り逃しがないようにしたい。

売場づくり

ハンバーグ、ミートボールは和風、中華、デミグラス、トマト、チーズとSKUを広げて品揃えする。ハンバーグは小型サイズを4個~6個入った商品を販売する。小型サイズは弁当にも使える。ハンバーグ、豆腐ハンバーグ、つくね、肉だんごでコーナー化を図りたい。

サラダ

昨年のサラダは春と夏には苦戦したが、9月から2月までの秋冬は前年をクリアした。10月まで需要が高まるため売り逃しがないようにしたい。

売場づくり

気温が下がるにつけて「練りサラダ(マヨネーズベースのサラダ)」が売れるので、ポテトサラダ、マカロニサラダ、サツマ芋サラダ、カボチャサラダ、ゴボウサラダなどの品揃えを強化したい。

トレンド商品

おにぎり弁当

写真は広島で人気の「むさし」のおにぎり弁当。観光バスが立ち寄るほどの人気店。イートインでもテークアウトでも同じものを販売している。時間が経ってもご飯はフワッとしている。厚切りレンコンの煮物は中までしっかり味が浸み込んでいるなどこだわっている。米飯売場でもおにぎり弁当の販売を強化したい。

あんかけ焼きそば

9月は冷し麺は「なごり」、ホット麺は「旬」を迎えるが、残暑があるためホット麺は急には売れない。そこでこの時季は「焼き麺」を訴求する。アイテムは焼きそば、焼きうどん、あんかけ焼きそばを訴求する。特に秋野菜や海鮮を使った「野菜海鮮あんかけ焼きそば」に力を入れて販売する。

一ノ関の餅膳

岩手県一ノ関の餅店の商品。ずんだ餡、じゅうねん(エゴマの実)、小豆餡、ゴマ、きなこ、エビなど9種類を盛り合わせた商品。いまはこの価格では販売ができないが、商品づくりの参考になる。敬老の日、秋の彼岸で販売したい商品だ。

チルド肉うどん

関西以西では肉うどんといえば「牛肉」だが、関東、都北では「豚肉」が多い。関東以北のチルドうどんも今年は「牛肉うどん」「牛肉そば」に力を入れて販売する。さらに「カモ」を使った「カモ南蛮」も品揃えしたい。惣菜は外食に市場を奪われているが、外食の半額で販売すればチルド調理麺の売上げアップにつながる。

注力するアイテム

季節は秋といえども上旬は夏の続き、中旬ごろから(秋の食季節)となることに注意。前半は夏のメニュー、後半は秋のメニューになる。商品の入れ替えは、天気予報を注視しながら、気温の高い日は夏メニューで商品を組み、秋メニューを(北海道産の新ジャガ使用のポテトサラダなど)目立つように3、4品組み込むように売場を構成する。

ただし、毎年9月は売上げが低調になるのに加えて、惣菜商品の値上げが加わり、平年より売上げが伸び悩む可能性がある。高額な新規のメニューを控えて、定番で比較的売価の低い売れ筋商品を売り込むことが全体のロスを少なくする方法である。

揚げ物は、中旬以下気温が下がってきたら、売れ筋の「唐揚げ」を中心にパン粉の付いたフライを加えて季節感を出す。北海道をイメージする「コロッケ」も積極的に売り込む。気温の低下と共にフライ商品、米飯商品の動きが活発となるので、弁当は秋の魚などを中心にした弁当商品を開発すると売場が秋らしくなる。

旅行やレジャーなどが活況を見せているが食品や惣菜などは、商品の値上げなどがあって、いま1つ売上げが伸びにくい状況が続いている。それでなくとも秋から冬にかけては、惣菜の売上げは低い指数で推移するものなので、新商品などは数店舗でテスト販売などをしてから、全店投入などのチェックをするなど、ロスを増やさない仕掛けをすることが必要だ。

もう1つ大事なことはコロナ後の売場の構成に新味を加えることが要求されることだ。昔から全国的な疫病や災害の後には、世の中に新しい進化した文化が生まれていることに気をつけたい。

