秋の食卓に合わせ売場商品構成も変化させる|「これは押さえたい」青果編・2023年9月

2023.08.07

創風土パートナー 代田 実

暑い夏から秋を感じさせる気候に変わっていく9月は、食卓に並ぶ食材も秋へと変化していく。それに合わせ、売場、商品構成も気候変化に合わせタイムリーに変えていくことが9月青果商売のポイントだ。

9月の家計支出金額を見ると、上位ではないものの10位以下の品目に前月比消費金額の伸びが大きいものが目立つ。

ニンジン、大根などの煮物商材の他、秋を感じさせる食材であるキノコ類の伸びも大きい。この時季、食材需要の変化を左右する気温変化を注視しつつ、煮物、鍋物商材の販売構成を徐々に引き上げていくことが9月月間の販売実績数字に結び付くといえる。

9月の家計支出金額上位品目と前月比伸び率

出所:総務省家計調査2022年9月全国二人以上の世帯の支出金額

年間最大の消費金額となるブドウ

初夏から本格的に販売が始まるブドウは、昨年9月の世帯当たり消費金額が966円と年間で最大になると同時に青果部門の品目別でもトップとなっている。こうした点から、9月の青果商売においてブドウは絶対に外せない品目であることが分かる。

昨年9月のブドウ品種別、東京都中央卸売市場の扱い金額を見ると「シャインマスカット」「巨峰」「ピオーネ」の上位3品種で全体の8割以上を占めており、この3品種をどのように販売していくかがブドウ全体の売上げを左右するポイントといえる。

特に単価の高いシャインマスカットは小分け少量パックの商品化や手ごろな価格で販売可能な産地パックをうまく使い、値ごろ感のある売場づくりを心掛けたいところだ。

これら3品種に次いで扱い金額の多い「その他ぶどう」は多くの品種が出回るが、中でもこの時季にしか出回らない品種(ナガノパープル、甲斐路、藤稔など)も多いので、上位3品種と併せて売場づくりを行いつつ、それぞれの品種の「旬」であることと品種特性をアピールしながら販売するとよいだろう。

併せて、終了期にはなるものの手ごろな価格で根強い人気のあるデラウエアも後取り商品として引き続き品揃え販売していきたいところだ。

ブドウ販売の軸になる巨峰、シャインマスカット
この時季だけ出回るさまざまな品種をカップで盛り売り販売例

前月比最も伸長率の大きいリンゴ

夏から秋へ販売品目、商品構成の変動が大きい9月だが、その中にあって最も前月比伸長率が大きいのがリンゴだ。その伸び率は昨年の場合8月比183%にも及び、それに合わせた売場品揃え拡大がポイントとなる品目だ。

半面、この時季販売の主力となる「つがる」は、早生種の特徴から果肉が柔らかく日持ち面で不安がある品種であるため、売場での商品回転を良くすることはもちろん、こまめに品質チェックを行いたい。その際は、下の写真のように品質低下品はまとめて袋詰めし、買い得価格で売切るのが良いだろう。

また、つがるの他、「きおう」など黄色いリンゴ、「紅玉」「秋映」など濃い赤色のリンゴも出回り始めるので、彩り豊かな売場を作ってお客にリンゴの新シーズン到来をアピールしたい。

特に焼きリンゴや菓子作りに欠かせない紅玉は長期貯蔵ができないため夏の間出回らず、新物の出回りを心待ちにしているお客も多い。出回り始めたら陳列量は抑えつつも、売場前面で目立つ展開を行いたい。

色とりどりのリンゴが出回るこの時季、人目に付く色合いの商品配置での売場づくりを心掛けたい

気温と共に需要が伸びる煮物・鍋物商材

9月は気温の変化が大きく、それに合わせて売れ筋商品も変化する。東京の場合9月上旬の最低気温の平年値は22℃台だが、下旬には17℃台まで低下する。一般に最低気温が20℃を切るようになると煮物や鍋物の食卓での出現率が上昇するといわれているので、地元気象台の発表する気温の動向には注意を払い、売場商品構成もそれに合わせて変えていくことが必要だ。

キノコ類

9月のキノコ類は品目により差はあるものの、おおむね前月比130%前後の消費伸長がある。その中で特に注意したいのがマツタケだ。他のキノコ類が周年出回るのに対し、マツタケだけは人工栽培ができない天然物に限られるため秋にしか出回らない。

東京中央卸売市場の扱い高を見ると、9月は年間の出回り量の約半分が集中する10月に次いで出回り量が多く、年間の約4分の1が出回る。早いものは梅雨明けごろから出回るマツタケだが、9月は本格的にシーズンインする時季といってよいので出回り量を見ながらタイムリーに品揃え、並びに売場拡大を行うことが重要だ。

これ以外の「シメジ」「生シイタケ」などのキノコ類は、気温低下に合わせ順次売場拡大を行い、POPでの用途提案も上旬は焼き物、炒め物、揚げ物から、下旬に向け鍋物に変える工夫をしていきたい。

その際の販売方法として有効なのが、下の写真のように販売規格を調整しての均一販売だ。買いやすい均一価格で、一種類でも多くのキノコ類を同時に購入してもらい、客単価のアップにつなげたい。

また、同時にキノコ類は料理で余らせたときポリ袋に入れての冷凍保存が可能な食材であることをPOPで伝え、買いやすい価格での複数品種購入を促し、客単価アップにつなげたい。

タイムリーな展開が求められるマツタケ
気温低下と共に売場面積を広げて販売したいキノコ類

煮物商材

キノコ類同様、9月の気温変化と共に需要が伸びるのが土物、根菜類を中心とした煮物商材だ。ひと口に煮物といっても「カレー」や「シチュー」の他、「肉ジャガ」などその料理方法はさまざまで、使う量もまちまちだ。

そこでお勧めしたいのが下の写真のようなばら販売だ。煮物商材は比較的ロスが出にくいものが多いが、ニンジンなど、裸陳列しているうちに品質低下しやすいものについては前述のリンゴの例にあるように、定期的に品質チェックを行い、鮮度低下品は袋詰めして売り切るなどの工夫が必要だ。

また、ジャガ芋、玉ネギなど家庭の常備野菜については、ある程度のボリューム規格での販売を行い、単価アップを図ることも必要だ。その際、どこの店でも行っている袋やネット入りの販売では差別化ができにくいため、写真のようにフルーツパックへのばら盛り売りを試してみるとよいだろう。

インストアでの商品化で手間はかかるものの、商品の「面」が出ることで量目の割にボリューム感が出る売り方だ。商品価格が上昇する中、こうした従来とは違う商品規格での販売方法で少しずつでもユニット単価を上げる努力の積み重ねが青果部門の利益改善に結び付く。

使用用途に合わせた適量販売ができるばら販売。ニンジンなど品質低下しやすいものは定期的に品質チェックしたい
ひと手間かかるが、見た目も新鮮なジャガ芋の盛り売販売