惣菜も例外ではなく新しい惣菜売場が要求されている。全国に現在続々とオープンしている新店ではいままでよりも進化した惣菜売場が多く登場している。専門店的な対面揚げ物売場、作りたて弁当売場、鉄板を使ったお好み焼き、卵焼き売場、魚惣菜売場など見栄えの良い商品や売場が広がっている。

対面販売とセルフサービスの売場構成など、特に目立つのはビジュアル面でのおいしさの表現を強調する新しい売場が増えていることである。今年からの課題である。

秋の弁当2品

秋サケ(鮭)弁当

秋を感じさせる定番の「秋サケ」をメインにした弁当が秋の目玉商品だが、最近の不漁による原料の高騰などがあるので、原料の大きさなど工夫が必要となる。最近では安い加工品の粕漬けなどの原料もあり、手頃な価格で週末、連休に秋の味覚で提供したい。ご飯は秋の炊き込みご飯。副菜は鶏唐揚げたれ付き、煮物、漬物で構成する(魚の焼き方はサンマ弁当を参考にするとよい)。

秋サンマ(秋刀魚)弁当

サケと共に秋の味覚として人気のサンマ(秋刀魚)を使った弁当。サケもサンマもおいしい焼き方が売れ行きを決めるので、魚商品の焼き方をマスターする必要がある。魚をスチームコンベクションなどで普通に焼くと、焦げ目を付けることが苦手なスチームコンベクションなので、焼き過ぎになり、食べて硬くてパサパサになっておいしくない。いまこそ焼き魚の焼き方をマスターしたい。スチームコンベクションで魚を焼くときの極意は、まず面倒でも魚の下ごしらえが必須となる。これがおいしく焼くこつである。

①水1ℓ、②塩30g、③砂糖50gの割合で漬け水を作り、この水に焼く魚を、一晩冷蔵庫で漬け込んで魚の身に水を含ませる。

焼く前にこの魚の水をふき取り、まず160℃のスチームコンベクションで火を通す(サンマははらわたに中心温度計を差し込んで90℃になるまで焼く)。この時点では焦げ目は付いていない。次にスチームコンベクションから魚(トレー)を引き出し、魚の表面に(みりん)をはけで塗り、さらに200℃以上の温度で加熱すると2~3分くらいで奇麗な焦げ目が付くので取り出す。

焦げ目は機種によって時間が違うので焼き加減を見て時間を決める。焼き過ぎに注意することが大切。奇麗な焼き色が必要。

魚がおいしく上手に焼けると人気が出る。弁当以外に単品でも売れるようになり、固定客が増えるので、焼き方をマスターすることで惣菜のカテゴリーが広がる。

豆腐惣菜、左から(いり豆腐、白あえ、うの花)

惣菜の売上げが芳しくないときの投入商品として注目。さまざまな原料の値上げに伴う惣菜商品の値上げなどが影響し、売上げが伸び悩んでいる際に、それを解消するものとして自家製豆腐商品を位置付ける。

一番は定番商品として人気の「揚げ出し豆腐」を売り込むことが多いが、加えて他の豆腐商品も投入する。昔ながらの味が人気となることが多い。毎年気温が下がる秋から「和惣菜」商品が動くので、昔から売れている豆腐惣菜の品揃えを強化する。手作りが大変なら、自社工場、協力工場などで作り、味の良い商品を手頃な価格で売り込む。

豆腐は固定客が多く、毎日の「おかず」商品だけに、一定の数量が見込める商品としておろそかにできない。しかし、最近はおろそかにされているようで商品も少なくなっているようだ。見直すときが来ているといえる。作り慣れている地元の味、自店のレシピを最大限に生かすことが売上げの要となる。

手羽先とジャガ芋の含め煮

手羽先は「唐揚げ」で商品化がほとんどだが、煮上げたものも味があって食卓のおかずとして人気が高い。煮るとだしが出るので、ジャガ芋と煮るとボリュームも出て見栄えも良い。ただし人気を取るには、店で作り立てを販売すること。ジャガ芋は「肉じゃが」と同じで作りたてがおいしいからだ。工場からの納品はお勧めできない。

手頃な価格でタンパク質が摂れる商品として人気。ボリュームもあり、鶏肉は味の出る手羽先を使用する。作り方は簡単で、先に大鍋でだし入りしょうゆや麺つゆしょうゆを使って煮汁を作り、一度鶏手羽先を油で素揚げをして、ジャガ芋も素揚げをする。

作っておいただしの鍋で手羽先とジャガ芋を合わせて入れて煮上げる。ジャガ芋が柔らかくなったら火を止め、そのまま冷めるまで置いて味を含ませる。

トッピングに煮卵半分とゆでたインゲンマメを盛り付ける。注意事項として工場などで前日に作って、冷蔵庫で保存するとジャガ芋の味が落ち売れなくなるので気を付ける。ジャガ芋は長時間冷やさないこと。

北海道ポテトサラダ スイートコーン入り

今年はポテトサラダが良く売れている。値段が安くボリュームがあり経済的だからだ。しかし、惣菜では重要なポテトサラダなのに、なぜか人任せになっていないだろうか。いまがポテトサラダを見直すとき。特に秋は北海道の新ジャガが採れる時期、マンネリになりやすいサラダ売場の活性化をするチャンスだ。

自社手作りができれば最強の惣菜商品なのだが、外部の工場などから仕入れて販売する場合が多い。だからと言ってそのまま販売するのではなく、中身の味を始め、トレーのデザイン、容量による大、中、小の割合、トッピングによる味の変化、独自の味付けなど打ち合わせを行い、ポテトサラダの売り方を変化させる努力をすること。一年中大量に売れる商品だけに、過去のデータを見ながらこまめに商品マッサージをすること。売れるものをきちんと売る、これが基本である。

北海道のイメージを出し、ジャガ芋の種類による味の変化と特徴、マヨネーズの味の変化など調理にも気を配る。スイートコーンをトッピングに使い季節の味を強調すると味の変化が出て人気が高まる。

秋野菜のガーリックマリネ

ナスを主体に、パプリカ、ピーマン、エリンギ、マイタケ、インゲンマメなど秋野菜を主体に作る「マリネ」。野菜をたくさん食べられる商品として人気が高まっている。

健康をテーマとしたおかずを売り込む。パプリカ、赤ピーマンなどを効果的に使って、売り場の視覚的な秋を売り込むとよい。利益、効率は少々悪いが売場にお客の目を引き付ける効果は高い。惣菜売場は、客の「立ち寄り率」(入店客の何人かが売場に寄ったか)を多くすると売上げが上がることが分かっている。魅力のある売場をつくる上で色彩による効果は高い。

作り方は、難しくない。ナスを始め全ての野菜を、フライヤーの油でそのまま素揚げをして、ガーリック味の効いたサラダ用のドレッシングに漬け込むだけ。手作りのドレッシングも良いが、さまざまなドレッシングが使えるので、メーカーの人気ドレッシングがあればそれを使って売り込む方が良い。味がぶれないからだ。冷蔵ケースで冷やして販売する。

秋の具たっぷりちらし寿司

秋は昔からちらし寿司の季節。祭りも盛んなこの季節には、さまざまな「ちらし寿司」が売場に出る。地元のちらし寿司を始め、人が集まる祭りや週末などに、食事にもなる秋の具材がたっぷりなこのちらし寿司は人気な売り込み商品になる。

具材は秋のイメージを持つ、マイタケ、シメジ、シイタケをだししょうゆや麺つゆなどを使ってさっと煮上げたものを主体に、秋の味のサケの荒ほぐし身、おいしい錦糸卵を使って仕上げる。

トレーに、甘めの寿司飯を盛り、錦糸卵を全体にちらし、煮上げたキノコを広げて盛り付ける。その上に荒ほぐしのサケ(できれば焼いたサケではなく味の良いメーカーの味付けのほぐし身を使うとよい)を全体に広げて盛り付ける。サケのほぐし身は赤身の色が良いものを選んで使う。

仕上げにキュウリの細切りを散らして見た目の彩りを作る。ボリュームのあることが売れる条件なので大ぶりなトレーでたっぷりと盛り付けて販売するとよい。